

実はピストンへの負荷は爆発より慣性の方が2倍以上大きいんです。
バイクのエンジンでは、ピストンが上下に往復運動することで動力を生み出しています。しかしその裏では、想像を超える物理現象が起きているのです。
リッタークラスのスーパースポーツでは、エンジン回転数が13,000rpmを超えます。このときピストンは上死点と下死点で速度が0km/hになりますが、中間地点では約36m/s、時速に換算すると約130km/hにも達するのです。つまり0〜130km/hの加減速を、1秒間に216回以上も繰り返していることになります。
参考)blueskyfuji: なぜ今になってまたV4エンジン&#…
この急激な速度変化により、ピストンには約5000Gもの加速度が発生します。結果として、リッターエンジンでは最大出力時に約1.7トンもの慣性力が生じるのです。これが「加振力」と呼ばれる振動の主な原因となります。
市販のNAエンジンの平均的な燃焼圧は1.0MPa前後、つまり約1.03トン程度です。つまりピストンの慣性による荷重の方が、燃焼圧よりも倍以上大きいということですね。
参考)http://www.carphys.net/engine/piston.html
ピストン質量を半分にできれば、ピストンが発生する力も半分になります。そのためピストン軽量化は、コンロッドなど各エンジン構成パーツへのストレスを軽減し、高回転化、振動・メカノイズ低減、信頼性向上など多くのメリットにつながるのです。
エンジンの振動には、主に「一次振動」「二次振動」「偶力振動」の3種類があります。それぞれが異なるメカニズムで発生し、バイクに独特の乗り味を与えています。
参考)エンジン内部の「バランサー」は何のため? 本当に必要? 無い…
一次振動は、ピストンの上下動に伴ってエンジン回転と同期して出てくる振動です。単気筒エンジンや360度クランクの直列2気筒エンジンではこの一次振動が大きくなります。クランク1回転で1度振動することから、この名前が付いています。
参考)エンジンの振動を考える。加振力と偶力、一次二次三次……。[内…
二次振動は、エンジン回転数の倍の回数で上下に往復しながら発生する振動です。これがハンドルやステップに伝わる「ビリビリとした痺れるような振動」の原因の一つとされています。そのため振動を低減する目的で、ハンドルをラバーマウントにしたり、グリップエンドやステップに重り(バランサー)を付けたりする工夫が施されているのです。
偶力振動は、エンジンの重心を中心に回そうとする力で、ピストンやコンロッドの上下運動のアンバランスで発生します。慣性加振力がエンジン全体を動かそうとする力であるのに対し、偶力はシーソーのような振動を生み出すのが特徴です。
360度クランクの2つのピストンは一緒に往復運動しているため、質量の運動系で見ると単気筒と同じです。振動も単気筒と全く同じ特性を持っているため、高回転では強烈な振動を伴います。オートレースのSEAR600エンジンが180度クランクを採用した理由は、振動が少ないからなのですね。
参考)360度クランクの直列2気筒の振動は単気筒と同じ: またがり…
ピストンの慣性力を打ち消し、振動を抑えるために、クランクにはカウンターウェブ(バランスウェイト)が形成されています。一般的には、ウェブの遠心力がピストンの慣性力の約半分、例えば1.7トンの場合は約0.85トンとなるように設計されるのです。
しかしカウンターウェブだけでは振動を完全に消すことはできません。そのため、錘(おもり)を付けたシャフト(バランサーシャフト)をクランクシャフトと逆回転させることで振動を消す「バランサー」が装備されることがあります。
参考)エンジン内部の「バランサー」は何のため? 本当に必要? 無い…
バランサーは不快な振動を消すのに有効なパーツですが、デメリットもあります。錘(おもり)の付いたシャフトをクランクシャフトの動力で回すので、少なからずその分のパワーを損失し、燃費も悪化するのです。
部品点数が増えるため摩擦ロスも発生します。
たとえば同じヤマハの単気筒エンジンでも、SR400/500はバランサーを装備していませんが、SRX400/600はバランサーを装備しています。これはパワーアップを狙った高回転化に対応するためと思われます。つまりバランサーは必須ではなく、エンジン特性に応じて選択されるのです。
中~大排気量の270度位相クランクは、一次振動と偶力振動を打ち消すバランサーが必須ですが、世界的にもメジャー化しているエンジン形式だけに、バイクメーカーはエンジンのコンパクト化なども含めてバランサーにも工夫を凝らしています。
ピストンスピードは、エンジン性能を測る裏指標として知られています。スペック表には記載されていませんが、以下の計算式で比較的簡単に計算できるのです。
参考)かなりマニアック!? 「ピストンスピード」はエンジン性能の裏…
ピストンスピード(m/s)=回転数(rpm)÷60×ストローク(m)×2
たとえばホンダCBR250RR(ボア×ストローク=62.0×41.3mm)の、最高出力を発揮する13,500回転(rpm)で計算すると、ピストンスピードは18.585m/sになります。はがき約30枚分を1秒で駆け抜ける速さということですね。
ピストンスピードが速くなると、ピストンやコンロッドの慣性力が強くなるため、エンジンに対する負荷が大きくなります。またピストンとシリンダーはエンジンオイルで潤滑していますが、ピストンスピードが速くなり過ぎると、オイルの油膜が切れてエンジンが焼き付く危険もあるのです。
この限界があるため、高回転型エンジンではショートストローク設計が採用されることが多くなっています。ストロークを短くすることで、同じ回転数でもピストンスピードを抑えられるからです。
油膜切れのリスクを減らすには、高品質なエンジンオイルの使用が有効です。特に高回転域を多用するスポーツ走行では、定期的なオイル交換と適切な粘度のオイル選びが重要になります。バイク用品店やメーカー公式サイトで、あなたの愛車に合った推奨オイルを確認しておきましょう。
エンジンのクランク回転は、燃焼により発生する力だけではありません。慣性トルクと呼ばれ、燃焼状況に関わらずクランク回転により発生する力、つまりピストンの慣性力がクランクを回転させる力もあるのです。
慣性力というものは基本的に、物が動いた後で「その運動を維持し続けようとする力」です。基本的にピストンが上死点側にあるときはその上半分に上向きの慣性トルクが働いて、ピストンが下死点側にあるときは下向きの慣性トルクが発生します。上死点に行ったときと下死点に行ったときの、一回転中に2回、この慣性トルクは向きが変わるということですね。
参考)http://northfoxes.blog73.fc2.com/blog-entry-342.html
燃焼時期を不均等とすることにより、ピストンの上下運動のタイミングをずらすことができます。これにより燃焼圧力だけでなくピストンの慣性力の影響を分散させ、スムーズな出力特性を実現できるのです。
参考)同じ排気量&気筒数なのになぜ? メーカーによってエンジン音…
ヤマハYZF-R1のクロスプレーンクランクは、この慣性トルクの特性を活かした設計の代表例です。不等間隔爆発により、慣性トルクのベクトルが渦巻状に回るように設計されており、トラクションの向上に貢献しています。
ヤマハ公式によるピストンの慣性力と振動に関する詳細な技術解説
ヤマハ発動機の技術ストーリー:ニュートンの運動3法則にみるピストンの慣性力
ピストンスピードの計算方法とエンジン性能への影響に関する実用的な解説
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