

非公認マフラーに替えると、30万円の罰金刑になって前科がつくことがあります。
BMW R nineT スクランブラーは、1,169ccの空油冷水平対向2気筒エンジン(ボクサーツイン)を搭載したヘリテイジスポーツバイクです。最高出力は109ps(80kW)、最大トルクは116Nmを発揮し、街乗りからロングツーリングまで幅広いシーンで乗り手を満足させる実力を持っています。フロントに19インチの大径ホイールを採用しているのがスクランブラーらしい特徴で、アップマフラーと合わせたシルエットは1970年代のアドベンチャーバイクを思わせます。
このボクサーエンジンは横置きシリンダーによる低重心設計が特徴で、同クラスの他社1200cc車と比べても取り回しのしやすさが際立ちます。縦置きクランクシャフトに由来するジャイロ効果も独特で、コーナリング時の安定感に直結しています。つまり「走り」の個性がもともと強いバイクです。
カスタムとの親和性が高い理由は、モジュール式の車体構造にあります。フレームまわりのパーツが標準化されており、社外品との互換性が取りやすい設計になっています。フロントフォーク、マフラー、シート、ハンドルといった主要パーツについて国内外の専門メーカーから豊富な選択肢があり、純正スタイルを残しながら個性を加えることも、大胆にスタイルチェンジすることも自由度が高いのです。
R nineTシリーズは2014年にデビューし、スクランブラーモデルは2016年に追加されました。それ以来、世界中のカスタムビルダーに愛されてきた実績があります。純正でさえ完成度の高いデザインを持ちながら、カスタムの余地が大きいというバランスが、長年にわたって多くのライダーを引きつけ続けている理由です。
参考:BMWモトラッド公式サイト「R nineTシリーズ」スペックページ
https://www.bmw-motorrad.jp/ja/models/heritage/rninet.html
カスタムの中でも最も効果を体感しやすいのが、マフラー(エキゾーストシステム)の交換です。見た目の変化はもちろん、排気音の質と走行フィールが大きく変わります。これは使えそうです。
R nineT スクランブラー向けのマフラーとして人気が高いのは、以下のブランドです。
スリップオン交換(サイレンサーのみ)と、エキゾーストパイプごと替えるフルエキ交換では、費用も効果も大きく異なります。スリップオンは比較的安価(5〜22万円)で車検対応品も豊富ですが、フルエキは30〜60万円を超えることも多く、パワー特性まで変わります。
マフラーが原因で損をするケースは、「安いからと無認証品を選ぶ」パターンです。保安基準に適合しない非公認マフラーを取り付けた場合、道路運送車両法第108条により6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。走行中に取り締まりを受けると整備命令が発令され、それに従わない場合はさらに50万円以下の罰金となることもあります。JMCA認証マークまたはEEC認証の有無をパーツ選びの最初の確認事項にしてください。
参考:不正改造マフラーに関する罰則と保安基準について(消音器の法令ページ)
https://www.tenken-seibi.com/husei/kaizou/syouonki/hourei/index.html
マフラーの次に変化を実感しやすいパーツが、ハンドルとシートです。ライディングポジションが変わるだけで、長距離の疲労感や街乗りの軽快さが大きく改善されます。
ハンドルのカスタムでは、ライザー(ハンドルアップスペーサー)の取り付けが最も手軽な方法です。2,000〜1万円台の製品で上下・前後のポジションを変えられます。一方、社外ハンドルバーへの交換では、ワイドフラットバー(幅約760〜800mm)に替えることでオフロードスタイルを強調できます。ただし、ハンドルを大幅に高くしたり幅を広げたりすると、クラッチホースやブレーキホースの延長交換が必要になることがあります。グーバイクの整備事例でも「社外ハンドルへの交換に伴いクラッチホースの延長交換が必要だった」というレポートが確認されており、工賃込みの総費用は想定より高くなるケースがあります。見た目だけで選ぶのは禁物です。
ホイールのカスタムについては、スクランブラーは標準でキャストホイール(アルミ5本スポーク)を採用していますが、オプションまたは社外品でスポークホイールへの交換が可能です。BMW正規オプションのクロススポークホイールはチューブレスタイプで、R1200GSと同じ規格を採用しています。スポークホイールにするとよりクラシカルなスクランブラールックになりますが、注意点が一つあります。社外のスポークホイールの中にはチューブタイプのものがあり、その場合は万一のパンク時に空気が一気に抜けるリスクがあります。ツーリングメインのライダーはチューブレス対応品を選ぶことを強くすすめます。
シートのカスタムでは、低反発ウレタン素材を使ったシートに替えると、東京〜大阪間(約500km)のロングツーリングでも尻の痛みが大幅に軽減できます。シート高はわずか1cm変わるだけでハンドルとのバランスが変化するため、シート選びと同時にステップ位置も確認しておくのが原則です。
カスタムを始めたいけれど予算感がわからない、という声は多いです。以下は実際の相場感に基づいた予算別プランです。
📦 予算5〜10万円:見た目と音を変える入門カスタム
まず試してみるなら、スリップオンマフラー交換(BEETS製など国内認証品で6〜10万円)か、ハンドルライザー+グリップ交換の組み合わせ(計2〜4万円)が最初の一手です。費用対効果が高く、DIYに慣れていれば工賃を節約することもできます。
🔩 予算10〜30万円:走りと個性を同時に向上させる中級カスタム
この予算帯になると、Akrapovičや REMUSのスリップオン交換(15〜22万円)やサスペンション調整キット(8〜12万円)が選択肢に入ります。LEDヘッドライトやテールランプの交換(5〜8万円)も加えると、夜間の視認性とスタイルが同時に向上します。一般的なバイクカスタム専門店のコンセプトとして「予算の3割を見た目、7割を機能改善に」という目安がよく使われています。これだけ覚えておけばOKです。
💎 予算30万円以上:フルカスタムで世界に1台を作る上級プラン
フルエキゾーストシステム交換(30〜60万円)、タンクやカウルのオールペン(10〜20万円)、スポークホイール換装(15万円前後)などを組み合わせると、同一車種とは見えないほどの個性を出すことが可能です。この段階ではカスタムショップとの綿密な打ち合わせが必要で、BMW専門ショップに相談すると仕上がりの安定性が高まります。
参考:R nineT Scrambler向けカスタムパーツのラインナップ(P&A International)
https://www.peitzmeier.jp/pai/BMW-RnineT_Scrambler.html
カスタムを進めると必ず直面するのが車検(保安基準への適合)の問題です。「かっこよく仕上がったのに車検に落ちた」という事例は、BMW R nineT オーナーのブログやコミュニティでも少なくありません。痛いですね。
マフラーの騒音規制が最も引っかかりやすい項目です。平成22年(2010年)以降に製造されたバイクには近接排気騒音規制が適用され、R nineT スクランブラー(2016〜2023年)はすべてこの対象です。基準値を超える排気音は整備命令の対象となります。JMCA(日本二輪車部品・用品工業会)認証または欧州EEC認証取得品を選べば、車検対応の可能性が高くなります。
灯火類の基準も要注意です。LEDヘッドライトへの交換は人気のカスタムですが、光軸・光量・色温度が保安基準を満たさないものは車検に通りません。日本車両検査協会(JVS)の成績書が付属する製品を選ぶことが条件です。
フェンダーの長さと位置も見落としがちな規制ポイントです。ショートフェンダーに交換する際は、ナンバープレートの位置と傾斜角、後方への泥除け範囲が保安基準を満たしているか確認が必要です。基準では、タイヤ上部を中心とした一定範囲を覆う構造が求められています。
インナーサイレンサーで騒音をごまかす方法は、取り付けがボルト止めや接着剤といった「容易に取り外せる状態」の場合、車検で認められません。リベット固定または溶接が必要になります。これが原則です。
カスタム後に車検を迎える場合、事前にBMW正規ディーラーまたはBMW取り扱い実績のあるショップに「現状確認」を依頼しておくと、当日の予期せぬ車検落ちを防ぐことができます。確認にかかる費用は多くの場合5,000〜1万円程度ですが、それが後に発生しうる数万円の再カスタム費用を防いでくれます。
定番パーツをただ交換するだけでなく、「自分だけのスクランブラー」を作るにはどんな視点があるか、あまり語られない独自アレンジを紹介します。
🎨 電装系の整理と隠し配線化は、見た目の完成度を劇的に上げる方法です。純正状態のR nineT スクランブラーは配線がやや露出気味で、カスタムパーツを追加するほどに配線が増えがちです。防水コネクタを使ってタンク下や車体後部に配線をまとめ、USB電源(IP67以上の防水規格品、2,000〜5,000円)をシート下に隠し取り付けすると、外観はミニマルになりながらツーリング中のスマートフォン充電環境も整います。
🎨 タンクのカスタムペイント・レトロデカールも費用対効果が高い手段です。全塗装(10〜20万円)が難しい場合でも、カッティングシートを使ったストライプ追加(材料費3,000〜8,000円)や、1970年代のBMWバイクのレプリカロゴステッカーを貼るだけで一気にヴィンテージ感が増します。スクランブラーのタンク形状はシンプルな曲面が多いため、DIYでのシート貼り付けが比較的やりやすい車種です。
🎨 タイヤ選びでキャラクターを決める考え方も独自の視点です。R nineT スクランブラーは標準でブロックパターンタイヤ(フロント120/70R19、リア170/60R17)を採用していますが、ツーリング向けのロードタイヤに交換すると、高速道路での直進安定性と燃費が改善します。逆に、より攻撃的なブロックパターンタイヤ(例:Metzeler Karoo Street)に交換するとオフロードスタイルが強まります。同じ車体でもタイヤだけで「街乗りスクランブラー」か「冒険系スクランブラー」かのキャラクターが決まります。
🎨 ツーリング装備との組み合わせは、スクランブラーオーナーに意外と浸透していない発想です。Hepco&Becker(ヘプコ&ベッカー)などのヨーロッパ製キャリアシステムをフレームに取り付けると、ドライバッグやサイドケースをスタイリッシュに固定できます。スクランブラーのシルエットを崩さずに積載量を増やせるため、「見た目はカスタム、使い勝手はアドベンチャーバイク」というコンセプトが実現します。
参考:R nineT Scrambler向けHepco&Beckerのキャリア・サイドバッグシステム
https://www.hepcobecker.jp/pai/BMW-RnineT_Scrambler.html
カスタムは「何を追加するか」だけでなく、「何を省くか」でも個性が出ます。純正のウインカーを極小LEDウインカー(3,000〜8,000円)に交換し、テールをショートフェンダー化するだけで、スクランブラーのシルエットが格段にシャープに引き締まります。これは費用対効果が高い改造の典型例といえるでしょう。いいことですね。
参考:Wunderlich製BMW R nineT Scrambler対応パーツ一覧(日本正規代理店)
https://www.wunderlich-japan.jp/pai/BMW-RnineT_Scrambler.html

バイク用品 2014-2023 Nine T R Nine TピュアレーサーアーバンG/Sスクランブラー BMW K1600B R9Tのハンドルバーライザーが20mm移動