

軽量ホイールに交換すると転倒リスクが18%増える可能性があります。
バイクの重心位置は、ホイールベースの中央で高さがホイールベースの1/2にあるのが理想とされています。例えばホイールベース1400mmのバイクなら、重心高は700mm(成人男性の腰の高さ程度)が最適です。この位置に重心があると、ウィリー限界・ジャックナイフ限界・ホイールスピン限界の3つがバランスし、総合的な運動性能が最大化されます。
重心が前寄りだと安定性志向、後ろ寄りだと操舵性志向になります。また上下では、高い位置に重心があると安定性重視、低い位置だと操縦性重視の特性になるのが一般的です。軽いエンジンは高めに、重いエンジンは低めに配置するのが基本的な設計思想です。
路面とタイヤの摩擦係数がμ=1.0(一般道の舗装路と通常タイヤの組み合わせ)の場合、直角二等辺三角形の関係が理想のパッケージを示します。つまり、ホイールベースと重心高の比が2:1という構成が、物理的に最もバランスの取れた状態です。
制動時には前輪タイヤに300Kgfを超える荷重がかかることもあり、質量分布による荷重移動の影響は非常に大きくなります。荷重が大きいほどタイヤのグリップ力も増すため、前輪ブレーキは正しく操作すれば効率的で安定した制動が可能になる仕組みです。
バネ下重量とは、サスペンションのスプリングより路面側にあるパーツ全体の重量を指します。具体的には、タイヤ、ホイール、ブレーキキャリパー、ディスクローター、スイングアームなどが含まれます。この部分の軽量化は、車体重量の軽量化と比べて10~15倍の効果があると言われています。
参考)バイクで言う「バネ下重量」って何? 軽いと良いコトあるんです…
明確な根拠はありませんが、バネ上の軽量化よりも効果が大きいのは確かです。バネ下重量が軽ければ軽いほど、サスペンションは路面の凹凸やバンプに素早く反応できます。特にブレーキや加速バンプなど、繰り返し発生する高頻度の衝撃に対して、この反応速度の違いが顕著に表れます。
参考)バネ下重量を軽くすると何が変わる? 重さだけでなく慣性も減ら…
バネ下重量が大きい場合、車輪は路面のうねりに追従することが困難になり、ショックアブソーバーが吸収する前にうねりが発生してしまいます。慣性がショックアブソーバーの吸収能力を超えると、路面の凹凸ごとに車輪が離陸したり、振動が持続したりする現象(チャタリング)が起きる可能性があります。
レーサーなどでは、バネ下重量を軽くするために軽量なパーツを使用したり、削って軽くしたホイールを採用する場合もあります。バネ下重量の中でも特に大きな割合を占めるホイール重量は、バイクの加速・減速・旋回といった基本動作に大きく影響するためです。
参考)バネ下重量 - ヤマハ バイク ブログ|ヤマハ発動機株式会社
マスの集中化とは、エンジンなどの重いパーツを車体の重心付近に集中的に配置する設計手法です。重量物を前後に分散させず、できるだけ車体中央の重心位置に配置することで、運動性能が向上します。車体の軽量化とバネ下荷重の低減を組み合わせれば、さらに効果を高めることができます。
参考)マスの集中化とは?重量物を重心付近に配置して運動性能を向上【…
マスが集中しているバイクは、実際の車両重量よりも軽く感じられます。寝かし込みが軽くなり、コーナーリング中の安定感も高まるのが特徴です。また、加速・減速時の姿勢制御がしやすくなり、スリップなどによる姿勢の乱れを収束させやすくなるメリットもあります。
参考)https://ameblo.jp/jq2abv/entry-12199649402.html
物理的には、慣性モーメントの原理で説明できます。質量が回転軸から遠いほど、慣性モーメントは指数関数的に増加します。そのため、重量物を重心から離れた位置に配置すると、バイクの向きを変える際により大きな力が必要になるわけです。
参考)「ホイールが軽ければ速い」は本当か?ロードバイクの神話を解体…
逆に言えば、マスを集中させることで慣性モーメントが小さくなり、少ない力で車体の向きを変えられるようになります。これがバイクにとっていいことづくめなので、ニューモデルのカタログには「マスの集中化が図られ…」という文言が頻繁に登場します。
ホイールが回転すると、その回転軸を維持しようとする性質(ジャイロ効果)が働きます。ホイールが重く、特に外周部に質量が集中しているほど、この効果は強くなります。ホイールの重量の中でも、ハブやスポークの内側よりも、リムやタイヤ、チューブといった外周部の重量が回転性能に大きく影響する理由がここにあります。
ジャイロ効果は前輪の回転によって主に生じ、バイクの安定化に寄与します。一方、後輪は角運動量保存の法則によって安定性に貢献しており、前輪と後輪が共同して作用することで、バイクが安定して走ることができます。エンジン回転数を上げると車体が安定するのも、クランクシャフトという重量物の回転数が増し、角運動量を増加させるためです。
しかし、ジャイロ効果が強すぎると操縦性に悪影響を及ぼす場合もあります。重いホイールはジャイロ効果が強く、直進安定性は高まりますが、素早いハンドリングや進路変更が難しくなります。これがホイールの軽量化のメリットとされる理由の一つです。
回転する物体のエネルギーには、並進運動エネルギーと回転運動エネルギーの2種類があります。並進運動エネルギーは物体の質量と速度の2乗に比例し、回転運動エネルギーは慣性モーメントと角速度の2乗に比例します。ホイールの場合、両方のエネルギーが同時に作用するため、その影響は複雑です。
バイクの前後重量配分は、車種やライディングスタイルによって最適値が異なります。20年前と近年のスーパースポーツを比較すると、重量配分の設計思想が進化していることがわかります。一般的には、前輪で40~45%、後輪で60~55%の荷重を受けるのが適切とされています。
参考)重量配分 (質量配分、weight distribution…
前輪の荷重割合が大きすぎると、特に下り坂において制御性および操作性が悪くなります。一方、後輪の荷重割合が大きすぎると、コーナリングでの制御性が悪くなり、坂下りでシミー(ハンドルの振動)が起きやすくなります。重量配分には、車輪に対するシート位置などのフレーム形状・寸法および乗車姿勢が影響します。
実際の重量配分を測定した例では、人が乗った状態で前:後=36:64という報告があります。また、自転車工学の専門書では、前後のバランスは45:55がベストで、50:50以上前に荷重が偏ると危険との意見もあります。これらの数値は、バイクにもある程度当てはまると考えられます。
参考)自転車の世界ではあまり言われないが前後重量配分は重要だろう
加速時や制動時には、荷重移動が発生します。加速時は後輪に荷重が移動し、制動時は前輪に荷重が移動するため、重量配分の設計はこれらの動的な状況も考慮する必要があります。前後重量配分は、バイクの基本特性を決定する重要なスペックの一つなのです。
質量分布の最適化として軽量化を行う際には、メリットだけでなくデメリットも理解しておく必要があります。軽量化の最大のメリットは、加速性能の向上と登坂能力の改善です。特にヒルクライムでは、勾配が急になり速度が低下すると空気抵抗の影響が減少し、代わりに重量が支配的な要因となります。
参考)ロードバイクの過度な軽量化は意味がない、軽量化によるメリット…
しかし、過度な軽量化にはデメリットもあります。
まず、快適性を損なう可能性があります。
例えば細いタイヤは軽量ですが、エアボリュームが少なくなるため乗り心地が悪化し、路面の凹凸を拾いやすくなります。また、下り坂で遅くなるという意外な現象も起こります。
参考)ロードバイクの軽量化のメリットとデメリット!軽量化に効果の高…
速度が速くなると、重い車両の方が安定します。軽い車体だと、わずかな路面ギャップで車体が跳ね、乗り心地が悪化するのです。高速巡航に弱くなるのが、軽量化の最大のデメリットと言えます。パーツによっては耐久性が落ちる可能性もあり、コストもかかります。
空力性能と重量のバランスには「転換点(Tipping Point)」が存在します。重量の利点が空力性能の利点を上回る速度域と、その逆の速度域があるのです。この転換点は、ライダーのパワーウェイトレシオ(PWR)に大きく依存します。
適切な軽量化を施したバイクは、明らかにパフォーマンスの向上を見込めます。重要なのは、どの部分をどの程度軽量化するか、自分のライディングスタイルに合った最適化を行うことです。全体的なバランスを考慮した質量分布の最適化が、真の性能向上につながります。