揚力 バイクの物理現象|高速走行時の危険性と対策

揚力 バイクの物理現象|高速走行時の危険性と対策

揚力 バイクの物理現象

高速でハンドル操作が軽くなるのは揚力のせいです。


この記事の3ポイント
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揚力の発生メカニズム

バイクが高速走行すると車体下面の空気が複雑に滞留して正圧を発生し、車体を持ち上げる揚力が働きます

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安定性への影響

前輪の揚力はハンドル操作を不安定にし、後輪の揚力は走行の安定性を低下させるためタイヤのグリップ力が落ちます

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対策技術

ウィングレットやスポイラーでダウンフォースを発生させることで揚力を打ち消し、タイヤの接地圧を高めて安全性を向上させます

揚力とはバイクを浮かせる空気の力


揚力とは、バイクが走行中に空気の流れによって車体を持ち上げようとする力のことです。高速道路などでスピードを出して走行すると、車体の上下に空気の流れの差が生じ、バイクが浮き上がる現象が起こります。


参考)揚力「リフトフォース」はダウンフォースの敵であり車体を不安定…


飛行機の翼が浮力を得る原理と同じメカニズムです。


バイクの場合、車体下面に流れる空気が複雑な構造や下面に滞留して正圧を発生し、車体を持ち上げてしまいます。この揚力が発生すると、タイヤにかかる面圧が低下し、車体が不安定になるリスクが高まります。特に前輪に揚力が働くとハンドル操作に影響を及ぼし、後輪に働く揚力は走行の安定性を欠如させる問題があります。


参考)揚力と自動車の複雑な関係 ~インド旅客機事故から学ぶ空力技術…


高速走行時の揚力による物理的影響

バイクの速度が上がると、揚力は速度の2乗に比例して増加します。つまりスピードを2倍にすれば、揚力は4倍になるということです。時速100km/h以上での走行中、横風と相まって車体が浮き上がり、操縦不能に陥るケースが報告されています。


特に軽量な車体で頻発します。


MotoGPマシンのテスト結果では、時速200kmで下方向に2kgのダウンフォースを得る必要があり、時速300kmでは約5kgものダウンフォースが必要とされています。一般的な旅客機が離陸する速度は240~300km/hですから、高性能バイクでも揚力を得る十分な速度を持ち合わせています。


揚力が発生すると、タイヤのグリップ力が低下し、車の姿勢と挙動が不安定な状態になります。トンネル出口での急激な空気流変化や、オーバーパス通過時の風の影響で、車体に予期しない揚力が発生するケースも多く報告されています。


大阪工業大学の乗り物の物理資料では、空気抵抗と揚力の関係について詳しく解説されています。

バイクのウィングレットとダウンフォース技術

ウィングレットとは、バイクに装着される小型の翼のような空力デバイスのことです。DUCATIが2016年に他社に先駆けてウィング開発に着手し、ウィリー抑止とフロントタイヤ接地圧向上を狙いました。


ダウンフォースが安定性を高めます。


ダウンフォースとは、飛行機の翼と逆の力、すなわちタイヤを地面に押さえつける負の揚力のことです。翼に当たった風の速度が上と下で異なることによって発生する負圧の力を利用して、下方向の力を発生させます。ダウンフォースが発生することで、車重は増えませんが、タイヤを地面に押さえつける空気の力を手にすることができてグリップ力が向上します。


ストレートでの加速時のウィリーを抑制し、効率的に加速につなげられるという効果があります。MotoGPマシンでもダウンフォースを稼ぐには、ウィングレット面積を拡大するか、速度を高めると大きくなります。カワサキのZX-10Rでは、時速200kmで下方向に2kg、時速300kmでは約5kgものダウンフォースを発生させることに成功しています。


ウェビックのウィング解説記事では、ダウンフォースの仕組みについて図解付きで詳しく説明されています。

揚力とジャイロモーメントの相互作用

バイクが前進している時、前輪は進行方向に回転しており、ふらつくことで重心に対して重力ベクトルがズレた場合、転倒モーメントが発生します。前輪には操舵軸があるので、キャスター角に応じた方向にジャイロモーメントが発生し、転舵されるのです。


車速が上がるほど安定性が高まります。


バイクは前進しているので前輪の接地点が移動し、重心と重力ベクトルが重なり安定状態を獲得します。車速が上がれば上がるほどジャイロモーメントは強くなり、高速ほどバイクは安定することが分かります。MotoGPなどで、転倒してライダーを振り落としたバイクだけが走り続けるのも、前輪のジャイロモーメントによる二輪の特性です。


ただし、揚力が発生すると前輪の接地圧が低下し、このジャイロモーメントによる安定化効果が弱まってしまいます。そのため高速走行時には、揚力によるタイヤ接地圧の低下とジャイロモーメントによる安定性のバランスが重要になります。


重心が低いほど安定性が向上するため、ライダーの姿勢も揚力への対策として重要です。


空気抵抗と揚力のバランス調整

バイクの空力性能は、空気抵抗と揚力の両方をコントロールする必要があります。速度が上がると、空気抵抗は二乗に比例して増加します。エンジン出力には限界があるので、高速域に達するほど、さらなる加速のためには大きなパワーが必要になります。


空気抵抗を減らすと燃費も向上します。


風洞実験などでカウルやスクリーンを微調整したり、部品の突起を減らすだけで数キロ~十数キロの差が出ることがあります。メーカーはレースシーンのデータを市販車にフィードバックしています。スピードを上げるのに必要な馬力は、速度の三乗に近い関数で増えていくとされており、空気抵抗を下げることは加速性能を改善する手段にもなります。


カワサキH2Rのような高性能バイクでは、スーパーチャージドエンジンで最高出力310PS(ラムエア加圧時は326PS)を実現し、計算上351km/hに到達可能とされています。さらに空力デバイスの導入で、走行時の安定性とダウンフォースの生成にも成功しています。レースではスリップストリームに入って相手の後ろを走るテクニックで加速を稼ぐのが典型ですが、これは先行車が受ける風を利用して自車の空気抵抗を事実上下げているようなものです。


参考)カワサキH2最高速の魅力とH2Rが公道走れない理由を解説


平坦で起伏の多い地形では、空力を高めるのが価値があることが研究で示されています。


参考)軽量バイク VS エアロバイク どちらを選択するのがベストで…


揚力対策としてライダーができる工夫

高速走行時の揚力対策として、ライダー自身ができる工夫があります。ライダーの姿勢やカウル形状が空気抵抗に大きく影響し、トップスピードや燃費、ライダーの疲労感を左右します。


低い姿勢が空力を改善します。


まず、タイヤの空気圧を適正に保つことが重要です。空気圧の極端に低いタイヤは、クッション性が低下し、路面からの振動が吸収できなくなります。また、タイヤの空気圧が適正値よりも低い状態で走行し続けると、タイヤのパンクやバーストの原因となり、とても危険です。


参考)突然ハンドルが暴れる!? バイクの「シミー現象」の正体と対策…


次に、タイヤの摩耗状態をチェックすることです。何らかの要因で摩耗が偏った減り方をすると、タイヤの回転に抵抗がかかり、振動が発生します。特にフロントタイヤが偏摩耗した場合に不安定な現象は起こりやすいとされています。


さらに、高速走行時には路面のギャップや凹凸がタイヤに衝撃を与え、タイヤが不規則な回転を起こすことがあります。ステアリングや足まわりの持つ固有の振動数と一致すると、振動がどんどん増幅されます。このような状況では、速度を落として安全運転を心がけることが最善の対策です。


ライダースクラブの二輪運動力学記事では、元ヤマハエンジニアが科学的な視点からライディングを解説しています。




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