

アマチュアでも同じコースでプロと競える
AMAエンデューロクロス選手権は、2004年に北米で始まったスタジアム形式のオフロードレースです。10月から11月にかけて全6戦が開催され、アリゾナ、アイダホ、オレゴン、ネバダ、ワシントンなど西海岸を中心に毎週転戦します。
通常のエンデューロが自然の地形を利用するのに対し、エンデューロクロスは屋内スタジアムに人工的な障害物を配置するのが特徴です。丸太、巨大タイヤ、ロックセクション(岩場)などが設置され、ジャンプの着地にも丸太が置かれるなど、スーパークロス以上の難易度とも言われます。
参考)このモトカルチャーに嫉妬せよ、AMAエンデューロクロスを観た…
レース形式はゲートスタートで、3本のMoto(ヒート)を走行します。観客席を埋める熱気と、リアタイヤが丸太を打ちつける鈍い音の迫力は他のバイクレースでは得られない体験として人気があります。
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000487.000031383.html
このレースの興味深い点は、プロとアマチュアが同じコースに挑戦できることです。
参加にはAMA(アメリカンモーターサイクリスト協会)の会員資格が必須です。レース当日は会員カードの提示が求められるため、事前にオンラインで入会しておく必要があります。
クラスは全部で7つに分かれており、それぞれに明確な参加条件があります。EX Proは前年度トップ10入りしたライダーや予選通過者が参戦するトップカテゴリーです。EX Expertはプロクラスへの予選として機能し、上位5名がプロレースの権利を獲得します。
EX Intermediate(中級者・Bレベル相当)とEX Novice(初心者・Cレベル相当)は、プロを目指さないアマチュアライダー向けで、12歳以上であれば参加できます。
各クラス最大60名までエントリー可能です。
EX Veteranは35歳以上が対象、EX Juniorは12〜17歳が対象、EX Pro Womenは女性ライダー専用クラスとなっています。これらのクラスは最大48名までエントリーできます。
年齢の下限は12歳ですが、トップカテゴリーのEX ProとEX Expertは16歳以上という制限があります。つまり12歳でもエンデューロクロスに参戦できるということですね。
使用できるバイクは98cc以上の市販車ベースが基本です。ホイールベースが55インチ(約140cm)以上という制限がEX ProとEX Expertにはあります。
トライアルバイクはIntermediateとNovice、Veteran、Juniorクラスでは使用可能ですが、トライアルタイヤはどのクラスでも使用禁止です。
これは興味深いルールですね。
パドルタイヤ(連続リブタイヤ)も禁止されています。
2輪駆動マシンは全クラスで使用が認められています。ライダーは予選から本戦まで、技術検査を通過した2台のバイクを使い分けることが可能です。ただし1つのレース中でのバイク交換は認められません。
騒音規制も厳しく、レース前の検査では最大112dB/A、レース後の検査では113dB/Aという基準があります。これはオフロード標準のテスト方法で測定されます。
AMAエンデューロクロスの詳細なルールブック(2025年版)はこちらから確認できます
レースはゲートピック(タイムアタック)→Moto1→Moto2→Moto3という流れで進行します。ゲートピックではトップ10のライダーが1人ずつタイムアタックを行い、その結果でMoto1のスタート順が決まります。
スタートゲートは8台分しかないため、9番手以降は2列目スタートになります。2列目のライダーは、最も外側のゲート(7番と8番)の後ろに並ばなければなりません。スタート時は前列のバイクの後輪より前に出てはいけないという厳格なルールがあります。
Moto2のゲートピックはMoto1の逆順になるため、トップライダーが全員2列目スタートになってしまいます。
これが逆転劇を生む要因です。
ポイント制度は、1位25点、2位22点、3位20点と続き、21位まで付与されます。シリーズランキングの対象になるには、全6戦のうち最低3戦(半数)に出場する必要があります。
同点の場合は、メインイベントでの優勝回数→2位回数→3位回数…の順で比較し、それでも決まらない場合は最終戦の結果が採用されます。2025年最終戦では、この規定によってジョニー・ウォーカーがトリスタン・ハートを破りチャンピオンになりました。
アメリカ人ばかりのエンデューロクロス界で、日本のIRCタイヤが業界を席巻している事実は意外かもしれません。スタートゲートは真っ赤なIRCロゴで埋め尽くされており、トップシェアを誇っています。
7年間アメリカに駐在したIRC池田氏が、2022年からトップライダーとの契約を進め、タディ・ブラズシアク、コディ・ウェブ、コルトン・ハーカーといった複数回のチャンピオン経験者と契約しています。彼らが使用するのはIRCとの共同開発で誕生したGX20ゲコタというタイヤです。
レース終了後の22時を過ぎても、IRCのテントには本来関係のないトップライダーやメカニックが集まって談笑が続くほど、パドック最大の派閥になっています。日本人ライダーどころか日本メーカーのバイクもほとんど参戦していない中、タイヤだけが道を切り拓いた形です。
トップカテゴリーでは、コディ・ウェブ(ヤマハ)とコルトン・ハーカー(カワサキ)が日本製バイク×日本製タイヤという組み合わせで走っています。本物は国境を越えて評価されることを、この事実が証明していますね。
日本人が見たAMAエンデューロクロス現地レポート(詳細な観戦記)