

しかし複雑な構造ゆえのデメリットも。
ビモータやVyrusなど採用モデルや仕組み、メリット・デメリットを解説します。あなたのバイクライフにどう影響するのでしょうか?
ハブセンターステアリング(Hub Center Steering, HCS)は、前輪ホイールのハブ内部の中心に操舵軸を配置した機構です。一般的なバイクではメインフレーム前端のトリプルクランプがフロントフォークを支える形ですが、ハブセンターステアは前輪をスイングアーム式で支持し、リンク機構でハブとハンドルを繋ぎます。
この仕組みの最大の特徴は、「衝撃吸収」と「操舵」を完全に分離している点です。後輪同様のスイングアーム式サスペンションで剛性を確保し、ハブ内部の操舵機構がハンドル操作を前輪に伝達します。つまり操舵と衝撃吸収が独立しているということですね。
参考)テージ H2が採用する“ハブセンターステア”ってどんなメカニ…
ハブセンターステア車の前輪ハブは回転せず、ホイールのみが回転する構造になっています。一般的なバイクでは前輪ホイールの中心部のハブがホイールと一体で回転しますが、この機構では操舵のためにハブ部分は固定され、その周りをホイールが回る形です。
参考)【世界一詳しくTESI H2のハブセンターステアリングを徹底…
リンクとロッドを用いて回転→直線→回転という経路を経て、ハンドルと前輪ハブのステーを繋げています。複雑に見える構造ですが、これによりブレーキや路面からの入力が操舵に影響を及ぼさない設計を実現しました。
参考)“操舵” と“衝撃吸収” で常識を覆すハブセンターステアリン…
ブレーキング時のノーズダイブがほぼゼロというのが最大のメリットです。通常のテレスコピックフォークではハードブレーキ時にフロントフォークが大きく沈み込み、キャスター角が変化してハンドリング特性も変わります。
つまり姿勢が崩れやすいということです。
参考)新たなるアガリのバイク VYRUS 984C3 2V &#8…
ハブセンターステアはブレーキ中でも路面の凹凸に追従できるため、車体姿勢やハンドリングの安定度が格段に高くなります。ディメンションが大きく変化しないため、前輪のグリップをしっかり引き出せます。
結論はブレーキ時の安定性が圧倒的です。
コーナリング中の安定感も優れています。横方向の剛性に優れているため、無用なピッチングを起こさず、常に高い安定性を保ちながら軽快な向き変えを行えます。ロール軸が一般的なバイクより遥か下方に位置するため、速度レンジやブレーキの強さによる特性変化が少ないのも特徴です。
中野真矢氏のTESI H2試乗レポートでは、「ストレートでコーナーに向けてブレーキングした時の安定感の高さが際立つ」と評価されています。
プロライダーも認める安定性ですね。
参考)中野真矢が『TESI H2』に試乗!ハブセンターステアリング…
構造が複雑で可動部が多いため、しっかりしたメンテナンスが必要になります。リンク機構やロッド、ベアリング類など点検箇所が一般的なフロントフォークより圧倒的に多く、乗りっ放しでは維持できません。メンテナンスコストは通常のバイクより確実に高くなります。
参考)ビモータ テージ H2の中心機構「ハブセンターステア」の利点…
タイヤ交換は普通のバイクショップでは対応できないのが現実です。特殊な構造のため専門知識と工具が必要で、ビモータやVyrus取扱店でなければ作業を断られるケースが大半です。
これは知らないと困りますね。
加速時にリバウンド量が足りないと感じるシーンがあります。特にサーキットの長い下りストレートの先のカントの少ないカーブでは前輪の存在が希薄になることがあり、かなりのペースで走らなければ不具合を感じませんが、ハイスピード域での限界性能には制約があります。
エンジンやフレームからの汎用が限りなく困難で、車両価格が高額になる要因です。ビモータTESI H2は866万8,000円という価格設定で、一般的なスーパースポーツの3〜4倍の価格帯になります。
つまり導入コストが非常に高いということです。
🏍️ ビモータ TESIシリーズ
ハブセンターステア市販車の代表格で、車名の「TESI」はイタリア語で「論文」を意味します。現社長のピエルルイジ・マルコーニ氏がボローニャ大学在籍中にハブセンターステアを基とした卒業論文を作製したのが由来です。最新のTESI H2はカワサキ製スーパーチャージドエンジンを搭載し、世界限定250台で価格は866万8,000円です。
🏁 Vyrus 984C3 2V
イタリアの鬼才が独自にハブセンターステア研究を続け、2004年に発表した市販車です。ドゥカティのエンジンを搭載し、じつはカラーのみ変更してビモータにOEM供給されていた歴史もあります。ビモータより先にハブセンターステアの量産化に成功したとも言えますね。
参考)【モトコルセ×984C3 2V】イタリアの鬼才が生んだ、究極…
🚀 ビモータ TESI H2 TERA
2025年の大阪モーターサイクルショーで日本初公開されたアドベンチャーモデルです。スーパーチャージドエンジンとハブセンターステアを組み合わせた唯一無二のアドベンチャーバイクで、カワサキが輸入・販売を担当しています。
参考)こんな個性的なアドベンチャーモデル見たこと無い!! 唯一無…
ビモータ以外のほとんどのバイクがハブセンターステアを採用しない最大の理由は、構造の複雑さと特殊性にあります。従来のエンジンやフレームとの汎用性がなく、専用設計が必須なため量産には不向きなのです。
生産コストと車両重量で決定的に不利になります。複雑なリンク機構と専用部品により、テレスコピックフォークの数倍のコストがかかり、重量も増加します。メーカーにとって量産車への採用は経済的に成り立ちません。
参考)Reddit - The heart of the inte…
ライダー側からの入力に対する応答性に違和感があり、慣れるまで時間を要するのも普及を妨げています。一般的なフロントフォークとは操舵フィーリングが異なるため、テストライドだけでは良さを実感しにくく、購買意欲に繋がりにくいのです。
これが市場拡大の壁ですね。
参考)ハブステアのバイクが普及一般化しないのはなぜですか。コスト以…
メンテナンス体制の整備が困難な点も見逃せません。全国のバイクショップで整備できなければ、オーナーは常に専門店への依存を強いられ、維持の利便性が著しく低下します。遠方のオーナーにとっては致命的なデメリットです。
ビモータのような小規模メーカーだからこそ成立するニッチ技術という側面があります。年間数百台の少量生産なら採算が取れますが、大手メーカーが年間数万台規模で生産するには技術的・経済的ハードルが高すぎます。結果として、この機構を近代の市販バイクで実用化できたのはビモータとVyrusだけなのが現状です。
もしハブセンターステア車の購入を検討する場合は、メンテナンス可能な専門店が通える範囲にあるか事前確認が必須です。ビモータ正規取扱店やVyrus専門店の所在地を調べ、定期点検やタイヤ交換の費用見積もりを取っておくと安心です。
ビモータ公式サイトでは取扱店情報と詳細スペックが確認できます
ライダースクラブWebのVyrus詳細記事
ハブセンターステアは圧倒的な安定性と独特の乗り味を提供する一方で、維持コストと利便性でトレードオフがあります。エンスージアストにとっては魅力的な選択肢ですが、実用性重視のライダーには向かない技術と言えるでしょう。