

あなたが普段乗っているバイクにブレーキがなかったら転倒します。
FIMアイススピードウェイ世界選手権は、凍結した楕円形トラックで行われるモーターサイクルレースの最高峰です。通常のスピードウェイを氷上で行う競技で、1959年からヨーロッパグランプリが開催され、世界選手権も50年以上の歴史を持っています。
参考)FIM Ice Speedway World Champio…
使用されるマシンは500ccの排気量で、最大の特徴はブレーキが装備されていないことです。ライダーは車体を大きく傾けて後輪をスライドさせながらコーナーを曲がります。クラッチも発進時にしか使用せず、コース上では常にフルスロットル状態で走行するため、技術と度胸が試される過酷な競技なんですね。
参考)https://fim-moto.tv/ice_speedway
レースは楕円形のコースを左回りに4人のライダーが4周走行し、順位を競います。氷の上という極限環境で、転倒は日常茶飯事ですが、それも観客を魅了する要素の一つとなっています。
アイススピードウェイ用のタイヤは、通常のスパイクタイヤとは全く異なる特殊な構造をしています。タイヤ表面には釘のようなトゲトゲが無数に打ち付けられており、その長さは約28mmにも達します。参考までに、28mmというとおおよそ500円玉の直径と同じくらいの長さです。
スパイクの本数は300本以上装着されており、これが高速回転することで氷に深く食い込み、驚異的なグリップ力を生み出します。一般的な自転車用のスパイクタイヤでさえ304本程度のピンが使われていますから、モーターサイクル用はさらに多くのスパイクが必要になるわけです。
参考)SCHWALBE ICE SPIKER-(新潟の自転車のプロ…
このスパイクタイヤが体に接触したら大怪我は避けられません。そのため、アイススピードウェイ用マシンには地面近くまで覆う大きなフェンダーが装備されています。タイヤを超高剛性タングステンとスチールを合わせた素材で作られたピンが、固い凍結路面にもしっかりと刺さり、ライダーの命を守りつつ高速走行を可能にしているということですね。
2026年のFIMアイススピードウェイ世界選手権は、主にヨーロッパの寒冷地域で開催されます。参加国はロシア、フィンランド、スウェーデン、ドイツ、オランダなど、氷点下の気温が続く国々が中心です。
具体的な開催スケジュールは、1月31日にスウェーデンのエルンシェルツヴィークで予選ラウンド、3月14-15日にドイツのインツェルで決勝第1戦・第2戦、4月11日にオランダのヘーレンフェーンで決勝第3戦が予定されています。翌日の4月12日には同じくヘーレンフェーンでFIMアイススピードウェイ・オブ・ネーションズも開催されます。
日本では氷点下が続く期間が短く、適切な会場も限られるため、残念ながら国内での開催実績はありません。参加する日本人ライダーもほとんど存在せず、国内での認知度は極めて低い状況です。しかし、オンラインストリーミングサービス「FIM-MOTO.TV」では、全レースがライブ配信されており、日本からでも観戦が可能になっています。
氷上とはいえ、アイススピードウェイのスピードは想像を超えます。小さな楕円コースを5周するタイムはわずか32秒という驚異的な記録が出ています。これは平均速度に換算すると時速100kmを優に超える計算です。
参考)【氷上全開】氷の上を横滑りしながらレースする「アイススピード…
ライダーたちは氷の上だろうと関係なくフルバンクで攻め込み、コーナーではケツを流しっぱなしの状態が続きます。立ち上がってもすぐ次のコーナーなので、ほぼドリフト走行を維持したまま走り続ける状態ですね。普通のライダーが同じコースを走ったら数秒でコケると言われるほど、プロならではの技術が要求されます。
転倒は避けられず、スッテーンと勢い良く飛んでいったライダーが氷の上を滑り続けて壁まで止まらない光景も日常的です。それでも観客は大盛り上がりするのがこの競技の不思議な魅力です。ちなみに、氷上の最高速度記録としては、ベントレーの市販車が氷雪路で193km/hを記録した例もあり、バイクでも条件次第で150km/h以上は十分可能と推測されます。
参考)氷雪路で最高速193キロ!ベントレー・フライングスパー・スピ…
普段アスファルトを走っているバイク乗りこそ、アイススピードウェイを観るべきです。なぜなら、この競技はライディングテクニックの限界に挑戦する姿を目撃できるからです。ブレーキなしで氷上を攻める技術は、通常のライディングでは絶対に体験できない領域ですね。
特にスライドコントロールの技術は圧巻です。ライダーたちは車体を極限まで傾け、後輪を横滑りさせながらも完璧にラインをトレースします。この技術は、雨天走行やオフロード走行でのスライドコントロールにも通じる部分があり、観察することで自分の走りにもヒントが得られるかもしれません。
また、アイススピードウェイを観ることで、タイヤグリップの重要性を再認識できます。スパイクタイヤという特殊装備があってこそ成立する競技を見れば、普段何気なく走っている路面でのグリップがいかに貴重かが理解できるはずです。日本のバイク乗りにとって、冬季の凍結路面は最も避けるべき危険ですが、プロがどのように氷上でグリップを作り出しているかを学ぶことは、安全意識を高める良い機会になりますよ。
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ブレーキがないという設計は一見危険に思えますが、実は競技特性に合わせた合理的な判断です。氷上では急制動をかけるとタイヤがロックしてコントロールを失うため、ブレーキは逆に危険な装備になります。そのため、ライダーは車体の傾斜とスロットル操作だけで速度調整を行います。
マシンのフロントサスペンションには、本場のスピードウェイレーサーと同じボトムリンク式の一種が採用されています。これは激しい横方向の力に耐え、氷上での安定性を確保するための特殊な機構です。各ライダーが独自の改造を施しており、マシンごとに異なるスタイルとデザインになっているのも見どころの一つですね。
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安全装備として最も重要なのが、大きなフェンダーです。これはタイヤのスパイクが他のライダーや自分の体に接触するのを防ぐガードの役割を果たしています。転倒時には体が氷の上を滑り続けるため、ライダーは厚手のレザースーツと強固なプロテクターを着用します。氷上という特殊環境だからこそ、一般的なロードレースとは異なる安全思想が必要なんです。
通常のスピードウェイは土や砂のダートトラックで行われますが、アイススピードウェイは完全に凍結した氷上が舞台です。この路面の違いが、使用するタイヤや走行技術に大きな差を生み出しています。
通常のスピードウェイ用タイヤは比較的平らな表面ですが、アイススピードウェイでは28mm級の長いスパイクが必須です。また、通常のスピードウェイでは土を掘り起こしながら走るのに対し、氷上では氷を削りながら走行するため、スパイクの強度と配置が極めて重要になります。
レース展開も異なります。土のトラックでは路面状況がレース中に変化しますが、氷上では基本的に一定の条件が保たれます。ただし、気温の変化や氷の削れ具合によって微妙にグリップが変わるため、ライダーは常に路面状況を読み取りながら走る必要があるんですね。
もう一つの大きな違いは開催地域です。通常のスピードウェイは世界中で開催されますが、アイススピードウェイは寒冷地域に限定されます。この地域限定性が、競技の希少価値を高めているとも言えます。
日本からFIMアイススピードウェイ世界選手権を観戦するには、オンライン配信が最も現実的な方法です。公式ストリーミングサービス「FIM-MOTO.TV」では、全レースがライブ配信されています。
配信パスには複数の種類があります。シーズン全体を観戦できる「Ice Speedway Gladiators - SEASON PASS 2026」、特定会場のみの「Inzell Livestream Pass」、予選ラウンドのみの「QUALIFIER PASS」などが用意されており、予算や興味に応じて選択できます。
現地観戦を希望する場合、最も行きやすいのはオランダのヘーレンフェーンです。4月開催のため比較的温暖な時期で、アムステルダムから電車でアクセス可能な立地です。ドイツのインツェルも観光地として知られており、レース観戦と合わせてヨーロッパ旅行を楽しむのも良いでしょう。
観戦の際は防寒対策が必須です。会場は氷点下の環境なので、ダウンジャケット、手袋、帽子は必ず持参してください。カイロやブランケットもあると快適に観戦できます。また、レース中は氷の破片が飛散することもあるため、観客席でも保護メガネがあると安心ですよ。
アイススピードウェイの歴史は1959年のヨーロッパグランプリから始まりました。世界選手権も50年以上継続しており、寒冷地のモータースポーツ文化として深く根付いています。
2026年の予選ラウンドでは、ベテランのフランツ・"フランキー"・ゾルン(Franz Zorn)、アキ・アラ=リーヒマキ(Aki Ala-Riihimäki)、ヨハン・ウェーバー(Johann Weber)が表彰台を独占しました。特にゾルンは「Maximum man」と呼ばれ、経験値の高さが勝利の鍵となったと報じられています。
ウェーバーは2022年シーズンのリーディングスコアラーで、ファイナル3終了時点で43ポイントを獲得し首位に立っていました。ロシア出身のニキータ・ボグダノフ(Nikita Bogdanov)も40ポイントで僅差の2位につけており、熾烈なタイトル争いが繰り広げられています。
参考)FIM Ice Speedway Gladiators Wo…
フィンランドのマックス・コイブラ(Max KOIVULA)も注目選手の一人です。北欧勢は幼少期から氷上でのライディング経験があり、この競技で圧倒的な強さを見せています。彼らの技術は何十年もの伝統の中で磨かれてきたもので、一朝一夕では習得できないレベルに達しているんですね。
参考)FIM Ice Speedway World Champio…
日本でアイススピードウェイが普及しない最大の理由は、適切な開催環境の不足です。競技には数ヶ月間安定して氷点下が続く気候と、十分な広さの凍結トラックが必要ですが、日本でこの条件を満たす地域は北海道の一部に限られます。
また、参加ライダーの育成も困難です。北欧では子供の頃から氷上バイクに親しむ文化がありますが、日本にはそうした土壌がありません。スパイクタイヤ付きバイクで氷上を走行する練習環境を確保するだけでも莫大なコストがかかります。
さらに、マシンや装備の入手も問題です。アイススピードウェイ専用のマシンは国内で販売されておらず、ヨーロッパから輸入する必要があります。28mm級のスパイクタイヤも特注品で、一般的な流通ルートでは入手できません。
ただし、自転車用のスパイクタイヤなら日本でも購入可能で、冬季の凍結路面対策として北海道では実際に使用されています。シュワルベ社のアイススパイカープロなどは、304本や361本のピンを装備し、スケートリンクのような路面でもしっかりグリップすると報告されています。バイク乗りでも、冬季に自転車でスパイクタイヤの感覚を体験してみると、アイススピードウェイの凄さがより理解できるかもしれませんね。
参考)スパイクタイヤは本当に氷の上でも滑らない??スケートリンクの…
FIM Ice Speedway World Championship公式サイト
最新のレーススケジュールと結果が確認できる公式情報源です。
FIM-MOTO.TV アイススピードウェイ配信ページ
全レースのライブ配信とアーカイブ視聴が可能な公式ストリーミングサービスです。
氷の上を猛スピードで走るトラックレーシング!アイススピードウェイの魅力
競技の基本ルールとマシン構造について詳しく解説されている日本語記事です。