スリップストリーム バイクの物理現象と効果・危険性・活用法

スリップストリーム バイクの物理現象と効果・危険性・活用法

スリップストリーム バイクの物理現象

公道で車間を詰めると懲役刑になります。


この記事のポイント
🌪️
空気抵抗を最大30%軽減

前走車の後方に発生する低圧空間を利用することで、同じ速度でもエンジン負荷が大幅に減少します

⚖️
公道での実践は違法行為

効果的な距離まで車間を詰めると車間距離不保持違反となり、高速道路では最大3ヶ月の懲役刑が科される可能性があります

🏍️
レース専用の高度技術

MotoGPでは時速200km超でも活用されますが、公道とは異なる安全管理体制のもとで成立しています

スリップストリームの物理原理と発生メカニズム


バイクが高速で走ると、車体前方で空気が圧縮されて高圧領域が生まれます。この空気は車体側面を通過して後方に流れますが、後部では急激に元の状態に戻ろうとするため、低圧の帯状空間が発生するのです。


参考)スリップストリームって本当に効果あるの?原理や有効距離・速度…


この低圧域がスリップストリームと呼ばれます。


空気抵抗は速度の二乗に比例して増加するため、速度が2倍になると抵抗は4倍になります。時速100kmを超える高速域では、エンジン出力の大半が空気抵抗に対抗するために使われています。


後続のバイクがこの低圧帯に入ると、前方から受ける風圧が大幅に減少します。その結果、同じ速度を維持するために必要なエンジン出力が10~20%程度少なくて済み、余剰パワーを加速に使えるようになるのです。


参考)スリップストリーム(バイク・原理・効果)


スリップストリームがバイクにもたらす効果

スリップストリームに入ったバイクは、空気抵抗が最大で30%程度軽減されます。例えば時速200kmで走行中のバイクが100馬力のエンジンを搭載している場合、スリップストリーム内では90馬力で同じ速度を保てるため、残り10馬力を加速力として使えます。


参考)スリップストリームを活用した効率的なトレインサイクリングテク…


燃費も改善されます。


タイヤに掛かる負荷も減少するため、燃料消費量を抑える効果も期待できます。高速道路でトラックの後方を走行すると、風圧がなくなっていきなり加速したように感じるのは、この物理現象が作用している証拠です。


参考)スリップストリームとは?効果やメリットは?


ただし、効果を実感できるのは時速80km以上の高速域からです。低速域では空気抵抗自体が小さいため、スリップストリームの恩恵はほとんど得られません。


参考)スリップストリーム - Wikipedia


サーキット走行では、GROMのような小排気量バイクでも、スリップストリームに入ると「ツーリング姿勢でだらーっと走っても追いついてしまう」ほどの効果があります。


参考)スリップストリームって難しい~ – 筑波●秒台


バイクでスリップストリームを活用する際の危険性

スリップストリームの効果を得るには、前走車の後輪から数メートル以内という極端に近い距離を保つ必要があります。しかし、公道でこの距離まで車間を詰めると、道路交通法第26条「車間距離の保持」違反となります。


参考)スリップストリームとは?燃費や速度への影響は公道でも存在する…


高速道路での車間距離不保持違反は、二輪車の場合、反則金7,000円と違反点数2点が科されます。さらに悪質な場合は「3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金」という刑事罰の対象になります。


参考)https://www.zurich.co.jp/carlife/cc-whatis-distance-between/


懲役刑は前科になります。


最近では「煽り運転」として扱われる可能性もあり、その場合は最大で懲役5年、罰金100万円、免許取り消しという極めて厳しい処分が下されます。一般道でも反則金6,000円と違反点数1点、さらに5万円以下の罰金が科されます。


参考)ライダーが知っておくべきバイクにおける「あおり運転」の危険と…


追突のリスクも見過ごせません。前走車が急ブレーキをかけた場合、人間の反応時間は約0.2秒ですが、時速100kmでは0.2秒間に約5.6メートル進みます。3メートル以内に接近していれば、反応する前に追突してしまいます。


参考)Reddit - The heart of the inte…


MotoGPでは時速200km超の速度域でもスリップストリームが使われますが、2020年のオーストリアGPでは、スリップストリームによる加速が過剰すぎて回避不能な追突事故が発生しました。プロライダーでさえ制御できない状況が生まれるほど、この技術には危険が伴います。


参考)https://ameblo.jp/kazuto-sakata/entry-12618575089.html


スリップストリームとバイクの空気抵抗の関係

バイクの空気抵抗は、ライダーの姿勢とバイクの形状に大きく影響されます。前方では空気が圧縮されて高圧領域が生まれ、背後には「真空に近い帯状の空間」が発生します。この圧力差こそがスリップストリームの正体です。


後続車はこの低圧帯に入ることで、前方から受ける高圧の風を避けられます。その結果、同じ速度を維持するための出力が少なくて済み、余剰パワーで加速できるようになります。


速度が上がるほど効果は顕著になります。


時速100kmでは空気抵抗がエンジン出力の半分以上を消費しますが、時速200kmではその割合が8割近くまで増加します。このため、高速域ほどスリップストリームによる出力削減効果が大きくなるのです。


レース専用車両の場合、リアウイングの有無でも後方の気流が変化します。ウイングが風を上に跳ね上げると、後続車は風圧を受けにくくなります。しかし、ウイングがない場合は風が下に流れるため、後続車は直接風を受けて空気抵抗が増えます。


サイドスリップという現象も存在します。追い越しや並走時に横にバイクが並ぶと、側面の気流が変化して不安定になるため、レース中でも注意が必要です。


サーキットでのバイクスリップストリーム活用テクニック

サーキット走行では、スリップストリームは戦略的な追い越しツールとして使われます。直線区間で前走車の真後ろに張り付き、コーナー手前で一気に横に飛び出して追い越すのが基本パターンです。


ただし、排気量差のあるバイク同士では極めて危険です。ツインリンクもてぎのサーキットマニュアルでは「異なる排気量や競技車両の特性により、トップスピードに大きく差があるため、スリップストリームにつくのは大変危険です」と明記されています。


参考)https://apps.mobilityland.co.jp/info/download/hwStI4/72206


追突しないよう十分注意してください。


前走車の動きを予測しながら、適切な距離を保つ技術が求められます。MotoGPライダーでさえ、前走車が予想外のタイミングでブレーキングすると回避できないケースがあります。


スリップストリームから抜け出すタイミングも重要です。直線が終わる手前で外側に出て、コーナー進入の準備をする必要があります。遅すぎるとコーナーに間に合わず、早すぎると加速の恩恵を受けられません。


小排気量のバイクでも、スリップストリームの効果は絶大です。4速GROMでは、スリップストリーム内ではリラックスした姿勢でも簡単に前車に追いつけるほどの差が生まれます。


バイクの車体形状がスリップストリームに与える影響

バイクの車体形状は、後方に発生するスリップストリームの範囲と強さを左右します。流線型のカウルを持つスーパースポーツバイクは、空気の流れがスムーズなため、後方の低圧帯が比較的安定して形成されます。


一方、ネイキッドバイクやアップライトな姿勢で乗るバイクは、ライダーの体が大きな抵抗体となるため、後方の気流が乱れやすくなります。この乱気流もスリップストリームの一種ですが、効果の範囲が狭く不安定です。


車体が大きいほど効果も大きくなります。


トラックのような大型車両の後方では、バイクでも顕著にスリップストリーム効果を体感できます。これは車体が切り裂く空気の量が多いため、後方の低圧帯も広範囲になるからです。


レース専用車両に装着されるエアロパーツも、スリップストリームの形成に影響します。MotoGPマシンに搭載されるウイングは、ダウンフォースを発生させると同時に、後方の気流を上方に跳ね上げる効果があります。


参考)ストーナー憤慨『追突事故はエアロダイナミクスのせいだ!』 -…


この気流変化により、後続車が得られるスリップストリーム効果が過剰になり、時速200km超での追突リスクが高まっていると、元MotoGPライダーのケーシー・ストーナーが指摘しています。





スリップストリーム INVADR LTH