

あなたの知るバイクレースと違い、SGPのマシンにはブレーキがありません。
参考)スピードウェイ (オートバイ) - Wikipedia
スピードウェイ・グランプリ(SGP)は、国際モーターサイクリズム連盟(FIM)が統括する世界最高峰のスピードウェイ選手権です。1995年に始まったこの大会は、それまで1回のイベントで決まっていた世界選手権を、複数戦のシリーズ形式に変更したものです。
各ラウンドには16人のライダーが参加し、20回のヒート(予選)を戦います。各ヒートは4人のライダーが4周を争う形式で、1周の距離は260mから425m程度のダートトラックを使用します。1ヒートの所要時間は約1分という超高速バトルです。
レースは反時計回りに行われ、ライダーはコーナーで車体を傾け後輪を滑らせるドリフト走法で駆け抜けます。時速110km以上に達する直線と、技術が試されるコーナーが見どころです。
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ポイント制は明確で、各ヒートの1位が3点、2位が2点、3位が1点、4位が0点です。20ヒート終了後、上位8人が準決勝に進出し、準決勝では1位6点、2位4点、3位2点、4位0点が加算されます。準決勝の上位2名ずつ計4名が決勝に進み、その優勝者がそのラウンドの勝者となります。
シーズンを通して各ラウンドで獲得したポイントの合計で年間チャンピオンが決まります。つまり毎回優勝するより安定して上位入賞を続ける方が有利ということですね。
参考)Speedway Grand Prix - Wikipedi…
SGPで使用されるマシンは、市販のバイクとはまったく異なる特殊な仕様です。FIM規定では500ccエンジンで最低車体重量77kg以上、純メタノール燃料の使用が義務付けられています。
最も特徴的なのは、ブレーキの装備が完全に禁止されている点です。減速はアクセルオフとドリフトのみで行うため、ライダーには極めて高度なテクニックが求められます。クラッチもスタート時の発進にしか使用されず、走行中はギア1速固定で走ります。
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メタノール燃料は1ヒート(4周・約1分)を走るのに十分な量しかタンクに入れません。これは安全性とマシンの軽量化を両立するための措置です。メタノールはガソリンより燃焼温度が低くエンジンを冷却する効果があるため、高回転での耐久性に優れています。
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ギアのスプロケットは前後ともトラックの状況に合わせてライダーが交換し、ギア比を最適化できます。タイヤも重要で、リアタイヤは1~2ヒートごとに新品に交換するチームもあります。エッジの効いたグリップを維持するため、一度使ったタイヤを裏返して再利用する戦略も一般的です。
ライダーは各ラウンドに好きなだけマシンを持ち込めますが、ピットに置けるのは2台まで、残りは待機エリアに保管されます。これは瞬時のマシントラブル対応を可能にします。
SGPに参戦できるのは、シーズン開始前に決定される15名の固定ライダーです。内訳は前年の世界ランキング上位8名が自動的に参戦権を獲得し、残り7名は予選会と主催者推薦で決まります。
16人目のライダーは各ラウンドごとに変わる「ワイルドカード枠」で、通常はそのラウンド開催国の国内チャンピオンに与えられます。これは地元ファンを盛り上げる狙いがあります。
年間ランキングは各ラウンドの獲得ポイント合計で決まるため、安定した成績を残すことが重要です。例えば2005年にはトニー・リカルドソン(スウェーデン)が196ポイントで、2位のジェイソン・クランプ(オーストラリア)154ポイントに大差をつけて優勝しました。
ポイント差が大きくなると、シーズン途中でもチャンピオンが確定することがあります。
これが条件です。
SGPは主にヨーロッパで開催され、ポーランド、イギリス、デンマーク、スウェーデンなどスピードウェイが盛んな国が中心です。2026年シーズンもイギリス・マンチェスターなどで複数ラウンドが予定されています。
歴史を振り返ると、スピードウェイ自体は第一次世界大戦前後に起源を持つ古い競技です。世界選手権は1936年に始まりましたが、1995年まではたった1回のイベントで世界王者が決まる形式でした。
1995年にグランプリ形式に変わってから、複数戦で争うシリーズ戦となり、より公平で見応えのある選手権になりました。初代GPチャンピオンはデンマークのハンス・ニールセンで103ポイントを獲得しています。
欧州では「サッカーに次ぐ人気」とも言われるほど観客動員力があり、地域によっては国民的スポーツとして定着しています。ダートを巻き上げながら横向きに駆け抜けるマシンと、わずか1分で決着がつくスピード感が人気の理由です。
日本での開催実績はほとんどなく、観戦には欧州への遠征が必要になります。これが日本での認知度の低さにつながっていますね。
MotoGPや他のロードレースと比較すると、SGPの特殊性がより明確になります。MotoGPは舗装路で1レース40分前後を走り、ブレーキング技術や複数のギアチェンジが重要です。一方SGPはダートトラックで4周約1分、ブレーキなし・ギア固定という極限の条件です。
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ポイント制も異なります。MotoGPは1位25点、2位20点、3位16点と15位まで配点されますが、SGPは1位3点、2位2点、3位1点のシンプルな配点で、しかも1ラウンドで20ヒート+準決勝+決勝を戦います。
タイヤ戦略も対照的です。MotoGPやWSBKでは義務的なタイヤ交換ルールがある一方、SGPでは各ヒートごとに自由にタイヤを交換でき、1~2ヒートで新品に替える贅沢な戦略も可能です。
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さらにSGPのマシンは純メタノール燃料専用で、ガソリンは一切使用しません。これは高回転・高出力を維持しながらエンジンを冷却するための選択です。
観戦スタイルも違います。ロードレースは長時間の戦略が楽しめますが、SGPは1分で決着する短期決戦が連続するため、集中力と爆発力が勝負の分かれ目です。ダート特有の砂煙と横向き走行は、視覚的にも独特の迫力があります。
バイク好きなら、ロードレースとは別次元のテクニックと興奮を味わえるはずです。
FIM Speedway公式サイト
※SGPの最新カレンダー、ライダー情報、ルール詳細が確認できる公式ページです。
スピードウェイ (オートバイ) - Wikipedia
※スピードウェイ競技全般の歴史やルール、マシン仕様についての詳細解説があります。