

捻挫後に1ヶ月以上フィギュアエイトを巻き続けると、足の土踏まずが潰れて別のケガを招きます。
フィギュアエイト(Figure Eight)とは、英語で「8の字」を意味する言葉です。テーピングの世界では、足首周りにテープを8の字に描くように巻く技法のことを指します。つまり名前そのものが「形」を表しているわけで、一度聞けば動作のイメージがつきやすいのが特徴です。
具体的な巻き方の流れとしては、まず外側のくるぶし(外果)の少し上を起点としてテープを出発させます。そのまま足の甲の上部を通り、内側へと下りてきたら足の裏を横断し、再び外側へ出します。その後、足の甲の上でテープをクロスさせて8の字の交点を作り、アキレス腱を通ってスタート地点に戻ってきたらテープを切って固定します。この一連の動きがちょうど「8」のかたちを描くため、フィギュアエイトと呼ばれています。
目的は足首の関節全体を安定させることです。特に足関節の「内反」(足先が内側に倒れる動き)を制限し、捻挫の予防と再発防止に高い効果を発揮します。バスケットボールやサッカー、陸上など、足首に激しい負荷がかかるスポーツの現場で広く採用されており、アスレティックトレーナーや接骨院・整形外科でも標準的に使われる技術です。
足関節テーピングの基本構成を整理すると、以下のような役割分担になります。
| テクニック名 | 主な役割 |
|---|---|
| アンダーラップ | 皮膚保護・かぶれ防止の土台 |
| アンカー | スターアップなど他テープのベース固定 |
| スターアップ | 内反(内側への捻れ)を直接制限 |
| ホースシュー | スターアップの補強+アキレス腱保護 |
| フィギュアエイト | 足首関節全体の安定化 |
| ヒールロック | かかとの左右ブレ防止 |
フィギュアエイトはこの流れの中で「全体をまとめる役割」を担います。つまり単独で使うよりも、スターアップやヒールロックと組み合わせることで真価を発揮するテクニックです。
バイクに乗る人であれば、停車時や取り回しの際に足首を予期せぬ方向にひねってしまうシーンが珍しくありません。特に重たいバイクを支えながら路面が不安定な場所で踏ん張ったとき、足関節には大きな負荷がかかります。フィギュアエイトの基本的な意味を知っておくだけで、いざというときの対処が大きく変わってきます。
バトルウィン™ テーピングの巻き方基礎編(アンカー・スターアップ・フィギュアエイト・ヒールロックの全解説)
バイクに乗っていると、足首にかかる負担は想像以上に多岐にわたります。停車時のバランス保持、砂利道や傾斜での踏ん張り、低速転倒時の接地。こうした場面で足関節の内反捻挫が起きやすく、バイク事故による足首骨折の代表格である「足関節果部骨折」も、転倒時の着地で関節がひねられることで発生します。
足関節捻挫の再発率は50〜70%と非常に高いことが知られています。これはスポーツ選手に限らず、一般のライダーにも当てはまる数字です。一度捻挫をして靭帯が伸びてしまうと、足首の安定性が低下し、次の捻挫が起きやすい状態が続きます。再発率が高い、ということですね。
バイク乗りにとってさらに問題なのは、普通のスポーツ選手と比べてリカバリー環境が悪い点です。例えばツーリング中に足首を痛めた場合、すぐに病院に行けるとは限りません。出先でのケガになれば、応急処置として正しくテーピングを巻けるかどうかが、そのまま帰宅できるかどうかを左右します。
フィギュアエイトを知っておくメリットは、大きく2つに分けられます。
- 🛡️ 予防として:ライディング前にテーピングを巻くことで、低速転倒や取り回し時の捻挫リスクを低減できる
- 🚑 応急処置として:転倒直後に巻くことで、患部の安定と腫れの抑制を助ける
重症の捻挫(2度損傷)で処置が遅れた場合、ギプス固定が3週間ほど必要になることがあります。3週間バイクに乗れないとなれば、ツーリングの予定がすべてキャンセルになるだけでなく、通勤手段を失う人もいます。テーピングひとつで防げるケガは防いでおくのが原則です。
ザムスト スポーツメディシンライブラリー(足関節捻挫の症状・重症度・復帰期間の詳細解説)
フィギュアエイトを正しく巻くためには、事前の準備と手順を把握することが大切です。いきなり皮膚に直接テープを貼るのではなく、まずアンダーラップと呼ばれる保護用の薄い素材を巻いておくことで、かぶれを防ぎながらテープをはがすときの痛みを和らげられます。
実際に試すとよい完全な手順は次のとおりです。
1. 🩹 アンダーラップを巻く:足首を90度に保ちながら、足の甲から内くるぶしの握りこぶし1個分上まで巻く。シワをつくらないよう少し引っ張りながら巻くのがコツ。
2. 📌 アンカーを巻く:内くるぶしより一握り上の位置に2本、カーブに沿わせて強めに巻く。これが他のテープのベースになる。
3. ⬆️ スターアップを3本巻く:アンカーの内側を起点に、かかとの下を通って外側へ扇状に3本並べる。内反を直接ブロックする最重要テープ。
4. 🔄 フィギュアエイトを巻く:外くるぶしからスタートし、甲の上部を通って足裏へ。再び外側から甲の上でクロスさせ、アキレス腱を通ってスタート位置に戻る。
5. 🔒 ヒールロック(伸縮テープ)を巻く:外くるぶしの上からアキレス腱とかかとを包み込むように巻き、かかとの左右ブレを防ぐ。内側・外側のかかと部分で強く引っ張るのがポイント。
6. 🎀 サーキュラーで仕上げる:スターアップがずれないよう、足首を1周させてアンカーの位置まで巻き上げて完成。
テープの種類について整理しておくと、フィギュアエイトやスターアップには非伸縮テープ(ホワイトテープ)が基本です。非伸縮タイプは伸びない分だけ関節の固定力が強く、捻挫予防と応急処置に向いています。一方ヒールロックには伸縮テープを使うことで、かかとへのフィット感を高めながら固定できます。
非伸縮テープの幅は38mm(約はがきの横幅の3分の1)が標準です。これが基本です。バイクのブーツの中に入れることを考えると、できるだけ薄く・コンパクトに仕上げることも意識しましょう。
巻いた後の確認ポイントも大切なので覚えておいてください。
- 指先にしびれや冷えがある場合は、きつく巻きすぎて血流が圧迫されているサインです。すぐに巻き直してください。
- テープの角は丸くカットしておくと、剥がれにくくなります。
- バイクのブーツを履く際、テープのシワが圧迫点になっていないか確認してから走行してください。
佐藤整形外科(足関節捻挫テーピングの全工程、スターアップ〜フィギュアエイト〜ヒールロックまで解説)
フィギュアエイトには大きなメリットがある反面、使い方を間違えると逆効果になる落とし穴があります。意外ですね。その代表的なリスクが「土踏まず(内側縦アーチ)が潰れる」問題です。
フィギュアエイトは足首の背屈・底屈(つま先を上下させる動き)を物理的に制限します。その結果、足は代わりにショパール関節やリスフラン関節(足の中間部)で踏ん張るようになり、荷重が足の母趾側・内側に集中してしまいます。これが内側のアーチを潰す方向に力が加わる原因です。
内側アーチが過度に沈み込むと、そのアーチを支える「後脛骨筋腱」に過剰な引っ張り力がかかり続け、後脛骨筋腱炎や有痛性外脛骨を悪化させることがあります。痛いですね。これらは足の内くるぶし下や舟状骨周辺に慢性的な痛みをもたらす障害で、一度炎症が起きると回復に時間がかかります。
捻挫のあと1ヶ月以上ずっとフィギュアエイトを続けることは避けましょう。捻挫は通常、きちんと固定すれば3週間程度で安定してきます。その後もフィギュアエイトのような強い固定を続けると、足関節の可動性が低下し、足底のアーチにも悪影響が出てきます。
また、バイク乗りに特有の問題として「ステップ操作への影響」があります。足首の可動域が大幅に制限されると、体重移動やリアブレーキ操作の感覚が鈍くなるケースがあります。これは特に伸縮性の低い非伸縮テープをきつく巻いたときに起きやすく、ツーリング前のコンディション確認が重要になります。
状況別の対応をまとめると以下のとおりです。
| 状況 | おすすめの対応 |
|---|---|
| 転倒直後・捻挫した直後 | フィギュアエイト+スターアップで強固に固定 |
| 受傷後1〜3週間 | 状態を見ながら固定力を維持 |
| 受傷後3週間〜1ヶ月 | 伸縮テープやキネシオテープに切り替え検討 |
| 完治後の予防目的 | 軽い伸縮テープ or サポーターへの移行を検討 |
固定力が必要な場面と、可動性を残したい場面をしっかり区別する。これが条件です。「とりあえず毎回フィギュアエイト」という使い方は、長期的には足にとってマイナスになることを忘れないでください。
脱力集中整体ブログ(フィギュアエイトが土踏まずを潰すメカニズムと後脛骨筋腱炎との関係を詳しく解説)
スポーツ現場での使い方は多数解説されていますが、バイク乗りならではの「使うべきタイミング」はあまり語られていません。実はここに大きな実用的価値があります。
バイクに乗る際の足首への負担シーンは、主に3つに分けられます。まず「取り回しと駐車」。重量100〜200kg以上のバイクを手で押したり引いたりする際、路面が傾いているとバランスを崩して足首を内側にひねるリスクが高まります。次に「低速走行・Uターン」。クランクやUターンでは速度が低く、転倒しても足でバランスを取ろうとするため、着地の衝撃が足首に集中しやすくなります。そして「不整地でのツーリング」。砂利道やオフロード走行では、接地面が不安定で予測不能な方向に足がずれることがあります。
これらのシーンに合わせてテーピングを使い分けると、パフォーマンスを維持しながら保護を得られます。
- 🏍️ 普段のツーリング(舗装路メイン):予防目的なら足首サポーター(フィギュアエイト構造のものも市販されている)で代替可能。毎回テーピングするよりも手軽で経済的です。
- ⛰️ オフロードや林道ツーリング:転倒リスクが上がるため、フィギュアエイト+スターアップのセットで固定力を高めておくのが安全です。
- 🛠️ 直前に捻挫・足首痛がある場合:絶対に無理して走らないことが大前提ですが、どうしても走らなければならない場合は必ずフィギュアエイト+ヒールロックを巻いてください。
また、「テーピングが難しい」と感じる人には、フィギュアエイト構造を応用した市販サポーターが有効な選択肢です。例えば足首を8の字状のベルトで締める設計の製品は、一人でも短時間で装着でき、テーピングと近い安定性を得られます。使い捨て不要で繰り返し使えるため、ツーリングのたびに貼り直す手間も省けます。
テーピングの費用を考えると、非伸縮テープ(38mm幅)は1本約400〜600円程度で、1回のフル固定に1〜2本消費します。仮に月に4回テーピングをすると、月に約1,600〜2,400円のランニングコストになります。長期的なコスト管理の観点からも、「必要な場面でだけ使う」という判断が大切です。
走る前にテーピングを巻く習慣があるライダーは、出発前の5分に「足首の違和感チェック→必要ならテーピング」という流れを組み込んでみてください。小さな習慣が、転倒後2〜3週間バイクに乗れないという大きなロスを防ぎます。これは使えそうです。
洛和会ヘルスケアシステム リハビリテーション(足関節捻挫の重症度分類と再発率50〜70%のデータ解説)