

バイクでどんな山道も走り抜けてきたあなたでも、鉄道に乗り換えると燃料代が年間3万円以上浮く区間が実在する。
久野知美さんは1982年生まれ、大阪府寝屋川市出身のフリーアナウンサーです。立命館大学文学部心理学科を卒業後、大阪でリポーターとしてキャリアをスタートさせました。2008年に上京してホリプロアナウンス室に所属し、その後2022年からはノースプロダクションに移籍しています。
鉄道への愛のきっかけはシンプルなものでした。高校時代、大阪府寝屋川市の自宅から京都府宇治市の高校へ通学するために乗り続けた「京阪電車(旧3000系特急車)」との出会いです。特急なのに特急料金がかからない、2階建て車両あり、カラーテレビ付き座席ありという当時の京阪特急の魅力にどっぷりとハマりました。
「鉄のトライアングル」と自ら名付けたほどの熱狂です。
バイク乗りの方にとっても、こういった「乗り物の深みにハマる感覚」は共感できるのではないでしょうか。エンジン音の違い、車体の挙動、走る景色――そういった細部を愛でる姿勢は、鉄道ファンもバイク乗りも変わりません。久野さんはそれを「鉄道」で体現し、芸能界での確固たるジャンルとして育て上げました。
注目すべきは「女子鉄」という言葉の生まれ方です。当時「鉄子」と呼ばれることを好まなかった久野さんは、自ら「女子鉄(じょしてつ)」という呼称を提唱しました。これが広まり、今では「女子鉄アナウンサー」という肩書きが定着しています。つまり、自分のジャンルを自ら命名し、市場を開拓したのです。これはバイク界でいえば「バイク女子」「ソロツーリスト」といったコミュニティの形成に似ています。
大学時代には全国の放送局の就職試験のために、青春18きっぷで大阪から東京を何度も往復しました。新幹線を使う発想がなかったというほどの「お得好き大阪人気質」と鉄道愛が見事に一致した話は、鉄道ファンのあいだでもよく知られるエピソードです。コスト意識と旅の楽しさを両立させる姿勢は、遠征ツーリングの計画を練るバイク乗りとも重なる部分があるでしょう。
参考:久野知美さんへのインタビュー(国土交通省「白書」特集)
【前編】一つのことを深く知って広がった世界(国土交通省マガジン)
久野知美さんの活動は、テレビ・ラジオの出演にとどまりません。関東私鉄3社の列車自動放送(車内アナウンス)を担当しているという、実用面でも鉄道に深く関わっている点が特筆すべきポイントです。これは実力を認められた証でもあります。
具体的には、東武鉄道のTJライナー(2016年に変更)や北総鉄道の日本語自動放送を担当したことが確認されています。北総鉄道では2018年4月に4言語対応の車内アナウンスを導入した際、日本語担当に選ばれました。毎日、数えきれないほどの通勤・通学客の耳に届いているわけです。これは鉄道ファン冥利に尽きると久野さん自身も語っています。
車内アナウンスは40代で叶えたい夢だったが、30代前半に叶ってしまったと話しています。
また、2020年5月に出演したテレビ朝日「タモリ倶楽部」(「鉄道を制するものが受験を制す!? 中学入試問題vsタモリ電車クラブ」)では、難関中学入試の鉄道問題をその場で全問正解し、日本に24人しかいない「タモリ電車クラブ」正式会員に認定されました。会員番号はNo.24です。これは芸能界でも前例のない快挙といえます。
バイク乗りにとって「車内アナウンス」はなじみが薄いかもしれませんが、実は首都圏の私鉄をツーリング途中で利用した際に、久野さんの声を耳にしている可能性があります。「あ、これが久野アナの声か」と思って乗ると、ちょっとした発見になりますよ。
さらに久野さんは、NHKラジオ第1「鉄旅・音旅 出発進行!」(2019〜2022年)、BS日テレ「友近・礼二の妄想トレイン」、BSフジ「Let'sトレ活!」などに継続的にレギュラー出演しています。2025年10月からはNACK5でポッドキャスト「久野知美のトレ活ラジオ1155」もスタートしています。鉄道情報を耳から取り入れたいなら、このポッドキャストは一度試す価値があります。
参考:北総鉄道の車内アナウンス担当についての詳細
「女子鉄アナ」久野知美さん、北総鉄道の車内アナウンスを担当(乗りものニュース)
久野知美さんが実際に乗車し、おすすめする鉄道路線や観光列車はどれも「乗ること自体が目的」になるものばかりです。これはバイク乗りが「目的地より道中」を楽しむ感覚と、驚くほど近いものがあります。
久野さんが推す観光列車のひとつが、JR九州が2024年4月から運行を開始した「かんぱち・いちろく」です。博多〜由布院〜別府を結ぶ豪華観光列車で、車内では地元食材を使った食事も楽しめます。観光列車といえば「ただ豪華なだけ」と思うかもしれませんが、実は沿線の景色・地元グルメ・車両デザインの三つが一体となった「走る体験型施設」です。これはツーリングで道の駅と絶景スポットを組み合わせる楽しみ方と重なります。
バイクで行けない景色を鉄道は見せてくれます。
また、久野さんが学生時代から愛用している「青春18きっぷ」は、JR全線の普通・快速列車が1日乗り放題(5回分セット)という破格のきっぷです。最大5日間分が利用でき、2025年現在は1回あたり約2,410円程度(1日分換算)という価格設定です。新幹線で東京〜大阪間を往復すれば約3万円かかるところ、青春18きっぷなら約5,000円以下で往復できる計算になります。
| 移動手段 | 東京〜大阪(片道) | 特徴 |
|---|---|---|
| 新幹線(のぞみ自由席) | 約13,870円 | 約2時間30分 |
| 青春18きっぷ(在来線) | 約2,410円(1回分) | 約8〜9時間 |
| バイク(高速利用・ガソリン代含む) | 約4,000〜6,000円 | 約6〜7時間 |
時間はかかっても「旅している感」はバイクや青春18きっぷの独壇場です。バイクツーリングのルート上にJR路線が並走しているなら、帰り道だけ青春18きっぷを使って輪行するという選択肢もあります。
長距離ツーリングの疲れが出た後半、鉄道への「乗り換え」は賢い選択です。
さらに久野さんが取り上げてきたローカル線として、JR只見線(福島〜新潟)、三陸鉄道リアス線(岩手)、ひたちなか海浜鉄道(茨城)なども紹介されています。これらは全て、バイクで走れば間違いなく「絶景ルート」として評価される地域を通っています。鉄道に乗りながら同じ景色を違う角度で楽しめるのは、乗り物好きにとってお得な二度楽しみです。
参考:久野知美さんが乗車した観光列車「おいこっと」の詳細記事
久野知美さんは2018年から精力的に著書を出版しており、2024年現在で6冊以上を刊行しています。著書リストは以下のとおりです。
これらの著書の共通点は「鉄道をただ乗るだけでなく、その背景・文化・ファンコミュニティごと楽しむ」視点を提供していることです。バイク乗りに置き換えると、愛車のメカニズムを知ること、メーカーの歴史を知ること、同じバイクを愛するコミュニティを知ること――そういった「深掘り」が楽しみを倍増させる感覚に近いです。
知識は楽しみを深くします。
特に注目したいのが「タモリ電車クラブ」会員認定の場面でも示された、難関中学の入試問題を全問正解するほどの鉄道知識の深さです。これは久野さんが単なる「好きなだけ」でなく、専門知識として体系的に鉄道を学んでいることを示しています。鉄道路線の歴史、車両の型番、運行ダイヤの構造まで、知れば知るほど面白くなる世界が広がっています。
バイク乗りの方が鉄道に興味を持ちやすいのは「機械としての乗り物」という共通点からです。車両の型番、エンジン(モーター)の世代、車体設計の変化――これらは二輪車の世界と驚くほど似た文化を持っています。久野さんの著書を1冊読むと、その視点が一気に広がります。
参考:久野知美さんの著書紹介ページ
「車両限界」を越えた本 女子鉄アナ久野知美さん著書(乗りものニュース)
バイクで全国を旅するライダーにとって、鉄道は「ライバル」ではなく「パートナー」として活用できる交通手段です。久野知美さんの活動を見ていると、乗り物の多様な楽しみ方が見えてきます。実は乗り物の好きな人ほど、複数の交通手段を組み合わせることで旅の質が上がる傾向があります。
最初のポイントは「疲労の分散」です。ツーリングで長距離を走ると、特に高速道路の連続走行では体幹・腕・首に疲労が蓄積します。1日あたりの適正な走行距離は一般的に300〜400km程度とされていますが、それを超えると集中力の低下が事故リスクに直結します。そこで長距離区間を鉄道(特急や新幹線)に任せ、目的地周辺だけバイクで走るという「バイク×電車」ハイブリッド旅行は非常に有効です。
バイクの積み込みには制限があります。JRの場合、「手回り品きっぷ」制度を使えば折り畳み自転車・輪行袋に入れた自転車は持ち込めますが、オートバイはそのままでは持ち込めません。しかし現在はフェリーとの組み合わせや、ライダーハウス経由での複数日行程で解決するライダーが多くなっています。
次のポイントは「コスト」です。先述の通り、都市間の長距離移動を鉄道に切り替えると、高速道路代とガソリン代を合わせた費用が大幅に削減できる区間があります。たとえば東京〜仙台間をバイク(高速利用)で移動すると高速代だけで約4,500〜6,000円程度かかりますが、新幹線の自由席なら約11,000円です。距離が延びると鉄道がコスト優位になるわけではありませんが、疲労軽減と時間効率を含めたトータルコストで考えると鉄道が有利なケースも増えます。
つまり使い分けが正解です。
3つ目のポイントは「景色」です。バイクで走ると正面から風景を受け取りますが、鉄道の車窓は横から流れる景色を「動く絵画」のように見られます。久野さんが何度もおすすめしているJR只見線(福島〜新潟)は、東京ドーム約700個分(約330ha)の奥只見原生林を車窓から望む路線です。只見川にかかる鉄橋を渡る瞬間の景色は「日本一美しいローカル線」として鉄道ファンから長年評価されています。バイクで近辺の国道252号を走るルートも絶景ですが、川の上から景色を眺める体験は鉄道にしかできません。
鉄道に乗りながらルート研究をするのも、新たなバイクツーリングコース開拓の手法として使えます。久野さんのように「乗り物全般を愛する」視点を持つことで、旅の組み立て方が一段階レベルアップするはずです。
参考:日本のおすすめローカル線・只見線の情報
「JR只見線」が絶景ローカル線ランキング第1位に(楽天トラベル)