

バイクで昔から使われてきた二次電池が、鉛蓄電池タイプのバッテリーです。
正極に二酸化鉛、負極に鉛、電解液に希硫酸を使う構造で、技術として成熟しており大量生産でコストを抑えやすいのが強みです。
価格が比較的安く、寒さで性能が落ちやすいことや重量が重いという弱点はあるものの、発火リスクが低く扱いやすい点から電動二輪や低速EVでも依然として広く採用されています。
二輪の世界では「とりあえず純正=鉛」というケースが多く、特に原付や小排気量スクーターでは鉛バッテリーが標準になっているモデルが今も多数を占めます。
参考)鉛蓄電池とリチウム電池の電気自動車への応用と展望
鉛バッテリーは内部抵抗が比較的大きく、始動時にどっと電流を流す用途に適しており、オルタネーターとの相性も良好です。
参考)次世代電池を使った自転車が登場!?亜鉛二次電池や水素燃料電池…
また、膨れ上がったとしてもリチウムイオンのようにすぐ発火するわけではなく、構造上の安全マージンが大きいと評価されることもあります。
興味深いのは、電動二輪車市場ではリチウム電池の浸透率が依然として1割未満であり、全体の約85%が鉛蓄電池を搭載しているというデータです。
これは、価格・耐久性・リサイクル体制の整備といった現実的な要因が、スペック上の軽さやエネルギー密度よりも優先されている現状を示しています。
ツーリングバイクでも、「長距離で充電環境が読めないなら、多少重くても鉛」という考え方を採るライダーも少なくありません。
リチウムイオンバッテリーは、リチウムイオンの出入りで充放電する高エネルギー密度の二次電池で、バイク用にも普及しつつあります。
鉛バッテリーの約3分の1の重量で、始動性能は約1.5倍、サイクル寿命は4倍程度とされる製品もあり、軽量化と長寿命が大きな魅力です。
スポーツバイク向けには、定置用リチウム電池で培った技術を応用した高安全・広温度範囲対応の始動用リチウムバッテリーが純正採用される例も出てきています。
一方で、リチウムイオンは過充電・過放電・高温・物理的衝撃に弱く、内部ショートが発生すると発火につながるリスクがあります。
参考)なぜリチウムイオン電池に二次保護素子が必要なのか?過電流・過…
このためセル単体だけでなく、BMS(バッテリーマネジメントシステム)や二次保護素子で電流・電圧・温度を監視し、異常時に回路を遮断する多重保護設計が必須です。
また、低温環境ではセルの内部抵抗が増えて「セルが重くなる」ような挙動を示し、冬場の始動性や充電受け入れ性が落ちることも指摘されています。
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バイク用に限ると、軽量化によるハンドリング向上や、高回転エンジンの繰り返し始動に強いといったメリットを狙ってリチウムに換装するケースが多いです。
参考)【バイク初心者向け】リチウムイオンバッテリーでよくある5つの…
しかし、車両側の充電制御がリチウム前提になっていない古いバイクでは、電圧レンジの違いやレギュレーターの制御特性が合わず、寿命を縮めるリスクもあります。
そのため、専用設計の始動用リチウムバッテリーや、対応車種を明示した製品を選び、指定された充電器や取り扱い条件を守ることが重要になります。
参考)HY battEliiy Pシリーズ| エリーパワー株式会社
二次電池の「メモリー効果」は、部分放電と充電を繰り返すことで実際の容量よりも早く電圧降下が起こり、残量があるのに使えないように見える現象です。
ニカドやニッケル水素電池で典型的に見られる現象ですが、リチウムイオン電池にはほとんどメモリー効果がありません。
そのため、現代のリチウムイオン搭載バイクでは「継ぎ足し充電」で寿命が縮むという心配は基本的に不要で、むしろ深放電を避ける方が寿命にとって有利です。
鉛バッテリーについても、「メモリー効果で容量が減る」と説明されることがありますが、実際にはサルフェーション(硫酸鉛結晶の成長)による劣化が主因です。
参考)https://www.baj.or.jp/public_relations/denchi/gu58lf0000000cns-att/denchi0311.pdf
長期間の放置や慢性的な不足充電状態でサルフェーションが進行し、結果として充電しても容量が回復しない状態になります。
自動車・バイク用二次電池の技術資料でも、「部分放電と充電を繰り返した場合の容量低下」についてメモリー効果の説明が添えられていますが、鉛では別メカニズムで起きていると整理されています。
面白いのは、一部のリサイクル業者が「リチウムイオンはメモリ効果がほとんどないため、継ぎ足し充電しても満充電まできちんと充電される点が自動車やバイクに好まれる理由のひとつ」と紹介しているところです。
つまり、現代バイクで「メモリー効果」という言葉を使うとき、多くの場合はニッケル系充電池の話か、サルフェーションなど他の劣化現象と混同されていることになります。
ライダー視点では、「二次電池の種類ごとに劣化のメカニズムが違う」「リチウムはメモリー効果よりも温度・過充電・過放電に注意」という整理をしておくと、トラブルの切り分けがしやすくなります。
二次電池 バイクの寿命は、電池の種類だけでなく充電方法・保管条件・使用頻度に大きく左右されます。
鉛バッテリーでは、数か月の放置で一気に弱ってしまう「放置劣化」が典型的で、自然放電が早いことから、長期間乗らない場合は定期的な補充電やバッテリーメンテナーの使用が推奨されます。
リチウムイオンバッテリーは鉛より自己放電が少なく長持ちしやすい一方、過放電状態で長期間放置するとセルがダメージを受け、充電しても復活しないケースがあります。
温度も寿命に大きく影響します。高温環境では電解液や電極が劣化しやすく、特にリチウムイオンでは高温状態での過充電が発火リスクの増大につながります。
一方、低温環境では鉛もリチウムも化学反応が鈍り、始動性が落ちますが、リチウムは低温で内部抵抗が増え「一時的に使いづらい」状態になることが知られています。
冬場に乗るライダーは、「寒いからこそ一度走り出したら十分に充電される距離を走る」「屋外保管では断熱カバーやガレージ保管を検討する」といった工夫で負担を減らせます。
日常メンテナンスという観点では、二次電池の電圧管理と端子の清掃が基本です。
鉛バッテリーでは、液式の場合は液量チェックと補水、密閉型でも端子のサビ取りと締め付け確認を定期的に行うとトラブルを防ぎやすくなります。
リチウムバッテリーでは、メーカー指定の充電器を使い、完全なゼロ状態までの深放電を避ける「余裕をもった運用」を心がけることが寿命と安全性を両立させるポイントになります。
二次電池はバイクで「使い切った後」も、そのまま廃棄するのではなく二次利用やリサイクルの対象として重要な役割を持っています。
電動車両用のリチウムイオンバッテリーでは、車載用途としての寿命を終えた後に、定置用蓄電システムとして「セカンドライフ利用」するアプローチが研究・実用化されています。
これは、走行用としては劣化したバッテリーでも、住宅や小規模施設でのピークカットや再エネ蓄電用途なら、まだ十分使えるケースが多いという考え方です。
バイク用バッテリー単体でも、鉛蓄電池は長らくリサイクルループが構築されており、回収・破砕・鉛精錬といったプロセスを通じて高いリサイクル率を実現しています。
リサイクル業者は、鉛バッテリーの買取・回収を行い、資源の再利用と適正処理を両立させる仕組みを提供しており、環境負荷の低減にも直接つながります。
リチウムイオンバッテリーについても、資源確保と環境負荷低減の観点から、材料回収・再利用・セカンドライフ利用を組み合わせたサーキュラーエコノミー構築が課題になっています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11099178/
ここでバイク乗りとしての独自視点を挟むなら、「個人レベルの二次利用設計」を意識するのが面白いポイントです。
例えば、電動バイクのパックを直接流用するのではなく、交換時期を迎えた鉛やリチウムの始動用バッテリーを、小規模な12V系の定置用電源(照明・小型ポンプ・DIYの試験電源など)に活用する発想があります。
もちろん安全性や法令に配慮する必要がありますが、「走るための二次電池」が「ガレージライフを支える二次電池」に役割を変えることで、単なる消耗品から資源という見方にシフトできます。
参考)https://www.mdpi.com/2071-1050/16/5/1906/pdf?version=1708940777
さらに一歩踏み込むと、EV用バッテリーのセカンドライフ活用やV2G(車両からグリッドへ電力供給)といった仕組みが進めば、将来的に電動バイクや大型スクーターのバッテリーも家庭や地域の蓄電池として組み込まれる可能性があります。
参考)https://www.mdpi.com/2313-0105/10/5/161/pdf?version=1715691312
実際、欧州ではEVバッテリーの二次利用がエネルギーと資源の安全保障に寄与しうるとの分析もあり、「走るバッテリー」が地域インフラの一部になるイメージが描かれています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10339184/
バイク乗りとしても、「交換したバッテリーをどう終わらせるか」ではなく、「どう次につなげるか」を意識して選び・使い・手放すことが、これからの二次電池 バイク運用のひとつのテーマになっていきそうです。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11222215/
二次電池のリサイクルとメモリー効果に触れている業界資料(自動車用電池技術サービス・二次電池リサイクル委員会の活動概要)
https://www.baj.or.jp/public_relations/denchi/gu58lf0000000cns-att/denchi0311.pdf
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