

取説に書いてないストレーナーを放置すると、エンジン焼き付きで修理費が10万円を超えることがあります。
バイクのメンテナンスで「ストレーナーメッシュ」という言葉が出てきたとき、「なんとなく細かさの単位だろう」と感じる方は多いはずです。その感覚は正しいのですが、正確に理解しておかないと、互換品を選ぶ際に大きなミスを犯す原因になります。
「メッシュ(mesh)」とは、1インチ(25.4mm)の長さの中にいくつの網目が存在するかを表す数値です。たとえば50メッシュのストレーナーには、1インチあたり50個の開口が存在することになります。これは数値が大きくなるほど網目が密になる、つまり目が細かくなることを意味します。
ここで注意が必要なのが、メッシュ数は「目の細かさ」を間接的に示しているだけという点です。実際の目の大きさ(目開き)は「μm(ミクロン)」という単位で表されます。目開きは以下の計算式で求めることができます。
| メッシュ数 | 目開きの目安(μm) | イメージ |
|---|---|---|
| 20メッシュ | 約840μm | 粗めの砂糖粒くらい |
| 60メッシュ | 約250μm | 小麦粉よりやや粗め |
| 80メッシュ | 約180μm | 薄手の紙の厚みほど |
| 100メッシュ | 約150μm | 髪の毛の直径に近い |
| 200メッシュ | 約74μm | 花粉より少し大きめ |
つまり、メッシュ数です。ただし、この目開きの値はネットを織る線材の太さ(線径)によっても変わります。同じ100メッシュでも、線径が違えば目開きが変わるということです。これが「メッシュ数だけで選ぶと失敗する」理由の核心になります。
線径が細いほど目開きは大きくなり、太いほど小さくなります。バイクのパーツを購入するときにスペック表を見て「メッシュ数が同じだから大丈夫」と判断するのは要注意です。
参考:ストレーナー・フィルターの選び方(メッシュサイズの仕様)について詳しく解説されています。
ストレーナー・フィルターの選び方(メッシュサイズの仕様)|株式会社バンテック
バイク用パーツを海外通販や互換品で揃えようとしたとき、同じ「100メッシュ」と表記されていても国際規格によってわずかに目開きが異なる場合があります。これは、主要な3規格がそれぞれ独自の計測基準を持っているためです。
主な規格の概要を整理しておきましょう。
- 🇯🇵 JIS(日本産業規格):日本国内で広く使われる規格。主に「目開き(mm・μm)」で管理される。フィルターのメッシュも金属線材のJIS規格に準じており、純正部品の多くはこの規格を参照している。
- 🇺🇸 ASTM(米国材料試験協会規格):アメリカを中心に使われる工業規格。メッシュ数と開口サイズが細かく定められており、海外製バイク用品に多く使用される。
- 🌍 ISO(国際標準化機構規格):グローバルに通用する国際標準規格。ヨーロッパ製パーツや輸入車向けパーツに多い。
3つの規格は完全に一致しているわけではありません。たとえば「80メッシュ相当」と表記されたパーツであっても、JIS換算とASTM換算では目開きが10〜20μm程度ズレる場合があります。これは工業用途では大きな問題になることがあります。
バイク用途での現実的な対応策は、規格よりもμm単位の目開きで確認することです。「何メッシュか」ではなく、「目開きが何μmか」を購入前に必ずチェックすることが重要です。互換品の場合、製品の仕様欄にミクロン表記があるものを選ぶと安心です。
参考:フィルターの単位「メッシュ」について、規格・ミクロン換算・目開きの詳細を解説。
フィルターの単位「メッシュ」について|粗さ・ミクロン・目開き・規格|タントレー
バイクの燃料コック(フューエルコック)やキャブレターの上流には、燃料タンク内のゴミやサビを除去するためのストレーナーメッシュが組み込まれています。ここで使われるメッシュの番手(メッシュ数)が適正でないと、2種類の深刻な問題が起きます。
目が粗すぎると、タンク内のサビ粒子や細かいゴミがキャブレタージェットやインジェクターの噴射口に入り込み、燃料供給不良を引き起こします。インジェクターの噴射口径は非常に小さく、わずかな異物でも詰まりが起きます。
反対に、目が細かすぎると流量不足になります。燃料がエンジンの要求量に追いつかず、高回転域でのガス欠症状や走行中のエンジン停止を招くことがあります。
一般的にバイクの燃料コックに使われるストレーナーメッシュは、60〜80メッシュ(目開き180〜250μm程度)が多く採用されています。電磁弁が入る系統では80メッシュ以上が推奨されるケースもあります。
特に注意したいのが、旧車(1980年代以前のモデル)に多い真鍮製ネットのストレーナーです。これは年月とともに破れたり変形したりすることがあり、メッシュが一部欠けた状態で使い続けるとゴミが素通りしてしまいます。「ストレーナーが付いているから大丈夫」という思い込みが危険なのです。
燃料フィルターを別途インライン(燃料ホースの途中)に追加する方法もあります。デイトナなどのメーカーから、バイク用ホース内径φ6〜φ8mm対応のものが1,000〜2,000円程度で入手でき、有効な二重保護になります。
参考:燃料コックのストレーナーの状態確認・修理再生方法を写真付きで解説。
キャブいじり その11 フューエルコックのストレーナー|バイクブロス
ここが多くのバイク乗りにとって、最も見落としやすいポイントです。
オイルストレーナーとは、オイルポンプの吸入口近くに設置された金属メッシュ製のろ過器です。エンジン内を循環するオイルを吸い上げる際に、スラッジや金属粉などの大きめの異物を取り除く役割を担います。オイルフィルター(ろ紙タイプ)と異なり、洗浄して繰り返し使えるのが特徴です。
問題は、多くのバイクの取扱説明書にオイルストレーナーの清掃時期が明記されていないという事実です。たとえばヤマハNMAX155(2020年モデル)の取説でも、オイルストレーナーの清掃タイミングは記載されていません。多くのライダーがオイル交換はしていても、ストレーナーの清掃を一度もしたことがない状態になりがちです。
これは非常にリスクが高い状態です。
オイルストレーナーキャップはエンジン下部にあり、ドレンボルトよりも低い位置に設置されています。オイル内の汚れや金属粉はキャップ内部に沈殿しやすい構造になっており、ストレーナーのメッシュ面に徐々に蓄積していきます。オイル交換だけを繰り返してストレーナーを清掃しないと、詰まりが進んでオイルの通過量が減少し、最悪の場合は油膜切れによるエンジン焼き付きに至ります。
オイルフィルターが機能しない状態が続くと油膜切れが起き、金属パーツが直接触れ合う「焼き付き」が発生します。エンジンが焼き付いた場合、修理費用は場合によっては10万円を超えることもあります。
清掃の目安はオイル交換ごと(多くの場合6,000km程度)が理想的です。ストレーナーをパーツクリーナーで洗い、金属粉が大量に付着していた場合は、エンジン内部の異常(カムチェーン摩耗、クランクシャフトの損傷など)のサインである可能性もあるため、専門店での点検を検討してください。
参考:スクーターのオイルストレーナー洗浄手順と注意点を画像付きで詳しく解説。
気軽に乗れるからこそオイル管理が重要な4ストスクーター|WEBike NEWS
ストレーナーメッシュを選ぶ際、番手(メッシュ数)と同じくらい重要なのが「素材」の選択です。バイク用途で使われる主な素材は3種類あり、それぞれ特性が大きく異なります。
- 🔩 SUS304(ステンレス)製メッシュ:耐食性・耐熱性に優れており、燃料系・オイル系どちらにも適している。ガソリンやエンジンオイルに対して化学的な耐性が高く、長期使用でも劣化しにくい。バイク用の純正ストレーナーや社外品の多くに採用されている主流素材。
- 🔶 真鍮(黄銅)製メッシュ:昭和時代のクラシックバイクに多く使われていた素材。加工しやすく、ハンダ付けで修理・再生が可能なため、旧車のレストアに向いている。ただし現代のバイクには使用例が少ない。
- 🧶 ナイロン・ポリエステル製メッシュ:軽量で柔軟性が高い。ただし耐熱温度が低く、高温になるオイル系統への使用には注意が必要。燃料系の安価な汎用品に多い。
バイク用途では、燃料系・オイル系いずれもSUS304製を選ぶのが基本です。安価な社外品の中には素材表記が曖昧なものもあるため、商品ページでSUS・ステンレスの明記があるものを選びましょう。
なお、旧車で純正ストレーナーが廃番になっている場合、ホームセンターで入手できる真鍮製金網をハンダで筒状に成形して代用する方法もあります。完全な代替にはなりませんが、ストレーナーが全くない状態よりは確実に効果があります。
素材と番手の2軸で考えることが重要です。ただ番手だけ合わせても素材が適切でなければ、ガソリンや熱でメッシュが変質し、逆にゴミをエンジンに送り込むリスクがあります。
整備士レベルのメンテナンス知識として、ストレーナーメッシュを取り外したときの「付着物の状態」でエンジン内部のコンディションを読み取る方法があります。これは取扱説明書には絶対に書かれていない、経験値ベースの知識です。
まず、ストレーナーメッシュに付着している内容物を確認します。以下を目安にしてください。
| 付着物の状態 | 考えられる原因 | 対応 |
|---|---|---|
| 黒いスラッジ(泥状) | オイル劣化・交換不足 | オイル交換サイクルの見直し |
| 銀色の金属粉が少量 | 初期の慣らし摩耗(新車〜1000km) | 慣らし後は正常化するため経過観察 |
| 銀色の金属粉が大量 | エンジン内部部品の異常摩耗 | ⚠️専門店への持ち込みが必要 |
| 赤茶色のサビ状粒子 | タンク内サビ(燃料系ストレーナーの場合) | タンク内錆び取り・コーティング |
| メッシュの一部が破損・欠け | 経年劣化・振動による損傷 | 即交換(異物が素通りしている) |
特に大量の金属粉はまずい状態です。これはカムチェーンの摩耗やクランクシャフトのベアリング損傷など、エンジン内部で進行中のトラブルを示している可能性があります。こういった兆候を早期に発見できるのが、定期的なストレーナーメッシュ清掃の隠れたメリットです。
加えて、インジェクション車ではタンク内にサブフィルターを内蔵した燃料ポンプユニットが使われており、このユニット内のストレーナーメッシュが詰まると燃料ポンプ自体の交換が必要になります。この修理工賃は12,000円前後〜で、部品代を加えると総額が大きくなりやすいです。これも「ストレーナーを普段から管理することで防げるコスト」のひとつです。
参考:バイクのオイルストレーナーの役割・清掃方法・オイルフィルターとの違いをわかりやすく解説。
バイクのオイルストレーナーの役割は?オイルフィルターとの違いや整備法|グーバイク