熱効率とバイクの物理現象|エンジン性能と燃費向上の関係

熱効率とバイクの物理現象|エンジン性能と燃費向上の関係

熱効率とバイクの物理現象

あなたが給油したガソリンの7割以上は捨てられています。


📊 この記事の3ポイント
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バイクの熱効率は15~30%

日常走行では給油したガソリンの7~8割が熱として捨てられ、動力になるのはわずか

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冷却損失と排気損失が最大

燃焼室の冷却と排気ガスで失われるエネルギーが全体の5~6割を占める

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圧縮比と熱効率は比例する

圧縮比を上げるほど理論熱効率は向上するが、ノッキングのリスクも増大

熱効率とはバイクの燃料エネルギー変換率


熱効率とは、燃料が持つ化学エネルギーのうち、どれだけを機械的な動力に変換できるかを示す割合です。


参考)熱サイクルと熱効率の超解説(公式と求め方)


バイクのガソリンエンジンでは、日常的な走行状態での熱効率は15~25%程度にとどまります。つまり100円分のガソリンを給油しても、実際に走るために使われるのは15~25円分だけということです。


効率的に使っている状況でも熱効率は30%程度が限界です。


最も熱効率が高いとされるホンダシビックのハイブリッド車に搭載されている2.0L 4気筒ガソリン直噴エンジンでも、最大熱効率は41%です。これでもガソリンの半分以上は動力に変換されていません。


四輪のハイブリッド車が最大40%超の熱効率を達成している一方、量産バイクのエンジンは技術的な制約から20%前半が現実的な数値です。


バイクのエンジンで失われる熱エネルギーの内訳

燃料の燃焼で発生した熱エネルギーは、大きく分けて排気損失、冷却損失、機械損失、ポンプ損失の4つで失われます。


排気損失は、燃焼後の高温ガスが排気管から捨てられる際に持ち出すエネルギーです。


冷却損失は燃焼室やシリンダーライナの高温化を防ぐため、冷却水や空気に奪われるエネルギーを指します。冷やしすぎると熱損失と機械損失が増大し、冷却水温度を上げすぎると異常燃焼や焼き付きのリスクが発生します。


機械損失はピストンとシリンダー壁面の摩擦、クランクシャフトカムシャフトの軸受摩擦などで消費されるエネルギーです。


冬場はエンジンオイルが硬くなり、潤滑油としての役割を果たせず逆に抵抗となります。フリクションが悪化してエンジン内のパーツがスムーズに動けず、燃費が悪化します。


参考)【バイク】気温によって燃費が悪化する5つの理由! - バイク…


圧縮比と熱効率の物理的関係性

圧縮比が高いほどエンジンの熱効率は向上し、出力と燃費が改善されます。


理論熱効率は公式「η = 1 - (1/ε)^(κ-1)」で表され、ε(圧縮比)が高いほど熱効率ηは向上します。


κは比熱比で空気の場合は1.4です。



理論熱効率は圧縮比が17あたりまでは上昇し、それ以上は横ばいになります。


ただし圧縮比を上げるとノッキング(異常燃焼)が発生しやすくなるため、圧縮比の向上には限界があります。バイク用エンジンは小排気量でボア径が小さいため、クルマに比べてノッキングが発生しづらい特性があります。


レギュラー燃料なら圧縮比10~11程度、ハイオク燃料なら12~13程度が一般的です。


高性能バイクでは、ノックセンサーをエンジンブロックに装着してノッキングの発生を検出し、点火時期を電子制御するモデルも登場しています。


冷却方式による熱効率への影響

バイクのエンジン冷却方式には、空冷、水冷、油冷の3種類があり、それぞれ熱効率に異なる影響を与えます。


空冷エンジンは走行風を直接シリンダーフィンに当てて冷却するため、構造がシンプルで軽量です。しかしフルカウルで覆われていると走行中が前提の設計となり、渋滞時などはオーバーヒートのリスクが高まります。


参考)冷却方式に関わらずエンジンの排熱処理は基本ですよ


水冷エンジンは専用の冷却水をエンジン内部に循環させて冷やす方式で、燃焼室周辺の温度を精密に管理できます。運転状態に応じて冷却水温度を最適化する制御が採用され、熱効率の向上につながります。


参考)【厳選】激アツ!真夏のライディングを乗り切るコツ【車体&ライ…


冷却方式に関わらず、エンジンの排熱処理は基本です。


エンジンの発熱より放熱能力が少ないと、エンジンを構成する金属が熱膨張で歪み、最悪の場合は一発でエンジンが破損します。外気温が-10℃でもラジエターグリルに付着した雪や氷がラジエターを塞ぐ形になると、熱交換ができずオーバーヒートすることがあります。


熱効率を高めるホンダの技術開発事例

ホンダは熱効率の改善に力を入れており、理論的には熱効率のいいガソリンエンジンとして昔から知られていた「アトキンソンサイクル」を実用化しました。


アトキンソンサイクルは技術的に実現が難しく長らく実用化されませんでしたが、ホンダは「EXlink(エクスリンク)」という複リンク式高膨張比エンジンで解決しました。12.2:1の圧縮比に対して膨張比を17.6:1まで拡大させることで、少ない燃料から最大限のエネルギーを得ることに成功しています。


CB400の燃料消費率は国土交通省届出値で31.0km/L(60km/h)、WMTCモード値では21.2km/Lです。


冷却EGR(排気ガス再循環)や筒内燃焼の最適化(ガス流動)によって、エネルギーのロスを軽減することが可能です。ノッキングの発生を防ぐために燃焼室壁面の冷却性を確保するのも、熱効率を上げるための重要な対策です。


1気筒あたりの排気量も熱効率が高いと言われる300~600ccが理想的とされています。


参考)Vol.183「バイクエンジンについて」


駆動系の伝送ロスと実走行での熱効率

エンジンで取り出したエネルギーは、トランスミッションやチェーンを介してリアタイヤに伝えられる過程でさらに損失が発生します。


チェーン駆動では伝送中にロスが発生し、駆動力が約1割減少します。つまり熱効率20%のエンジンでも、実際に路面に伝わる駆動力は給油したガソリンの18%程度になります。


日常的にバイクに乗っていてアクセル全開にすることは少なく、ハーフスロットルのような状況では熱効率はさらに落ちます。ガソリンエンジンの一般論では、日常領域での熱効率は15%程度と捉えておくべきです。


気温によっても燃費が変動します。


冬場はガソリンが気化しにくくなり、燃料噴射システムがガソリン噴霧量を増やすためガソリン消費が多くなります。冷たい空気は酸素濃度が高いため、燃焼後の排気管には酸素量が多い状態となり、「酸素が多い=ガソリンが足りない」と判断されてガソリン噴霧量が増えます。


エンジンが温まるまで回転数が上がるように設定されているのも、冬場の燃費悪化の原因です。


バイクの気温と燃費の関係について詳しく知りたい方はこちらの記事が参考になります

レジャーモデルと高性能モデルの熱効率比較

バイクの熱効率は車種によって大きく異なり、低い車種で18%、高い車種で30%弱です。


1983年のカブは180km/Lという驚異的な燃費を達成し、熱効率は30%弱に達しました。しかしエコノパワーカブで大革命を行ったにも関わらず、熱効率の向上はわずか3%程度でした。


レジャーモデルでは意図的に効率を落としたと思われる車種もあります。ノーティダックスや6Vゴリラ(モンキー)などがその例です。


逆にSS50、CB72はこの時代にして25%を超える熱効率を達成しています。


バイクのエンジンは一般にさまざまな回転数で使用されるため、特定の回転域だけで最適化することが難しいという問題があります。主燃焼期間はエンジン回転数によらずほぼ一定(クランク軸回転数で15度くらい)と言われるため、回転数が変わると燃焼タイミングの最適化が困難になります。


ホンダCB400の熱効率について詳しく解説しているページはこちらです




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