

TDR250は市販車なのにツーリング性能が低い。
1987年10月、エジプトの砂漠を舞台にした第6回ファラオラリーに、冒険家の風間深志選手が参戦しました。このラリーは11日間で約4,800kmを走破する非常に過酷なデザートレースで、パリ・ダカールラリーの前哨戦と位置づけられていました。
参考)聖地突貫ダブルレプリカ TDR250 (2YK) -sinc…
風間選手が駆ったのは、ヤマハが開発したTDR250のプロトタイプでした。通常、このような過酷なラリーにはビッグシングルやビッグツインといった大排気量エンジンのバイクが投入されることが多く、250cc2気筒という排気量は異色の存在だったんです。それでも結果は250ccクラスでの優勝です。
参考)1988年 TDR250 - コミュニケーションプラザ
驚くべきことに、このプロトタイプは前年に同じファラオラリーで実績を積んだXT600テネレの車体に、2スト250cc2気筒エンジンを搭載したものから派生していました。この快挙のニュースとともに、翌1988年に市販モデルのTDR250が正式に市場に投入されることになります。当時のモーターショーでファンの意表をつく形で発表されたこのバイクは、砂漠走破という極限状態での成功を武器に、デビュー前から話題を集めていたということですね。
参考)エジプトのファラオラリーを走ったTDR250の開発コンセプト…
TDR250の最大の特徴は、TZR250譲りの水冷2ストローク並列2気筒エンジンを搭載していることです。最高出力は45psを維持しながら、減速比を高めに設定して加速性能を重視した設計になっています。よく整備された車体と熟練ライダーの組み合わせなら、ノーマル状態でも0-100km/hを5秒弱でマークできるほどのポテンシャルがあります。
参考)エジプトのファラオラリーを走ったTDR250の開発コンセプト…
エンジンはTZRと同じハイパーな仕様で、デジタル化により点火の進角や可変排気ポートを制御するチューンが加えられていました。最大トルクは3.5kgm/9,000rpmから3.6kgm/8,500rpmへとわずかながら中速寄りに調整されており、過酷な環境下での使いやすさが考慮されています。
つまり砂漠走破に適した仕様です。
さらに特筆すべきは、320mm径の大径フロントディスクブレーキに、マスターシリンダーとブレーキホース間にバルブ機構を設けた「バリアブルタッチシステム」を採用している点です。これは非舗装路で過度な制動とならないよう、ブレーキレバーの入力によってかかる圧力を変化させる装置で、オフロード走行時の安全性を高めています。オフ系バイクに乗るエンジニアが多いヤマハらしい、実用的な工夫が随所に見られますね。
実は、TDR250の開発コンセプトには意外な背景があります。それは「北海道ツーリング」という、極めて身近なシチュエーションから始まったものでした。真っ直ぐな道の多い北海道で、舗装路をちょっとでも外れるとTZR250のようなフルカウルのスポーツバイクでは不安で走れない……そんな国内ライダーの悩みを何とかできないかという発想が出発点だったんです。
どういうことでしょうか?1980年代、アフリカの砂漠を舞台にしたパリダカール・ラリーが世界的に注目を浴び、各メーカーからラリーレイドマシンが続々と登場していました。しかし主力はビッグシングルやビッグツインといった、キャリアを積んだスゴ腕ライダーでなければ乗れそうにない世界観のバイクばかりでした。
そこでヤマハは、このサバイバルなキャラクターを「旅」とイメージをオーバーラップさせた新カテゴリーを生み出したんです。それが「アドベンチャー系」であり、TDR250はその異色の存在として誕生しました。エジプトのファラオラリーという極限の舞台で250cc2気筒が成功を収めたことで、国内ツーリングという日常の延長線上にある冒険を、より多くのライダーが楽しめるバイクとして完成したということですね。
参考)40年も前にアドベンチャー系に2スト2気筒250の新構想を展…
開発時の名称は「Twin Dirt Racer」の頭文字を取ってTDRと命名されました。タンクと一体デザインのボディマウントカウルを装備し、ラリーマシン風のスタイルやストロークの長い足まわりと組み合わせた個性的なデュアルパーパスモデルとして完成しました。
参考)https://lrnc.cc/_ct/17020807
ファラオラリーに出場したプロトタイプと、1988年に市販されたTDR250には、いくつかの違いがあります。プロトタイプはXT600テネレの車体に2スト250cc2気筒エンジンを搭載したものから派生しており、市販車よりも実験的な要素が強い仕様でした。
市販モデルは軽量・高剛性のダブルクレードルフレームに水冷2ストローク並列2気筒エンジンを搭載し、より完成度を高めた形で発売されました。ミッションはTZRエンジン由来のドライサンプという高度なメカニズムを採用しており、過酷な使用環境でも安定した性能を発揮できるように設計されています。
現在、中古市場ではTDR250の取引価格帯は平均で37.4〜51.6万円程度で、状態の良い個体では70万円を超えることもあります。特にファラオラリー出場車両やモーターショー出品車といった特別な車両は、コレクターズアイテムとして非常に高い価値を持っています。
これは使えそうです。
参考)まさぴょんさんの投稿した愛車情報(TDR250) - 以前に…
市販車でも、TZRよりもショートな減速比設定により豪快な加速が楽しめるため、オンロードでの性能も妥協していません。オフロードモデルに相応しい走破性と、TZR譲りの高い動力性能を両立させたことで人気を博しました。
風間深志氏は日本を代表する冒険家であり、バイクによる世界各地のラリー参戦で知られています。ファラオラリーは1982年から1996年まで行われたエジプトの砂漠を走るクルマとバイクのラリーで、その過酷さはパリダカールラリーの前哨戦と位置づけられるほどでした。
参考)https://global.yamaha-motor.com/jp/showroom/cp/demorun/2025/pdf/1988_TDR250.pdf
11日間で約4,800kmという距離は、エジプト砂漠の厳しい環境下で走破しなければなりません。昼夜の寒暖差、砂嵐、ナビゲーションの困難さなど、ライダーとマシンの両方に極限の耐久性が求められます。
これは厳しいところですね。
風間選手がTDR250プロトタイプでクラス優勝を果たしたことは、250cc2気筒エンジンでも過酷なデザートレースに対応できることを実証しました。この成功は、ビッグシングルやビッグツインが主流だったラリーレイドの世界に、新たな可能性を示すものでした。
参考)https://global.yamaha-motor.com/jp/stories/history/products/img/mc/AP000037778.pdf
後に風間氏は息子の風間晋之介氏とともにバイクの魅力を語り継いでおり、親子で語るバイクの楽しさが多くのライダーに影響を与えています。ファラオラリー優勝バイクのTDR250は、現在も貴重な展示車両として保存され、その勇姿を見ることができます。このバイクがヤマハのコミュニケーションプラザにコレクションとして展示されているため、実物を見たい方は訪れてみるとよいでしょう。
参考)【冒険家 風間深志&俳優 風間晋之介】親子で語るバイクのルー…
参考になる展示情報はこちらから確認できます。
ヤマハ発動機 コミュニケーションプラザ TDR250展示ページ