

実はアクセルの開け方だけで前科レベルの事故リスクが跳ね上がります。
多くのライダーは「アクセルを開けるとリアサスがぐっと沈み、そのおかげでグリップが増える」とイメージしているはずです。ところが現代のスポーツバイクでは、アクセルオンでリアサスは沈むどころか「伸びる」方向に働き、後輪を路面に押し付けるアンチスクワット効果が支配的です。つまり、あなたが「沈んでいる」と感じているのは、フロントフォークが大きく伸びて車体が前上がりになり、相対的にリアが沈んだように錯覚しているだけ、というケースがほとんどです。
つまり錯覚ということですね。
この現象のカギになるのが「瞬間中心」と呼ばれる点です。エンジン側スプロケット軸と後輪スプロケット軸を結んだチェーンラインと、スイングアームを延長した線の交点が瞬間中心になり、ここから後輪接地点へ向かう力の向きによって、サスペンションが縮むか伸びるかが決まります。力の合力線とこの瞬間中心が一直線でつながるとき、アンチスクワット率はおよそ100%となり、リアサスはほとんど伸びも縮みもしない「中立」の状態になります。
100%が原則です。
アンチスクワット率が100%を超えて高くなると、加速時にリアサスはむしろ伸びて車体後部を持ち上げ、後輪を路面へ強く押さえ込むように働きます。数字のイメージでいえば、アンチスクワット120%の車体なら、同じ加速Gでもリアショックのストローク変化がかなり小さく、リアタイヤ側のたわみが増えてグリップ感が強く出ると考えると分かりやすいでしょう。加速時にリアがぐっと沈んだように感じても、実際にはタイヤの潰れ量が増え、フロントが10cmほど伸びて「東京タワーの脚」がのけ反ったような姿勢になっているだけ、というイメージです。
結論は沈んでいないということです。
反対に、アンチスクワットが弱い、あるいはほとんどない車両も存在します。たとえば一部のオフロード車や電動オフ車では、チェーンラインとスイングアームの関係からアンチスクワットがほぼ発生せず、アクセルオンでリアサスが素直に縮みやすい車体も報告されています。この場合は路面追従性が高い一方で、強烈な加速時にはリアが大きく沈み込んで姿勢変化が大きくなり、フロントの接地感が変わりやすいという特徴が出ます。
つまり設計で性格が分かれるということですね。
アンチスクワットは、単に「リアが沈むかどうか」だけの話ではありません。リアの伸び・縮みと同時に前後荷重の配分、フロントの接地感、そしてトラクションの立ち上がりスピードまで一括してコントロールしている、かなり総合的なジオメトリパラメータです。そのためレーサーや上級者は、スイングアーム長やリンクレシオ、車高調整によってアンチスクワット特性を細かく追い込み、コーナー脱出時の一瞬のグリップ感を作り込んでいます。
アンチスクワットは必須です。
こうした理解があると、街乗りでも「なぜこのバイクは加速姿勢が急に立ち気味になるのか」「なぜリアの動きが硬く感じるのか」といった違和感を、ジオメトリという物理現象に結びつけて考えられるようになります。結果として、リアサスのプリロード調整やリア車高アップ・ダウンの方向性を、自分の走り方に合わせて選びやすくなります。
これは使えそうです。
アンチスクワットと加速時の姿勢変化を図解している解説記事です(アンチスクワット率と瞬間中心の説明に対応)。
アンチスクワットがしっかり効いている車体では、アクセルオンと同時にリアタイヤが路面を強く押し、トラクションが早い段階から立ち上がります。たとえばコーナー出口で0.3Gほどの緩い加速から、0.6G程度まで一気にアクセルを開けていくと、リアタイヤの接地荷重は数十kg単位で増え、その分だけスリップの余裕が広がります。こうした「踏ん張り」があると、縦方向だけでなく横方向のグリップも併用できるため、リーンしたままアクセルを開け足す「トラクションで曲がる」走り方がしやすくなります。
つまり速くて安定するということですね。
一方で、アンチスクワットが強く効きすぎると、フロント荷重が一気に抜けていくという副作用が生まれます。リアがグイグイと押し出す代わりに、フロントタイヤには十分な荷重が残らず、ステアリング入力に対してタイヤが路面を掴みきれず外へ逃げていく、いわゆるプッシュアンダーが出やすくなります。たとえば下りの高速コーナーで、目測より5km/hほどオーバースピードだった場合、フロント荷重が薄い状態でさらにアクセルを足すと、タイヤのグリップ限界を超えて一気にコース外側へ膨らむ可能性が高まります。
厳しいところですね。
また、アンチスクワットが強い車体では、ほんの数度のスロットル操作でも前後荷重がカクッと移り変わり、ライダー側には「アクセルに対して過敏」「妙にギクシャクする」という印象が出ることがあります。街乗りで例えるなら、信号ダッシュのたびにフロントがふわっと浮き気味になり、マンホールの上でステアリングが落ち着かない、といった細かなストレスです。長距離ツーリングでこの挙動が続くと、集中力が削られ、結果的に疲労によるヒューマンエラーを誘発しやすくなります。
痛いですね。
逆に、アンチスクワットが弱い車体は、フロント接地感が得やすく、アクセル操作に対して姿勢変化が穏やかになるというメリットがあります。ワインディング初心者やオフロードでのトラクション感を重視する場合には、「多少沈みやすいくらいが安心して開けられる」というライダーも少なくありません。ただし、急な上り坂や重い荷物を積んだ状態では、リアが沈みすぎてサスストロークを食いつぶし、バンプ通過時に底付きしやすくなるというリスクも出ます。
つまり一長一短です。
こうしたメリットとデメリットのバランスを取るうえで、簡単かつ効果が大きいのがリアサスのプリロードと減衰調整です。リアが踏ん張りすぎていると感じる場合は、プリロードを1~2回転弱めてストロークの初期を使いやすくする、逆に加速時に沈み込みが大きすぎるときは、プリロードを1~2回転強めてアンチスクワットの効きと合わせて「支え」を増やす、といった方向性が基本になります。
プリロード調整だけ覚えておけばOKです。
最近は、スマホアプリと連携してサスストロークを記録し、実際にどのくらい沈んだり伸びたりしているかを可視化できるロガーも出てきています。峠1本分、約10kmほどの走行データを取るだけでも、自分のアクセルオンのタイミングとスクワット量の関係が見えてきます。こうしたツールを一度試しておくと、「感覚」で悩んでいたポイントを、「数字」として整理できるようになります。
これは使えそうです。
アンチスクワットが強すぎるときのデメリットやプッシュアンダー発生のメカニズムを詳しく解説している記事です(メリット・デメリット全体の参考)。
アクセルスクワットを理解するには、「荷重移動」という少し抽象的な概念を、具体的な数字と距離感でイメージすることが役に立ちます。たとえば体重70kgのライダーと200kgのバイクの組み合わせなら、合計270kgほどの質量が加速時に前後へ移動します。0.5G程度の中加速がかかった場合、ざっくり全体の10〜20%、つまり27〜54kg分の荷重がフロントからリアへ移っていくと考えると分かりやすいでしょう。
荷重が移動するということですね。
このとき、アンチスクワットが強い車体では、リアサスが伸びる方向に働いて後輪を地面に押し付けるため、フロント側の荷重減少がさらに大きくなります。結果として、リアには従来以上に大きな荷重がかかり、後輪の接地面積は名刺1枚分ほどから、はがき1枚分程度まで広がるイメージでグリップが増えます。逆にフロントは名刺の半分程度まで接地エリアが減り、わずかな路面のうねりやペイントラインの影響を受けやすくなります。
フロント荷重に注意すれば大丈夫です。
参考)ライテクをマナボウ「アクセルを開けると リヤは沈む・沈まない…
一方で、アンチスクワットが弱い車体や、チェーンラインが水平に近いスクータータイプでは、加速時のチェーン張力がリアサスを伸ばす方向にあまり働かず、素直に後ろへ荷重が移るだけの挙動になります。このようなバイクでは、リアサスが沈みやすくなる代わりに、フロント荷重の抜け方が比較的マイルドで、急加速でもハンドルが落ち着きやすいという特徴があります。スクーターでの「じわっと伸び上がる加速感」は、この違いから生まれています。
つまり車種で役割が違うということです。
参考)アンチスクワット機構
荷重移動は、アクセルオンだけでなく、ブレーキングとのつながりでも重要です。ブレーキで前荷重を作り、そのままコーナーへ進入しつつ、頂点に向けてじわりとアクセルを足す「トレイルブレーキング+早めのアクセルオン」では、前後の荷重を大きく動かしすぎず、フロントの接地感を保ったままリアにトラクションを増やしていく操作が求められます。ここでアンチスクワットが強すぎると、ほんの少しアクセルを足しただけで一気にフロントが抜けて「曲がらない」感触に変わるため、ステップワークを含めた姿勢づくりがより重要になります。どういうことでしょうか?
参考)https://www.billion-inc.co.jp/lecture/no9.html
このリスクを減らすために、最近のライディングスクールでは「最初の50%は荷重移動のためのアクセル」「残りの50%で本格的に加速する」という考え方を教えることが増えています。最初の一握りでいきなり大きなパワーをかけるのではなく、リアタイヤに十分な荷重が乗り始めるまでほんの数メートル、時間にして1秒以内程度「待つ」ことを意識するイメージです。この1秒を意識するかどうかで、峠道のコーナー1つあたりの安全マージンは大きく変わります。結論は「待つアクセル」が効くということです。
車体側の工夫としては、リア車高をわずかに下げてアンチスクワットを弱め、荷重移動のスピードを穏やかにするセッティングも有効です。たとえば、リアショックの長さを5mm下げると、シート高で10mm前後、ハンドル位置の前後荷重バランスも数%単位で変わります。東京ドームの屋根をわずか数十cm動かしただけで風の流れが変わるように、数mm単位の変更でもバイクの挙動は体感できるほど変わるのです。
数mm調整が基本です。
荷重移動とアクセルワークの関係を、4輪のドラテク講座として整理しているものですが、バイクにも応用しやすい内容です(荷重移動と「待つアクセル」の説明に対応)。
アクセルスクワットの物理を知ると、日常のライディング操作で「どこからが危ないのか」を具体的に線引きしやすくなります。まず意識したいのは、「アクセルを開け始めるタイミング」と「開けるスピード」です。コーナー出口でバイクがまだ寝ている状態から、いきなり半開度以上にまでスロットルを回すと、アンチスクワットが急激に立ち上がり、フロント荷重が一気に抜けてプッシュアンダーやハイサイドのリスクが跳ね上がります。それで大丈夫でしょうか?
これを避ける基本は、「倒し込み中はアクセル一定か微減速」「向きが変わり始めたらじわっと開け足す」「立ち上がりでバンク角が減ってきたら大きく開ける」という三段階のイメージです。距離にすれば、1つの中速コーナーでそれぞれおよそ10〜20mずつ、全体で30〜60mほどの区間でゆっくりとアクセルを変化させていく感覚になります。はがき3枚並べたくらいの距離ごとに「フェーズが変わる」と覚えるとイメージしやすいでしょう。
三段階が原則です。
直線でのフル加速時には、荷重移動をコントロールすることでフロントの浮き上がりを抑える効果も期待できます。たとえば、2速60km/hからの加速でいきなり全開にするのではなく、最初の0.5秒は3〜4割程度、次の0.5秒で7割、さらに1秒後にフルスロットル、と段階的に開けると、前輪が地面から浮き上がる角度は数度単位で抑えられます。前輪の接地が1cmでも多く残れば、フロントブレーキやステアリング操作の自由度が大きく変わります。
結論は段階的な全開です。
ブレーキとの組み合わせでは、「フロントブレーキから指を離すタイミング」と「アクセルを開け始めるタイミング」を重ねすぎないことが重要です。フロントブレーキを残したまま早くアクセルを足すと、前荷重を急に抜きながら後ろへ移し替えることになり、サスの動きが前後でバラバラになりやすくなります。結果として、フロントが一瞬フワッと浮き気味になった直後に、リア側だけ衝撃を受けるような、不安定な挙動を生みます。アクセルとブレーキの重ねに注意すれば大丈夫です。
こうした操作を体で覚えるには、公道よりもクローズドコースやライディングスクールを活用するのが安全かつ効率的です。最近は半日〜1日で2万円前後の受講料で、加速〜減速〜コーナリングを繰り返し練習できるスクールも増えています。限られた時間で、インストラクターが「今のアクセルオンは早い」「そこで一瞬待てればもっと安定する」といったフィードバックをくれるため、自己流で何年もかけて身につけるより、圧倒的に短い時間と出費で安全マージンを広げられます。
これは使えそうです。
最後に、検索上位ではあまり語られない「アンチスクワットとジオメトリ調整の実務的な結びつけ方」を、ライダー目線で整理しておきます。多くの解説はスイングアーム角度や瞬間中心の図解で終わりますが、実際に調整できるのは「リア車高」「フロント車高」「チェーンのスプロケット径」など、手の届くパラメータです。ここでは、これらを「アクセルスクワットをどう感じたいか」という観点でまとめます。
セッティングが基本です。
リア車高を上げると、スイングアーム角度が大きくなり、一般的にはアンチスクワットが強まる方向に働きます。イメージとしては、スイングアームの付け根が5mm上がると、後輪接地点との角度が1〜2度ほど変化し、瞬間中心の位置が数cm単位で変わる感覚です。結果として、加速時にリアサスが「沈みにくく伸びやすい」特性になり、コーナー出口での踏ん張りと切り返しのキレが増します。
つまりリア上げは踏ん張り方向です。
逆にリア車高を下げると、アンチスクワットは弱まり、リアサスが沈みやすくなります。フロントの接地感が増え、切り返しのときにバイクが落ち着いて動くようになる反面、加速時のトラクションの立ち上がりはややマイルドになります。街乗りやツーリング主体で、「コーナー出口での鋭さより、とにかく安心して開けられることを優先したい」場合には、この方向のセッティングが向いています。
街乗り重視なら問題ありません。
フロント側の車高も、アンチスクワットの「感じ方」に影響します。フロントフォークをトップブリッジから数mm突き出して前下がりにすると、ブレーキング時の前荷重の乗り方が速くなり、アクセルオンとのギャップが大きくなるため、結果的にアンチスクワットの立ち上がりがより強く感じられることがあります。逆にフロントを上げ気味にすると、前後の荷重移動の速度が近づき、アクセルオン・オフでの姿勢変化が穏やかに感じられます。
つまり前後バランスの調整です。
チェーンのスプロケット径変更も、実はアンチスクワットに関わっています。リアスプロケットを数丁大きくすると、チェーンの巻き付き角が変わり、チェーンラインの角度がわずかに変化します。実際の変化量は小さいものの、ショートホイールベースの車体ではこの差が効いてくることもあり、「加速重視セッティングにしたらリアが余計に踏ん張るようになった」と感じる例もあります。
チェーンラインだけは例外です。
こうした変更を行うときは、必ず一度に1項目だけ、量も「街灯1本分の距離」で体感できる程度、つまり車高なら3〜5mm、ダンパーならクリック2つ程度に留めるのがセオリーです。一度に複数のパラメータを大きく変えると、どの変更がどの挙動に効いているのか分からなくなり、迷路にはまりがちです。変更点と距離、感触をメモアプリに残しておくと、「自分だけのアンチスクワット・セッティングノート」ができ、次のバイクに乗り換えたときにもすぐに応用できます。
メモを残すことが条件です。
サスペンション高さと荷重移動の基礎を、数値例とともに解説している記事です(ジオメトリ調整全般の参考)。

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