

任意保険に加入していても、走行会での転倒修理費は1円も出ません。
「サーキットは速い人だけが行く場所」と思っていませんか。実際は初心者でも参加できる入り口が複数あり、それぞれ難易度・費用・内容が大きく異なります。まずは自分に合ったスタイルを選ぶことが、失敗しないサーキットデビューの第一歩です。
体験走行会は最も敷居が低い選択肢です。大手バイク用品店や各サーキット施設が主催するもので、先導車が付き追い抜き禁止、ライセンス不要、参加費は数千円〜というパレード形式が中心です。「サーキットってどんな場所なんだろう」という段階の方に向いています。ただし自由にコースを走れるわけではないので、スポーツ走行の練習としては物足りないケースもあります。
走行会は、ショップや用品店・タイヤメーカーなどがサーキットコースを数時間貸し切って行うイベントです。ライセンス不要で参加できるものが多く、参加費の目安は1万〜3万円ほど。コースを自由に走れる枠があり、初心者クラス・中級クラスに分けて運営される走行会も増えています。ライテク向上を目的にサーキット走行を始めたいなら、走行会が一番バランスの良い選択です。
サーキットスクールは、サーキット施設が主催するレベル別の講習会です。初心者クラスから上級者クラスまでカリキュラムが組まれており、インストラクター付きで半日〜1日かけてみっちり走ります。参加費の相場は2万円前後と他より高めですが、技術が確実に身に付くという点で費用対効果は抜群です。「最速で上達したい」「一から正しいフォームを身に付けたい」という方はスクールが断然おすすめです。ただし人気が高く、早めに予約しないと満員になりやすいので要注意です。
つまり最初の一歩には走行会かスクールが最適です。
なお走行会の開催情報は、地元のバイクショップやSNS(X・Instagram)での検索が有効です。世話になっているショップに参加の意向を伝えると、頭数が増えることで一人あたりの負担が減るため歓迎されるケースも多いです。
| 種類 | 費用目安 | ライセンス | 自由度 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| 体験走行会 | 数千円〜 | 不要 | 低(先導車あり) | 雰囲気を知りたい方 |
| 走行会 | 1〜3万円 | 不要 | 高(自由走行) | 実際に走り込みたい方 |
| サーキットスクール | 2万円前後 | 不要 | 中(講師付き) | 最速で上達したい方 |
| フリー走行 | 1枠2,500〜4,200円 | 必要 | 最高 | 継続的に走り込む方 |
参考:走行会の種類と参加条件について詳しく解説されています。
初心者がバイクでサーキットを走る方法とは?覚えておきたいルールと準備する物|2りんかん
「装備を全部揃えると高くつく」という印象を持つ方は多いです。これは事実ですが、初回デビュー時に全て買い揃える必要はありません。賢く準備すれば、思ったより低コストでサーキット走行を体験できます。
ヘルメットは最優先です。フルフェイスヘルメットが基本で、走行会によってはセミジェットやハーフタイプは不可とされる場合があります。すでに所有しているフルフェイスであれば、多くの走行会でそのまま使用できます。
レーシングスーツ(ツナギ)は、スポーツ走行枠に参加するなら着用が必須です。ただし最初から購入する必要はありません。クシタニやダイネーゼなどのアパレルメーカー、大手ショップ、一部走行会ではレンタルサービスを提供しており、費用の目安は1着あたり1万〜2万円程度です。「何度行けるかわからない」という段階では、まずレンタルで始めるのが賢明です。
プロテクター類は、バックプロテクターとチェストプロテクター(胸部プロテクター)の2点が特に重要です。脊椎や胸部を損傷すると深刻なダメージを負います。EUが制定したCE規格の認証品であれば安全性の信頼度が高く、CE Level 2が最も基準が厳しいです。これらはツーリング時にも使える安全装備なので、「サーキット専用ではなく普段の安全への投資」として購入を検討する価値があります。
レーシングブーツとレーシンググローブは、安全性を最優先に選びます。ショートブーツはスネの保護が不十分なため推奨されません。グローブは革製で手首カフが長めのタイプを選ぶと保護性能が高まります。
これは使えそうです。
初回デビューにかかる費用の現実的な目安をまとめると、以下の通りです。
合計すると初回は5万〜10万円前後を見ておくと安心です。スーツを購入する場合はさらに費用が上がりますが、ボスコモトなどのメーカーでは一式セット(約10万円)の販売もあり、初期コストを抑える選択肢として参考になります。
参考:サーキット走行に必要な装備とギアの詳細な解説があります。
サーキットを走りたい!どうしたらいいか分からない方に贈るサーキット入門ガイド|RIDERS CLUB
走行会に申し込んで装備を準備しても、愛車のコンディションが万全でなければ本末転倒です。サーキット走行は公道よりも速度域が高く、バンク角も深くなります。日常メンテナンスと基本的に変わらないとはいえ、チェックすべきポイントがあります。
タイヤは最も重要な確認項目です。溝の残量だけで判断するのは危険で、製造年も必ず確認してください。タイヤのサイドウォールには4桁の刻印があり、前の2桁が製造週・後ろの2桁が製造年を表しています。例えば「3422」なら2022年の第34週製造です。製造から3年が経過しているタイヤは、溝が残っていてもグリップ性能が低下しており、サーキットの高速コーナーでスリップするリスクが高まります。走行会での転倒事例を見ると、古いタイヤが原因のケースは少なくないと言われています。
ブレーキパッドの残量も重要です。多くのメーカーが残量1mmで交換指定としていますが、サーキット走行前の実用下限は残量2mmと考えると安心です。サーキットではブレーキを使う頻度と強度が公道より大幅に上がるため、残量が少ない状態で臨むのは避けましょう。
チェーンの張り具合も見落としがちです。緩すぎるとスロットル開閉時のショックが大きくなり、張り過ぎるとリアサスが沈まずスリップの原因になります。ハンドブックに記載された遊び量を確認し、不安があればショップに調整を依頼します。
エンジンオイルは、交換時期が近いなら走行会前に交換しておきましょう。サーキット走行中はエンジンを高回転まで使う時間が長くなり、オイルへの負担が公道の比ではありません。250cc以下の軽二輪は車検がないため、オイル管理を忘れがちな方も多いです。法定点検は12ヶ月・24ヶ月ごとに義務付けられていますが罰則がなく、走行会前が良いタイミングです。
また、ライト・ウインカー・ミラー・反射板などの保安部品は、走行会の規定に従ってガムテープで覆うか取り外す必要があります。転倒時の破片飛散防止が目的です。剥がす際に塗装が一緒にはがれないよう、粘着力に注意して貼りましょう。
整備が基本です。
参考:走行会前の愛車整備ポイントをプロが丁寧に解説しています。
ライテクをマナボウ〈サーキットで遊ぼう!〉走行会の1週間前 愛車のメンテも忘れずに!|KUSHITANI
初めてサーキットを走る前に、最低限のルールを頭に入れておくことで当日の動揺を防げます。難しくはありませんが、知らずに違反すると自分だけでなく他のライダーを危険にさらします。
ブリーフィングへの参加は義務です。走行開始前に必ず行われる事前説明会で、その日の走行スケジュール・ローカルルール・コースイン・コースアウトの方法などが説明されます。初心者こそ積極的に参加し、わからないことは遠慮なく質問してください。後から「知らなかった」では済まない内容が含まれています。
フラッグの意味はサーキット走行の基本中の基本です。主要なフラッグとその意味を以下にまとめます。
コースへの出入りは手足信号で行います。ウインカーが使えないため、コースに入る際は手を挙げて後続車に知らせ、コース端を走りながら走行ラインに加速して合流します。逆にピットに戻る際は、コーナーの手前から手足を上げてインを走り、徐々に速度を落とします。タイミングを逃したからといって急なピットインやピットアウトをするのは厳禁です。
無理に追い越さない・無理に譲らない、この2つは走行会の鉄則です。追い越しは相当な技術差と速度差が必要で、特にコーナーでの追い抜きはリスクが高い行為です。逆に、後ろから速いバイクが近づいてきたとき、焦って急にラインを変えたり速度を落としたりするのも危険です。抜く側のライダーは既に「どこで抜こうか」を考えているので、急な動きこそが接触事故の原因になります。前だけ見て走り続けることが正解です。
早めの休憩も大切なルールのひとつです。サーキット走行は体感よりもはるかに体力を消耗します。集中力が切れた状態で走り続けるのは危険で、ミスを招くリスクが上がります。「もう1周」と思う前にピットに戻る勇気が、安全な走行会を作ります。
厳しいところですね。
多くのバイクライダーが見落としているのが「保険」の問題です。これは知らずにサーキット走行に臨むと、転倒1回で数十万円の自己負担が発生するリスクがある、非常に重要なポイントです。
通常の任意保険(バイク保険)は、サーキット走行中の事故には適用されません。 多くの保険会社の約款に「競技・サーキット走行中の損害は補償対象外」と明記されており、走行会であっても例外なく除外されます。つまり、走行中に転倒してバイクが大破しても、他のライダーと接触しても、通常の車両保険や対人・対物保険からは1円も支払われません。保険証書を改めて確認してみてください。意外と知らなかったという方が多いです。
自賠責保険についても同様です。 自賠責保険は公道走行中の対人賠償を補償するものですが、サーキット(クローズドコース)は公道ではないため、適用外となります。サーキット内での走行中に他のライダーにケガをさせても、自賠責からは補償されません。
意外ですね。
では、どう備えればよいのでしょうか?
サーキット走行専用の保険への加入が対策になります。「レース走行専用保険」「サーキット走行保険」などの名称で、走行会での損害(自車両・自身のケガ・施設賠償など)を補償するサービスが存在します。走行会の運営事業者によっては参加時に加入が必須とされるケースもあります。走行予定日の少なくとも2週間前には問い合わせておくと安心です。
また、多くの走行会では参加時に「自己責任に関する誓約書」への署名が求められます。これはサーキット走行が「自己責任のスポーツ」であることを前提にしているため、事前に内容をきちんと確認することが大切です。
参考:サーキット走行中の事故と通常の自動車保険の関係が詳しく解説されています。
サーキットでの事故は「自動車保険」の適用外!走りたいけどどうすればいい?|WEB CARTOP
参考:サーキット走行専用保険のサービス内容と補償範囲が確認できます。
「峠で練習すれば十分」と思っているライダーは少なくありません。しかしサーキット走行会に一度参加すると、公道での練習との決定的な違いに気づきます。
反復練習ができるという点が最大の強みです。公道では同じコーナーを何度も繰り返し走ることはできません。しかしサーキットでは同じコースを何周も走れるため、「さっきのコーナーで何が悪かったか」「どこでブレーキをかければよかったか」を即座に試行錯誤できます。この反復性こそが技術向上に直結します。
危険のない環境で限界を試せる点も重要です。公道でスポーツ走行に近い走り方をすれば、対向車・歩行者・砂・雨水・段差など予測不能なリスクが常に伴います。サーキットにはエスケープゾーン(グラベル)が設けられており、コースを外れてもすぐに大事に至らない構造になっています。初心者レベルでの転倒はスリップダウンや低速でのグラベル突入がほとんどで、公道の同じ速度域での転倒より結果として安全なケースが多いです。
客観的なフィードバックが得られるのもサーキットならではです。タイム計測器(多くのサーキットで有料レンタルあり)を使えば、毎周ラップタイムが記録されます。「このコーナーを修正したらタイムが縮んだ」という数値での確認が、感覚だけに頼らない成長を生みます。
また、公道で速いライダーが必ずしもサーキットで速いわけではありません。なぜなら、公道と比べてサーキットは速度域もブレーキの使い方も全く異なるからです。「公道では速く走れているから」という自信は、サーキット走行では最初から置いておくくらいが成長を早めます。
これは使えそうです。
さらに、サーキット経験を持つライダーは公道での無理な走りをしなくなる傾向があると言われています。サーキットで心ゆくまでスポーツ走行を体験すると、「リスクの割に公道の峠攻めは割に合わない」ということを体感として理解できるためです。これは安全意識の向上という意味でも、バイクに長く乗り続けるためにも大きな効果があります。つまり上達するだけが目的ではありません。
参考:サーキットがライテク向上に繋がる理由と走行会の魅力が詳しく紹介されています。
一生に一度はサーキットを走ろう ~サーキット初心者のススメ~|バイクの系譜