

バイク歴60年以上でも、まだ自らサーキットに立ち続けているライダーが日本にいる。
2020年10月、根本健はウェブ・映像プロダクション「株式会社MONSTER DIVE」の取締役事業部長に就任し、新バイクメディア『RIDE HI(ライドハイ)』を立ち上げた。 同メディアはウェブと雑誌を両軸にした形式で、元ライダーズクラブ前編集長の小川勤氏ら同じDNAを持つスタッフが集結して創刊されたものだ。prtimes+1
2026年現在も根本は「RIDE HI プロデューサー」として精力的に活動を続けている。 特にYouTubeチャンネル「ネモケンチャンネル」では「RIDE LECTURE(ライドレクチャー)」シリーズとして、スポーツバイクの操作を科学的・論理的に解説する動画を定期配信中だ。 バイク歴60年超のキャリアから紡ぎ出される言葉は、初心者にとっても長年乗っているライダーにとっても学びが多い。これは大きな財産です。
また、根本は2020年にエイ出版社の専務取締役も退任している。 エイ出版社は2021年に経営破たんし、『ライダースクラブ』等は実業之日本社へ事業譲渡されたが、根本自身はすでに新天地で新しいメディアを築き上げていた。 結果として、彼の先見性が証明された形になっている。
参考:根本健の最新記事一覧はRIDE HI公式サイトで確認できます。
根本健は現在も、ただ情報を発信するだけでなく、ライダーと直接向き合うイベントを主催している。 RIDE HIが定期開催する走行会「BIKE GATHERING」では、サーキットを舞台に根本本人からレッスンを受けることができる。 「初心者大歓迎」を掲げており、敷居が低いのが特徴だ。
繰り返し乗るだけでは上達しないという考え方が根本のライテク哲学の核心にある。 彼は「なぜ・どうして」その操作が有効なのかを理解しないまま走り続けても、同じ勘違いを繰り返すだけだと明言している。 つまり「体で覚える」より「頭で理解する」が原則です。
怖さを伴う練習もNGというのがネモケン流だ。 不安にならない方法で正しい操作を体感させ、その違いを積み上げていく指導スタイルは、60年超の経験に裏打ちされた独自メソッドといえる。 転倒リスクを減らしながら確実に上達できるという点で、バイクに乗り始めて間もない人ほどメリットが大きい。
参考:走行会の詳細スケジュールや申し込み情報はこちら
BIKE GATHERING イベント情報 | RIDE HI
根本健のプロフィールを語るうえで欠かせないのが、1973年に達成した全日本ロードレース選手権セニア750ccクラスのチャンピオン獲得だ。 これは全日本選手権史上初めてプライベーターとして獲得したタイトルであり、当時いかに異例の快挙だったかがわかる。 しかも対戦相手の片山敬済(後の世界チャンピオン)との接戦を制してのことだ。wikipedia+1
その後の1975年から1978年にかけてはヨーロッパへ渡り、ヤマハTZ250で世界GP(WGP)にプライベーター参戦した。 当時のWGPは、メーカーワークス以外の日本人ライダーが予選に並ぶこと自体が異例であり、根本はエントリーを受理させるだけでも各国の主催者と直接交渉を重ねた。 意外ですね。プロフェッショナルとしての交渉力と行動力がすでにこの時期に現れている。
帰国後の1978年には『ライダースクラブ』編集長に就任し、17年間にわたって日本のバイク雑誌文化を牽引した。 当時のWGPで築いた人脈を活かして他誌を上回る取材力を発揮し、他誌から抗議が来るほど優位な情報を掲載し続けたという逸話も残っている。 結果として「走れて書けるジャーナリスト」という独自のポジションを確立した。wikipedia+1
参考:根本健の詳細な経歴はWikipediaにまとめられています。
ネモケンのライテク動画シリーズの中でも特に反響が大きいのが、「リーン(車体を傾ける操作)」に関する解説だ。 ほとんどのライダーが「腰をズラしたり肩を横へ動かすことでバイクが傾く」と思い込んでいるが、これは誤解だと根本は指摘している。 実際には、上半身を動かすと車体はいったんアウト側に蛇行してしまう。
正確なリーンの開始点を知らないから、タイミングが毎回ばらつくのだと根本は説明する。 「肩も腰も可能な限り動かさない」「体幹をイン側の下へ移動させる」というのが正しい操作の核心だ。 多くのライダーが長年やり続けてきた動作が、実は逆効果だったということになる。これは使えそうです。
この「頭で理解して体に落とし込む」アプローチは、根本が1975年のWGP初参戦後にジャコモ・アゴスチーニに言われた言葉——「徐々に徐々にじゃ通用しない世界だ」——に象徴されている。 世界トップのライダーたちとの対話が、現在のライテク指導にも受け継がれているということだ。 60年のキャリアが、1本の動画に凝縮されている。
参考:リーン操作を解説したYouTube動画はこちら(RIDE HI公式チャンネル)
リーンは上半身を使わず、クイック且つ正確に!|RIDE LECTURE 067|RIDE HI
根本健が一貫して主張するのは、「思うように走れると、バイクの楽しさは何倍にも拡がる」という考え方だ。 スポーツバイクとは単なる移動手段ではなく、正しく操作することで初めてその真価を体感できる乗り物だという姿勢が、彼の活動の根底にある。 速さを求めなくても、操作の精度が上がることで楽しさのレベルは変わる。
1973年に日本初のプライベートチーム「フライングドルフィン」を結成したときから、根本はバイク界に新しい文化を根付かせることに主眼を置いてきた。 当時の全日本ロードレース選手権に賞金レースを導入する働きかけを行い、むつ湾サーキットでは上位ライダーへのスターティングマネー支給まで実現させている。 単に「速く走る」だけでなく、「バイクで食えるシーン」を作ろうとしていた。
現在のRIDE HI発信も、その延長線上にある。 元GPライダーがプロデューサーとして雑誌・ウェブ・動画・イベントを横断して情報を届ける体制は、日本のバイクメディアの中でも異色だ。 バイク歴60年というキャリアが、現在進行形でライダーたちの走りを変え続けている。prtimes+1