

ホイールを100g軽くしても体感できる差は出ません。
慣性モーメントとは、回転している物体が回転を維持しようとする性質を数値化したものです。物体が回転しにくい、あるいは回転を止めにくい度合いを表します。
参考)慣性モーメントが小さいと速く転がる - ロードバイク自由研究…
この値は物体の質量と回転軸からの距離の2乗に比例します。つまり、同じ重さでも回転軸から遠い位置に質量が集中しているほど、慣性モーメントは大きくなるということですね。
参考)https://okiraku-cycling.com/entry/2021/11/29/110709
バイクにおいては、ホイールやタイヤが典型的な回転体です。リム外周部に重量が集中しているホイールは、ハブ近くに重量があるホイールよりも慣性モーメントが大きくなります。坂道を転がる実験では、慣性モーメントが小さい乾電池(重量22g)の方が、同じ重さのガムテープ芯よりも速く転がることが確認されています。
参考)https://www.goobike.com/magazine/maintenance/custom/30/
ジャイロ効果は慣性モーメント(I)、回転速度(ω)、入力回転速度(Ω)の積で表されます。慣性モーメントが大きく回転速度が速いほど、ジャイロモーメントも大きくなる仕組みです。
回転するコマが倒れないのと同じ原理で、バイクの前輪が回転することで車体の安定性が生まれます。時速20〜30km以上の速度域では、このジャイロ効果がバイクを自立させる主要因になります。
ただし、車輪の半径が小さくなると回転速度は上がりますが、慣性モーメントは半径の2乗で減少するため、最終的にジャイロ効果は車輪の半径に比例します。つまり小径ホイールでもバイクは問題なく走れるということです。
バイクがコーナーを曲がるには、ジャイロモーメントに打ち勝つ入力が必要になります。直進時に発生している強力な安定化の力を、あえて崩さなければならないわけです。
参考)https://ridersclub-web.jp/column/technic-774123/
プッシングステアとは、イン側のハンドルグリップを押すことでこのジャイロモーメントに対抗し、車体を傾ける操作方法を指します。実際には、イン側に切れようとするステアリングを「止めている」という感覚に近いかもしれません。
参考)【バランスを崩してリーンする。きっかけはプッシングステア】元…
体重移動だけではバイクは曲がらないというのが物理的な真実です。ハンドル操作のないロボット(ヤマハのモトボット)ですら、ハンドル操作だけで完璧にコーナリングできることが証明されています。ただし、ハングオフなどの体重移動は総重心をイン側に移動させ、実バンク角を深くすることで高速コーナリングを可能にする有効なテクニックです。
参考)バイクは「体重移動では曲がれない」のか? - バイクインプレ…
ホイールを軽量化すると慣性モーメントが減少し、理論上は加速・減速性能が向上します。ジャイロ効果も軽減されるため、車体を傾けやすくなり操縦性が改善されます。
しかし現実には、その効果は思ったほど大きくありません。自転車の実験データでは、リム重量300g分の慣性モーメントに対し、ライダーと機材の合計質量は約65,000gです。その比率はわずか300/65,000、つまり0.46%程度ということですね。
参考)軽量ホイールの定量詐欺と夢と現実について|続けろ自転車。血ヘ…
むしろリム外周部が軽すぎると、ペダリングが乱れてパワーをかけづらくなるという報告もあります。適度な重量のホイールは、一度スピードに乗ると速度維持が容易になるフライホイール効果を発揮するからです。登坂では軽量ホイールが有利ですが、平地巡航では必ずしもそうとは限らないわけです。
参考)リム外周重量の変化と影響、TPUとブチルを入れ替えて使ってみ…
低速域(時速20〜30km以下)ではジャイロ効果が弱いため、イン側のステップを踏み込む操作が有効になります。これはライダーの体重による作用・反作用を使って車両を傾けるきっかけを作る技術です。
ライダーの慣性モーメントによる反力を利用する方法もあります。ヤマハのモトロイドや村田製作所のムラタセイサク君は、この原理を機械的に制御することで自立を実現しています。トルク(T)はライダーの慣性モーメント(I)と角加速度(θ̈)の積で表されます。
ただし、車速が上がりジャイロモーメントが大きくなると、大きな角加速度を発生させる必要があるため、ステップ荷重だけでは対応が困難になります。高速域では素直にプッシングステアを使うのが基本です。
ブレーキング時にも慣性モーメントは関係します。ハードブレーキング時に両腕でステアリングを押すのは、減速Gに耐えるだけでなく、その力をフロントフォークに伝えて縮め、曲がりやすい車体姿勢を作るためです。手のひらの外側でグリップエンド付近を押すのが基本的なフォームになります。
コーナーの立ち上がりでは、プッシングステアの力を完全に緩めることも多くあります。これにより「力を抜き、セルフステアで曲がる」という感覚が得られます。バイクが物理法則に従って自然に旋回する瞬間ですね。
参考)【バランスを崩してリーンする。きっかけはプッシングステア】元…
二輪工学の専門家による詳細なジャイロモーメント解説(ライダースクラブ)
ホイール軽量化の具体的なメリット・デメリット(グーバイクマガジン)

三菱電機 HG-KR43 サーボモータ HG-KRシリーズ (低慣性・小容量) (定格出力容量 0.4kW) (慣性モーメント 0.371J) NN