

オーリンズは「最高性能=最高のブランド」だと思っていると、約9.5万円を損するかもしれません。
オーリンズ(Öhlins Racing)は、1976年にスウェーデンで創業したサスペンション専門メーカーです。創業者のケント・オーリン自身がモトクロスの欧州国際レースでタイトルを獲得するほどのライダーであり、父がバイクショップを営む家庭で育ちました。そのバックグラウンドが、「どんな過酷な環境でも最高のパフォーマンスを発揮するサスペンションを作る」という哲学につながっています。
1980年代以降は、MotoGP(ロードレース世界選手権)やWSBK(スーパーバイク世界選手権)のトップチームに次々と採用され、「高性能サスペンション=オーリンズ」というブランドイメージを世界規模で確立しました。重要なのは、この実績が単なるマーケティングではなく、レース現場での勝利によって裏付けられている点です。
代表的な技術としては、フロントフォークの「NIXテクノロジー」と、リアショックの「TTX(ツインチューブ)」方式が挙げられます。どちらも減衰力の安定性と路面追従性を極限まで高めることを目指して開発されたもので、市販モデルにも直接フィードバックされています。
オーリンズの大きな特徴として、「精度の高さ」があります。材料選定から組み付け、最終検査まで厳格な基準を設けており、純正サスペンションと比べて減衰力の再現性が高く、セッティングを変えた際の違いが明確に体感できる点がライダーに支持される理由の一つです。つまり「調整した通りに動く」という信頼感そのものが性能と言えます。
⚠️ なお、元MotoGPチャンピオン担当エンジニアへのインタビューなど複数の情報源によると、同グレードの主要メーカー製品であれば性能はほぼ横並びという見解もあります。オーリンズは確かに高品質ですが、「オーリンズ=絶対最強」という前提で選ぶのではなく、「自分のバイク・走り方・予算に合った1本を選ぶ」という視点で検討することが大切です。
オーリンズの各モデルの特徴・ラインナップ詳細はナップス公式特集ページで確認できます
オーリンズに交換したライダーから「別のバイクに乗り換えたようだ」という感想がよく聞かれます。実際、バイク歴15年以上のライダーがYAMAHA MT-07に約15万円かけてフロントスプリングとリアショックを導入した事例では、「少し波打った路面を『トトン』といなす感じで、質感が高い。ショックを1ストロークで受け止めてしまう」と表現しています。では、なぜこれほど走りが変わるのでしょうか。
まず1つ目の理由は、路面追従性の圧倒的な高さです。道路の細かな凹凸に対してサスペンションが素早く反応することで、タイヤが常に路面をつかんでいる感覚が得られます。これはコーナリングの安定性に直結し、荒れた路面でも車体が暴れにくくなるため、ライダーが安心してアクセルを開けられるようになります。純正との差が最もはっきり分かるのがこのポイントです。
2つ目の理由は、調整機構の「効き」が明確なことです。プリロード・伸び側・圧側などの調整幅が広く、クリック1つで挙動が変わるほど反応が分かりやすい設計になっています。街乗り・峠・高速のそれぞれに合わせて細かく詰めることができ、セッティングを変えるたびに理想の動きに近づいていく過程を楽しめます。これは純正や低価格品にはない体験です。
3つ目の理由は、ツーリング時の疲労軽減効果です。しなやかに動きながらも不要な突き上げを抑えるオーリンズ特有のバランスが、腕や腰への負担を大きく減らします。実際、「走りが軽く感じる」「ツーリング後半でも余裕がある」という声は非常に多く、安全性にも直結します。気持ちに余裕が生まれると、判断も落ち着いてきます。
これが基本です。路面追従性・セッティング精度・疲労軽減、この3点がオーリンズの走りを変える核心です。
オーリンズの「良い」と言われる根拠と技術的背景の詳細解説(COG)
オーリンズのラインナップを初めて見たとき、「TTX」「S46」「S36」などの記号が並んでいて何が何だか分からないというライダーは多いはずです。ここでは主要なリアショックのモデルを比較して、選び方のポイントを整理します。
まずTTX(ツインチューブ・テクノロジー)シリーズは、MotoGPやWSBKで培われた技術がベースのハイグレードモデルです。最大の特徴はツインチューブ構造による「熱ダレのしにくさ」で、長時間の連続走行でも減衰力が変化しにくく、車体挙動が安定します。減衰力の調整変化も非常に明確で、サーキット走行でタイムを縮めたい・ワインディングを本気で攻めたいライダーに向いています。上位モデルのTTX GPは特にレース寄りの特性ですが、TTX(スタンダード)はストリートからスポーツ走行まで幅広く対応します。
次にS46シリーズは、オーリンズの中でも最もバランスが優れた「万能型モノショック」です。46mmという大径ピストンを採用しており、路面追従性が高く、ギャップ通過が滑らか。街乗りから峠まで「ちょうどいい」動きが持ち味で、TTXほどシビアではありません。純正からのアップグレードとして最初に選ばれることが多く、初めてオーリンズを導入するなら検討する価値があります。
S36シリーズは36mmピストンを採用したツインショック構造で、クラシック・ネオクラシック系のバイクとの相性が高いモデルです。「レジェンドツイン」「グランドツイン」「S36P」「S36E」など複数のバリエーションがあり、調整機能の多さやキャラクターが異なります。Z900RS、CB1100、XJRシリーズなどの空冷ネイキッドに乗るライダーは、まずS36系を確認することをおすすめします。
| モデル | 特徴 | おすすめのライダー |
|---|---|---|
| TTX GP | 最高峰・レース直系 | サーキット・本気のスポーツ走行 |
| TTX(スタンダード) | 高性能・扱いやすい | ワインディング好き・スポーツ系 |
| S46 | バランス型・万能 | ストリート〜峠を幅広く走るライダー |
| S36系 | ツインショック・クラシック車向け | ネイキッド・クラシックオーナー |
選び方の基本はこれで十分です。「走る場面」と「バイクの車種・構造」、この2点が絞り込みの起点になります。
オーリンズ製リアサスペンション各モデルの構造・機能を詳しく解説(Webike NEWS)
オーリンズを導入するにあたって「費用は本体代だけで終わり」と思っているなら、それは要注意です。オーリンズの性能を長く維持するためには、定期的なオーバーホールが不可欠で、このコストを最初から計算に入れておくことが大切です。
オーリンズ日本公式(ラボ・カロッツェリア)が推奨するオーバーホールのインターバルは、ストリートユースで走行1万〜2万km、または2年に1度です。レースや過酷な環境での使用の場合は、20時間走行ごとが目安とされています。2万km以内であっても、オイル漏れが確認できた場合は放置厳禁で、すぐに修理が必要です。漏れたオイルに砂や塵が付着すると、より大きな損傷につながります。
🛠️ 公式オーバーホール料金(ラボ・カロッツェリア)
| ショックのタイプ | 基本料金(税込) |
|---|---|
| リアショック(シングルタイプ) | ¥22,000 |
| ツインショック(左右1台分) | ¥33,000 |
| フロントフォーク(正立・倒立・左右1台分) | ¥55,000 |
| ステアリングダンパー | ¥13,200 |
※上記料金にはフルード交換・窒素ガス充填・オイルシール・スライドメタル交換などが含まれます。損傷がある場合は追加部品代が発生します。
「2年ごとに2万円以上かかるのか」と感じるかもしれませんが、逆に言えばオーバーホールさえ行えばほぼ新品同様のフィーリングに戻ります。純正のリアサスペンションは基本的にオーバーホール不可でショックごと交換するしかないのに対し、オーリンズは「直して使い続けられる」ことが大きな違いです。長期間使えばリセールバリューも高く、結果的にコストパフォーマンスは決して悪くありません。
維持コストまで含めて「長く付き合えるサスペンション」として考えると、オーリンズの価値がよりはっきり見えてきます。
オーリンズ公式(ラボ・カロッツェリア)のオーバーホール料金表と依頼方法の詳細
多くのライダーが「オーリンズ=最強のサスペンション」と信じて疑わない傾向があります。確かにブランドとしての実績は本物ですが、この認識が一部のライダーに大きな出費をもたらしているケースがあります。この点は、あまり語られない視点です。
元MotoGPホンダワークスチームのサスペンションエンジニア(ニッキー・ヘイデン選手の2006年世界チャンピオンマシンを担当)へのインタビューによれば、「最新サスペンションで、同グレード製品同士を比較した場合、主要サスペンションメーカーであればほぼ性能面の差はない」という見解があります。理由は、業界でいったん画期的な技術が登場すると他メーカーが追随するため、主要メーカー間では「横並び」の現象が起きているからです。
実際のレース結果もこれを裏付けています。スーパースポーツ300世界選手権(WSSP300)2022年シーズンでは、年間ポイントランキング上位10人中6人がオーリンズでも高価な製品でもなく、別メーカーのサポートライダーでした。また、有力なイタリアの名門チームが2024年シーズンにオーリンズからYSSサスペンションに切り替え、開幕2連勝を飾るという事例も起きています。このとき価格差は約9.5万円でした。
「ブランドで選ぶ」のと「走りに合わせて選ぶ」のは別の話ということですね。オーリンズが優れていないと言いたいわけではありません。高品質で信頼できるサスペンションであることは間違いないです。ただ、「オーリンズだから安心」という理由だけで高いモデルを選んでいると、同グレードの別モデルや別ブランドと比べて数万円以上の差が生まれる可能性があります。
導入を検討する際には「自分のバイク・走り方・走る場所・予算」の4点を整理してから選ぶことが、後悔しない判断につながります。試乗インプレッション動画やショップのスタッフへの相談も、選び方の精度を上げる有効な方法です。
元MotoGP担当エンジニアへのインタビューを含むオーリンズvs他メーカーの性能比較記事

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