

外車に乗っているライダーは、全日本選手権の事前テストで国産4メーカーと同じ時間を走れていません。
2025年のMFJ全日本ロードレース選手権シリーズは、4月20日のもてぎ2&4レースで開幕し、10月26日の第57回MFJグランプリ スーパーバイクレース in 鈴鹿(鈴鹿サーキット)で閉幕しました。主催はMFJ(一般財団法人 日本モーターサイクルスポーツ協会)で、国内最高峰のバイクレースシリーズです。
全7戦の開催地は以下の通りです。
| 戦 | 大会名 | 開催日 | 会場(県) |
|---|---|---|---|
| 第1戦 | もてぎ2&4レース | 4月19〜20日 | モビリティリゾートもてぎ(栃木) |
| 第2戦 | スーパーバイクレース in SUGO | 5月24〜25日 | スポーツランドSUGO(宮城) |
| 第3戦 | 筑波大会 | 6月21〜22日 | 筑波サーキット(茨城) |
| 第4戦 | スーパーバイクレース in もてぎ | 8月23〜24日 | モビリティリゾートもてぎ(栃木) |
| 第5戦 | スーパーバイクレース in 九州 | 9月13〜14日 | オートポリス(大分) |
| 第6戦 | スーパーバイクレース in 岡山 | 10月4〜5日 | 岡山国際サーキット(岡山) |
| 第7戦 | 第57回MFJグランプリ in 鈴鹿 | 10月25〜26日 | 鈴鹿サーキット(三重) |
クラス構成は、最高峰の「JSB1000」を筆頭に「ST1000」「ST600」「J-GP3」の4クラス。さらにMFJ CUPとして「JP250」が併催される形で運営されています。JSB1000の出走マシンは排気量1,000cc以下のスーパースポーツバイクで、ヤマハ・ホンダ・スズキ・カワサキといった国産勢に加え、ドゥカティやBMWといった欧州メーカーも参戦するカテゴリーです。
シリーズ全戦のライブ配信はYouTubeの「motobattleLIVE」チャンネルから無料で視聴できます。これはMFJが公式に提供しているサービスで、現地に行けない場合でもリアルタイムでレースを楽しめます。レース開催日当日に検索するだけで簡単に見つかるため、普段バイクに乗っているライダーにとって非常に便利な視聴手段です。
JRR全日本ロードレース オフィシャルサイト(公式:日程・結果・エントリー情報)
2025年のJSB1000クラスを象徴する出来事は、ヤマハYZF-R1を駆る中須賀克行選手(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)による13度目のシリーズチャンピオン獲得です。これは全日本ロードレース選手権の歴史上、最多タイトル数という圧倒的な記録です。
中須賀選手は今シーズン10レース中5勝を挙げ、第6戦岡山大会で最終戦を待たずにチャンピオンを決めました。優勝94回というJSB1000クラスの通算勝利数も自らの記録を更新しています。最終戦の鈴鹿では練習走行中の転倒による怪我が影響して欠場を余儀なくされましたが、すでにタイトルは確定済みで有終の美を飾った格好です。
年間ランキングの上位は以下の通りです。
| 順位 | ライダー | マシン | 獲得ポイント |
|---|---|---|---|
| 1位 | 中須賀克行 | ヤマハ YZF-R1 | 185pt |
| 2位 | 水野 涼 | ドゥカティ パニガーレV4R | 141pt |
| 3位 | 浦本修充 | BMW M1000RR | 132pt |
| 4位 | 野左根航汰 | ホンダ CBR1000RR-R | 124pt |
| 5位 | 伊藤和輝 | ホンダ CBR1000RR-R | 108pt |
ランキング2位以下は44ポイント差で、中須賀選手の独走ぶりが際立っています。それでも2位の水野涼選手(ドゥカティ)との差が「44ポイント」という数字は、逆に言えば水野選手が途中の転倒やマシン炎上がなければ勝負になっていたことを示しています。それだけに接戦だったということですね。
また、注目すべきはランキング3位の浦本修充選手(BMW M1000RR)です。オートレース宇部レーシングチームに所属する浦本選手は、スペインのスーパーバイク世界選手権(WorldSBK)で経験を積んで帰国。第4戦もてぎでは2レース連続優勝という圧倒的なパフォーマンスを見せました。ただし、欧州の耐久レース「ボルドール24時間耐久」に出場するため第5戦・第6戦を欠場しており、フル参戦していれば中須賀選手を追い詰めていた可能性もあります。
ヤマハ発動機公式:中須賀克行選手が自身13回目のJSB1000チャンピオンを獲得(詳細レポート)
2025シーズンのJSB1000クラスにおいて、ドゥカティとBMWという欧州勢が合計5勝を記録したことは、全日本ロードレース史において歴史的な出来事でした。これがどれほど異例かを理解するには、少し背景を知る必要があります。
全日本ロードレース選手権は長らくヤマハ・ホンダ・スズキ・カワサキの国産4メーカーが支配してきたシリーズです。外国メーカーのマシンがJSB1000クラスで優勝したのは、前年2024年にドゥカティ チーム カガヤマの水野涼選手が挙げたことが初めてという、ほぼ「日本車のみの戦い」が続いていた舞台です。それが2025年シーズンは1年で5勝という形になりました。
外車勢の内訳は、水野涼(ドゥカティ・パニガーレV4R)が3勝、浦本修充(BMW・M1000RR)が2勝です。驚くべき点は、水野選手が第2戦菅生での転倒でパニガーレV4Rのファクトリーマシンが炎上・大破するという致命的なアクシデントに見舞われながら、それでも年間ランキング2位(141ポイント)に食い込んでいることです。
もし菅生でのクラッシュがなければ、国産勢ではなく欧州メーカーのライダーがチャンピオンを獲得していた可能性は十分あります。この事実は、今後の全日本ロードレースの勢力図を大きく塗り替えるかもしれないシーズンだったと言えます。
一方で、気をつけたい構造的な問題もあります。外車勢は「4メーカー合同テスト枠」に入れないというルール上の制約があります。つまり、国産4メーカーのライダーは優遇されたテスト走行時間を確保できる一方、ドゥカティやBMWは天候などコンディションが異なる時間帯に走るしかありません。それでも外車が5勝を挙げたという事実は、マシン性能と中身の充実を強く示しています。
ドゥカティ公式:全日本ロードレース選手権での歴史的初優勝に関するリリース
JSB1000以外のクラスも、それぞれ白熱した戦いが繰り広げられました。各クラスのチャンピオンと特徴をまとめて紹介します。
ST1000クラス はヤマハとホンダを中心とした争いで、ランキング1位には羽田太河選手(ホンダCBR1000RR-R)が113ポイントで輝きました。ST1000は改造範囲が狭い「スーパーストック」規定で戦われるため、マシンの素性そのものが勝敗を大きく左右します。なお、第5戦オートポリスでは濃霧による視界不良のため、ST1000を含む3クラス(ST600・J-GP3含む)の決勝レースが中止になるという異例の事態が発生しました。この場合、予選順位に対してハーフポイントが付与されるというルールが適用されています。
ST600クラス のチャンピオンは伊達翔太選手(ヤマハYZF-R6、98.2ポイント)が獲得しました。ヤマハのYZF-R6勢が上位を独占する展開で、5位以内のライダーのうちホンダのCBR600RRを駆る小山知良選手(4位)が唯一の「非ヤマハ」として上位に食い込みました。つまりST600クラスはヤマハ優位ということです。
J-GP3クラス では尾野弘樹選手(ホンダNSF250R)が155.5ポイントで圧倒的な強さを発揮し、自身5年連続のチャンピオンを達成しました。全7大会を通じてほぼ勝ち続けるという内容で、唯一の黒星は雨のSUGOで若松怜選手(ホンダNSF250R)に敗れた1戦のみ。若手育成の場としての役割も大きいJ-GP3ですが、尾野選手の強さは際立っており、他クラスでは「重量ペナルティ」が課されるほどの存在感です。
また、JSB1000と同じコースを走る「JP250クラス(MFJ CUP)」も注目です。INTERクラス(国際ライセンス)のチャンピオンは竹本倫太郎選手(ヤマハYZF-R3)、NATIONALクラス(国内ライセンス)は本間国光選手(ヤマハYZF-R3)が制しました。250ccクラスですが侮れません。
| クラス | 2025年チャンピオン | マシン |
|---|---|---|
| JSB1000 | 中須賀克行 | ヤマハ YZF-R1 |
| ST1000 | 羽田太河 | ホンダ CBR1000RR-R |
| ST600 | 伊達翔太 | ヤマハ YZF-R6 |
| J-GP3 | 尾野弘樹 | ホンダ NSF250R |
Wikipedia:2025年の全日本ロードレース選手権(全クラス詳細結果・ポイントランキング)
全日本ロードレースをサーキットで観戦する際、「チケット代が高そう」と思い込んでいるバイク乗りは多いです。ところが実際には、意外とリーズナブルな方法があります。
まず、入場料の目安として筑波サーキット大会の前売り券は一般3,500円(2日間通し)、ペアチケットなら2名で6,300円です。一人1,750円という計算になりますが、これは1日分換算でも映画1本分程度のコストです。
さらに注目したいのが「16-23 ZERO円パス」と呼ばれる制度です。モビリティリゾートもてぎや鈴鹿サーキットなどの特定会場では、16歳〜23歳のライダーや若者は入場とレース観戦が無料になる枠が設けられました。2025年のもてぎ大会(第4戦)でも同様の施策が展開されており、2日間の観戦と1日分のアトラクションパスポートがセットになっていました。若いうちからレース観戦の文化を根付かせるMFJとサーキット側の取り組みです。
現地観戦では、「ピットウォーク」への参加もおすすめです。もてぎ大会での実績では、ピットウォークパスが2,500円で提供されており、選手のマシンやチームの装備を間近で見られるまたとない機会です。サーキットのピットエリアは幅がおよそ10〜20mほど(一般道の片側2車線分程度)で、レーサーと観客の距離が非常に近いのが特徴です。
バイクで観戦に行く場合、二輪駐車場が無料または安価に設定されているサーキットが多い点も覚えておくと得します。たとえば筑波サーキット大会では「二輪駐車券」の欄が「−」(無料)と明記されていました。クルマで行くと1,500円の駐車料金がかかるため、バイク乗りには金銭的メリットがあります。
観戦当日の持ち物として、サーキットは屋外で音も大きいため、耳栓・日焼け止め・折りたたみ椅子・防寒具(午前中は気温が低い場合あり)の準備が現実的です。スマートフォンのモバイルバッテリーも欠かせません。
筑波サーキット公式:全日本ロードレース選手権 チケット・料金情報
全日本選手権バイクのレースは、「別世界の話」と感じているバイク乗りも少なくありません。しかし実は、レースで開発された技術が市販車に直接フィードバックされており、自分の愛車に乗ることで間接的にレースの恩恵を受けているという関係があります。
代表的な例がタイヤ技術です。JSB1000クラスではブリヂストンとダンロップが公認タイヤとして採用されており、両メーカーはレースでの実戦データをもとに市販タイヤの開発を行っています。路面グリップの限界や耐摩耗性、雨天でのウェット性能など、一般ライダーが日常的に求める性能は、全日本選手権のサーキット走行で培われたノウハウが生きています。
また、ホンダのCBR1000RR-Rや、ヤマハのYZF-R1は、レース仕様のフレームやサスペンション設計が市販モデルにも反映されています。「ストリートモデル」と「レーサー」の境界線は、年々曖昧になっているということですね。
スズキの「チームスズキCNチャレンジ」も注目すべき存在です。このチームはGSX-R1000Rを「カーボンニュートラル燃料」で走らせるという環境技術検証を目的とした参戦で、脱炭素化の技術開発の場としてもレースが活用されています。現在バイクに乗っている方が意識する「環境性能」という視点でも、全日本選手権は先端の実証実験の場になっています。
さらに、JSB1000クラスに参戦するライダーはほぼ全員が国際ライセンスの保持者で、地方選手権やミニサーキットの草レースを経て、ポイントを積み重ねてきた人たちです。バイクに乗り始めたばかりの段階から「草レース→地方選手権→全日本」という段階的な育成ルートが存在します。これは、趣味でサーキット走行をしているライダーにとっても、「観戦するだけではなく、参加する側になれる可能性」があることを意味しています。
| 段階 | ライセンス | 代表的な舞台 |
|---|---|---|
| 入門 | 国内Bライセンス | ミニバイクレース・草レース |
| 中級 | 国内Aライセンス | 地方選手権(各サーキット主催) |
| 上級 | 国際ライセンス(国内競技特別許可証) | 全日本ロードレース選手権 |
レースに出るかどうかに関わらず、全日本選手権の観戦を続けることで「速い乗り方・安全な乗り方」の理解が深まることは確かです。観戦の際は「選手がどのコーナーでどう荷重を移動させているか」に注目すると、自分のライディングにも応用できる発見があります。
MFJ公式:始めようモーターサイクルスポーツ(ライセンス取得・参加への道)