

バイクで滑走路をF-14と並走するあのシーンを見て、「トップガンに登場する戦闘機のことをもっと知りたい」と感じたライダーは多いはずです。
「f17 戦闘機 トップガン」で検索したあなたは、もしかすると「F-17という戦闘機が映画に登場した」と思っていないでしょうか。実はそうではありません。正確には「YF-17」という試作機が存在し、これがのちにトップガンを彩るF/A-18「ホーネット」の原型機となったのです。
YF-17は、ノースロップ社がアメリカ空軍の軽量戦闘機(LWF)計画向けに開発した機体で、愛称は「コブラ」。1974年ごろ、ジェネラル・ダイナミクス社のYF-16と競争試作に臨みましたが、空軍に選ばれたのはYF-16の方でした。YF-16は後にF-16「ファイティングファルコン」として世界的なベストセラーへと成長します。
つまり、YF-17は空軍には不採用だったのです。これが原則です。
ところが話はここで終わりません。「捨てる神あれば拾う神あり」とはよく言ったもので、アメリカ海軍が次世代艦上戦闘機の候補としてYF-17に注目します。海軍は同時期にNACF(海軍航空戦闘機)計画を進めており、空軍の競争試作機から選ぶことにしたのです。そして海軍がYF-17を選んだ決め手は「双発エンジンによる信頼性の高さ」でした。単発のYF-16に対し、エンジンが1基止まっても飛べる双発構成は、洋上を飛ぶ艦載機にとって死活問題だったからです。
その後、艦載機として運用できるよう着陸脚の強化、アレスティングフックの増設、翼の折り畳み機構の追加などの改修が行われ、マクドネル・ダグラス社(現ボーイング)との共同開発によって1978年に初飛行。こうして誕生したのが、映画『トップガン マーヴェリック』(2022年)でもおなじみのF/A-18「ホーネット」です。
「F/A」という型式名も興味深いポイントです。当初は対空戦闘用の「F-18」と対地攻撃用の「A-18」を別々に開発する予定でしたが、アビオニクス(航空電子機器)の進化によって1機で両方の任務をこなせることが判明し、ファイター(F)とアタッカー(A)を統合した「F/A-18」という型式になりました。つまり一機二役ということですね。
YF-17がF/A-18に進化した一方で、1986年公開の映画『トップガン』(第1作)で主役を務めた戦闘機はF-14「トムキャット」でした。このF-14こそ、バイク乗りがトップガンと聞いてまず思い浮かべる機体ではないでしょうか。
F-14の最大の特徴は「可変後退翼」です。低速時は翼を大きく広げて揚力を稼ぎ、高速飛行時は後ろへ折り畳んで空気抵抗を減らします。その翼幅は広げると約19.5m(バスケットコート幅とほぼ同じ)、畳むと約11.4mまで縮まります。この仕組みはコンピューターが速度に合わせて自動制御するため、パイロットが特別な操作をする必要はありませんでした。
映画の中でF-14が墜落するシーンがありますが、これは実際のF-14初期型が抱えていた2つの弱点——「フラットスピンからの回復困難」と「スロットル操作でエンジンが停止しやすい」——を忠実に再現したシーンだと、航空軍事評論家の関賢太郎氏は指摘しています。リアルですね。
さて、そのF-14が2006年にアメリカ海軍から退役したことはご存じでしょうか。生産されたのは712機。現在もF-14を運用しているのは世界でイランだけという状況になっています(2025年時点で依然イラン空軍のみが保有)。映画のアイコンとなった機体が実はアメリカではもう飛んでいない、というのは少し寂しい話です。
一方、映画の敵役として登場した「MiG-28」も有名ですが、この機体は架空の機体です。実際の撮影に使われたのは、アメリカ海軍が仮想敵機として運用していた小型で安価なF-5「タイガーII」に黒い塗装を施したもの。ソ連のミグ戦闘機のように見せるための「仮面」だったわけです。
▶ トップガン「MiG-28」の正体——実はF-5だった映画の裏側(乗りものニュース)
2022年公開の続編『トップガン マーヴェリック』では、主役の座をF/A-18E/F「スーパーホーネット」が受け継ぎました。世界興行収入は約14億9000万ドル(約2兆円超)、日本国内だけでも137億円超という歴史的大ヒットとなり、トム・クルーズ主演作の日本歴代1位を記録しています。
スーパーホーネットは、初代F/A-18「ホーネット」の設計を継承しつつ機体を全体的に大型化した発展型です。主翼を大きくすることで低速時の旋回性が向上し、燃料搭載量も増えて初代の弱点だった航続距離の短さが改善されました。1人乗り(E型)と2人乗り(F型)があり、映画ではF型の後部座席にIMAXカメラを搭載して迫力ある空中撮影を実現しています。
撮影のために海軍が協力した条件も驚くべきものがあります。F/A-18スーパーホーネットの使用料は1時間あたり最高1万1,374ドル、日本円で約150万円。しかもキャストは操縦こそしていませんが、実際に戦闘機の後部座席に乗り込み、本物の空中撮影に臨んでいます。
映画でスーパーホーネットが選ばれた理由の一つは「GPS妨害システムへの対応」という設定でした。劇中では最新鋭のF-35がGPS妨害を受けて機能しない環境で、アナログ的なレーザー照準ポッドを使えるF/A-18こそが適任というストーリーが展開されます。最新型ではなく旧式機が活躍する、というギャップがバイク乗りの心にも刺さる部分があるのかもしれません。
▶ F-14とF/A-18の違い・スーパーホーネット詳細解説(MY J:COM)
「速さへの純粋な憧れ」という点で、バイク乗りと戦闘機パイロットは不思議なほど重なります。これは偶然ではなく、映画『トップガン』(1986年)がその接点を意図的に作り出したからと言えるでしょう。
映画で特に有名なのは、マーヴェリック(トム・クルーズ)がカワサキGPZ900R「Ninja」に乗り、滑走路でF-14トムキャットの離陸と並走するシーンです。このワンシーンがバイクファンの心を完全に撃ち抜きました。GPZ900Rは1984年にデビューしたカワサキのフラッグシップモデルで、908ccの水冷4気筒エンジン、最高出力115馬力、当時の世界最速クラスのスペックを誇っていました。
映画公開後、GPZ900Rの人気は爆発的に上昇しました。バイク乗りが「バイクに乗りたくなる映画ランキング」で『トップガン』は常に上位に入り、アンケートによっては第2位(30票/全体100票換算)を獲得するほどです。1986年当時の10代・20代ライダーたちがこの映画でバイクの魅力に気づき、後のバイクカルチャーを形成していったのは間違いありません。
さらに2022年公開の『トップガン マーヴェリック』では、マーヴェリックが旧作と同じGPZ900R Ninjaに加え、現在の愛車としてカワサキNinja H2で滑走路を疾走するシーンが登場します。歳を重ねても高級車やスポーツカーではなくバイクに乗り続けるキャラクター像は、「速さと自由への純粋な愛」を体現するものとして、現役バイク乗りの心に強く響いたのです。
また、トム・クルーズ自身がバイク愛好家として知られており、P-51マスタング(劇中に登場する第2次大戦機)も彼個人の所有物で、1994年から正式な飛行ライセンスを持っていることが知られています。「映画の世界」と「本人の実人生」が重なる部分が、作品のリアリティを一層高めています。
▶ バイク乗りが『トップガン』に心を打たれる理由・GPZ900Rとの関係(ForR)
ここからはちょっと独自の視点でお話します。YF-17コブラが空軍に「不採用」となりながら、海軍に拾われてF/A-18ホーネットという傑作戦闘機に生まれ変わった経緯は、バイク乗りの感覚に非常に近いものがあります。
バイクの世界でも「一度失敗したように見えた設計が、別の形で復活する」例は数えきれません。たとえば、カワサキGPZ900Rは登場当初、レーサーレプリカブームの陰に隠れたように見えた時期があります。それでも映画『トップガン』という「思いがけない出番」によって復活し、続編映画でも再登場する伝説的バイクになりました。
YF-17がF/A-18になるまでのプロセスを振り返ると、「空軍から海軍へ」という用途変更だけでなく、着陸脚の強化・翼折り畳み機構の追加・エンジン換装など、大きな改修が行われていました。つまり「原型の才能を活かしつつ、用途に合わせて進化させた」ということです。
バイク選びやカスタムにも同じ哲学が使えるということですね。自分のライディングスタイル・使う道・走るペース——これらに合わせて機体(バイク)を選び、必要なら手を加える。YF-17のように「不採用」に見えた選択が、実は最適解だったと気づく瞬間は、バイク乗りなら誰もが経験しているはずです。
🏍️ バイク選びで迷ったとき、自分のスタイルに合ったモデルを探す方法として、国内最大級のバイク比較サービスを活用するのも一手です。「このバイクは街乗りに向かない」と諦める前に、まず自分の「用途」を明確にすることが第一歩です。
トップガンと戦闘機の世界には、バイク乗りが知るとさらに映画が深く楽しめる豆知識がいくつかあります。知らないと損するかもしれません。
まず、映画『トップガン』の舞台となった「トップガン」という組織の正式名称は「海軍戦闘機兵器学校(NSWS:Naval Strike and Air Warfare Center)」で、現在はネバダ州のファロン海軍航空基地に移転しています。1986年当時の舞台はカリフォルニア州サンディエゴ近郊のミラマー海軍航空基地でした。海軍のパイロット上位1%が選ばれる超エリート教育機関で、1969年の設立以来、実戦での空中戦の勝率向上に大きく貢献してきたとされています。
次に、映画で使われる戦闘機のスピードについて。F-14の最高速度はマッハ2.34(時速約2,485km)で、これはカワサキGPZ900Rの最高速度約240km/hの約10倍です。あの並走シーンは演出上のものですが、「どちらも速さを求めた乗り物」という精神的なリンクは本物と言っていいでしょう。
また、映画の撮影ではアメリカ海軍が全面的に協力しており、実際の空母での撮影も行われています。第1作では1985年当時の現役機F-14を使用し、海上での空中戦シーンはすべて実写。CGに頼らない迫力は、今見ても色褪せていません。
さらに余談ですが、映画の中の台詞「マーヴェリック」が自衛隊内でもあまりにも人気になりすぎたため、続編公開後に航空自衛隊では「マーヴェリック」というコールサインの使用が一時制限されたという逸話もあります。映画の影響力がいかに大きいか、ということですね。
最後に、映画を見てトップガンの世界に触れたバイク乗りが「フライトジャケット(G-1)」を手にする例も多いですが、映画本編でマーヴェリックが着用しているG-1には父親の名前と自分の名前、2世代分の功績が刻まれており、「受け継がれるもの」を象徴するアイテムとして深い意味を持っています。バイクも同様に、親から子へ、師から弟子へ受け継がれる文化があります。その点でもトップガンとバイクの世界は深く共鳴するものがあると言えるでしょう。
▶ 映画『トップガン』のリアリティを航空軍事評論家が解説(MAMOR)
▶ 『トップガン』のバイク(GPZ900R)の魅力と車種解説(NewSphere)

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