動摩擦係数とバイクの物理現象|タイヤグリップと制動距離の関係

動摩擦係数とバイクの物理現象|タイヤグリップと制動距離の関係

動摩擦係数とバイクの物理現象

ブレーキをロックさせた方が早く止まると思っていませんか?

この記事の3つのポイント
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動摩擦係数の基本

タイヤと路面の摩擦力を決める数値で、バイクの加速・減速・旋回すべてに影響する

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ロック時の危険性

タイヤがロックすると動摩擦係数が適用され、制動距離が伸びて操縦不能になる

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路面状態と摩擦係数

ドライ路面0.8に対し雨天は0.4~0.6、積雪路は0.2~0.5まで低下する

動摩擦係数とは何か|バイクの走行を支える物理法則


動摩擦係数(μ)は、バイクのタイヤと路面の間で発生する摩擦力の大きさを表す数値です。この係数は、物体が動いている状態での「滑りにくさ」を示し、数値が大きいほど強いグリップ力を発揮します。


摩擦力は「摩擦力(F)= 摩擦係数(μ)× 垂直抗力(N)」という式で計算されます。垂直抗力はほぼ車重と考えて差し支えありません。つまり、バイクの加速・減速・旋回といったすべての動作は、この摩擦係数によってのみ決定されるということです。


これが基本です。


バイクにとって摩擦力は、走る・曲がる・止まるという全ての動作を可能にする最も重要な物理法則の一つです。タイヤの性能と道路の路面状態によってのみこの摩擦力は決まるため、ライダーはこの物理現象を理解して乗車することで、より安全な運転が可能になります。


動摩擦係数は物体が移動する速さにかかわらず不変で、これを「クーロンの法則」と呼びます。


参考)動摩擦係数とは? 静止摩擦係数、応用例、原理、測定方法まで徹…


動摩擦係数と静止摩擦係数の違い|バイクのブレーキングで起こる現象

静止摩擦係数と動摩擦係数は、タイヤの状態によって使い分けられる異なる物理量です。タイヤが回転して路面と噛み合っている通常の走行時には静止摩擦係数が適用され、タイヤがロックして滑走している状態では動摩擦係数が適用されます。


参考)急ブレーキ - Wikipedia


一般的な物体では静止摩擦係数の方が動摩擦係数よりも大きいため、タイヤがロックすると制動力が低下します。急ブレーキでタイヤをロックさせると、動摩擦係数が適用されて逆に止まりにくくなるのはこのためです。


参考)https://oshiete.goo.ne.jp/qa/3020595.html


つまり最大の制動力はロック直前です。


ただし、ゴムタイヤの場合はこの限りではなく、材料特性によって挙動が変わることがあります。それでも限度を超えると摩擦が低下する点は共通しています。ブレーキをかけている際の摩擦係数は、スリップ率が10~20%の間で最大値を示し、スリップ率の上昇に伴って低下していきます。


参考)車の安全を守る「ロック制動摩擦係数」とは? - クルマの大辞…


タイヤがロックした状態(スリップ率100%)では、路面との間に水の膜やゴムの溶解物が発生し、グリップ力がさらに低下してしまいます。この状態では制動距離が大幅に伸び、雨天路のスリップでは停止距離が2倍、凍結路では3倍程度に伸びると考えられます。


参考)ABSとは?本来の目的と欠点を解説。作動原理と有効な使い方


バイクのタイヤと路面の摩擦係数|実際の数値と路面状態による変化

路面状態によって摩擦係数は大きく変化し、ライダーの安全に直結します。舗装路のドライ路面では摩擦係数は約0.8前後ですが、同じ舗装路でもウエット路面になると0.6~0.4まで低下します。


参考)バイクの雨天走行、滑る路面に気を付けて! – 一…


積雪路では0.5~0.2、氷結路では0.2~0.1という極めて低い数値になります。道路での安全な走行が可能な摩擦係数はμ=0.5程度とされており、この数値を下回ると危険性が急激に高まります。


雨天でも0.5が保てる舗装路が主流です。


もう少し詳しく見ると、普段歩いている路面の摩擦係数は0.7~0.9程度(約1)ですが、スケートリンクのように凍った路面では0.1程度まで低下します。濡れた路面では0.4~0.6、一般的な積雪路面で0.25~0.4、圧雪路面では0.2~0.3という数値です。


参考)https://www.bridgestone.co.jp/blog/20161203.html


道路構造令では、走行速度40~60km/hにおいて湿潤路面のすべり摩擦係数は0.33~0.38、雪氷路面では一律0.15と定められています。


参考)https://www2.ceri.go.jp/jpn/koutsu/flyer/flyer_friction_tester-221115.pdf


路面状態の見極めが生死を分けます。


雨天走行時には、特にマンホールの蓋、白線、橋の継ぎ目などで摩擦係数がさらに低下するため注意が必要です。こうした箇所を通過する際は、事前に減速しておき、タイヤに無理な負荷をかけないライディングを心がけることが重要です。急な操作を避け、スムーズな加減速とコーナリングを意識すれば、低い摩擦係数の環境でも安全性を保てます。


動摩擦係数がバイクの制動距離に与える影響|ABSの役割

タイヤがロックするとスリップし、タイヤと地面の摩擦力が低下して制動距離が長くなります。この現象を防ぐために開発されたのがABS(アンチロック・ブレーキシステム)です。


参考)バイクの「ABS」とは? 仕組みや作動時の挙動、CBSとのち…


ABSの主目的は、スリップを防いで思った方向へ進めるようにすることです。タイヤがロックしそうになると、ABSはブレーキ圧を自動的に緩めてロックを解消し、タイヤが回転するとまた制動をかけるという動作を繰り返します。


ハンドル操作が可能になります。


ただし、ABSは制動距離を短くするためのものではありません。ロック寸前のブレーキコントロールが最も強い制動力を得られる状態であり、ABSはロックと緩めを繰り返す間にスリップ時間が発生するため、ブレーキ操作が上手な人よりも制動距離が延びることがあります。


参考)ABSに関する誤解と真の目的!スポーツ走行における注意点とは…


それでもABSには大きなメリットがあります。前輪がロックするとハンドルが効かなくなり、リアタイヤが滑ると横すべりが発生しますが、ABSはこれらを防ぎます。滑りやすい路面でのブレーキ中でも舵をきかせることができ、事故を防ぐことが可能です。


恐怖で判断を誤るのが人間です。


普通のライダーは滑り出してしまうと恐怖からブレーキを放すことができません。ですので、思い切りブレーキを踏み込んでABSを作動させる方が確実で安全なのです。路面が滑りやすいほど長い制動距離が必要になるのは、ABSを装備していない車両と同様です。


参考)ABS(アンチロックブレーキシステム)


緊急時にはABSを信じてフルブレーキをかける練習をしておくことで、実際の危険回避能力が向上します。ABSの作動感覚(ペダルの振動)に慣れておけば、パニックにならずに適切な回避行動を取れるようになります。


バイクのコーナリングと動摩擦係数|グリップ力の限界を理解する

コーナリング中のバイクは、横方向のグリップ力を使い続けています。タイヤのグリップ力には限界があり、コーナリング中に加速や減速をすると、曲がるために使えるグリップ力が減少します。


グリップ力は有限でエンジンパワーはオーバースペックです。ほとんどのバイクはタイヤの性能に対してエンジン性能がオーバースペックであり、不用意なアクセル操作やブレーキ操作は簡単にタイヤの限界を超えてしまいます。


曲がる時はリカバリーが効きません。


コーナリングフォーススリップアングルが10数度で頂点を迎え、その後は徐々に旋回力が下降します。この原因は、タイヤグリップの限界、接地面の部分的な滑り、ねじりが大きくなると接地状態が不均一となりグリップ力が下がることの3つです。


スリップアングルが増大してもグリップ限界に達するとコーナリングフォースが頭打ちになり、それ以上増加しません。つまり、横方向のグリップ力の限界が下がり、狙ったラインよりも外側へふくらんでしまうことになります。


コーナリング中の加減速は避けるべきです。


曲がるためのグリップ力を最大限使おうと思ったら、コーナリング中の加減速はしない方が良いのです。コーナー進入前にしっかりと減速を完了させ、コーナリング中は一定のスロットル開度を保ち、コーナー出口で徐々に加速する「スローイン・ファストアウト」の原則を守ることが、安全かつ速いコーナリングにつながります。


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