

『仮面ライダー龍騎』におけるライダーバトル、それは鏡の中の世界「ミラーワールド」で行われる13人の仮面ライダーによる生き残りゲームです 。この戦いにおいて、全てのライダーに共通して与えられた移動手段、それが「ライドシューター」です。バイク乗りとしてまず注目したいのは、このマシンが単なる移動手段ではなく、現実世界とミラーワールドを繋ぐ「次元移送機」としての側面を持っている点でしょう。
参考)https://dic.pixiv.net/a/%E4%BB%AE%E9%9D%A2%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC%E9%BE%8D%E9%A8%8E
ライドシューターは、普段は現実世界のどこに格納されているか不明ですが、ライダーが変身しミラーワールドへの突入を意図すると、鏡面を通して召喚されます。特筆すべきはその形状です。通常のオートバイとは異なり、キャノピー(風防)に覆われたスクーターのような、あるいは三輪バギーに近い独特のフォルムをしています。
スペックを見てみると、その数値は驚異的です。全長3250mm、全幅1120mm、全高1310mmという巨体でありながら、最高時速は930km/hに達すると設定されています 。これは現実のMotoGPマシンや最高速チャレンジ用のストリームライナーをも遥かに凌駕する速度です。ミラーワールドへ続く「次元トンネル」を通過するための推進力として、これだけのパワーが必要だったのかもしれません。
参考)仮面ライダーの乗用マシン一覧
操作系も非常にユニークです。通常のバイクのようなバーハンドルではなく、操縦桿に近いグリップを握って操作します。また、シートはバケットシートのように深く座り込むタイプで、ライダーの体全体を保護するキャノピーが自動で閉鎖されます。これは、高速移動時の風圧や、次元移動時の衝撃から変身者を守るための安全装置と考えられます。バイク乗りから見れば「風を感じられない」という不満が出るかもしれませんが、命懸けのバトルロワイヤルにおいて、安全性は最優先事項なのです。
また、このライドシューターには武装も搭載されています。フロント部分にミサイルランチャーが装備されており、トンネル内での牽制攻撃や、ミラーモンスターへの奇襲に使用可能です。単なる移動用の「足」ではなく、戦闘用車両としての機能も完備している点は、まさに戦いのために作られたマシンと言えるでしょう。劇中では、トンネル内でのドッグファイト的な演出も見られ、ライダーバトルの緊迫感を高める要素となっていました。
物語が中盤に差し掛かり、ライダーバトルが激化すると、一部のライダーは「サバイブ」という強化形態を手に入れます。ここでバイクの役割も大きく変化します。通常のライドシューターに加え、契約モンスター自体がバイク形態に変形する、あるいはモンスターと一体化してバイクとなるギミックが登場するのです 。
参考)「仮面ライダー龍騎」という作品についてマジで語らせていただく…
主人公・城戸真司が変身する龍騎サバイブが駆る「ドラグランザー」は、普段は龍型のモンスターですが、ファイナルベント(必殺技)発動時や高速移動時にはバイクモードへと変形します。このバイクモードは、ドラグランザーの背中に龍騎がまたがる形ではなく、モンスターの体が変形してフルカウルのスポーツバイクのような形状になるのが特徴です。全長は6000mmを超え、もはやバイクというよりは「走る要塞」といった風情ですが、その圧倒的な火力と走破性は、数あるライダーマシンの中でもトップクラスです。
また、ライバルである秋山蓮が変身するナイトサバイブの「ダークレイダー」も同様に、コウモリ型のモンスターがバイクに変形します。こちらはドラグランザーよりも流麗なデザインで、カウルが翼のように展開し、滑空能力も有しているような描写が見られます。最高速度もドラグランザーと同等の900km/hオーバーを記録し、空陸両用に近い運用が可能です。
これらの「変形するバイク」の魅力は、ライダーとパートナー(モンスター)の一体感にあります。単に機械に乗るのではなく、相棒そのものにまたがって戦場を駆ける。これはバイク乗りが愛車に対して抱く「人馬一体」の感情を、極限まで具現化した形と言えるのではないでしょうか。特にサバイブ形態でのファイナルベントは、バイクごと敵に突撃する技が多く、文字通り「バイクが武器」となります。ライダーバトルにおいて、バイクは単なる移動手段を超え、必殺の武器であり、信頼できる相棒そのものなのです。
さらに、劇場版やスペシャル版に登場した仮面ライダーリュウガやファムなども、それぞれの契約モンスターに関連した特殊な移動手段を持っています。しかし、基本的には全ライダーが共通規格のライドシューターを持っているという設定が、このライダーバトルの「公平性」と「不気味さ」を際立たせています。「誰でも参加できるが、逃げ場はない」という閉鎖的なバトルの象徴として、あの密閉されたキャノピーを持つライドシューターは機能していたのです。
ここからは少し視点を変えて、現実のバイク乗りとして気になる「ベース車」について深掘りしていきましょう。特撮作品に登場するバイクは、市販車をベースに改造(カウル装飾など)を施して作られます。仮面ライダー龍騎のライダーバトルに登場するマシンたちの正体は何だったのでしょうか。
まず、最も登場頻度の高い「ライドシューター」。この近未来的なマシンのベース車は、実はホンダの「フュージョン(FUSION)」ではないかと言われています(一部ではキャノピー付きのジャイロ系という説もありますが、車格やタイヤのサイズ感からビッグスクーター系が有力視されています)。しかし、劇中の車両はあまりにも原型を留めないほど徹底的に改造されており、正確なベース車の特定はファンの間でも諸説あるのが現状です。ただ、撮影用プロップのタイヤパターンやエンジンの位置から、当時のホンダ製スクーターが使われていることは間違いありません。
次に、変身前のキャストたちが日常パートで乗っていたバイクや、変身後の専用マシン(サバイブ以外)のベース車です。
仮面ライダー龍騎(城戸真司)が変身前に愛用していたのは、ホンダの「スマートDio Z4」などの原付スクーターでした。これは「普通の若者」が突然戦いに巻き込まれたことを象徴する等身大のチョイスです。一方で、仮面ライダーナイト(秋山蓮)は、変身前にはホンダの「シャドウスラッシャー(Shadow Slasher)」などに乗車しているシーンがあります。アメリカンタイプのバイクをクールに乗りこなす姿は、彼のニヒルなキャラクターを際立たせていました。
また、仮面ライダーゾルダ(北岡秀一)のようなリッチなキャラクターは高級車移動がメインでしたが、もし彼がバイクに乗るとしたら、間違いなく輸入車の大型ツアラーや、あるいは「ゴリラ」のような意外性のあるモンキー系カスタムを選んでいたかもしれません。
劇場版に登場した仮面ライダーファムのベース車などは、ホンダの「XR250」などのオフロード車が使われることが多いです。これはアクションシーンでの取り回しの良さや、ジャンプスタントの安全性を考慮しての選定でしょう。
このように、ベース車を見ることで、制作陣が「そのキャラクターにどのようなイメージを持たせたいか」や「撮影現場での実用性」をどう天秤にかけたかが透けて見えてきます。特に平成ライダー初期はホンダとのタイアップが強力だったため、当時のホンダのラインナップ(CBRシリーズ、XRシリーズ、フォルツァなど)が数多く登場しています 。当時のバイク雑誌を読み返すと、「あのライダーのバイクはこれだ!」という特集が組まれていたのも懐かしい思い出です。
参考)仮面ライダーの乗用マシン一覧
最後に、もし現代の日本の公道でライダーバトルが発生したらどうなるか、という少し変わった視点(独自視点)で考察してみましょう。劇中のミラーワールドは現実世界の鏡像であり、建物や道路は存在しますが、人はおらず、交通法規も適用されません。しかし、もし「ミラーワールドに入れない」設定で、現実の渋谷や新宿でライダーバトルをすることになったら、バイク乗りとしてどのような問題が発生するでしょうか。
まず、道路交通法違反のオンパレードとなります。ライドシューターの最高時速930km/hは、当然ながら速度超過です。さらに、歩道走行、信号無視、整備不良(ミサイルランチャー等の危険な突起物)、ナンバープレート未装着など、違反点数を計算するだけで免許取り消しどころか、即逮捕レベルです。
特に問題なのは「排気音」と「騒音規制」です。劇中のバイク音はジェット機のような特殊なサウンドエフェクトが当てられていますが、現実のバイクとして考えると、あの音量は明らかに車検に通りません。近年の厳しい騒音規制(ユーロ5など)をクリアするためには、ドラグランザーであっても巨大なサイレンサーを装着せざるを得ないでしょう。シュールな光景が目に浮かびます。
また、バイクの「取り回し」の問題もあります。都心部でのライダーバトルにおいて、全長3メートルを超えるライドシューターや、6メートルのドラグランザーは致命的に小回りが利きません。路地裏に逃げ込んだモンスターを追跡しようとしても、Uターンすらままならないでしょう。現実の日本の道路事情を考えると、最強のマシンは小回りの利く「原付二種」や「モタード」タイプのバイクである可能性が高いです。仮面ライダーインペラーのような、身軽さを売りにしたライダーが、カブやグロムのような小型バイクをベースにしたマシンで戦えば、都心部での生存率は意外に高いかもしれません。
さらに、「保険」の問題も深刻です。ライダーバトルによる物損事故(ビルのガラスを割る、車を破壊する)は、通常の任意保険では「免責事項(戦争、暴動、変乱など)」に該当する可能性が高く、保険金が下りないでしょう。ライダーたちは戦いの後、莫大な賠償請求に追われることになります。城戸真司のような貧乏なジャーナリストでは、借金を返すために戦い続けるという、本編とは別の意味で地獄のような展開になってしまいます。
こうして現実的に考えると、ミラーワールドという「戦うためのフィールド」が用意されていたことは、ライダーたちにとって(そして現実の社会にとっても)非常に幸運なことだったと言えます。バイク乗りとして、公道でのバトルは厳禁ですが、誰もいない異世界で、信号も制限速度も気にせず全開で走れるミラーワールドには、少しだけ憧れを感じてしまうのも事実です。もちろん、命のやり取りは御免ですが。
実車でのライダーバトルは不可能ですが、ゲームの世界なら合法的に楽しむことができます。「データカードダス 仮面ライダーバトル ガンバライジング」や、その後継である「ガンバレジェンズ」では、歴代ライダーのカードをスキャンして戦うことができます 。
参考)参戦ライダーリスト -
これらのゲームでは、バイクに乗った状態のカード(「バイクゲーマー」のレーザーや、必殺技演出でのバイク搭乗)も存在します。特に昭和ライダーや、バイクアクションに定評のあるクウガ、アギト、そして龍騎などのカードを使うと、画面内で迫力あるバイクスタントを見ることができます。
最近の仮面ライダーシリーズでは、法規制や撮影の難しさから、バイクに乗るシーン自体が減少傾向にあると言われています。しかし、「仮面ライダー」という名前が示す通り、彼らとバイクは切っても切れない関係です。ライダーバトルのような殺伐とした戦いの中でも、バイクは彼らの翼であり、盾であり、そして孤独な戦いにおける唯一の座席でした。
我々一般のライダーも、孤独にヘルメットの中で風と対話するという点では、少しだけ彼らに似ているかもしれません。次に愛車にまたがる時は、ミラー越しに映る自分の姿を見て、「戦わなければ生き残れない」と心の中で呟いてみてはいかがでしょうか。安全運転の範囲内で、日常という戦いを生き抜く活力が湧いてくるかもしれません。
以上、ライダーバトルのバイクについての考察でした。ベース車の特定や、もしもの現実シミュレーションなど、楽しんでいただけたでしょうか。あなたのバイクライフに、少しの特撮スパイスを。
#単語リスト:
ライダーバトル、バイク、ライドシューター、ミラーワールド、ベース車、ホンダ、スペック、ドラグランザー、ダークレイダー、サバイブ、ガンバライジング、最高速度、仮面ライダー龍騎