

ブリッピングを使わずシフトダウンすると、後輪が一瞬ロックして転倒リスクが3倍以上になります。
ブリッピング(Blipping)とは、シフトダウン時にクラッチを切った瞬間、一瞬だけアクセルを煽ってエンジン回転数を引き上げる操作のことです。日本語では「空ぶかし」とも表現されますが、厳密には目的が異なります。単なる空ぶかしではなく、次のギアの回転数に合わせるための「回転合わせ」が本質です。
なぜこの操作が必要なのかを理解するには、ギアとエンジン回転数の関係を知る必要があります。バイクは速度が同じでも、ギアが低くなるほどエンジンの回転数が高くなります。たとえば4速で時速50kmのとき回転数が2,500rpmだとすると、同じ速度で3速に落とすと回転数は3,300rpm前後まで上がります。この差がおよそ800rpm程度あるわけです。
クラッチを切って回転合わせをせずにつなぐと、エンジンと後輪に大きな回転差が生まれます。その結果、後輪に強いエンジンブレーキが一気にかかり、タイヤが一瞬ロック気味になってしまいます。これがシフトショックです。
シフトショックは単なる不快感ではありません。特に濡れた路面やコーナー進入中は、後輪が一瞬でもスリップすると転倒に直結する危険があります。ブリッピングはその危険を回避するための、ライダーにとって欠かせないテクニックです。
教習所では教えてくれない技術ですが、知らないと損する情報です。身につけることで、ライディングの安全性と快適性が大きく変わります。
グーバイク|バイクでシフトダウン・シフトチェンジをスムーズに行う方法(シフトダウンの基礎・ブリッピングの解説)
ブリッピングシフトダウンの手順は、次の4ステップが基本です。慣れてくると全てがほぼ同時に行われますが、最初は一つひとつ分解して理解することが大切です。
| ステップ | 操作内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① ブレーキで減速 | フロントまたはリアブレーキで目標速度まで落とす | シフトダウン前に速度をある程度落としておく |
| ② クラッチを切る | クラッチレバーを握る(完全に切る) | 「ちょん引き」で素早く切るのがコツ |
| ③ アクセルを煽る(ブリッピング) | 「ブンッ」と一瞬だけ軽くスロットルをひねる | 500〜1,000rpm程度を目安に上げる |
| ④ シフトダウン+クラッチをつなぐ | シフトペダルを踏み下げながらクラッチをゆっくり戻す | 雑につなぐとショックが出るので丁寧に |
ステップ③が最も難しく感じる部分です。どれくらいアクセルを煽ればよいかというと、「走っていないときに500回転上げるための空ぶかし」と同程度で十分です。ほんのわずか、グリップをちょっとひねるだけのイメージです。それほど大げさな操作ではありません。
重要なのはスロットルを煽る際にハンドルを手前に引かないことです。グリップを握る力が強いと、アクセルを回す動作がそのままハンドルを引く力になってしまいます。アクセルは手のひら・小指側のお肉で操作するイメージで、人差し指と親指でしっかり固定しながら手首で回すのが正解です。
また、実際の走行中はブレーキをかけながらブリッピングを行う場面がほとんどです。この場合、ブレーキレバーを人差し指と中指の2本でかけながら、残りの指でグリップを保持しつつアクセルを少し煽ります。ブレーキレバーの「遊び」の分だけ手首を返すイメージで、思っているよりずっと小さな動作で実現できます。
操作が同時になることを怖く感じるかもしれませんが、練習を重ねれば自然に身体が動くようになります。これが基本です。
Moto-Connect|ブリッピングシフトダウンのやり方まとめ(シフトペダルから始まる操作の流れと注意点)
「何回転くらいアクセルを煽ればいいのか?」は初心者が最も迷う部分です。結論から言うと、合わせるべき回転数はギアとバイクによって変わります。ただし、基準となる考え方は一つです。
シフトアップしたときに回転数がどれだけ下がったかを把握し、シフトダウン時には逆にその分だけ回転数を上げればよい、というのが原則です。たとえば「4速→5速」でシフトアップしたとき、回転数が3,500rpmから2,700rpmに下がったとすると、その差は約800rpm。5速→4速にシフトダウンするときも800rpm上げればよいわけです。
実際のイメージとしては、こんな感じです。
低いギアほど各ギア間の比率(ギア比)の差が大きく、高いギアほど差が小さくなります。つまり、低いギアでのシフトダウンほどアクセルを多めに煽る必要があるということです。
クシタニ・ライディング・メソッドの解説によると、4速走行中のシフトダウン例では「おおむね3,300回転まで回して回転数を合わせる」操作が紹介されています。これは走行速度・ギア・バイクの特性によって変わりますが、目安として参考になります。
最初は正確に合わせようとしなくて大丈夫です。「少し多めに煽って、音やフィーリングで調整する」という感覚をつかむことのほうが重要です。回転を上げすぎた場合、クラッチをつなぐタイミングで一瞬カンっと小さな衝撃が来る程度で、大きな危険にはなりません。少しずつ自分のバイクのクセを覚えていくのがコツです。
クシタニ・ライディング・メソッド|ショックのないシフトダウン(ブリッピングの回転数合わせの考え方・具体的な操作解説)
ブリッピングは走りながら練習しなければならない、と思い込んでいる人が多いです。しかし実は、停車した状態でも重要な感覚を鍛えることができます。これが独自の視点です。
ステップ1:停車中にアクセルの煽り量を確認する
ニュートラルで停車した状態のまま、アクセルをほんの少しだけ回してエンジンを500回転程度だけ上げる練習をします。タコメーターを見ながら「どれくらいひねれば何回転上がるか」を身体で覚えるのが目的です。かなりわずかな動作で500〜1,000rpm変化することに気づくはずです。驚くほど少ない操作量です。
ステップ2:走行中に「ブレーキなし・直線」でシフトダウンを練習する
次に、直線かつ前後に車がいない状況で、ブレーキをかけずにシフトダウンのみに集中します。②のアクセル操作の感覚をここで実走で確認します。成功するとシフトショックがほぼなく、スコンとギアが決まる感触が得られます。
ステップ3:減速しながらブリッピングを加える
ステップ2が安定してきたら、ブレーキをかけながらのブリッピングを練習します。前後に車がない信号待ちへの減速シーンが最適です。市街地の信号が多いエリアは、実は絶好の練習場になります。
焦って速く動こうとしなくていいです。ブリッピングは「素早さ」ではなく「タイミングと量の精度」が本質です。「ペダルから始まる同時操作」のイメージで、きっかけを作るだけ、という感覚を大切にしてください。
また、アクセルの遊びとクラッチの遊びの調整が、ブリッピングの練習効率に大きく影響します。遊びが多すぎると微妙な操作が伝わりにくく、少なすぎると誤操作につながります。練習を始める前に一度、アクセルとクラッチの遊びを確認しておくと上達が早くなります。
近年のバイクには「アシスト&スリッパークラッチ」が標準搭載されているモデルが増えています。このことで「スリッパークラッチがあればブリッピングはいらないのでは?」と思う方も多いです。これは半分正解で、半分は誤解です。
スリッパークラッチ(バックトルクリミッター)の主な役割は、急激なシフトダウン時に後輪がロックしないよう、クラッチを自動的に滑らせてエンジンブレーキを制限することです。クシタニの解説資料によると、急激な操作によるシフトロックのリスクを大幅に下げてくれる装置です。
ただし、スリッパークラッチがあってもブリッピングを行う価値は十分あります。理由は3つあります。
スリッパークラッチは「あれば安心」なものですが、「あるからブリッピングをしなくていい」ではなく、「あってもブリッピングを覚えておくとさらに安全」と理解するのが正確です。
また、オートブリッパー機能を後付けするパーツも存在します。シフトダウン時に自動でエンジン回転数を合わせてくれる電子デバイスで、電子制御が搭載されたバイクに対応しています。価格帯は製品によりますが、設定や調整がやや複雑なことも覚えておきたいポイントです。スリッパークラッチとオートブリッパーは別の機構なので、装備内容を確認してから導入を検討すると良いでしょう。
バイクライフメディア|アシスト&スリッパークラッチの効果とメリット・デメリット解説(スリッパークラッチとブリッピングの関係性)