

生産休止のNS500プラモデルは、現在メルカリで1万円超えの値段がついています。
タミヤのNS500プラモデルの魅力を最大限に味わうには、まず実機の歴史を知っておくことが大切です。ホンダNS500は、1982年から1984年にかけてロードレース世界選手権(WGP)500ccクラスに参戦したワークスマシンです。最大の特徴は当時の主流だった2ストローク4気筒ではなく、挟み角112°の2ストロークV型3気筒エンジンを採用した点にあります。
なぜあえて3気筒だったのか、というのは非常に興味深い話です。4気筒よりパワーで劣るのに勝てた理由は「軽さ」と「コーナリング性能」にありました。3気筒エンジンはクランクシャフトが1軸で済むため、2軸が必要な4気筒よりも大幅に軽く作ることができます。実際、1983年型NS500の車両重量はわずか113.26kgで、当時のライバルマシンと比べて圧倒的な軽量設計でした。軽い車体が生み出すコーナリングの速さで、ピークパワーの差を埋めたのです。
もう一つ語らずにいられないのが「トグロチャンバー」と呼ばれる独特の排気管です。2番シリンダーのチャンバーが最大膨張部付近でいったん180度曲がり、エンジン下部を前方に向かってのびたあと再び180度曲がるという複雑な構造になっています。これはコーナリング時のバンク角を確保するための苦肉の策で、このトグロを巻くような配管がNS500の外見的な最大の個性になりました。プラモデルでも、この排気チャンバーの再現はモデラーにとって腕の見せ所になっています。
1983年シーズンはヤマハのケニー・ロバーツとの死闘が語り継がれています。全12戦でスペンサーとロバーツが6勝ずつを分け合い、最終的にはわずか2ポイント差でフレディ・スペンサーが初の世界タイトルを獲得しました。当時21歳だったスペンサーは史上最年少チャンピオンという記録も打ち立てています。このドラマを知ると、手元のプラモデルが単なる模型ではなく「歴史の証人」に見えてきます。
1984年以降はNSR500に主役の座を譲りましたが、それでもNS500は1984年に4勝、1985年にはランディ・マモラが雨のオランダGPで優勝するなど、後継機に対してもひけをとらない活躍を続けました。つまり、バイクとしての完成度が極めて高かった証拠です。
参考:ホンダNS500の開発背景と技術について詳しく掲載されています。
Honda RACERS NS500誕生の背景(本田技研工業公式)
参考:NS500の主要諸元・レース成績・技術仕様の詳細が確認できます。
タミヤが発売したNS500の1/12スケールキットには、大きく分けて2種類あります。まずNO.32として1984年4月に発売された「Honda NS500 G.P. racer」(初版・スペンサー仕様)、そして2013年6月にアップデートされたNO.125「Honda NS500 '84」です。後者のNO.125は、1984年仕様として新規金型パーツが追加されており、デカールがイタリアの名門カルトグラフ社製に変更されました。カルトグラフ製デカールは発色・薄さ・密着性が別格で、これを目当てに再購入したモデラーも少なくありません。
| 製品 | 品番 | 発売年 | 定価 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Honda NS500 G.P. racer | 14032 | 1984年4月 | 1,760円 | スペンサー/片山仕様・初版 |
| Honda NS500 '84 | 14125 | 2013年6月 | 3,850円 | 新規パーツ追加・カルトグラフデカール |
完成時の全長は165mm(はがきの短辺約148mmよりやや長い程度)、全高は95mmという小ぶりながら密度感のあるサイズです。
肝心の入手状況ですが、現時点でタミヤの公式サイトではNO.14032が「生産休止」扱いとなっています。NO.14125については市販ルートで在庫があることもありますが、人気の高いキットのため模型店での在庫が安定していないことも多いです。
現在の中古市場での価格相場はどうなっているのでしょう?ヤフーオークションでの過去120日間の落札価格は平均5,446円(約135件)ですが、カルトグラフデカール付き限定品などはメルカリで13,999円という高値がつく場合もあります。定価3,850円のキットが3倍以上の値段になっているケースもある、ということです。見つけたときに購入しておく、という判断も賢い選択です。
NS500のプラモデル製作は大きく「フレーム・エンジン組み立て」「チャンバー塗装」「カウル塗装・マスキング」「デカール貼り・研ぎ出し」「最終組み立て」の5ステップで進みます。
まず、フレームとエンジンの組み立てについてです。タミヤのNS500キットはバイクモデルの中でも組みやすい設計で、ランナーからパーツを切り出してフレームを組む段階は比較的スムーズに進みます。エンジンは実機と同じ112°V型3気筒を1/12スケールで精密再現しており、点火コードの1本1本までビニールパイプで配線するディテールが楽しめます。
つまり、組み立てより「塗装」が本番です。
チャンバーの塗装は多くのモデラーが特に力を入れるポイントです。実機のNS500チャンバーはレース後に熱で焼けた金属特有の「焼け色」が出ます。これをリアルに再現するには、銀や黒・茶・青紫などを薄く何層にも重ねていく「グラデーション塗装」が効果的です。この焼け色の再現が上手くいくと、完成品の印象が劇的に変わります。
カウルの塗装はマスキングが必須です。NS500のカウルは白をベースに赤をマスキングで塗り分け、青と黄色の部分はデカールで再現するという工程になります。カウルの曲面部分は特に直線マスキングが難しく、マスキングテープをこまめに細く切って少しずつ当てていく丁寧な作業が求められます。下塗りにはサーフェイサーを使い、塗装面の凹凸を整えてから本塗装に進むと仕上がりが安定します。
キットにはカウル用にホワイトパーツとクリアパーツの2種類が付属しています。これが意外と重要です。クリアパーツに塗装せず素組みで仕上げれば、完成後もカウル越しに内部のV型3気筒エンジンを見ることができます。リアサスペンションには金属製コイルスプリングが使われており、実際に押すとスプリングが縮むギミックも楽しめます。
参考:NS500の実際の製作工程とチャンバー塗装について詳しく掲載されています。
タミヤ ホンダNS500`84 製作 仕上げ編2 – しゅんぱち模型 気まぐれブログ
バイクプラモデルの完成度を大きく左右するのが、デカール貼りと研ぎ出しの工程です。ここが一番の鬼門といっても過言ではありません。
カルトグラフ製デカールの扱い方から解説します。カルトグラフ社製デカールは非常に薄く、発色が優れていますが、その薄さゆえに扱いが繊細です。台紙から離れたら素早く貼り付け位置に乗せる必要があります。位置が決まったら綿棒やデカール専用のブラシで余分な水分を拭き取ります。ドライヤーで軽く温めながらデカールを柔らかくすると、曲面への馴染みが大幅に改善します。
ゼッケンナンバーなどは2重に貼る必要がある部分もあります。慎重に進めるのが基本です。デカールが浮いてしまう箇所には「マークソフター」(デカール軟化剤)を少量塗布すると効果的ですが、カルトグラフ製デカールはドライヤーの熱だけでも十分に馴染むケースが多いです。
デカールを貼り終えたら、次はクリアコーティングです。デカールを保護し、研ぎ出しのベースを作ります。光沢クリアを2〜3回重ねて十分な厚みを確保してから、2000番前後の耐水ペーパーで表面をならしていきます。その後コンパウンドで磨くと、デカールの段差が消えて塗装面と一体化した光沢仕上げが完成します。この工程を「研ぎ出し」と呼び、バイクモデルの完成度を本物らしく引き上げる重要な作業です。
研ぎ出しを失敗しないための最大のコツは「クリア層を十分に厚く作ること」です。薄すぎるとデカールまで削れてしまいます。これが条件です。
仕上げには光沢クリアを最後にもう一度重ねて磨き直すと、まるでカタログ写真のような深みのある光沢が出ます。使用する塗料はガイアノーツのEXシリーズやMr.カラーのスーパークリアなど、模型用の光沢クリアが最適です。塗料選びも仕上がりに直結するため、ここは惜しまず専用品を使いましょう。
| 工程 | 使用アイテム | 注意ポイント |
|---|---|---|
| デカール軟化 | ドライヤー / マークソフター | 熱しすぎるとデカールが溶ける |
| クリアコート | 光沢クリア(2〜3回) | 十分な厚みを確保する |
| 研ぎ出し | 2000番耐水ペーパー | デカールまで削らない |
| 最終仕上げ | コンパウンド+光沢クリア | 鏡面になるまで磨く |
参考:NS500のデカール貼りから研ぎ出しまでの詳細な工程が確認できます。
【バイクプラモ】ホンダNS500をつくってみた(デカール編)– hallyrun
バイクに乗る人間がプラモデルを楽しむとき、単に「かっこいいから作る」以外にもう一段深い楽しみ方があります。それが実機の寸法とキットの縮尺を照らし合わせることです。一般のプラモデルユーザーにはあまり意識されないアプローチですが、実際にバイクを乗り回している人間には「寸法への感覚」が染み付いています。
タミヤNS500のキットは1/12スケールです。完成時の全長は165mmとなっています。実際のNS500は1983年型のホイールベースが1,376mmでした。1/12に縮小すると約115mmになり、キットの全長165mmには車体前後のカウル張り出し分も含まれているため、スケール感としてとても正確に作られていることがわかります。
自分が乗っているバイクのホイールベースを1/12に割ってみてください。手元のNS500キットと比べると、当時のGPマシンがいかにコンパクトで軽量かがリアルに伝わってきます。市販の600ccスポーツバイクのホイールベースがおよそ1,400mmほどであることを考えると、1983年のチャンピオンマシンはほぼ同等のサイズ感でそれより40kg以上軽いということです。これは使えそうです。
さらに、NS500の実機スペックをキットで確認しながら「このパーツが実際には何mmの部品なのか」を逆算するのも面白い楽しみ方です。たとえば、エンジンのV型3気筒は62.6mm×54.0mmのボア×ストロークを持つ498.6ccエンジンです。キット上のエンジン幅(1/12換算)から逆算すると実機のコンパクトさが体感できます。実際に手を汚しながらエンジンを整備した経験があるバイク乗りにこそ、この感覚は響きます。
また、NS500には市販レーサーRS500Rという兄弟車があり、1983年に約600万円で販売されました。関係者によると「売れば売るほど損をする価格設定」だったといわれています。それほどコストをかけた本物のワークスマシンと同等のスペックが、3,850円のプラモデルキットで手元に再現できる——この視点でNS500プラモデルを見ると、その価値がより大きく感じられるはずです。
NS500キットをこれから入手しようと考えている場合、購入方法の選択肢は大きく「新品購入」と「中古・二次流通での購入」の2つです。どちらにもメリット・デメリットがあります。
新品での購入について、タミヤNO.14125(NS500 '84)は生産休止ではなく現在も入手可能な場合があります。ただし模型専門店やネット通販でも常時在庫があるとは限りません。Amazon・ヨドバシカメラ・ビックカメラなどの大手通販サイトで定期的に在庫をチェックするか、近隣の模型店に取り寄せを依頼するのが確実です。定価は3,850円(税込)です。
中古・二次流通での購入については、メルカリやヤフーオークションが主な選択肢です。ヤフオクの落札相場が平均5,446円であることは先述の通りです。注意点として、中古品は「組み立て途中品」「デカールの一部使用済み」「箱傷あり」などのコンディション差が大きい点です。出品者の説明文と写真をしっかり確認してから入札・購入を判断しましょう。
カルトグラフデカール付きの限定品(過去にタミヤが特別展示で出していたものなど)は市場での価値が高く、13,999円以上の値がつくケースもあります。コレクションとして保持する場合は未組み立て・箱付き完品が条件です。
将来的な入手難リスクについても触れておきます。タミヤのオートバイシリーズは旧金型のキットが次々と生産休止になっており、NS500系もいずれ同様になる可能性は否定できません。気になっているなら早めに入手しておくのがリスクヘッジになります。「いつか作ろう」と思っていたキットが数年後に3倍の値段になるというのは、プラモデルの世界ではよくあることです。痛いですね。
ちなみに、完成品のプラモデルとして購入したい場合はタミヤのマスターワークコレクションシリーズも選択肢です。こちらはプロが塗装・組み立てた完成品として販売されており、より高額(一般的に1万5,000円〜3万円台)になりますが、製作の手間なしにディスプレイコレクションとして楽しめます。実際に「Honda NS500 グランプリレーサー '83 No.3(完成品)」などがM's PLUSなどの専門店で流通しています。
参考:タミヤ1/12 Honda NS500 '84の商品詳細・スペックはこちら。
タミヤ 1/12 オートバイシリーズ Honda NS500 '84(タミヤ公式)