

チタンマフラーに交換すると、純正比で最大10kg以上の軽量化になり、押し歩きの重さが別物になります。
スチール、つまり「鉄」は、バイクのエキゾーストパイプ素材として最も長い歴史を持ちます。純正マフラーのエキパイに今でも多く採用されているのは、加工が容易でコストを大幅に抑えられるからです。メーカーが量産車に使う素材として理にかなった選択といえます。
スチールの最大の弱点は「重さ」です。同じ形状のマフラーを他素材と手に持って比べると、その重さの違いに驚くライダーも少なくありません。また、鉄本来の性質として錆びやすい点があります。これに対応するため、純正スチール製エキパイにはメッキ処理や耐熱塗装が施されていることがほとんどです。
一方で、スチールならではの魅力もあります。それが「迫力のある低音サウンド」です。材質が固く重いほど低音になりやすいという特性から、旧車テイストの重厚なエキゾーストノートを楽しみたいライダーから根強い支持を受けています。Z1やCB750Fのようなクラシックなバイクに乗っている方にとっては、むしろスチールこそが正解といえます。
つまりスチールは、価格と音にこだわるライダー向きです。社外品でスチール製のエキパイを選ぶ場合、他素材より安価な分「錆対策」と「重量」を割り切って受け入れることが前提になります。錆止めの耐熱塗装を自分でメンテナンスする手間も覚悟しておきましょう。
| 項目 | スチールの評価 |
|---|---|
| 💰 価格 | ◎ 最安クラス |
| ⚖️ 重量 | ✕ 重い |
| 🛡️ 耐食性 | △ 錆びやすい(塗装必須) |
| 🎵 音質 | ◎ 重厚な低音 |
| 🎨 デザイン | ○ メッキ仕上げで旧車に似合う |
「ステンレスは錆びないから選ばれる」と思っているライダーは多いですが、それだけが理由ではありません。実はステンレスにはかなりの強度があり、スチールより薄い肉厚でマフラーを成形できるという設計上の大きなメリットがあります。つまり、錆びにくさと軽量化と強度を同時に手に入れられる、非常にバランスの取れた素材なのです。
社外マフラー市場でエキゾーストパイプの素材として最も多く採用されているのがステンレスです。ヨシムラのSUS304仕様をはじめ、モリワキやアクラポビッチなど世界的メーカーも標準グレードのエキパイにステンレスを採用しています。SUS304とは、クロムとニッケルを含むオーステナイト系ステンレスで、耐熱・耐食性に優れた代表的な合金です。
エキパイは走行中に最高500℃近い温度に達することがあります。そのような過酷な環境でも変質しにくいステンレスは、エキゾーストパイプ素材として極めて理にかなっています。純正スチール製エキパイから社外のステンレスエキパイに交換した場合、重量が純正より軽くなることも珍しくありません。
ステンレス製エキパイのデメリットを挙げるとすれば、使用とともに「焼け色」が出てくることです。青みや茶色に変色するのはステンレス特有の現象で、見た目を気にするなら「ステンマジック」のような専用クリーナーで定期的に磨く必要があります。これが唯一の手間といえます。
チタンほど価格は高くなく、スチールよりはるかに扱いやすい。ステンレスが条件です。
ヨシムラジャパン公式:SUS304採用マフラーラインナップ(エキパイ素材・仕様を確認できます)
チタン製エキゾーストパイプへの交換を検討しているなら、軽量化の数字を正確に知っておくべきです。チタンはスチールより約45%軽く、ステンレスの密度(約7.9g/cm³)に対してチタンは約4.5g/cm³と、鉄やステンレスの約60%程度の重さしかありません。
具体的な実例として、インプレッション情報によると「フルエキ・フルチタンで4kgもありません。ノーマルマフラーが14kg以上あるので、実に10kg以上の軽量化」というケースも実在します。10kgの差は、500mlペットボトル20本分に相当します。これだけの重量が車体の低い位置から取り除かれると、コーナリング時の車体の倒し込みが明らかに軽くなり、押し歩きの感覚も別物になります。
軽さが際立ちますね。ただし、価格については正直に覚悟が必要です。フルチタン仕様のフルエキゾーストは、メーカーや車種によって異なりますが、10万〜20万円を超えるものも多く存在します。チタンは強度が高すぎるために切断や曲げ加工が非常に困難で、その加工費が価格に反映されているためです。
また、チタンには「熱が入ると硬化して割れやすくなる」という特性もあります。高熱にさらされ続けることで溶接部にクラック(ひび割れ)が入り、排気漏れを起こすリスクがあります。長期使用する場合は、定期的に溶接部の点検を行うことが原則です。
UP GARAGE コラム:チタンマフラーのメリット・デメリットと選び方のポイント
カーボン(カーボンファイバー)は、「軽くて最強」というイメージを持つライダーが多い素材です。確かにチタンより軽量で、航空宇宙分野でも使われる高性能材料であることは事実です。表面温度が上がりにくく断熱性も高い。これは意外ですね。
ところが、バイクという使用環境においてカーボンには見過ごせないリスクがあります。金属と異なり「粘り」がないため、横方向からの衝撃に対して非常に脆く、割れやすい性質を持っています。具体的には、立ちゴケ程度の衝撃でもカーボンサイレンサーが割れてしまうケースが報告されています。
修理費用がその痛みを数字で示しています。カーボンマフラーの修理・交換は5万〜10万円程度になることが多く、カーボン筒部分の交換だけで4万円を超えるメーカーもあります。駐輪場でバイクが倒れただけでこの出費が発生するリスクがあるということです。
カーボンはサイレンサー外カバー限定で採用されるケースが多いのも、こうしたリスクへの現実的な対処です。エキパイ部分にはステンレスやチタンを使い、サイレンサーの外観だけカーボンにすることで「軽さ・見た目・耐久性」のバランスを取っているわけです。カーボン製マフラーの取り扱いには日常的な保管場所の管理も重要で、紫外線にも弱く、屋外保管が長期間続くと劣化が進む点も覚えておきましょう。
| 素材 | 重量 | 耐食性 | 価格帯 | 衝撃耐性 |
|---|---|---|---|---|
| 🔩 スチール | 重い | △ | 安い | ◎ |
| ✨ ステンレス | やや重い | ○ | 中程度 | ○ |
| 🔥 チタン | 軽い | ◎ | 高い | ◎ |
| 🏁 カーボン | 最軽量 | ○ | 高い | ✕(横方向に弱い) |
エキゾーストパイプはエンジンが動くたびに高熱と振動にさらされます。素材ごとにメンテナンスの方法が異なるため、間違ったケアをすると取り返しのつかないダメージを与えることがあります。これが基本です。
まずステンレス製エキパイに出る「焼け色(青・茶色の変色)」は、専用のステンレス磨き剤(ステンマジックなど)で比較的簡単に除去できます。ポイントは「素手でエキパイに触れないこと」。手の油分が付着した状態で熱が入ると、その部分だけ焦げて取れにくい汚れになります。洗車時はウエスを使って触れるようにしましょう。
チタン製エキパイの焼け色(虹色・ブルー)の取り扱いは全く別の話です。チタンの発色は表面の酸化被膜によるものなので、研磨剤入りのクリーナーで磨くと被膜ごと剥がれてせっかくの焼け色が消えてしまいます。メーカーのアールズ・ギアも「パーツクリーナーや有機溶剤で汚れを拭き取ること」を推奨しており、金属磨きは使わないのが原則です。
スチール製エキパイは錆が大敵です。錆が表面に見え始めたら早急に対処することが大切で、耐熱塗料や防錆スプレーで保護するのが効果的です。海沿いや雪道を走った後は、帰宅後すぐに水洗いして塩分を洗い流す習慣をつけましょう。塩害の影響は海岸から5km圏内では特に顕著で、スチール・ステンレスどちらにとっても腐食の進行を加速させます。チタンは塩分に対しても高い耐性を持つため、海岸沿いをよく走るライダーには特に有利な素材です。
素材に合ったケアが条件です。定期的なメンテナンスを継続することで、どの素材でもエキゾーストパイプの寿命を大きく延ばすことができます。ライディングスタイルや保管環境に合わせて素材を選び、正しいケア方法を実践することが、長期的には最もコストを抑えることにつながります。
アールズ・ギア公式FAQ:チタンエキパイ焼き色の正しいメンテナンス方法について
Webike:チタン・カーボン・ステンレス各素材の特長と実際のインプレッション比較