AMAモトクロス選手権とは|日本人参戦の歴史と観戦方法

AMAモトクロス選手権とは|日本人参戦の歴史と観戦方法

AMAモトクロス選手権の基本

プライベート参戦でも年間273ドルの参加費だけで世界トップと戦えます。


この記事のポイント
🏆
世界最高峰のレース

AMAモトクロスは世界選手権と並ぶトップカテゴリーで、毎戦数万人の観客が集まる

🇯🇵
下田丈の快挙

2025年に日本人初のSMXチャンピオンを獲得、獲得賞金は約3600万円

🏁
参戦方法

プロライセンス年間500ドル、1レース273ドルで誰でも参戦可能

AMAモトクロス選手権とは何か

AMAモトクロス選手権は、アメリカモーターサイクル協会が主催する世界最高峰のモトクロスレースです。1972年に複数の国際格式シリーズを統合して全米選手権として始まり、50年以上の歴史を持ちます。


自然の地形を利用した人工セクション付きのダートコースで争われ、世界中のトップライダーが集結します。毎戦数万人もの観客が会場を埋め尽くし、モトクロス世界選手権と並んで世界最高峰と称されています。


参考)AMAスーパークロス/モトクロス選手権


現在では2009年から2022年までルーカス・オイルがタイトルポンサーを務め、「ルーカス・オイル・プロ・モトクロス」として開催されていた時期もありました。2023年からはスーパークロスとの統合シリーズ「スーパーモトクロス選手権」も新設され、年間を通じた総合王者を決める新たな形式が導入されています。


参考)モトゴシップ|AMA新シリーズ発足「スーパーモトクロス・ワー…


AMAモトクロス選手権の2つのクラス

AMAモトクロスには450クラスと250クラスの2つのカテゴリーがあります。450クラスは最高峰カテゴリーで、最も速くパワフルなバイクが使用されます。重量があり制御が難しいため、トップクラスのライダーが参戦します。


参考)AMAモトクロス


250クラスは450ccよりもパワーが低く、制御がはるかに簡単なマシンです。


ただし侮ってはいけません。


実はサンデーライダーにとって250の方が扱いやすく、下位カテゴリーでは450が化け物マシンすぎてかえって250より遅くなることもあります。


各クラスの決勝は、1大会で30分+2周のレースが2回実施されます。予選では各クラスがA・Bグループに分かれ2回ずつタイムアタックを行い、上位36人が決勝進出、さらに敗者復活戦で4人が加わり合計40人で決勝が争われます。


AMAモトクロスとスーパークロスの違い

AMAモトクロスは屋外の自然地形を利用したコースで開催されますが、スーパークロスは野球場やスタジアムに人工的に造られた特設コースで競います。コースレイアウトも大きく異なり、スーパークロスは観客席に囲まれた屋内での迫力ある競技が特徴です。


開催時期も異なります。スーパークロスは1月から5月頃まで、モトクロスは5月から9月頃まで開催され、年間を通じてトップライダーたちが両シリーズを転戦します。


参考)2026 AMAスーパークロス&AMAナショナルモトクロス選…


2023年からは両シリーズの上位者のみが参加できるプレーオフ「スーパーモトクロス選手権」が新設されました。シリーズ賞金総額は約13億円に達し、5年計画で50億円以上という大規模な運営費が話題となっています。


AMAモトクロス選手権の歴史的転換点

1986年にプロトタイプマシンが禁止され、市販車ベースでの参戦が義務付けられました。これによりメーカー間の技術競争が公平化され、プライベートチームの参戦障壁も下がりました。


参考)AMAモトクロスとは - わかりやすく解説 Weblio辞書


1996年には運営が4ストロークエンジンを促進する方針を打ち出し、4ストローク車なら1シーズンに1台のみプロトタイプでの参戦を特別に認可しました。この規制緩和を利用してKTMが選手権史上初めて4ストロークエンジン車でスーパークロスに参戦し、3位表彰台を獲得する快挙を成し遂げました。


1993年までは250クラスと500クラスが前期後期で分かれて開催されていましたが、500ccマシンの商業的衰退により現在の形式に変更されています。当時は前期を250クラス、後期を125クラスに参戦するライダーもおり、ランキングの整合性に問題が生じていました。


日本からAMAモトクロスを観戦する方法

AMAモトクロスの観戦には、現地渡航とオンライン配信の2つの方法があります。現地観戦では数万人規模の観客とともに迫力あるレースを体感できますが、アメリカ各地で開催されるため渡航費用がかかります。


オンライン配信ではヤマハカワサキなどの日本メーカー公式サイトで参戦情報やレース結果が公開されています。YouTubeでもレース映像が公開されることがあり、自宅から気軽に観戦可能です。

2026年のAMAスーパークロスは1月10日のアナハイムから4月25日のフィラデルフィアまで全17戦が予定されており、チケットは各大会の数ヶ月前から販売されます。日本のバイクメーカーが参戦しているレースを狙えば、応援のしがいもあります。

ヤマハ公式AMAモトクロス特設サイト - ライダー情報やマシンスペックが詳しく掲載

日本人ライダーのAMA参戦

下田丈選手の日本人初チャンピオン獲得

2025年、下田丈選手が日本人として初めてスーパーモトクロス250クラスのチャンピオンを獲得しました。Team HRC Progressiveから参戦した下田選手は、最終戦ラスベガスでモト1を完勝、モト2も2位フィニッシュで総合優勝を果たしました。


この快挙により下田選手が獲得した賞金は約3600万円(25万ドル)に達しました。三重県鈴鹿市出身の下田選手は2002年生まれで、幼少期からモトクロスに親しみ、2014年にアメリカへ拠点を移しています。


参考)下田丈がモトクロスの本場、アメリカのスーパークロスで優勝。 …


2021年にはAMAスーパークロス第16戦で日本人初優勝を達成し、その後も着実に実力を高めてきました。スーパークロス選手権では第2戦で左手薬指と小指を骨折しながらも欠場せず参戦を続け、ランキング4位で終えるタフネスぶりを見せました。


参考)AMAプロモトクロス開幕、下田丈好スタートを決め総合2位 -…


AMAモトクロス参戦に必要な費用

プロライセンスの費用は年間500ドル(サービス料15ドル含む)です。レースへの参加費は1ラウンドあたり273ドルで、2週間前に申し込むことで適用されます。


つまり年間約500ドルのライセンス料と1レースあたり273ドルだけで、世界トップライダーと同じ土俵に立てるのです。全12戦に参戦しても年間約4000ドル(約56万円)程度で済みます。


ただしこれは参加費のみで、マシン調達、輸送費、滞在費は別途必要です。ファクトリーチームに所属できればマシンやサポート体制が提供されますが、プライベート参戦の場合は全て自己負担となります。それでも世界最高峰のレースに個人で挑戦できる門戸の広さは魅力的です。


参考)才能を失っていく全日本モトクロスと才能を発掘するAMAモトク…


ファクトリーチーム契約のメリット

ファクトリーチーム契約を得られれば、最新鋭のマシン、専属メカニック、トレーニング施設、遠征サポートなど充実した環境が提供されます。ホンダファクトリーの場合、ローレンス兄弟や下田選手など複数のトップライダーが在籍し、チームワークの良さも活躍を後押ししています。


参考)モトゴシップ|AMA「ホンダファクトリー」2024年チーム体…


アメリカのファクトリー体制では、トップライダーになってから契約する日本とは対照的に、ジュニア時代から才能ある選手を「青田買い」してトップライダーになるまでサポートする方式が主流です。下田選手も2016年に全米アマチュア選手権で日本人初タイトルを獲得後、ホンダのトップチーム「ガイコホンダ」と契約しました。


マシンが走ることでチームスポンサーのアピールになり、ファクトリーライダー以外の選手はファクトリーの席が空くとチャンスと捉えます。契約できなければ食っていける業界ではないため、若手にとって契約獲得は生命線です。


全日本モトクロスとの比較

全日本モトクロスとAMAでは規模とビジネスモデルが大きく異なります。全日本では入賞報奨金が1位10万円、2位7万円、3位6万円程度であるのに対し、AMAは賞金総額が桁違いに大きいのです。


全日本のクラス分けは450がIA1、250がIA2というトップカテゴリー構成で、AMAでは450がSX(スーパークロス)、250がライツクラスと呼ばれます。全日本では450を持っているとオープンクラスにしか出られませんが、250ならどちらのクラスにも出場可能です。


5年前まで全日本チャンピオンがファクトリー契約で海外レースにフル参戦できましたが、現状ではファクトリー契約だけに頼っていては海外挑戦のタイミングが読めません。才能ある若手が全日本から流出する一因となっています。


AMAモトクロス参戦を目指すライダーへのアドバイス

アメリカ参戦を目指すなら、まず全米アマチュア選手権「ロレッタリン」でのタイトル獲得を目標にすべきです。下田選手も2016年にロレッタリンでスーパーミニクラスのタイトルを獲得し、それがファクトリー契約のきっかけとなりました。


英語力とフィジカルトレーニングも重要です。アメリカのトップライダーたちは専属トレーナーとともに高度なトレーニングを実施しており、日本にいながら同レベルの準備をするのは困難です。


資金調達も課題です。プライベート参戦の場合、マシン、輸送、滞在費で年間数百万円は必要です。スポンサー獲得やクラウドファンディングなど、複数の資金源を確保する必要があります。ファクトリー契約を目指すなら、アマチュア時代からの実績作りが不可欠です。


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