

バッテリーに直結したUSB電源は、キーを抜いても電気が流れ続けて1〜2日でバッテリーを完全に上げてしまいます。
バイクに後付けのUSB電源を取り付けたいと思ったとき、まず理解すべき概念がACC電源(アクセサリー電源)です。ACC電源とは、メインキーをONにしたときだけ通電し、キーをOFFにすると電気が遮断される電源系統のことを指します。「ACC」はAccessory(アクセサリー)の略称です。
この仕組みが重要な理由は、バイクのバッテリー容量が自動車と比べて非常に小さいことにあります。一般的なバイク用バッテリーの容量は6〜12Ah(アンペアアワー)程度で、自動車の30〜60Ahに比べると5分の1以下しかありません。キャンプ場で使うクーラーボックスとペットボトルほどの差があると思えば、イメージしやすいでしょうか。
もしACC電源を使わず、バッテリーから直接USB電源を配線した場合どうなるか。キーをOFFにしても電流が流れ続けるため、スマホやナビを挿し忘れたまま駐車するだけでバッテリーが消耗していきます。結果として、翌朝バイクのエンジンがかからないというトラブルにつながります。つまりACC電源が基本です。
ACC電源の見分け方は意外とシンプルです。キーをONにして点灯する電装品——ブレーキランプ、ウインカー、メーター照明——に繋がっている配線がACC電源です。検電ペンという道具(エーモン製なら1,000円前後)をあてて、キーON時にのみ反応する配線を探すのが確実な方法になります。
| 電源の種類 | キーOFF時 | キーON時 | バッテリー上がりリスク |
|---|---|---|---|
| 常時電源(バッテリー直) | 通電あり | 通電あり | 🔴 高い |
| ACC電源 | 遮断 | 通電あり | 🟢 低い |
ACC電源が確認できたら、その配線から分岐させてUSB電源を取り出すことが安全な取り付けの第一歩です。検電ペンは一度持っておくと今後のDIY作業全般で使える汎用性の高い道具なので、この機会に用意しておくとよいでしょう。
バイクにUSB電源を取り付けるための電源取り出し方法は、大きく4種類あります。それぞれに特徴がありますが、初心者が陥りがちな誤解も多いため、メリット・デメリットを正確に把握することが重要です。
①バッテリー直結(バッ直)
最も手軽な方法ですが、ACC連動にはならないため常時通電になります。スイッチ付きのUSB電源を選べばある程度対応できますが、スイッチを切り忘れた場合のリスクは消えません。ヒューズなしでバッテリーに接続すると配線が過熱して火災につながる可能性もあるため、必ずインラインヒューズ(配線途中に入れるヒューズ)を噛ませることが条件です。
②ヒューズボックスから取る
シート下やタンク付近にあるヒューズボックスから、専用の「ヒューズ電源」という製品を使って取り出す方法です。キーON連動のヒューズを選べばACC電源として機能します。作業の難易度は比較的低く、エーモン製のヒューズ電源なら500〜1,000円ほどで購入できます。注意点は、電源を取り出したいヒューズがキーON連動かどうかを事前に検電ペンで確認することです。向きを間違えて逆挿しすると機能しないため、コードが出ている側を電源側(上流側)に差し込む方向性を守りましょう。
③リレーを使って取る
ACC配線でリレーを動かし、そのリレーを介してバッテリーから大電流を取り出す方法です。USB電源本体にはバッテリーの電力が供給されつつ、キーOFFで自動遮断されるため、安全性と安定性が最も高い方法といえます。ただし使用する部品が増え(リレー・ヒューズ・配線など)、配線の理解も必要です。グリップヒーターやドライブレコーダーなど複数の電装品を追加する予定があるライダーには特に向いています。
④既存配線への割り込み
ブレーキスイッチやウインカー配線など、既存のACC配線に割り込んで電源を取り出す方法です。ギボシ端子(オス・メスをかみ合わせて接続する端子)を使った分岐が基本になります。注意したいのは「エレクトロタップ」という簡易的な分岐部品の使用です。作業は簡単ですが、配線の太さに合ったサイズを選ばないと接触不良や断線を引き起こすリスクがあります。プロの整備士が1,000件以上の施工事例をもとに「やってはいけない部品ワースト1位」と評価するほど、エレクトロタップのサイズ違いによるトラブルは多発しています。ギボシ端子を使った分岐が確実です。
参考情報:バイクの電源取り出し方法の種類と安全性について詳しく解説されています。
バイクの電源を取り出す4つの方法と工賃の費用相場|グーバイク
実際にACC電源を使ってUSB電源を取り付ける作業手順を確認していきましょう。ここではヒューズボックスからの取り出しと、リレーを使った取り付け両方で共通する基本手順を解説します。
まず、作業前に必ずバッテリーのマイナス端子を外します。これは作業中の不意なショートを防ぐための必須手順で、省略すると工具や配線が車体の金属部分に触れた瞬間に火花が飛ぶリスクがあります。マイナス端子は黒色のケーブルです。
| 必要な道具・部品 | 目安価格 | 用途 |
|---|---|---|
| 検電ペン | 500〜1,000円 | ACC電源の確認 |
| 電工ペンチ | 1,500〜3,000円 | 端子のカシメ(圧着) |
| ギボシ端子セット | 300〜600円 | 配線の分岐・接続 |
| ヒューズ電源(またはリレー) | 500〜2,000円 | 電源の取り出し |
| USB電源本体 | 1,500〜4,000円 | スマホ等への給電 |
| 配線コード・絶縁テープ | 300〜500円 | 延長・絶縁処理 |
作業の流れは次の通りです。
端子の加工(カシメ作業)は最初は難しく感じますが、コツは「スリーブを端子に通してから電線を差し込み、電工ペンチでしっかり圧着する」ことです。スリーブとは端子を保護する絶縁カバーで、これをつけ忘れると端子部分が露出して接触不良や漏電の原因になります。これが基本です。
配線の取り回しは、既存のメインハーネス(バイクの主要配線束)に沿わせてタイラップで固定するのがきれいに仕上げるコツです。フレームや可動部品に配線が引っかかると断線の原因になるため、ハンドルを左右に切った状態でも配線が引っ張られていないかを確認しましょう。
参考情報:端子のカシメ方法や検電ペンの使い方が写真付きで丁寧に解説されています。
【徹底解説】バイクにUSB電源を取り付る方法!メインキー連動|bike-notebook
ACC電源の配線作業で特に多いミスが3つあります。これらを事前に知っておくだけで、失敗のリスクを大きく下げることができます。
失敗①:エレクトロタップのサイズ違い
エレクトロタップはプライヤーで挟むだけで配線を分岐できる便利な部品ですが、配線の太さに合ったサイズを選ばないと接触不良を起こします。細い配線に対して刃のスリットが広いタイプを使うと、芯線を傷つけて断線に至るケースがあります。後から不具合が出ても原因特定が難しく、最悪は配線交換が必要になります。痛いですね。配線作業にはギボシ端子を使うのが確実です。
失敗②:ヒューズ電源の向き間違い
ヒューズボックスにヒューズ電源を挿す際、向きを誤ると電源が取れません。コード付きヒューズの「コードが接続されている側」を電源の上流(電気が来る側)に差し込むことが鉄則です。向きが逆だと、過電流が発生したとき先にヒューズが切れず、配線や車体を保護できません。方向性だけ覚えておけばOKです。
失敗③:配線の固定不足による断線
取り付け後にハンドルを操作していたら配線が引っ張られて断線した、という事例は非常に多いです。特にスクーターやフルカウル車では、外装を元に戻したときに配線が挟まるトラブルも起きやすくなります。配線の余長を十分に取り、ハンドルを左右いっぱいに切った状態でもたるみが残るかどうかを確認してから固定することが必須です。
また、屋外で使うバイクにとって防水処理は非常に重要な作業です。ギボシ端子のつなぎ目、配線の分岐部分、USB電源本体のコネクター周辺はすべて雨水が侵入しやすい箇所です。熱収縮チューブ(ドライヤーや熱風で縮んで密着する絶縁チューブ)を使えば、電工テープよりも確実に防水・絶縁処理ができます。
配線の防水・絶縁処理が不十分だと、雨天走行後に接触不良が発生したり、最悪の場合は漏電によるショートで電装品が一斉にダウンする可能性があります。これは大きなリスクです。
参考情報:エレクトロタップの実害と正しい配線方法が施工事例をもとに詳しく解説されています。
【初心者向け】やってはいけない配線方法ワースト1は"あの部品"|note
USB電源の取り付けを自分でやるべきか、ショップに任せるべきか迷うライダーは多いはずです。費用面から整理してみましょう。
ショップに依頼した場合の費用
バイク用品店(ナップスや2りんかん、ライコランドなど)にUSB電源の取り付けを依頼した場合、工賃の目安は以下のとおりです。
| 作業内容 | 工賃の目安 |
|---|---|
| ブレーキスイッチからの簡易取り付け | 3,000〜5,000円 |
| ACC電源からの取り出し(標準的な車種) | 5,000〜6,000円 |
| フルカウル車・カウル脱着が必要な場合 | 8,000〜11,000円 |
これに部品代(USB電源本体:1,500〜4,000円)が加わるため、合計で最大34,300円程度になるケースもあります。
DIYでやった場合の費用
自分で取り付ける場合、かかるのは部品代だけです。ヒューズ電源を使った方法なら、工具込みで5,000〜8,000円程度が目安になります。一度工具を揃えてしまえば、次回以降はほぼ部品代だけで済みます。これは使えそうです。
ただし、DIYにはリスクもあります。配線ミスによってバッテリーを上げたり、ショートで電装品を壊したりした場合の修理費は数万円に及ぶこともあります。「DIYで失敗してショップに修理依頼→工賃が倍になった」という結果になると本末転倒です。
DIYに向いているライダーの特徴
ショップ依頼に向いているライダーの特徴
なお、作業時間はショップでも1〜2時間程度はかかります。予約なしで飛び込むと当日対応できないケースもあるため、事前に相談してから持ち込むのがスムーズです。
参考情報:各バイクショップのUSB電源取り付け工賃を比較した詳しい情報が掲載されています。
バイク用USB電源の取り付け工賃を比較【2りんかん・ナップス】|Motowith
取り付け完了後も、使い続ける中でトラブルが起きることがあります。代表的なパターンとその原因・対処法を整理します。
トラブル①:USB電源から充電できない・充電が遅い
これは最も多い相談です。原因として考えられるのは以下の3つです。1つ目はACC配線の取り出し元となっているヒューズが小容量すぎること(5A以下のヒューズに最大4.5A消費のUSB電源を繋いでいる場合など)。2つ目は配線の接触不良で電圧降下が起きていること。3つ目は急速充電非対応のUSB電源を購入してしまったケースです。
iPhone8以降の端末で急速充電したい場合はUSB PD(Power Delivery)対応の製品が必要で、Android端末ではQC(Quick Charge)3.0対応製品を選ぶ必要があります。規格が違うと、つながっているのに充電スピードが遅いという状態になります。
トラブル②:走行後にバッテリーが上がる
ACC電源から取り出しているにもかかわらずバッテリーが上がる場合、電力消費が発電量を超えている可能性があります。バイクのオルタネーター(発電機)の発電量は、スマホ充電・グリップヒーター・ドラレコ・フォグランプなど複数の電装品を同時使用すると不足することがあります。走行中は発電をしていますが、使用量が発電量を超えればバッテリーは確実に消耗します。つまり電装品の総消費電力の確認が条件です。
目安として、原付〜250ccクラスのバイクでは電装品の追加は慎重に、大型車でも同時使用は3〜4系統までを上限の目安にするとよいでしょう。
トラブル③:雨天後に突然動かなくなる
防水処理が不十分だった場合に起きやすいトラブルです。USB電源本体が防水仕様でも、配線の接続部分が非防水なら浸水します。作業後に念入りに熱収縮チューブや防水グリスを塗布することで防げます。
また、USB電源本体の防水性能には差があり、「防水キャップあり」でも走行中の横殴りの雨に対応していない製品もあります。IP67規格(水深1mに30分耐水)以上の表記がある製品を選ぶと安心です。防水性の確認だけは必須です。
| トラブル | 主な原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 充電できない・遅い | 接触不良・規格不一致 | 端子確認・PD/QC対応品に変更 |
| バッテリー上がり | 消費電力が発電量超過 | 電装品の整理・大容量バッテリーに交換 |
| 雨後に動かない | 防水処理不足 | 熱収縮チューブ・防水グリスで再処理 |
参考情報:バイク用USB電源のデメリットと配線が燃えるリスクについて実体験を交えて詳しく解説されています。
バイクにUSB電源をつけるデメリットは?最悪は車両火災も|yu-fu-ring

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