ブレーキの発熱とバイクの物理現象|フェード・ベーパーロック・適正温度

ブレーキの発熱とバイクの物理現象|フェード・ベーパーロック・適正温度

ブレーキの発熱とバイクの物理現象

冷たいブレーキは実は効いていない

この記事のポイント
🔥
ブレーキは摩擦熱で効く

運動エネルギーを熱エネルギーに変換することで制動力を発揮し、適正温度に達して初めて本来の性能が出ます

⚠️
過熱でブレーキが効かなくなる

フェード現象やベーパーロック現象により、ブレーキが突然効かなくなる危険性があります

🛠️
引きずりによる異常発熱

ブレーキの固着により常時ブレーキがかかった状態になり、ホイールが異常に熱くなることがあります

ブレーキの発熱はバイクの運動エネルギー変換


バイクのブレーキは、走行中運動エネルギー熱エネルギーに変換することで減速します。ディスクブレーキの場合、ブレーキパッドがディスクローターに押し付けられて摩擦が発生し、その摩擦熱でパッドとローターが高温になるのです。


この物理現象は避けられません。


走行速度が速いほど、また車体が重いほど運動エネルギーは大きくなり、それを止めるために発生する熱量も増加します。サーモグラフィーカメラで撮影すると、ブレーキを掛けた後のブレーキ部分が赤く光って見えるほど高温になっていることが確認できます。


タイヤも同時に発熱しています。


ブレーキをかけると前輪に荷重がかかり、パッドとローターの摩擦だけでなく、タイヤのトレッド路面との摩擦も増えるため、両方の温度が上がります。特にリアブレーキは走行風が当たりにくいため、フロントブレーキよりも熱がこもりやすい構造になっています。


この熱の発生は正常な制動の証拠ですが、過剰な発熱は危険な現象を引き起こします。


ブレーキパッドの適正温度と効き始める温度域

ブレーキパッドには適正温度があり、その温度範囲で最も効率的に機能します。一般的な街乗り用のパッドは0〜100℃が適正温度とされており、特に100℃前後で本来の性能を発揮します。


冷たいブレーキは本当に効いていないんです。


実はディスクブレーキが冷たいうちは摩擦熱も発生しておらず、制動力として十分に効いていない状態です。ディスクローターは外周に近いほど速度が高くなるため、ブレーキパッドとの摩擦熱もすぐに上昇する関係にあります。


参考)ブレーキは熱くなってから効く!?【ライドナレッジ042】


スーパースポーツのような高性能マシンほど、フロントのディスクブレーキ径が大径に設定されているのは、よく効くからというだけでなく、レスポンスを高めるために摩擦熱で温度を上昇させやすくする役割があるのです。


用途別の適正温度は以下の通りです。


  • 街乗り用: 0〜100℃(フェードポイント300〜350℃)
  • ワインディング: 200〜500℃(フェードポイント500〜700℃)
  • サーキット用: 300〜800℃(フェードポイント800℃以上)

一般的なステンレス製ブレーキディスクの最適動作温度範囲は350〜550℃程度とも言われており、ブレーキの効率が最も良いのは370℃という説もあります。


参考)https://www.imotorcycle.jp/pages/pt-brake-disc-radiator


この温度を意識することで、ブレーキの性能を最大限引き出せます。


フェード現象によるブレーキの効き低下

フェード現象は、ブレーキパッドが過熱して摩擦係数が低下し、ブレーキが効きにくくなる現象です。長い下り坂でブレーキを頻繁に使いすぎると、パッドとディスクの摩擦によって発生した熱でパッドが高温になり、表面が炭化したり摩擦材が変質したりします。


レバーの手応えはあるのに止まらない。


フェード現象の特徴は、ブレーキレバーを握っている手応えはあるのに、ブレーキが効きにくくなることです。これは後述するベーパーロックとは異なり、レバーやペダル入力に対する反発は失われません。


ドラム式ブレーキでは特に起こりやすく、ブレーキシューが摩擦を加えることによりドラムケース内で摩擦熱が発生し、密閉されたドラムケース内に熱がこもるためです。


参考)https://www.goobike.com/magazine/ride/technique/42/


街乗り用のブレーキパッドは、フェードポイントが300〜350℃に設定されています。この温度を超えて運転を続けると、ブレーキが利きづらくなるなどのトラブルが発生するため、長い下り坂ではエンジンブレーキを主体にして走行することが重要です。


参考)https://www.think-sp.com/2011/08/05/natuno/


ベーパーロック現象によるブレーキ完全喪失

ベーパーロック現象は、ブレーキキャリパー内に満たされているブレーキフルード(液体)が過熱により沸騰することが原因で発生します。フルードが沸騰するとブレーキ経路内に気泡が発生し、気泡がブレーキ圧力を体積変化で吸収してしまうことでブレーキが効かなくなります。


フェードより危険度は上です。


ベーパーロック現象が起こると、まずブレーキレバーを握ったときのレバーの反力が弱くなり、いつもよりレバーが深く入るようになります。同時に制動力も低下していき、それでもブレーキをかけ続けるとレバーの反力が完全になくなり、スカッと空振りしたようにレバーが深く引き込まれます。


ブレーキフルードの沸点は規格によって異なります。


  • DOT3: 乾沸点205℃以上、湿沸点140℃以上

    参考)https://tanikawayuka.co.jp/faq/


  • DOT4: 乾沸点230℃以上、湿沸点155℃以上
  • DOT5.1: 乾沸点260℃以上、湿沸点180℃以上

山道やサーキットでスポーツ走行をするとブレーキパッドの温度は300℃以上になり、この熱がキャリパーを通してブレーキフルードに伝わり、フルードの温度が200℃以上になることがあります。


参考)沸点が低いとなぜ駄目なの?


ブレーキフルードは吸湿性があり、水分を吸収すると沸点が低下します。湿沸点が低下するとベーパーロックやペダルのスポンジー感が発生しやすくなるため、水分管理が寿命を左右します。


参考)https://hitopedia.net/%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%89/


定期的なフルード交換が事故を防ぎます。


ブレーキ引きずりによる異常発熱の危険性

ブレーキの引きずりとは、ブレーキキャリパー内のサビや経年劣化が原因で、ブレーキを踏んでいないのにブレーキが常にかかっている状態になることです。この状態のまま走行すると異常発熱し、フェード現象やベーパーロック現象を引き起こす可能性があります。


走行後にホイールが異常に熱い場合は要注意です。


前後左右、4輪のホイールに触れてみて極端に熱い場合は、その車輪のブレーキが固着しています。氷をホイールに当てると、すぐに溶けるほどの高温になっていることもあります。


参考)【車のホイールが熱い】ブレーキ引きずりの確認方法と修理費用


ブレーキ引きずりの症状は以下の通りです。


  • ホイールの汚れや走行直後のホイールの温度が左右で違う
  • 異常発熱によって焦げ臭いにおいがする
  • スピードを出しても加速しづらい
  • 走行後に片側のタイヤやホイールが異常に熱くなる

ブレーキが常に接触した状態で走行すると、パッドとディスクが過熱し続け、通常の走行では起こらないような高温状態が持続します。これはベーパーロックを引き起こす典型的な原因の一つです。


参考)いわゆるリターンライダーです - 謎のブレーキディスク接触に…


ブレーキの引きずりがあった場合、基本的に部品の交換が必要になるため、すぐにディーラーやバイクショップなどの専門業者に相談してください。ホイールに触れる場合は、ヤケド等しないように注意しましょう。


異常を感じたらすぐに点検が原則です。




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