

ピンロックを外す前に、実は「偏心ピンを緩める」という工程が必要なのを知らずに割ってしまう人が続出しています。
ピンロックシールド(ピンロックシート)とは、ヘルメットのシールド内側に装着する曇り止めシートのことです。シールドとシートの間に空気層を作り、二重窓(2重サッシ)と同じ断熱原理で結露を防ぐ仕組みになっています。
シートの外周にはシリコンゴムが塗りつけられており、このシリコンがシールド内面にぴったりと密着することで空気を閉じ込めます。左右2か所の「偏心ピン(へんしんピン)」がシートを固定しており、ピンの回転によって固定の強さを調整できる構造です。偏心ピンというのは、ピン軸が中心からわずかにずれているためピンを回転させると位置が変わるパーツのことで、このズレを利用してシートの締め付けを調整します。
つまり原則として、外す前に必ずこの偏心ピンを「緩める方向」に回す必要があります。この一手間を省いてしまうと、シールドに固定されたピンの根元に過大な力がかかり、プラスチック製のピン頭部が割れてしまうことがあります。ピン破損の修理は可能ですが専用の補修パーツ(SHOEI等はメーカー取り寄せ)が必要で、場合によってはシールドごと交換という出費につながります。
まずこの「偏心ピンを緩めてからシートを外す」という原則が頭に入っていれば、以降の手順がスムーズに理解できます。
外し方の基本的な流れはどのメーカーでも共通していますが、偏心ピンの向きの確認方法に細かな違いがあります。メーカー別に整理しておきましょう。
【共通の基本手順】
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① | 偏心ピンを「ピンロックシートが緩む方向」に回す |
| ② | シールドを軽く左右に広げる |
| ③ | シートの端を掴んで、片側ずつゆっくり外す |
| ④ | シートの表面(内側)には触れない |
【SHOEIの場合】
SHOEIヘルメット(Z-8、GT-Air 3など)の偏心ピンは、シールド外側から見える小さな凸部が目印です。この凸部がシールドの「内側(中央方向)」を向いている状態が「締まっている」状態です。
外すときは、凸部が「外側(シールドの端方向)」を向くようにピンを回転させます。指でつまんで回しにくい場合は、シールド外側のピン頭部にある十字溝に0番(#0)のプラスドライバーをあてて、軽く回す方法が有効です。ドライバーは強く押し込まず、シールド面を傷つけないよう注意してください。
ピンを緩めたら、シールドを左右に少し広げながらシートの端を指でつかみ、片側ずつ静かに引き抜きます。
【アライヘルメットの場合】
アライのVAS-Aシールド等では、左右のピンのスロープ(傾斜面)が互いに「シールドの中央に向いている」状態が取り付け完了の状態です。
外す際は、両側のピンのスロープが中央に向いていることを確認してから、シールドを少し広げてシートの端を引き抜きます。ピンが指で回しにくい場合は、シールド外側の十字穴を0番プラスドライバーで回してください。
【OGKカブトの場合】
OGKカブトはモデルによって偏心ピンの形状が異なることがありますが、基本手順はSHOEI・アライと同様です。シールドの内側を確認してシートが左右のピンにしっかり乗っているか確認し、ピンを緩める方向に回してからシートを外します。
取り外したシートは、表面(曇り止め面)に指先が直接触れないよう注意してください。指紋の油分がシートに付着すると、その部分の曇り止め効果が局所的に落ちることがあります。
アライヘルメットの公式マニュアルはこちらで確認できます(PDFが開きます):
ピンロックシートの外し方・付け方の詳細手順(アライヘルメット公式)
アライヘルメット VAS-A MVピンロック取扱説明書(公式PDF)
「何回か外したことがあるから大丈夫」という油断が一番の落とし穴です。
実際に、ブログや口コミにはこのような失敗談が数多く投稿されています。SHOEIのヘルメットを使用しているあるライダーは、ピンロックシートとシールドの隙間にほこりが入ったため取り外そうとした際、偏心ピンを緩めずに「エイヤーっと剥がした」結果、シールド側のプラスチック製ピン頭部が欠けてしまったと報告しています。この状態になるとシートが正常に固定できなくなります。
「やってしまった」という状況になっても、すぐシールドを買い替える必要はありません。ポイントは以下の2つです。
- ピンの補修パーツが存在する:SHOEIをはじめ主要メーカーのシールドピンは「別体パーツ」として設計されており、単品での交換が可能です。シールドに開けられた穴に挿し込まれているだけの構造のため、破損したピン残骸を除去して新しいピンをはめ込むだけで修復できます。SHOEI純正補修ピンはAmazonや二輪用品店で取り扱っています。
- 応急処置として偏心ピンを調整する:ピンが完全に折れておらず緩んでいるだけであれば、偏心ピンを締める方向に回してシリコンゴムを再密着させることで一時的に曇り止め効果が復活することがあります。
ピンロック表面(視界面)に傷がついてしまった場合は補修が難しく、視界の悪化・光の乱反射が起きるため、シートそのものの交換が必要になります。純正シートは3,000円前後、汎用品であれば2,000円前後で購入できます。これが条件です。
ピンロックピン破損の修理事例の詳細はこちらの記事が参考になります:
ピンロックピンが割れても修復できる!補修パーツによるDIY修理の実例
ヘルメットシールドのピンロックピン破損は修復できる(oilyboy.info)
外したシートを「そのまま流水でザブザブ洗う」のはNGです。これは意外ですね。
ピンロックシートは構造上デリケートな材質でできており、流水での豪快な洗浄はシート表面の微細な吸水層を傷める可能性があります。正しいクリーニング手順は以下のとおりです。
【推奨されているクリーニング方法(メーカー共通)】
1. 食器用中性洗剤を水で5〜6倍に薄めた液をスプレーボトルに入れる
2. 汚れた箇所に薄く噴霧し、汚れが浮き上がるのを待つ
3. ぬるま湯に浸した柔らかい布(マイクロファイバー等)で優しく拭き取る
4. すすいだ後、柔らかい布で水分を拭き取り十分に自然乾燥させる
この手順において特に注意したいのは乾燥方法です。「早く乾かしたい」という気持ちからドライヤーの温風を当てたくなりますが、シートの素材が熱で変形するおそれがあるため絶対に使用しないでください。自然乾燥が原則です。
また、シールド本体(アウターシールド)を拭く際も、ティッシュペーパーや粗い生地のタオルは避けてください。シールドは傷がつきやすく、細かいキズの蓄積が夜間走行時の対向車ライトの乱反射につながります。洗浄には十分に洗剤液を含ませた柔らかい布を使うのが基本です。
外したシートをしばらく使わない場合は、購入時のパッケージや柔らかい布に包み、直射日光・高温の場所を避けた室内で保管します。SHOEIの公式FAQ(下記リンク)でも保管方法が明記されています。
「付けっぱなしでOK」という思い込みが、寿命を縮める最大の原因です。
ピンロックシートの曇り止め効果は、一般的に2〜3年で低下するとされています。ただしこれは「常に取り付けたまま」の使用を前提にした話で、正しく取り外して保管することで寿命を延ばせることはあまり知られていません。
劣化の主な原因はシリコンゴムの変形です。シートを取り付けた状態では、偏心ピンによって常にシリコンゴムがシールドに押しつけられている状態が続きます。長期間この圧力がかかり続けると、シリコンが徐々に変形してシールドとの密着性が低下し、隙間から湿気が侵入して曇りが発生します。
寿命を延ばすための2つのポイント:
- 🗓️ シーズンオフは取り外して保管する:曇りにくい5月〜10月ごろは、シートをシールドから取り外して元のパッケージや布に包んで室内保管するのがベストです。押しつけ応力から解放されることでシリコンゴムへの負担が減ります。
- 🔩 使用期間中は偏心ピンを緩めておく:取り外すのが面倒な場合は、偏心ピンをほんの少し緩めてシリコンゴムへの圧力を和らげるだけでも劣化を遅らせる効果があります。ただし緩めすぎると走行中のビビリ音や曇り発生につながるため、ピンが「ほぼ中央方向」を向いている程度に留めておくのが目安です。
なお、アライの公式マニュアルにも「ヘルメットを長期間使用しない場合は、ピンを緩めておくことでピンロックシートへの負担(応力)を軽減できる」と明記されています。これは使用説明書に書いてあるにもかかわらず、実践している人が少ない知識です。
寿命が来たシートは曇り止め効果の低下だけでなく、シート表面が白く濁って視界が悪化するケースも多いです。3年使用したら交換タイミングとして意識しておくと安心です。SHOEI純正シートは3,000円前後、コスパ重視であれば汎用品のRunWindシート(Amazonで2,000円前後)も同等の効果が確認されています。
ピンロックシールドの保管・寿命延長に関する詳細はこちらが参考になります。
シールド曇り止め・ピンロックの保管と寿命を延ばす2つの方法(firstride.net)
「ピンロックは冬専用」という思い込みで、真夏も付けっぱなしにしているライダーは少なくありません。しかし実は、真夏の高温環境が最もシリコンゴムの劣化を加速させる条件の一つです。
温度変化・直射日光・紫外線はシリコンゴムを硬化・変形させる大きな要因になります。夏場のヘルメット保管場所が直射日光の当たる駐車場や車内である場合、シートを取り付けたままにするだけで劣化ペースが早まります。梅雨明けから9月末ごろまでは「シートを外して室内保管」にするだけで、劣化スピードを体感的に遅らせることができます。
また、夜間だけ走るライダーにはもう1点注意があります。ピンロックシートを取り付けたシールドは「二重構造シールド」の性質上、対向車のヘッドライトや街灯が二重に映り込む現象が発生することがあります。これはメーカーの公式マニュアルにも記載されている正常な現象ですが、気になる場合は夜間走行時にシートを外す選択肢もあります。
ピンロックシールドを外すべき状況まとめ:
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 5〜10月(曇りにくい時期) | シリコンゴム劣化・圧縮変形の防止 |
| 夏季の炎天下保管が続く場合 | 熱・紫外線によるシリコン硬化防止 |
| 夜間専用走行時 | 対向車ライトの二重映り込み防止 |
| クリーニング・定期点検時 | シートとシールド両面の汚れ除去 |
外した後の保管は、購入時の包装袋に入れて室内保管が基本です。メーカー問わず「製品パッケージに入れてそのまま置きっぱなし」は避け、エアダスターでほこりを除去してから柔らかい布に包んで保管するようにしてください。これが条件です。
SHOEI公式でも、外して保管するメリットが明確に説明されています。ぜひ一度確認しておきましょう。

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