

接着剤を塗った直後に走り出すと、グリップが30分で動き始めて転倒リスクが跳ね上がります。
グリップ交換を始める前に、工具とケミカルグッズを正しく揃えておくことが、作業成功率を大きく左右します。必要なものを途中で買いに走ると、開いた状態のハンドルバーに異物が入るリスクが高まるため、事前準備は必須です。
まず用意する道具は、カッターナイフ、六角レンチまたはプラスドライバー(バーエンドを外すため)、パーツクリーナー、グリップボンド(専用接着剤)、ウエス、軍手の6点です。特に見落とされがちなのがグリップボンドで、100円ショップのボンドや木工ボンドは接着力が弱く劣化も早いため、バイク専用のものを使うことが条件です。
グリップを購入する際は、自分のバイクのハンドル径の確認が最初の一歩です。国産のほとんどのスポーツバイクやスクーターは22.2mm(7/8インチ)で、左側内径は約22mm・右(アクセル)側は約24mmという構成になっています。一方、ハーレーダビッドソンをはじめとするアメリカン系クルーザーでは25.4mm(1インチ)仕様が多く、左約25mm・右約30mmとなっています。つまりサイズを確認してから買うのが原則です。
さらに重要なのがグリップの「長さ」と「エンドの形状」です。純正より長いグリップを選ぶとスイッチボックスやバーエンドに干渉し、スロットルが戻らなくなる危険があります。このトラブルは走行中に起きると非常に危険なため、グリップ全長も必ず純正品と照らし合わせましょう。エンド形状は「貫通タイプ」と「非貫通タイプ」の2種類があり、バーエンドを装着している車両には貫通タイプを選ぶのが基本です。
| 確認項目 | 一般的な国産車 | ハーレー等アメリカン系 |
|---|---|---|
| ハンドル径 | 22.2mm(7/8インチ) | 25.4mm(1インチ) |
| 左グリップ内径 | 約22mm | 約25mm |
| 右グリップ内径 | 約24mm(スリーブ上) | 約30mm |
| エンド形状 | バーエンドなし→非貫通型 | バーエンドあり→貫通型 |
道具が揃ったら、作業前にパーツクリーナーのスプレー缶が十分な量入っているか確認しましょう。後述する「グリップ挿入の裏ワザ」でたっぷり使うため、残量が少ない場合はあらかじめ新品を用意しておくことをおすすめします。
グリップ交換で最初に直面するのが「古いグリップの取り外し」です。ここをスムーズに進められるかどうかで、作業全体のリズムが決まります。
再利用しないグリップであれば、カッターナイフで縦に切り込みを入れて剥がすのが最も手っ取り早い方法です。ただし、アクセル側(右側)はグリップの下に樹脂製のスロットルスリーブがあります。刃を深く入れすぎるとスリーブを傷つけてしまい、スロットルの作動不良につながるため、慎重に浅く切ることが大切です。これは意外と忘れがちなポイントです。
もし古いグリップを再利用したい(ハンドルバー交換などの際)場合は、エアコンプレッサーを使った方法があります。バーエンドを外した後、グリップの付け根に圧縮空気を高圧で吹き込むと、驚くほど簡単にグリップが抜けていきます。一般的なコンプレッサーがない自宅では難しい方法ですが、バイク仲間やショップに相談する価値はあります。
古いグリップが外れたら、ハンドルバーとスロットルスリーブに残った古い接着剤の除去が次の工程です。ここが実は仕上がりを大きく左右する重要作業です。パーツクリーナーをたっぷり吹き付け、ウエスでしっかりこすり落としましょう。古い接着剤やゴムのカスが残っていると、新しいグリップがきちんと固定されず、走行中に回転する原因になります。表面がツルツルになるまで丁寧に拭き取るのが条件です。
下地処理が終わったら、脱脂された面を素手で触らないように注意しながら次のステップへ進みます。ここまでの丁寧な下地処理が、グリップ交換後の耐久性と安全性を守る土台になります。
参考:バイクのグリップ交換における各工程の詳細と注意点(バイク館 公式メディア)
https://www.bikekan.jp/media/1075
新しいグリップを取り付ける場面こそ、グリップ交換で最も「コツ」が問われる工程です。ここで失敗すると「途中まで刺さったまま動かない・抜けない」という悲惨な状況になります。
まず、ハンドルバーとスロットルスリーブの全周にグリップボンドを薄く均一に塗ります。グリップボンドを塗りすぎると、グリップを差し込んだ際にはみ出した接着剤がスロットルハウジングに流れ込み、アクセルの戻り不良を起こすことがあります。アクセル側は可動部に接着剤が入り込まないよう、特に慎重に薄く塗ることが大切です。
ここで知っておきたい裏ワザが、「パーツクリーナーを潤滑剤として使う」方法です。グリップを挿入する直前に、グリップの穴の内側にパーツクリーナーをたっぷり吹き付けます。パーツクリーナーはゴムとの摩擦を一時的に大幅に減らしてくれるため、するりと奥まで差し込めるようになります。これをしないと潤滑が足りず、グリップが途中でびくともしなくなる可能性があります。
グリップボンドとパーツクリーナーが乾く前に、一気に奥まで押し込むのが最大のポイントです。途中で止めると、接着剤が固まりかけて強力な抵抗になり、それ以上入らなくなってしまいます。グリップを軽く回しながら押し込むと奥まで入りやすいですが、完全に入った後は向きを微調整し、デザインやロゴが正しい位置を向いているか確認しましょう。これが基本です。
差し込みが完了したら、アクセル側がスイッチボックスやバーエンドと干渉せずスムーズに回るかを必ずチェックします。グリップが奥まで入りすぎてスロットルハウジングを塞いでいないか、指一本分程度の余裕があるかを目視で確認しましょう。確認できたらOKです。
参考:パーツクリーナーをグリップ挿入の潤滑剤として活用する方法の詳細解説
https://ride-hack.jp/?p=4869
グリップを取り付けた後の「待ち時間」を軽視すると、交換作業の努力がすべて無駄になりかねません。接着剤の硬化には段階があります。
デイトナをはじめとするバイク専用グリップボンドの多くは、初期硬化に約30分、完全硬化に24時間かかります。「30分で固まるなら乗れる」と思いがちですが、初期硬化はあくまで「ずれにくくなった」段階で、本来の接着強度にはほど遠い状態です。走行中の振動や、グリップを力強く握ったときの回転力に耐えられる強度が出るのは24時間後です。痛いところです。
つまり、グリップ交換は「当日乗りたい」場合には前夜に済ませておく必要があります。前日の夜に交換して一晩置くというスケジュールが最も理想的です。グリップボンドが完全に硬化する前に走行すると、グリップが微妙に動いてしまい、最終的に接着不良のまま固まってしまうリスクもあります。
乾燥中はグリップに触れたり回したりせず、できれば屋内の風通しの良い場所に静置しましょう。温度が低い冬場は硬化がさらに遅くなるため、可能であれば室温を10℃以上に保つと完全硬化の精度が上がります。
グリップボンドの選び方として、デイトナのグリップ接着剤シリーズは初期硬化30分・完全硬化24時間で信頼性が高く、次回の交換時に剥がすことも可能な点が特徴です。価格も700〜800円台と手頃で、グリップ交換初心者に特にすすめやすい製品です。これは使えそうです。
参考:デイトナ グリップ接着剤シリーズの硬化時間・仕様の公式情報
https://www.daytona.co.jp/products/series/detail/443/
グリップ交換においてクラッチ側(左)に比べてアクセル側(右)は、構造が複雑で特別な注意が必要です。ここを雑に扱うと、命に関わるスロットルトラブルが発生します。
アクセル側にはスロットルスリーブ(スロットルコーン)という樹脂製の筒が内側にあり、この上にグリップが被さる構造です。スリーブはアクセルを回すときに動く可動部なので、グリップとスリーブの間に接着剤が流れ込むと、アクセルが重くなったり最悪の場合「戻らなくなる」という深刻なトラブルを引き起こします。アクセルが戻らないと走行中にエンジン回転が下がらず、非常に危険な状態になります。
対策はシンプルです。アクセル側のグリップボンドはスリーブの外側・ハンドルバーの末端部にのみ塗り、スリーブとグリップが接触する部分(内側)には塗らないようにします。また、グリップ装着後は手でアクセルを空回しして、スムーズに回転するかを必ず確認しましょう。グリップが奥に入りすぎてスロットルハウジングに食い込んでいないかもチェックが必要です。
グリップ交換の時期についても、多くのライダーが「破れるまで使える」と思っているケースがあります。しかし表面のツブツブやワッフル状のパターンが消えてツルツルになると、雨天時の滑りが格段に増します。グリップ表面のパターンが残っていても、ゴムがベタついたり硬化してひび割れが目立ってきたりしたら、早めの交換が安全です。使用頻度にもよりますが、ゴムの表面が滑らかになってきたら交換のサインです。
アクセルの戻り不良が起きてしまった場合、グリップをいったん剥がして接着剤の除去と再取り付けが必要になります。スロットルワイヤーを外す作業も伴うため、工賃に追加費用(3,000〜5,000円程度)が発生することになります。適切な手順を守ることで、こうした余計な出費を丸ごと避けられます。
参考:スロットルの戻り不良の原因とグリップ交換との関係(Webike公式)
https://news.webike.net/maintenance/75647/