

CBR1000RRはサーキット専用バイクだから、街乗りには向かないと思っていませんか? 実はCBR1000RR(現行CBR1000RR-R)で15万kmを超えるロングツーリングを楽しんでいるライダーが複数存在します。
ホンダCBR1000RRシリーズは、1992年に登場したCBR900RRをルーツに持つフラッグシップのフルカウルスーパースポーツです。バイク乗りの間では「センダボ」という愛称でも親しまれており、長年にわたってWSBK(スーパーバイク世界選手権)のホモロゲーションモデルとして進化を続けてきました。
2004年に「CBR1000RR」という車名になり、おおよそ2年サイクルでモデルチェンジを繰り返した後、2020年に「CBR1000RR-R FIREBLADE」として大幅刷新されました。「R」が一文字増えたことで名称変更だけでなく、エンジン・車体・電子制御のすべてが別次元の仕様となっています。
現行のCBR1000RR-Rは水冷4ストロークDOHC並列4気筒999ccエンジンを搭載し、最高出力218ps(160kW)を14,000rpmで発生させます。これはMotoGPのRC213Vと同じ81mmボアを採用した本気仕様のエンジンです。車両重量はSPグレードで201kg。東京タワーの鉄骨1本分(約200kg)と同じくらいの重さに、218馬力を詰め込んでいる計算になります。
| 項目 | CBR1000RR(先代・例:SC59系) | CBR1000RR-R(2024年型) |
|---|---|---|
| 最高出力 | 178ps(逆車) | 218ps |
| 車両重量 | 約199kg | 201kg(SP) |
| シート高 | 820mm前後 | 830mm |
| 燃料タンク | 17L | 16L(欧州仕様は16.5L) |
| 車両価格 | 中古で30万〜150万円前後 | 新車 248万6,000円〜(SP:284万9,000円) |
先代CBR1000RRは「乗りやすいリッターSS」として定評があり、他のリッタースーパースポーツと比べてもフレンドリーな印象を持つライダーが多かったのが特徴です。一方、2020年以降のCBR1000RR-Rはサーキット走行に特化した設計となっており、同じCBR1000RRという名前でも乗り味はかなり異なります。これは条件です。
Honda公式:CBR1000RR-R FIREBLADE 主要諸元・製品情報
「サーキット専用バイク」というイメージを持たれやすいCBR1000RRですが、実際にオーナーたちの声を見ていくと、かなり異なる姿が見えてきます。
先代CBR1000RR(SC57・SC59系)に15万kmを超えて乗り続けているユーザーへのインタビューでは、「CBR1000RRは峠や高速道路だけでなく、街中・下道・酷道・長距離走行など全てが楽しめるバイク」という評価が得られています。燃費は下道で16km/L、高速で24km/Lほどで、17Lタンクであれば高速道路での航続距離は約400kmに達します。これは中大型ネイキッドバイクと遜色のない数字です。
低速から高速域まで十分なパワーがあるため、街中では「アクセルほぼ全閉じで流すように走れる」という声があります。コントロールしきれないハイパワーではなく、パワーの余裕が逆に走りを楽にしているわけです。意外ですね。
一方で、現行CBR1000RR-Rに関するロングツーリングのインプレでは、「渋滞路で右太股近辺に猛烈な熱気を感じた」「ライディングポジションがキツく、長時間走行後は手首・首・尻・膝が痛くなる」という正直なレポートも存在します。あるモータージャーナリストは、先代CBR1000RRが「リッターSSの中でロングツーリング適性トップクラス」だったのに対し、CBR1000RR-Rは「ロングツーリングにはあまり向かない部類」に転落したと評価しています。
つまり、先代と現行でツーリング適性は大きく違います。
どちらを選ぶかは、サーキットがメインか公道ツーリングがメインかによって大きく変わります。乗車目的を最初に整理することが大切です。
15万km走ったCBR1000RRオーナーの実走インプレ(baikure.com)
CBR1000RR-Rを語る上で欠かせないのが、充実した電子制御システムです。218馬力というパワーをライダーが安全に扱えるよう、多種多様なデバイスが搭載されています。
まず、走行モードは3段階(モード1・2・3、またはP1/P2/P3)で切り替えが可能です。大まかに「3=レイン」「2=ストリート」「1=レーシング」と考えると理解しやすく、ストリートでは通常「2」が適切です。2024年型からは「低温モード」が追加され、エンジンが冷えている状態ではレブリミットが8,000rpmに自動制限されます。これは突発的なエンジン温度上昇を防ぐ安全機能です。
次に電子制御の具体的な内容を整理します。
特に2024年型に新搭載されたスプリットスロットルは、これまでのバイクでは体験できなかったレベルのスロットルレスポンスを実現しています。「スペック上は従来型と同じ218psなのに、20ps以上パワーアップしたように感じる」というテストライダーの証言があるほど、体感できる差があります。これは使えそうです。
電子制御が複雑に見えるかもしれませんが、公道では基本的に「モード2・セミアクティブサスA(オート)モード」で走ることが推奨されており、設定に悩む前に試乗してデフォルト設定の完成度の高さを体感することが先決です。
2024年型CBR1000RR-R ファイアブレードSP詳細試乗インプレ(Motor Cycle Web)
CBR1000RRの購入を検討しているライダーが最も迷うのが、「先代CBR1000RR(〜2019年)を中古で狙うか、現行CBR1000RR-Rの新車または中古を買うか」という選択です。
先代CBR1000RRの最大の魅力は「フレンドリーな乗り味」です。リッターSSとしては異例なほど乗りやすく、BMW S1000RRやYAMAHA YZF-R1と乗り比べた際に「CBR1000RRが一番乗りやすかった」と感じるライダーが多いという実績があります。燃費も下道16km/L・高速24km/L程度を確保しており、一回の給油で高速なら約400km走れます。中古相場は状態によって30万〜100万円台と幅広く、予算を抑えやすい点もメリットです。
一方、現行CBR1000RR-Rは別次元の走行性能を持ちます。結論から言えば「乗れる人間が限られるが、乗れたときの体験は唯一無二」というバイクです。
2024年型はハンドルグリップ位置が従来型より19mm高く、ステップが16mm低く変更されており、ライディングポジションは以前より格段に改善されています。また中速域のトルクが強化され、ボア81mmのエンジンはRC213V-S(MotoGPのパーツを使った超高級市販車)と共通のチタンコンロッドを採用するなど、スペックの凄みは圧倒的です。
なお、先代CBR1000RRの「持病」として、2009年式に多い電源ハーネスの突然死という事例が知られています。中古購入の際は同年式・同ロットで複数件の発生が確認されているため、整備記録と電装系の状態確認が必須です。整備記録の有無は購入前に必ず確認する、が原則です。
CBR1000RRを購入後にかかるコストは、ネイキッドバイクと比べると高めに設定されていることを理解しておく必要があります。
まず整備費用について。フルカウルのスーパースポーツはカウルの脱着費用がほぼ必ず発生します。整備工場では「カウル脱着費用」という項目が独立して請求される場合があり、簡単なエンジン周りのメンテナンスでも費用がネイキッドより割高になりやすいです。オイル交換は3,000〜5,000kmに1回が目安で、走行距離が多いライダーほどこのコストが積み重なります。
タイヤは消耗が速く、ツーリング用途でもピレリ ロッソコルサで約9,700km、ブリヂストンS21で約17,600km程度が実績としての寿命です(実際の使い方によって異なります)。15万km走行した先代CBR1000RRオーナーの実績データから見ると、グリップと耐久性のバランスが良いのはブリヂストンS21という結論が出ています。サーキット走行がメインならグリップ重視、ツーリングメインなら耐久性重視で選ぶのが基本です。
次に、実際の効果が高いカスタムを3点紹介します。
なお、CBR1000RR-R SPグレードの新車価格は284万9,000円(2024年型)です。これは新型軽自動車の最上級グレードとほぼ同額です。購入後のタイヤ・オイル・整備費を含めると、年間の維持費はネイキッドバイクの2倍程度になるケースも珍しくありません。維持費も含めた総コストで判断することが大切です。
ただし、先代CBR1000RRを中古で入手しっかりメンテナンスすれば、15万km超えの実績が示す通り壊れにくく長持ちするバイクです。定期的なオイル交換と消耗品管理さえ怠らなければ、トラブルなく乗り続けられる可能性は十分に高いと言えます。信頼と安定のホンダ品質がここに如実に現れています。
バイクブロス:CBR1000RR-R ファイアブレードSP 最新試乗インプレッション(2024年12月)