

三元触媒は、排気に含まれるCO(一酸化炭素)・HC(炭化水素)・NOx(窒素酸化物)を、触媒表面の反応で同時に浄化する考え方です。
バイクでも基本は四輪と同じで、排出ガスの性質が極端に違うわけではないため、三元触媒を成立させるには空燃比制御が前提になります。
ポイントは「理論空燃比(ガソリンで約14.7)付近を行ったり来たりさせる」ことです。
参考)三元触媒とは?理論空燃比でCO、HC、NOxを同時に浄化する…
この領域だと、酸化(CO/HCを減らす)と還元(NOxを減らす)を両立しやすく、三元触媒が最も“仕事をしやすい状態”になります。
実車では、常に理論空燃比固定では走れません。全開付近ではパワー優先でリッチ(例:12.5~13.0)に寄せるなど、走行領域で空燃比が変わるため、触媒が効きやすい時間をどれだけ作れるかが重要になります。
そのため近年の二輪排ガス対策は「電子制御燃料噴射+三元触媒+O2センサ」が中心、という整理がしっくり来ます。
参考)https://www.env.go.jp/council/former2013/07air/y071-49/mat03.pdf
(仕組みの根拠リンク:三元触媒がCO/HC/NOxを同時浄化し、理論空燃比やO2センサー制御が前提になる話)
三元触媒とは?理論空燃比でCO、HC、NOxを同時に浄化する…
日本では二輪の排ガス規制が強化され、平成18・19年規制などをきっかけに技術導入が進みました。
当時の背景として、試験方法の見直し(ホット→コールドスタートを含む方向)などもあり、達成時期も排気量区分で段階適用された経緯があります。
この流れの中で、二輪も電子制御や三元触媒などが一般化し、現行技術を適切に評価するモード(過渡サイクル、WMTC検討など)も議論されてきました。
参考)中央環境審議会大気環境部会自動車排出ガス専門委員会(第45回…
つまり「三元触媒が付いている/いない」は、単なる装備差ではなく、年式・規制世代・制御方式まで芋づる式に関わってくるポイントです。
社外マフラーを選ぶときも、規制適合の考え方が絡みます。現行の排ガス規制が平成11年規制・平成19年規制に分けて説明され、機種によって例外がある(触媒機能を持たない純正など)ことも示されています。
参考)マフラー規制
「この車種は触媒前提か」「そもそも純正に触媒がない世代か」を取り違えると、パーツ選びも説明資料の要否も一気にややこしくなります。
(規制の背景リンク:国の委員会資料で、二輪の規制強化・試験方法・技術導入がまとまっている)
中央環境審議会大気環境部会自動車排出ガス専門委員会(第45回…
三元触媒は“永久に同じ性能”ではなく、使い方や経年で浄化性能が落ちます。
実験報告では、新品の三元触媒に交換することでHC/NOx/COが50%以上減少した、つまり劣化が排出ガス増加に直結しうることが示されています。
体感側でよく話題になるのが「詰まり」です。詰まりは排気抵抗を増やし、回転が上がらない、伸びが悪いなど“パワー感がない”方向に出やすいとされます。
参考)パワー感の無い原因は触媒の詰まり。滅多に無いですがゼロではあ…
また触媒が異常高温になって赤熱する例も報告されており、失火などで未燃ガスが流入して触媒内で反応・発熱が増えると、熱的に危険側へ振れることがあります。
ここで重要なのは、触媒が悪いのか、触媒を壊す側(失火、燃調ズレ、点火系不良など)が先にあるのかを切り分ける視点です。
詰まり・高温化は「走りが重い」だけで終わらず、周辺部品や熱害のリスクにもつながるので、放置より“原因の特定”が得です。
(劣化の根拠リンク:新品交換で排出量が大きく下がる=使用過程の劣化が効いていることを示す資料)
https://www.tokyokankyo.jp/kankyoken/wp-content/uploads/sites/3/2019/10/2-5.pdf
三元触媒を活かすための実務は、空燃比フィードバック制御とO2センサーの組み合わせです。
O2センサーは排気中の酸素濃度を見て、理論空燃比付近に戻すための情報源になります。
さらに排出ガス低減技術の車上診断(OBD)では、触媒劣化や酸素センサ不良などが診断対象として整理されています。
参考)技術解説−排出ガス低減技術の車上診断(OBD)(2)
国交省資料にも、触媒劣化の診断は劣化触媒(または模擬)に交換する等で再現して行う、といった診断の考え方が記載されています。
参考)https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/B115.pdf
「センサーが壊れたら交換」で済むケースもあれば、触媒の劣化やエンジン側不具合が絡み、修理が大きくなる可能性がある、という注意点もあります。
バイクだとセンサーが1本構成の車種もありますが、考え方としては“触媒を成立させる計測と制御が崩れると、触媒も一緒に苦しくなる”と理解しておくと判断が速いです。
(OBDの根拠リンク:触媒劣化、失火、O2センサ不良などの診断項目の整理)
技術解説−排出ガス低減技術の車上診断(OBD)(2)
検索上位だと「詰まり」「規制」「仕組み」は多い一方で、意外と抜けがちなのが“被毒(触媒の表面が汚れて効かなくなる)”の考え方です。
大学リポジトリ資料では、被毒劣化として燃料やエンジンオイルに含まれる硫黄・リン・亜鉛・鉛などが触媒上に堆積または化学反応し、浄化機能が低下する現象が述べられています。
触媒側の専門資料でも、熱劣化に加えて潤滑油成分(例:リン)による被毒劣化が問題になり、リンが酸素貯蔵材(CeO2-ZrO2系など)の機能を落としうる、といったメカニズムが説明されています。
参考)https://catsj.jp/wp/wp-content/uploads/2021/01/55d0eb2f07e3a0bdd78e5bad7b470d5e.pdf
要するに、エンジンがオイルを燃やす状態(オイル消費が多い、ブローバイが強い等)や、添加剤由来の成分が多く触媒へ行く状態だと、詰まりとは別ルートで“効きが悪い触媒”になり得ます。
参考)O2センサーが故障したときの症状、交換費用について整備士が解…
もう一つの盲点が「短距離・低負荷ばかりで温度が上がらない」運用です。三元触媒は温度が上がって初めて反応が立ち上がるので、チョイ乗り中心だと“効く時間が短い”ことが起きます。
参考)三元触媒コンバーターの故障の理由-ニュース-義烏ジョニー自動…
このとき、燃調が濃い・失火気味・暖機が終わらない、といった要素が重なると、触媒の負担は増えやすく、結果として劣化や異常高温側のリスク評価も変わります。
現実的な対策は「いきなり触媒交換」より、まず次を点検して原因を一段ずつ潰すことです。
✅ 点検の優先順(目安)
参考)https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/2002094/files/K-07235.pdf
(被毒の根拠リンク:硫黄・リン等が触媒に堆積/反応して浄化機能が落ちる説明)
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/2002094/files/K-07235.pdf