

減衰力を強くすればバイクは安定するというのは間違いです。
減衰力とは、サスペンション内部のオイルがオリフィス(小さな穴)を通過する際に発生する流動抵抗のことです。スプリングだけではバイクが路面の凹凸を乗り越えた後、何度も伸び縮みを繰り返してしまいます。この物理現象を抑えるために、減衰力機構(ダンパー)がスプリングの振動エネルギーを熱エネルギーに変換して吸収します。
オイルの流量を制御することでサスペンションの動く速度が変化し、バイクの挙動を適切にコントロールできます。減衰力が弱いと車体が大きく上下に揺れ続け、タイヤの接地性が失われて操作性も低下します。
つまり減衰力は振動を減衰させる基本です。
参考)バイクのソレなにがスゴイの!? Vol.45 『減衰力調整機…
身近な例では、玄関ドアのダンパーと同じ原理です。ドアがゆっくり閉まるのは、内部のオイルが抵抗を生み出しているからですね。バイクのサスペンションも同様に、オイルの粘性抵抗を利用して伸縮速度を制御しています。
バイクのサスペンションには、圧側(コンプレッション/COMP)と伸び側(テンション/TEN)という2種類の減衰力機構が組み込まれています。圧側減衰は路面からの衝撃を受けてサスペンションが縮む際の抵抗を生み、伸び側減衰はスプリングが反発して伸びる際の抵抗を制御します。
圧側減衰が担当するのは、路面の突き上げに対する初期応答です。この減衰力が強すぎると路面追従性が悪化し、逆に弱すぎると衝撃が直接ライダーに伝わります。伸び側減衰は縮んだスプリングが元に戻る速度を調整し、フワフワした動きを抑えて車体姿勢を安定させます。
これら2つの減衰力が相互に働くことで、サスペンションシステムが最適な位置で安定します。伸び側減衰が強いとリアの車高が高くなるのに時間がかかり、ウィリーしやすい傾向があります。それぞれの減衰力が異なる場面で機能するわけですね。
「減衰力を強くすれば良い」という考え方は誤りです。実際には、フロント圧側を固めすぎ、フロント伸び側を柔らかくしすぎ、リア圧側を柔らかくしすぎるという間違いセッティングが多く見られます。このパターンではリアが低すぎる動的挙動になり、アクセルを開けてもアンダーステアになります。
参考)🆓-かなり重要なサスペンション問題-「減衰アジャスター」を調…
極端な調整はバイクのバランスを崩し、危険につながる可能性があります。例えば推奨値が伸び側10クリック、圧側8クリックのサスペンションを両方最強にすると、初期の動きが悪化して乗り心地を損ないます。コーナリング時のロール量やブレーキ時のピッチング量を抑えようと減衰力を高める使い方も、基本的に間違いです。
参考)減衰力調整の疑問を解決! 前後バランスから乗り心地まで正しい…
調整は一度に1~2クリック程度の変更に留め、その変化を体感することが重要です。適切な減衰調整はバイクのポテンシャルを引き出しますが、理解できるまで3~5年を要することもあります。
焦らず段階的に調整するのが安全ですね。
参考)サスペンションセッティングについて考える。 - セイクレッド…
減衰係数とは、振動が減衰する速さに比例する力を数値化したパラメーターです。バイクのサスペンションはばね定数と減衰係数によって特徴づけられ、これらの値が路面からの衝撃や振動の吸収性能を決定します。減衰比が大きければ1周期の間での振幅の減少度合いが大きくなり、周波数が高ければ短い時間で揺れが収まります。
物理学的には、減衰力は速度に比例する力として表現されます。オイルがオリフィスを通過する速度が速いほど、発生する抵抗力も大きくなる関係です。この非線形な特性が、バイクの様々な走行状況に対応できる柔軟性を生み出しています。
電子制御サスペンションでは、走行状況に合わせた減衰力調整をリアルタイムで行います。負荷のかかり具合を検知し、最適な減衰係数に自動調整することで、ライダーの操作負担を軽減するわけです。
参考)バイクのソレなにがスゴイの!? Vol.46 『減衰力調整機…
初めてサスペンション調整に挑戦する場合、まず全てのアジャスターを最弱にしてから始めるのが基本です。最弱の状態でバイクがどんな感じかを確認し、そこから少しずつ調整を加えていく方法が安全です。手が痺れる、段差で衝撃がすごい、腰にゴツゴツ来るといった不快感を解消する程度でも調整する価値があります。
前後各アジャスターを一つずつ強めたり弱めたりして、それぞれの効果を確認することで自分なりのモノサシができます。このモノサシがあれば、バランスが崩れたバイクに乗った時に症状を解きほぐせるようになります。調整範囲は15回転程度のものが多く、イジって戻らなくなる心配は不要です。
ツーリングで法定速度を守ってゆっくり走る人向けの調整なら、伸び側減衰を弱めるとツーリングの快適性が向上します。走りが激しくなるほどリアの圧側やプリロードの調整が重要になりますが、スピードが出る場合はプロに任せた方が安全です。
段階的に試すのがコツですね。
サスペンションの構造と調整方法の詳細(グーバイク)
減衰力の伸び側と圧側の違いを解説(ヤングマシン)
減衰力調整機構の仕組みと役割(For-R)