

バイクに乗っていて、エンジンを回しすぎたときに「ガガガッ」という音とともに加速が止まった経験はありませんか?それがレブリミッター(回転リミッター)の作動です。レブリミッターとは、エンジンが設計上の限界回転数を超えて破損するのを防ぐために設けられた安全装置のことです。
一般的に、4ストロークエンジンのバイクでは、エンジンの回転数がレッドゾーン(危険領域)に突入する直前、あるいは突入した直後にこの機能が働きます。仕組みとしては主に以下の2つの方法で制御されています。
なぜこのような機能が必要なのでしょうか。それは「バルブサージング」や「ピストンとバルブの干渉」といった物理的な限界を超えるのを防ぐためです。
ホンダの技術解説ページでは、バルブスプリングの設計限界について触れられています。
ホンダ公式:バルブスプリングの技術解説
エンジンが高回転になりすぎると、吸排気バルブの動きがカムシャフトの形状に追従できなくなり、バルブが暴れる現象(バルブサージング)が起きます。最悪の場合、ピストンとバルブが衝突し、エンジンが一瞬で全損(ブロー)してしまいます。レブリミッターは、ライダーが意図せずアクセルを開けすぎたり、シフトダウンでオーバーレブさせたりした際に、この致命的な故障からエンジンを守る「最後の砦」として機能しているのです。
最近の電子制御スロットル(ライド・バイ・ワイヤ)搭載車では、よりスムーズにスロットル開度を調整して回転を抑える高度な制御も行われていますが、基本的には「物理的限界の手前で止める」という役割は変わりません。
サーキット走行を楽しむライダーや、カスタム好きなライダーの間では、「レブリミッターの解除(リミッターカット)」が話題になることがあります。しかし、これには大きなメリットと、それ以上に巨大なデメリットが存在します。
解除の方法
現代のバイクにおけるレブリミッター解除は、物理的な改造ではなく、主にECU(エンジンコントロールユニット)のデータを書き換えることで行われます。
メリット
デメリットとリスク
ヨシムラジャパンなどのパーツメーカーは、レース用CDIなどで回転リミッターを引き上げていますが、これはエンジン内部パーツの強化とセットで考えるべきものです。
ヨシムラジャパン公式サイト
安易な解除は、高額なエンジン修理費という代償を伴うことを理解しておく必要があります。
Youtubeなどの動画で、停車中にエンジンを空吹かしし、レブリミッターに「バンバンバン」と当て続けるパフォーマンスを見かけることがあります。また、ドリフト走行などでは意図的にレブリミッターに当てながらタイヤを空転させることがあります。これを一般のライダーが真似することに問題はないのでしょうか?
結論から言うと、意図的にレブリミッターに当てる行為はエンジンに極めて有害です。絶対に避けるべきです。
理由は以下の通りです。
レースの世界では、スタート時のローンチコントロールとしてレブリミッターを利用することがありますが、あれはスタートの一瞬だけ、かつ発進に最適なトルクが発生する回転数に制御された特別なモードです。ただ闇雲にレッドゾーンで「当て続ける」行為とは全く別物です。
「レブリミッターがあるから壊れない」のではなく、「壊れる寸前で止めている緊急措置」であることを忘れてはいけません。愛車を長く大切に乗りたいのであれば、意図的なレブリミッター当ては厳禁です。
古い年式のバイク、特にキャブレター車や2ストローク車のカスタムにおいて、「社外CDI(キャパシター・ディスチャージ・イグニッション)への交換」は定番の手法でした。これは現代のECU書き換えに近い意味合いを持ちますが、より手軽にレブリミッターを解除または移行できるパーツとして知られています。
社外CDIの効果
意外な落とし穴
しかし、社外CDIに変えれば必ずしも速くなるわけではありません。ここに意外な落とし穴があります。
バイク用品大手のデイトナでは、CDI交換時の注意点としてプラグの熱価変更などを推奨しています。
デイトナ公式サイト
古い原付スクーター(DIOやJOGなど)の改造でよく行われた手法ですが、エンジン本体がノーマルのままでCDIだけを変えても、駆動系(プーリーやウェイトローラー)のセッティングが合っていなければ最高速は伸びません。トータルバランスが崩れ、燃費が悪化し、寿命を縮めるだけの結果になることも多いのです。CDI交換は、吸排気や駆動系のカスタムと合わせて初めて真価を発揮するパーツだと言えます。
レブリミッターといえば、これまでは「燃料か点火をバッサリ切る」という唐突な制御が主流でした。しかし、近年のスーパースポーツバイクやアドベンチャーバイクに搭載されている最新の電子制御システムでは、レブリミッターの挙動も大きく進化しています。
ライド・バイ・ワイヤによる「ソフトリミッター」
従来のスロットルワイヤーで繋がっているバイクと違い、電子制御スロットル搭載車では、ライダーがアクセルを全開にしていても、コンピューターが判断してスロットルバルブを微妙に閉じることができます。
音の変化
この制御の進化は「音」にも現れています。
カワサキの最新モデルなどに搭載される電子制御技術についての解説でも、こうした統合制御の高度化が見て取れます。
カワサキモータースジャパン:テクノロジー解説
また、一部の高性能車には「ピットレーンリミッター」という機能も搭載されています。これはサーキットのピットロード制限速度(例:60km/h)を超えないように、ボタン一つで低い回転数にレブリミッターを一時的に設定する機能です。これも電子制御スロットルだからこそできる芸当です。
さらに、「レブマッチングシステム(オートブリッパー)」の普及により、シフトダウン時のオーバーレブ(過回転)もシステム側で拒否される、あるいは自動で回転を合わせて回避するようになっています。現代のバイクは、ライダーが意図的に壊そうとしても壊せないほど、レブリミッターを含めた保護機能が賢くなっているのです。
しかし、どれだけ技術が進化しても、機械としての限界点は存在します。最新技術は「限界を超えさせるもの」ではなく、「限界付近でのコントロールを人間が扱いやすくするもの」です。レブリミッターの作動音や挙動の変化を感じ取り、マシンの悲鳴を理解できるライダーこそが、真に速く、安全に走れるライダーと言えるでしょう。