

バイクのエネルギー効率を考えるとき、最初に押さえるべきは「走行中にどんな抵抗が支配的か」です。低中速では転がり抵抗や機械抵抗の比率が相対的に目立ちますが、速度が上がるほど空気抵抗が強く効いてきます。
空気抵抗は速度の二乗に比例して増える、という性質がよく知られています。つまり、速度が2倍になると抵抗は4倍になり、同じ距離を走るだけでも必要な出力(=燃料消費)は跳ね上がりやすいということです。実際に「速度が上がるほど空気抵抗が増える」ため、高速域では燃費が落ちやすい、という説明は各種の走行解説でも繰り返し述べられています。
参考:空気抵抗と速度の二乗の関係(高速域で燃費に効く)
https://quantumcuriosity.net/motorcycle-science/speed/
ここで重要なのは、「最高速が出せるか」ではなく「巡航をどれだけ楽に維持できるか」です。例えば同じ100kmを移動する場合でも、追い越しのたびに大きく加速する走りと、流れに合わせて速度変化を抑える走りでは、空気抵抗に費やすエネルギー総量が変わります。
燃費を伸ばす具体策としては、まず速度域の見直しが効きます。高速道路で“ほんの少し”巡航速度を落とすだけでも、空気抵抗由来の負担が下がりやすく、結果的に燃費が安定しやすくなります。さらに姿勢(上体を起こしすぎない)、荷物の積み方(横に広げない)も、投影面積を増やさないという意味で合理的です。
加えて、カウルの有無やスクリーンの形状は「体感の快適さ」だけでなく、空気の流れを整えることでエネルギー効率の差につながり得ます。ここは車種差が大きく、同じ排気量でもツアラーとネイキッドで高速巡航の燃費傾向が変わりやすいポイントです。
タイヤの空気圧は、エネルギー効率を“地味に、しかし確実に”左右します。空気圧が低いと接地面が増え、タイヤがたわみやすくなり、転がり抵抗が増えて燃費が悪化しやすい、という説明はタイヤ関連の解説でも明確です。
参考:空気圧低下で転がり抵抗が増え、燃費悪化につながる
https://www.yellowhat.jp/column/tire/019/index.html
バイクの場合、タイヤは小径で接地荷重の変動も大きく、空気圧の影響が運転感覚にも出やすいです。「最近ハンドリングが重い」「倒し込みが鈍い」と感じたら、燃費以前に空気圧の点検で改善するケースがあります(結果として無駄なエネルギーも減りやすい)。
実務的には、次の順で点検すると失敗が少ないです。
意外と見落とされがちなのが「自然に少しずつ抜ける」ことです。パンクしていなくても内圧は低下しうるため、月1回のチェックでも効率のブレが小さくなります。燃費が急に悪くなったとき、エンジンや燃料の問題より先に、空気圧で説明がつくことは珍しくありません。
また、空気圧の維持は燃費だけでなく安全にも直結します。転がり抵抗が増える状態は発熱や摩耗にもつながるため、結果的にタイヤ寿命(コスト)まで含めた意味での「エネルギー効率(=移動あたりの総コスト)」も悪化しやすい、という見方ができます。
エネルギー効率を上げたいとき、「高いギアで低回転」だけを狙うのは半分正解で、半分は注意が必要です。高回転を続けると燃料消費が増えやすい一方で、低回転すぎるとエンジンに負担がかかり、スロットルを余計に開けることになって効率が崩れることがあります。
ポイントは「必要トルクに対して、無理のない回転域で巡航する」ことです。ギアはエンジン回転数と車輪回転数の比率を変える仕組みで、高速側のギアを使うと燃費が向上しやすい、という説明はギア解説でも示されています。
参考:高いギアで燃費向上を狙える(ギア比の基本)
https://2rinkan.jp/ridersacademy/archives/1264/
実走では、次のような「燃費が落ちる典型パターン」を避けると効率が安定します。
逆に、燃費を伸ばしやすい走り方は「速度変化を小さく」「早めのシフトアップ」「余裕のある車間でアクセル開閉を減らす」です。これは精神論ではなく、加速の回数を減らすほど、運動エネルギーの出し入れ(=燃料の投入とブレーキによる熱損失)が減る、という物理の話です。
なお、車種によって効率の良い回転域は違います。単気筒や低回転トルク型と、多気筒や高回転型では「気持ちよく走れる回転域」が異なり、それがそのまま燃費の出やすい回転域の傾向差にもなります。取扱説明書やメーカー推奨のシフト目安があるなら、まずはそれを基準にし、交通状況に合わせて微調整するのが安全です。
独自視点として強調したいのは、「エンジンで作った力が、後輪に届くまでに消える損」を減らす発想です。バイクはチェーン駆動が多く、チェーンの動きが悪いとフリクション(摩擦)が増えてエンジンパワーをロスし、抵抗増加として燃費が悪化する、という説明があります。
参考:チェーンのフリクション増加で燃費も悪化
https://www.goobike.com/magazine/maintenance/maintenance/478/
ここが意外なポイントなのは、「チェーンは切れたり外れたりしない限り走れてしまう」ことです。だから不調に気づきにくい一方で、実は効率に直結します。特に雨天走行や砂利道の後は、汚れと水分で潤滑が落ち、回転の軽さが変わりやすいので要注意です。
実務的なメンテのコツは、難しいことを増やすより“頻度と観察”に寄せることです。
さらに、スプロケット摩耗やチェーンラインのズレは、気づかないうちに損失を増やします。燃費の悪化を「季節のせい」「渋滞のせい」と片づける前に、駆動系の軽さを点検すると、原因が見つかることがあります。
最後に、燃費表記の読み方も効率改善の基礎知識として役立ちます。二輪車のカタログ燃費は、従来の定地燃費値に加えて、実走行に近づけたWMTCモード値の併記が進められている、という背景があります。
参考:国内二輪メーカー4社の自主的取り組みとしてWMTCモード値を併記
https://release.jama.or.jp/sys/news/detail.pl?item_id=1628
WMTCは「実態に近い条件での目安」なので、あなたの走り方を変えたときの伸びしろ(改善余地)を見積もるのにも使えます。定地燃費の数字が良くても、加減速が多い使い方だと実燃費は伸びにくいことがあるため、カタログの数値を“効率改善のゴール設定”に使うならWMTC側を基準にするほうが現実的です。
(ここまでの内容を実践すると、エネルギー効率 バイクの改善は「速度域の整理」「タイヤ空気圧」「ギアと回転数」「チェーンのフリクション」という、再現性の高い4点に収束していきます。燃費は運転技術だけでなく、抵抗の総量を減らす技術でもあります。)