トルク特性とバイクの物理現象を解説|加速と回転数の関係

トルク特性とバイクの物理現象を解説|加速と回転数の関係

トルク特性とバイクの物理現象

高回転型エンジンは低回転域で最大トルクの半分も出ていません。


この記事の3つのポイント
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トルクは回転する力

エンジンがクランクシャフトを回す力で、バイクの加速性能に直結します

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気筒数で特性が変わる

単気筒は低回転域、4気筒は高回転域でトルクを発揮する傾向があります

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コーナーではトルクが安定性を生む

低めの回転域でトルクを使うとタイヤのグリップが強まり安全に曲がれます

トルク特性の基本|エンジンが生み出す回転の力


トルクとは、エンジンの爆発でピストンが押し下げられ、クランクシャフトを回転させる力のことです。自転車で例えるなら、ペダルを踏み込む力がトルクに相当します。


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単位は「N・m(ニュートンメートル)」または「kgf・m(キログラムフォースメートル)」で表記されます。数値が大きいほど、後輪を回転させる力が強く、加速時に力強さを感じられます。


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トルクは特定の回転数で最大値を迎えます。例えばCB400スーパーボルドールは9,500回転で39N・m(4.0kgf・m)を発生します。つまり回転数によってトルクの大きさは変動するということですね。


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馬力(出力)はトルク×回転数で計算されるため、トルクと回転数の両方が馬力に影響します。同じ馬力でも、低回転で高トルクのエンジンと高回転で低トルクのエンジンでは、走行特性が全く異なります。前者は低回転域から力強く加速し、後者は高回転まで回さないとパワーを発揮できません。


参考)トルクとは?【バイク用語辞典】


トルク特性を理解すると、自分のバイクがどの回転域で最も効率よく走れるかが分かります。カタログのトルク曲線を見れば、ピーク回転数や曲線の形状から、そのエンジンの性格が読み取れます。


参考)http://www.tamashop.co.jp/old/column5.htm


気筒数とトルク特性|排気量の分割が生む違い

同じ排気量でも気筒数によってトルク特性は大きく変わります。気筒数が増えると1気筒あたりの排気量が小さくなり、燃焼で生まれる力も小さくなります。


単気筒エンジンは、気筒あたりの排気量が大きいため爆発力が強く、低回転域から太いトルクを発揮します。ストローク(ピストンの上下動の距離)も長くなり、力強い加速感が特徴です。例えばスーパーカブC125は5,000回転で最大トルクを発生し、街乗りで扱いやすい特性になっています。


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V型2気筒は、爆発間隔を調整することでトラクション性能を高めることが可能です。大排気量車では絶対的なパワーだけでなく、パワーを効率よく路面に伝えることも重要になります。低中回転域で2,500〜3,500rpm程度でも効率良く走行できるのが特徴です。


直列4気筒エンジンは、高回転になるほどトルクが上昇する傾向があります。GSX-R125 ABSは8,000〜10,000回転の高回転域でパワーを発揮し、レーシーでアグレッシブな特性です。ただし低回転域ではトルクが薄く、回転を上げないと力強さを感じにくい面があります。


参考)原付バイクの「諸元表の数値」からエンジンの特性を推測してみる…


気筒数が増えると爆発回数も増えるため、エンジンの振動が滑らかになります。しかし大排気量の単気筒が少ないのは、気筒あたりの排気量が大きくなりすぎると燃焼や吸排気が追いつかなくなるためです。

回転数とトルクの関係|最大値が発生する領域

カタログに記載される最大トルクは、特定の回転数で発生する値です。この「最大トルクの発生回転数」が低いか高いかで、エンジンの性格が大きく変わります。


低回転型エンジンは4,000〜6,000rpm付近で最大トルクを発生します。W650のように5,500rpmでピークを迎えるエンジンは、低回転域から馬力もあり、街乗りやツーリングで扱いやすい特性です。スロットルを少し開けるだけで力強く加速できます。


高回転型エンジンは9,000〜10,000rpm以上で最大トルクを発生します。ZZR400のように9,000rpmがピークのエンジンは、低回転域のトルクが低く、回転を上げて初めてパワーを発揮します。鋭い加速を得るには高回転まで回す必要がありますね。


問題は、高回転で最大トルクを発生するエンジンは、低回転域でその効果が得られないことです。例えばスポーツバイクをカスタムして高回転型に仕立てると、高回転域では馬力を得られますが、通常使う回転域でのトルクが低くなり、実用では遅くなることもあります。


最大トルク発生回転数を維持して走るのが理想ですが、超ハイギヤード化が必要になったり、変速のタイムラグが生じたりする課題があります。そのため実際の走行では、トルクカーブ全体を見て、常用する回転域で十分なトルクが得られるかを確認することが重要です。


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トルクとコーナリング|トラクション効果の物理

コーナリング中にスロットルを開けると、トルクが後輪を駆動してタイヤが路面を蹴る力が生まれます。この力をトラクションと呼び、グリップを強めたり旋回方向を安定させたりする効果があります。


参考)Q.エンジンのトルクとパワーの違いって?【教えてネモケン13…


トラクションを有効に使うには、低めの回転域でトルクを発生させることが重要です。中野真矢氏の実験では、ハヤブサ(最大トルク15.2kgf・m/7,000rpm)を1速で走行した際、4,500rpm付近からスロットルを大きく開けていました。これは低中回転域のトルクが厚く、反応が過敏すぎないためです。


回転が高めな領域では、少しずつ加速するようなスロットル開度だとトルクの発生も見込めず、トラクション効果が得られません。反対に低い回転域なら、万一リヤタイヤがスリップしてもスロットルを戻す操作で十分リカバリーできます。


これが安全ですね。



エンジンは爆発の度にガクガクと脈動しながら後輪を回転させています。この脈動をうまく使うと、より効果的に曲がれたり気持ち良かったりします。ベテランがカーブで早めにシフトアップしたり、スーパースポーツクラッチを使わないパワーシフトが装備されているのも、トルクをコーナーで利用してグイグイとグリップするためです。


冬場など路面温度が低くてバンク角を抑えたい走行条件では、トラクションを意識した走りが安全マージンを確保する意味でも重要です。トルクを使った走り方は、安全と醍醐味の両方を実現できるテクニックです。


トルクとパワーの違いについて詳しく解説

トルクカーブの読み方|性能曲線から特性を把握

カタログのスペック表には、トルク曲線と出力曲線の2本の線が描かれた性能曲線図があります。この曲線を見ると、エンジンがどの回転域で力を発揮するかが一目で分かります。


トルク曲線のピーク回転数に注目してください。W650は5,500rpm、ZZR400は9,000rpmがピークで、曲線の形状もずいぶん違います。W650は低回転でトルクがあるため、比例関係にある馬力も低回転域で発揮されます。


曲線の形状も重要な情報です。低い回転域でも最大トルクの80%を発揮できるエンジンは、神経を使わずに乗りやすい特性になっています。フラットなトルクカーブを持つエンジンは、幅広い回転域で安定した加速が得られます。


参考)『なぜバイクて高回転まで回さないと走らないのですか。...』…


逆に、ピーク回転数付近でのみトルクが高く、他の回転域で低いエンジンは、常にシフトチェンジで適切な回転域を維持する必要があります。高回転型エンジンでは、急な加速が必要な場面を予測し、あらかじめダウンシフトしておく先読み運転が重要です。


一般公道ではトルク性能のほうが、実際の走りに「効く」ことが多いのです。最高速度やスタートダッシュなど日常的に必要度合いが少ない性能より、安心安全で醍醐味も味わえるトルク特性が、街中からツーリングまで重要になります。バイク選びではパワーよりも注目するべきスペックなのです。


トルク特性を活かすライディング|回転域の使い分け

高回転型エンジンと低回転型エンジンでは、最適なライディングテクニックが異なります。自分のバイクの特性を理解して、適切な回転域を使うことが重要です。


高回転型エンジンのバイクでは、積極的にシフトチェンジを行い、常に適切な回転域を維持しましょう。低回転域でのトルクが弱いため、急な加速が必要な場面では事前にダウンシフトして回転数を上げておく必要があります。


回転を上げることで、鋭い加速を得られます。



低中回転型エンジンのバイクでは、2,500〜3,500rpm程度の低めの回転数でも効率良く走行できます。高めのギアを選択し、低回転でトルクを活かした走り方が燃費向上にもつながります。無理に回転を上げなくても十分な加速力が得られるのが利点ですね。


ツーリングを前提にしたバイクほど、最高出力よりトルク特性を重視します。中速域が連続するワインディングでは、トルク性能が優れたバイクがスーパースポーツに後塵を浴びせてしまえるポテンシャルを見せることも少なくありません。


トルクを使った走りは、特にコーナリングで効果を発揮します。バイクが傾いた状態で、トラクションがしっかりとかかると、バイクは旋回力をより強めながら、安定感まで高めてくれます。低回転域のトルクを意識することで、安全かつ楽しいライディングが実現できます。


参考)https://ameblo.jp/the-luckiests/entry-12074356327.html


パワーとトルクの違いについて詳しく知る

排気量とトルクの関係|気筒あたりの爆発力

排気量が大きいほど、ピストンを押し下げる爆発力が強くなり、トルクが大きくなります。気筒あたりの排気量が大きいほど、1回の燃焼で生まれるエネルギーが増えるためです。


例えば1,339ccのハヤブサは、低中回転域のトルクが厚く、4,500rpm付近からでも十分な加速力を発揮します。これは排気量が大きく、気筒あたりの爆発力が強いためです。反対に125ccクラスのバイクは、排気量が小さいため高回転まで回して初めてパワーを得られます。


参考)コーナリングは”V字ライン”が最新トレンド【中野真矢に学ぶト…


同じ排気量でも単気筒と4気筒では、気筒あたりの排気量が4倍違います。400ccの単気筒エンジンは、400cc全体を1つのシリンダーで爆発させるため、1回の爆発力が非常に強くなります。一方、400ccの4気筒エンジンは、1気筒あたり100ccずつに分割されるため、1回の爆発力は弱くなります。


ただし気筒数が増えると爆発回数も増えるため、合計の出力は確保できます。4気筒エンジンは、単気筒の4倍の頻度で爆発が起こるため、高回転域で高出力を発揮できます。


これが高回転型エンジンの特性ですね。



排気量が大きすぎる単気筒エンジンは、燃焼や吸排気が追いつかなくなるため、ビッグバイクに単気筒が見当たらない理由になっています。バランスを考えると、排気量に応じた適切な気筒数が存在します。

馬力とトルクの違い|速度と加速の物理法則

馬力(出力)とトルクは、どちらもエンジン性能を表す指標ですが、意味が全く異なります。


混同しないようにしましょう。



トルクは、主にバイクの加速時に作用する、後輪を回転させようとする瞬間的な力のことです。アクセルを開けた瞬間にしっかりと加速するバイクは、トルクが高いということです。


瞬発力と考えると分かりやすいですね。



馬力は、主にバイクの最高速に作用します。トルクが瞬間的に後輪を回す力であるのに対し、馬力はその力を持続させるもので、馬力が高いほど速度が出ます。馬力はトルク×回転数で計算されるため、トルクが低くてもエンジンの回転数を高くすれば、馬力は高くなります。


加速性能に大きく影響するのはトルクですが、速度については馬力の影響が加わってきます。大きいトルクの方が加速がいいというのは理論上間違いないのですが、最大トルクの発生回転数が高回転に設定されている場合、低回転域ではその効果が得られないという問題があります。


バイクの単気筒エンジンは、回転数ではなくトルク自体の数値を上げて馬力を出していきます。複数のピストンの合計で得たトルクと回転数で馬力を出す多気筒エンジンとは、アプローチが異なります。


それぞれの特性を理解することが大切です。



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