

ホイールが重いとバイクは不安定です。
バイクの前後方向の安定性は、主にホイールベース、重心位置、そして各種物理現象の組み合わせで決まります。ホイールベースとは前輪と後輪の中心間の距離のことで、一般的に長いほど直進安定性が向上します。
参考)https://www.iatss.or.jp/entry_img/08-2-06.pdf
具体的には、ホイールベースが長いバイクは高速走行時に安定感が増し、直進性が高まります。反対に短いホイールベースは敏捷性が高く、コーナリングが得意になる特性があります。
参考)自転車のホイールベースがロードバイクの性能に与える影響とは?…
つまり長距離ツーリング向けは長く設定され、スポーツ走行向けは短めという傾向です。
重心位置も重要な要素で、重心が前方にあるほど同じ量フラついても必要な舵角が少なく、短時間でバランスが取れます。二輪車は常に直立安定を確保することが要求されるため、これらのパラメータは繊細に設計されています。
ジャイロ効果とは、回転体が角運動量を保存しようとする働きで、回転体の回転数および質量が大きいほど効果が大きくなります。バイクのホイールが高速で回転すると、姿勢を維持する力が働きます。
参考)なぜジャイロ効果は姿勢を安定させるの?回転体が生む“ブレない…
これが走行中は倒れにくく、停止時は倒れやすい理由です。
ただし、ホイールが重いとジャイロ効果が増して安定感が得られる一方で、切り返しが重くなります。逆に軽いホイールはジャイロ効果が減少し、バイクの切り返しが軽快になります。
軽量ホイールには他にもメリットがあります。バネ下にあるホイールが軽いとサスペンションへの負担が減り、タイヤが路面を追いかけやすくなるため、バタバタ暴れなくなります。結果として燃費向上、加速性能やブレーキ性能の向上といった効果も得られるのです。
バイクが倒れそうになると、ジャイロモーメントによって前輪が倒れる方向に転舵され、接地点が移動して重心と重なり安定状態を獲得します。この自動的な制御機構が二輪車の走行安定性を支えています。
トレール量とは、ステアリングの回転軸と路面との交点と、タイヤの接地面との距離のことです。この距離が大きいほど直進安定性が高くなり、小さいと不安定で走れません。
参考)https://gra-npo.org/lecture/bike/Trail_analysis/Trail_analysis.html
特にスピードが上がると、その影響はさらに顕著に表れます。
参考)【トレール量とは】オフセット変更でハンドルのブレは止まる|ハ…
トレール量が大きいと、タイヤがズレた際にP0からP1への変位量が大きくなるため、より大きな力で元の位置に押し戻します。これが直進性を生み出す原理で、低速走行時にフロントタイヤを安定させる重要な働きをします。
直進性に寄与するのはトレール量であって、キャスター角自体ではありません。
トレール量は、キャスター角が寝ている(角度が大きい)かフロントフォークの突き出し量が大きいほど増加します。バンク時には、トレールが巻き込む力を打ち消してバランスさせる大切な力として機能します。
参考)【バイカー基礎知識】今更聞けない!トレール量って一体全体なん…
キャスター角とは、ヘッドパイプの中心線と地面からの垂直線が成す角度のことです。一般的には23°から32°くらいに設定されており、この角度が大きいと安定性志向、小さいと操縦性志向になります。
角度が小さい(見た目にはフロントフォークが立っている)ほど、スピードが高い状態で車体を傾けた際にフロントタイヤが軽快に素早く切れます。反対にキャスター角が大きい(フロントフォークが寝ている)と、高速時は直進安定性が強くなります。
キャスター角を立てると応答性が高まります。
旋回中はキャスター角が寝て安定志向に変わるため、深いバンク角をキープしている時が一番小さな半径で旋回できる状態になります。キャスターアクションで旋回を助けると同時に、その弊害と危険性を避けるため、30度以内の設定がされていると考えられます。
参考)http://gra-npo.org/lecture/bike/caster/real_face.html
バイクの直進性を作り出すのは実は後輪です。リアタイヤの接地面が路面に与える抵抗は、進行方向を維持し直進性を物理的に生み出す安定要因となっています。
参考)バイクの直進性を作り出すのは後輪である 1G沈下量と直進性の…
後輪が進行方向に対して支え、摩擦を伴って「進行軸」を維持することで、全体の直進安定性が確保されます。一方、フロントタイヤはトレール効果によって車体が進む方向に「追従」する傾向が強まり、直進性を補う役割を担います。
直進性の主な起点はリアタイヤです。
リアタイヤが直進方向を保持することで、フロントタイヤはその進行方向に追従し安定を補強します。特にコーナーから立ち上がる際や荒れた路面を通過するとき、リアタイヤの直進力に対してフロントタイヤが少しずつ正面へ戻ろうとする動きが働きます。
前後のタイヤから生まれる「旋回モーメント」の前後バランスによって、コーナリング時の旋回効率や安全性は大きく変わります。この役割分担を理解すれば、より安全で効率的な走行が可能になります。
参考)https://gra-npo.org/lecture/ride/Qamp;A_rearbrake_myth/Rear_Brake_4.html
バイクがフラつくと重心位置が左右にズレ、後輪の接地点と重心位置を結んだ線の延長線上に前輪接地点が来るとバランスが取れます。重心位置が後方よりも前方にある方が、同じ量だけフラついても必要な舵角が少なく短時間でバランスが取れるのです。
体重移動でバイクが傾く際、体重移動したままでは傾き続けて転倒しそうですが、実際は遠心力とつり合ってバランスが取れて転倒しません。これは物理的なバランス機構が働いているためです。
バランスの取り方が鍵です。
二人乗りをすると、物理的な条件として一人で乗るより危険が増します。減速に要する距離、タイヤのグリップ力、ライダーの重心移動のしやすさなど、すべてが変化するためです。
参考)【Q&A】バイク乗りがよく訊かれる質問まとめ - うにょら~…
ハンドルへの微妙な荷重やヘッドの回転性能で安定になったり不安定になったりします。上体がガチガチになっているとハンドルの動きを妨げるので、バイクは安定しなくなります。ポジションを少し変えるだけで安定する可能性があるため、柔軟な対応が重要です。
低速時のバイクは高速時とは異なる走行特性を示します。前後輪とも上下方向だけでなく前後方向の運動成分を持つため、ばね下部分の上下と前後方向の運動方程式が重要になります。
低速走行では、トレールが特に重要な役割を果たします。トレールによってフロントタイヤに方向安定性が保たれ、バランスを維持しやすくなるのです。
低速では別の物理が働きます。
シミー現象という周期の短い振動が発生することがあり、これはバイクとホイールの組み合わせ、スピードと路面状況、タイヤ空気圧と風などのいろいろな条件が重なったときに起こります。シミー現象が起きた時は、サドルから腰を上げてはいけません。バイクの横方向への自由度が増すと、一旦振動し始めるとどんどん増幅する可能性があります。
ハンドルが切れることが安定走行の必要条件であり、前輪付近の微妙な重量配分も重要です。これらを適宜調整すると、変なジオメトリーのバイクでも安定する場合があります。
低速時の安定性を向上させたい場合は、ハンドルの動きを妨げないよう上体をリラックスさせることが基本です。グリップを握りすぎず、ヘッドの回転性能を確保すれば、バイクの自己安定機能が働きやすくなります。
前後方向の安定性を理解すれば、ライディング技術の向上につながります。バンク角の深さで"ロール"は意識されやすいですが、見逃しがちなのが"ピッチング"で、走行するバイクが前後方向に回転する動きのことです。
セルフステアでバンクする車体を止め、深いバンク角をキープしている時が一番小さな半径で旋回できる状態です。この時はブレーキレバーを放しているため、キャスター角はブレーキを引きずりながら車体をバンクさせている最中よりも寝ています。
ピッチングを意識しましょう。
リアブレーキを使った横滑り制御は、前後タイヤの速度差を基準にタイヤが滑っているかどうかを検知してスロットル開度などを制御します。これは疑似VSCとして機能し、安定性向上に役立ちます。
参考)【元ヤマハエンジニアから学ぶ】二輪運動力学からライディングを…
コーナリング時の安全性を高めたい場合は、前後の旋回モーメントのバランスを意識することが重要です。リアブレーキを適切に使用すれば、横滑りを抑制しながらスムーズな旋回が可能になります。また、バンク角をキープする際は、ブレーキ操作のタイミングを意識して、キャスター角の変化を活用しましょう。