

フランジ径を「なんとなく合ってそう」で選ぶと、スポーク1本折れただけでホイールが走行不能になります。
ハブフランジとは、ホイールのハブ(中心部分)に左右一対で備わっている、スポークを通す穴が開いた円盤状の突起部分のことです。バイクのスポークホイールはこのフランジを起点に、リム(外周)へとスポークが張られることで成立しています。規格を理解するうえで最初に押さえるべきは「PCD」と「OLD」という2つの数値です。
PCDとは「ピッチ円直径(Pitch Circle Diameter)」の略で、フランジに開いたスポーク穴の中心を結ぶ円の直径を指します。自転車やバイクのハブでは一般的に38〜67mm程度の範囲に収まる数値です。はがきの短辺がだいたい100mmなので、PCDがおよそ半分以下の円というイメージです。この数値がスポーク長の計算に直接影響します。つまりPCDです。
OLDとは「オーバーロックナット寸法(Over Locknut Distance)」の略で、ハブの左右のロックナット外面間の幅のことです。フロントハブは一般的に100mm、リアハブは130〜148mmが主流です。フレームのエンド幅と一致していないとハブがそもそも取り付けられないため、最初に確認が必要な数値になります。OLDが基準です。
フランジ間距離(センター・トゥ・フランジ)も忘れてはいけない数値です。これはハブの中心から左右それぞれのフランジまでの距離で、左右で異なることが多いです。特にリアハブはスプロケットのスペース確保のためフランジ位置が非対称になっており、この差がスポーク長の左右差につながります。左右差が大きいほど、テンションバランスも崩れやすくなります。
以下のリンクでは、ハブの各種規格とスポーク穴数に関する詳細なデータが確認できます。OLD・PCD・フランジ種類の一覧として参考にしてください。
スポーク穴数はハブフランジ規格の中でも特に実害の大きいポイントです。穴数はリムと必ず一致させる必要があり、ハブが28穴なのにリムが32穴というのはそもそも組めません。一般的なスポーク穴数は20・24・28・32・36穴で、現在の主流は28〜32穴です。36穴は競技用や耐久性重視の用途に使われます。穴数が原則です。
穴数が少ないほどホイールは軽量化できますが、1本あたりのスポークにかかる負荷が増えます。例えば36穴から28穴にすると、スポーク1本の担う張力は約29%増加します。36本で等分されていた力が28本に集中するためで、重量ライダーや積載用途のバイクでは特に注意が必要です。
また、フランジのスポーク穴径も規格の一部です。スポークの太さに対応して、穴径は2.3mm・2.5mm・2.8mm・3.1mmの4種類があります。2.5mmが最も一般的で、太めのスポーク(12番=2.6mm)を使う場合は穴径2.8mm以上のフランジが必要になります。スポーク径とフランジ穴径が合っていないと、スポークの頭がフランジに食い込んで破損の原因になります。
バイク用スポークの番手(太さの単位)は14番(2.0mm)や13番(2.3mm)が主流ですが、モトクロスやエンデューロなど衝撃荷重が大きい用途には12番(2.6mm)が使われることもあります。番手の数字が大きいほど細いというルールは覚えておくと便利です。意外ですね。
フランジ径の大きさによって「ハイフランジ(大フランジ)」と「ローフランジ(小フランジ)」に分類されます。この選択はホイールの剛性・乗り心地・スポーク折れリスクに直結します。それぞれの特性を理解せずに選ぶと、走行スタイルとホイールの性能が噛み合わない状態になります。
ハイフランジの最大のメリットは横方向の剛性が高いことです。フランジ径が大きいほどスポークがリムに対して接線方向に広い角度で接するため、コーナリング時の横力に強くなります。トラック競技やオフロード走行でハイフランジが好まれる理由はここにあります。スポーク長が短くなる分、たわみが少ないのも強みです。
ローフランジの方が現在は主流になっています。軽量化しやすく、スポーク長が長くなることでしなやかさ(路面からの振動吸収性)が生まれ、長距離ツーリングやロードユースに向いています。スポーク穴の間隔が広くとれるため加工もしやすく、現代の多くのホイールハブはローフランジ設計です。
ただし一点注意があります。ハイフランジはスポーク角度が大きくなるため「スポーク首部(エルボ部分)」に曲げ応力が集中しやすいです。正確なテンション管理をしないと、この首部からの折れが起きやすくなります。これはローフランジの方が「折れにくい構造」であるとも言えます。大フランジ=折れにくいは間違いです。
以下のページでは、ハイフランジとローフランジの性能比較が詳細に解説されています。
Artizono:ハイフランジとローフランジの主な違いと性能比較
ハブフランジの規格を正確に把握しなければ、スポーク長の計算が成立しません。1mmのズレが走行中のスポーク折れや、リムテープを破るパンクに直結します。これは単なるカスタムの問題ではなく、安全に関わる話です。
スポーク長の計算に必要な数値は主に4つです。①リムの有効径(ERD:ニップルが収まる位置の直径)、②ハブのフランジPCD、③ハブ中心から各フランジまでの距離(左右別)、④スポーク穴数と組み方(クロス数)です。これら4つが条件です。
実際の計算では三角関数を用いますが、現在はDT Swissが提供するスポーク長計算ツールや、日本語で使える「自転車探検」のオンライン計算器を利用すれば、数値を入力するだけで自動算出されます。これは使えそうです。
スポーク長の許容誤差は「±1mm以内」が一般的な目安です。計算結果が284.6mmなら284mmを選ぶのが基本で、長い側を選ぶとニップルが締め切れなくなるリスクがあります。逆に短すぎるとネジ山のかかりが足りず、テンション不足のままホイールが組み上がってしまいます。テンション管理が条件です。
注意したいのがリアハブです。スプロケット側(フリー側)とその反対側でフランジのセンターからの距離が大きく異なります。例えばロード用130mmOLDのリアハブでは、フリー側は18〜19mm程度、反フリー側は37〜38mmになることがあります。この非対称が左右のスポーク長の差になり、また左右のテンション差の原因にもなります。
| パーツ | 測定項目 | 一般的な数値範囲 |
|---|---|---|
| フロントハブ | OLD | 100mm(スタンダード) / 110mm(Boost規格) |
| リアハブ(ロード) | OLD | 130mm(リムブレーキ) / 135〜142mm(ディスク) |
| リアハブ(MTB) | OLD | 135mm(QR) / 148mm(Boost) |
| フランジPCD | スポーク穴ピッチ円直径 | 38〜67mm(ローフランジ〜ハイフランジ) |
| スポーク穴数 | フランジ片側の穴数 | 20・24・28・32・36穴 |
スポーク長計算ツールが公開されているリンクです。数値を入力するだけで左右それぞれのスポーク長が算出されます。
自転車探検!:スポーク長計算器(PCD・OLD・ERD入力式)
ハイフランジとローフランジの2択で語られることが多いですが、実は「ハイローフランジ(左右異径フランジ)」という第3の設計が存在します。これはリアハブにおいて、フリー側(ギア側)のフランジ径を大きく、反フリー側を小さくするという非対称設計です。あまり知られていません。
なぜこのような設計をするのか。スプロケットを搭載するリアハブでは、ハブ中心からフリー側フランジまでの距離が短くなります(スプロケットのスペース確保のため)。その結果、フリー側スポークのリムに対する角度(ブレース角)が小さくなり、横方向の剛性が落ちます。
ここでフリー側のフランジ径を大きくすることで、スポークの接線方向の角度を擬似的に広げることができます。設計でテンション差を補正する仕組みです。Shimanoの一部ハブや海外ブランドの高級ホイールにこの設計が採用されており、完組ホイールの性能差に関わっている隠れた要素です。
ただし注意点もあります。ハイローフランジは「左右同径ハイフランジ」と比べると、テンション差の改善効果は限定的であるという検証データも出ています。完全にテンション差を解消するためには、フランジ径の差だけではなく、オフセットリム(スポーク穴が中心からズレているリム)と組み合わせるのが現実的な解決策です。つまりオフセットリムが原則です。
手組みでハブを選ぶ際にこの視点を持つと、同じ価格帯のハブでも「どちらが設計として優れているか」の判断基準が生まれます。フランジ径の左右差を意識した選択が、長期的なスポーク折れリスクの低減につながります。
一乗寺バイクトレーディング:ホイール深掘り4 ハイローフランジハブの効果1(左右テンション比率の改善)

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