

転倒して手をついたその部位が、医師に「radial fracture」と言われても意味がわかりますか?
「radial」という英単語は、ラテン語の「radius(ラジウス)」に由来します。この「radius」はもともと「車輪のスポーク(放射状に伸びる棒)」や「半径」を意味する言葉です。英語の「radial」はここから派生し、大きく分けて「放射状の・半径方向の」という意味と、医療分野における「橈骨(とうこつ)の」という2つの意味を持ちます。
医療英語では「radial」は圧倒的に「橈骨に関する」という意味で使われます。橈骨とは、前腕(肘から手首の間)の2本の骨のうち、親指側に位置する骨のことです。その形が放射状に広がる車輪のスポークに似ているとも言われており、語源とうまくつながっています。つまり意味は2つ、でも根っこは同じです。
医療現場で「radial」が含まれる代表的な用語としては以下のものが挙げられます。
- radial artery(橈骨動脈):手首の親指側を流れる動脈。脈拍測定に使われる血管。
- radial nerve(橈骨神経):腕から手の甲にかけて走る末梢神経。
- radial fracture(橈骨骨折):転倒時に手をついたときに起きやすい骨折。
- radial approach(ラディアル・アプローチ):心臓カテーテル検査で手首の橈骨動脈から挿入する手法。
- radial pulse(橈骨動脈脈拍):手首で触れる脈拍のこと。救急場面で頻出。
発音は「レイディアル」です。「ラジアル」とカタカナ表記されることも多く、バイクのタイヤ「ラジアルタイヤ」もこの単語から来ています。ラジアルタイヤのコード(繊維)が放射状に配置されていることが名前の由来です。これは使えそうです。
バイクに乗る方にとって「radial」という単語は、タイヤの種類(ラジアルタイヤ)でなじみ深いはずですが、医療の場では全く別の意味で飛び交っています。緊急時に医師や救急隊員と話すうえで、この語の意味を知っておくことには実際的な価値があります。
参考:英語「radial」の意味と医療用語での使われ方
Weblio英和辞書「radial」の意味・用例一覧
「radial artery(レイディアル・アーテリー)」を日本語にすると「橈骨動脈(とうこつどうみゃく)」です。前腕の親指側(橈骨の走行に沿った側)を手首に向かって流れる動脈のことで、皮膚のすぐ下を走行しています。皮膚に近いのが特徴です。
この「皮膚に近い」という構造的な特徴が、医療の現場で非常に重要な意味を持ちます。具体的には次の2つの用途で日常的に使われています。
まず1点目は、脈拍(radial pulse)の測定です。手首の親指側に人差し指と中指を軽く当てると、ドクドクと脈が感じられます。この脈が橈骨動脈の拍動であり、医療・看護の現場では「radial pulse(橈骨動脈脈拍)」と呼ばれます。バイタルサイン測定における脈拍確認は、一般的にこの橈骨動脈で行われます。救急隊員が倒れた人の手首を触るシーン、見たことがあると思います。あれがまさに radial pulse の確認です。
ただし注意点があります。血圧が60mmHg以下まで低下すると、橈骨動脈では脈が触れなくなる場合があります。そのような重篤な状態では、より太い頸動脈(首の動脈)を確認する必要があります。60mmHg以下は橈骨動脈では危険です。バイク事故などで重傷を負った際、救急隊員が首に指を当てて確認しているのは、まさにこの理由です。
2点目は、心臓カテーテル検査(心カテ)のアクセスルートとしての利用です。これを「ラディアル・アプローチ(radial approach)」または「経橈骨アクセス(transradial access)」と呼びます。心臓の血管を検査・治療するためのカテーテル(細い管)を、手首の橈骨動脈から挿入して心臓まで到達させる方法です。
従来は鼠径部(太もも付け根)の大腿動脈から挿入する方法が主流でしたが、橈骨動脈アプローチにはいくつかの大きなメリットがあります。術後の安静時間が短いため、患者の負担が軽減されます。止血もTRバンドと呼ばれる専用器具で比較的容易です。また、出血合併症のリスクも大腿動脈アプローチに比べて少ないとされています。
参考:橈骨動脈アクセスの詳細と患者向け解説
テキサス心臓研究所「橈骨動脈アクセス」(日本語)
「radial nerve(レイディアル・ナーブ)」は「橈骨神経(とうこつしんけい)」のことです。腕の後面(伸側)を走る末梢神経で、上腕から前腕・手の甲にかけての感覚と、手首や指を「伸ばす」動作(伸展)をコントロールしています。これが傷害されると「下垂手(drop hand)」という特徴的な症状が現れ、手首が上げられない状態になります。
橈骨神経麻痺(radial nerve palsy)は、バイク乗りにとって他人事ではないリスクです。主な原因は以下のとおりです。
- 外傷(骨折・挫傷):上腕骨骨幹部骨折で橈骨神経が直接損傷される。バイク転倒事故での腕の骨折がトリガーになりやすい。
- 長時間の圧迫:ハイウェイなどで長時間同じ姿勢をキープして走ると、腕に不自然な圧迫がかかり神経が圧迫されるリスクがある。
- ハンドルへの持続的な振動や荷重:長距離ツーリングでハンドルに体重をかけ続けると、腕・手首への負担は想像以上に大きくなります。
橈骨神経麻痺になると、手首が下に垂れた状態になり、自力で持ち上げることができなくなります。治療は保存療法が基本ですが、回復には早くても1ヶ月、通常2〜3ヶ月を要します。上腕骨折などを伴う場合は手術が必要になることもあります。
日本整形外科学会の情報によれば、3ヶ月ほど様子を見ても全く回復しない場合や麻痺が進行する場合には手術が必要とされています。3ヶ月が一つの目安です。
ツーリングに長距離出かける前には、グリップ幅やハンドルの高さ・角度の見直しを行うことが予防につながります。また、手のしびれや指の伸展が感じにくい場合には、すぐに整形外科を受診することが重要です。しびれは早期対応が条件です。
参考:橈骨神経麻痺の症状・原因・治療法(日本整形外科学会)
日本整形外科学会「橈骨神経麻痺」症状・病気をしらべる
「radial fracture(橈骨骨折)」の中でも最も頻度が高いのが「橈骨遠位端骨折(distal radius fracture)」、通称コーレス骨折です。転倒したとき、反射的に手を前につく「防御反応」の際に、体重が手首に集中することで橈骨の手首に近い部分が折れます。バイクで転倒した瞬間、ほぼ全員が手をつきます。この骨折の年間発生率は1万人あたり約11〜14人とされており、日常診療で最もよく見かける外傷の一つです。
バイク乗りにとって怖いのは、ヘルメットやプロテクターが守ってくれる部位と違い、手首は保護されにくいという点です。バイク用プロテクターグローブを装着していれば多少の衝撃吸収はありますが、完全に骨折を防ぐことはできません。
骨折後の治療期間と費用についてまとめると、以下のようになります。
| 治療法 | 固定期間 | 全治目安 | 手術費用目安(3割負担) |
|---|---|---|---|
| 保存療法(ギプス固定) | 4〜8週間 | 約3ヶ月 | 比較的安価 |
| 手術療法(プレート固定) | 約3週間シーネ後リハビリ | 約3〜6ヶ月 | 数万円〜十数万円 |
全治3ヶ月というと軽く聞こえますが、利き手の場合はバイクの運転再開はもちろん、仕事・日常生活すべてに影響します。3ヶ月はバイクに乗れない期間です。
骨折を放置した場合には変形して骨が固まる「変形治癒」や、手根管症候群(手の指にしびれや痛みが出る神経障害)が遅発的に起きるリスクもあります。骨折後の放置は絶対にNGです。少しでも手首の腫れ・痛みがある場合は、「いずれ治るだろう」と先延ばしにせず、速やかに整形外科を受診することが重要です。
プロテクターグローブを選ぶ際は、手首部分のハードガードがあるタイプを選ぶことで橈骨骨折のリスクを下げることができます。「CE規格 レベル1/レベル2」の認証を持つ製品が安全基準の目安になります。
参考:橈骨遠位端骨折の治療・リハビリ・後遺症について
千葉市立青葉病院「手首の骨折(橈骨遠位端骨折)」詳細説明
これはあまり語られない独自視点の話です。
バイクに乗っていると、国内外を問わずツーリング中に事故や体調不良に遭遇する可能性があります。そのとき、救急・医療の現場で医師や救急隊員が使う「radial関連フレーズ」を最低限理解しているだけで、状況把握と意思疎通がスムーズになります。海外ツーリング中ならなおさらです。
以下は、医療・救急現場で実際に使われる「radial」含む英語フレーズの早見表です。
| 英語フレーズ | 読み方 | 意味・状況 |
|---|---|---|
| radial pulse present | レイディアル パルス プレゼント | 橈骨動脈の脈あり(バイタル正常圏) |
| no radial pulse | ノー レイディアル パルス | 橈骨動脈の脈なし(重篤状態の可能性) |
| radial fracture | レイディアル フラクチャー | 橈骨骨折 |
| radial nerve injury | レイディアル ナーブ インジャリー | 橈骨神経損傷 |
| radial approach | レイディアル アプローチ | 手首からの心カテ挿入法 |
たとえば、救急隊員が「no radial pulse」と言った場合、それは手首の脈が触れない=かなり深刻な状態であることを示しています。これだけは覚えておけばOKです。
また、もし同乗者や仲間が事故に遭い、自分が最初に現場に居合わせた場合、119番や救急隊員に「手首の脈が弱い(weak radial pulse)」という状況を伝えられるかどうかで、救急対応のスピードが変わることがあります。知識が行動を変えます。
海外ツーリングを計画している方は、英語での医療コミュニケーションの準備として、Googleレンズやポケトークなどのリアルタイム翻訳ツールをスマホに入れておくと実用的です。緊急時に辞書を開く余裕はありません。
参考:救急・医療現場でのバイタルサイン・英語用語解説
消防職員向け救急活動「橈骨動脈での脈拍測定ポイント」

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