

標準DLCは絶縁体なので導電性は無いと思っていませんか。
ダイヤモンドライクカーボン(DLC)は、炭素の結合構造を変えることで導電性を自在にコントロールできる特殊なコーティング材料です。標準的なDLCは7~10¹³Ω・cmという非常に高い抵抗率を持つ絶縁体ですが、新たなドーピング技術により10⁻³Ω・cm以下の導電性を持たせることが可能になりました。この技術は産業総合研究所でも研究開発が進められており、燃料電池の金属セパレータなど様々な応用が期待されています。
導電性の調整は、グラファイト構造とダイヤモンド構造の比率によって実現されます。グラファイトは電極としても使われるように電気抵抗が少なく導電性に優れているため、グラファイト比率を高くすることで導電性を持たせることができます。一方、ダイヤモンドは絶縁性のため、ダイヤモンドの比率を高くすると電気を通しにくいDLCになります。
グラファイト比率が基本ということですね。
また、DLC膜中に水素を含ませることでも電気を通しにくくすることができます。a-C(非晶質炭素)は導電性が高く、ta-C(四面体アモルファスカーボン)は硬度が高いという特徴があり、水素を含むa-C:Hやta-C:Hは硬度と柔軟性のバランスが良い点が利点です。原料ガスとドーピング用ガスをイオン化し、適正に成膜条件を制御することで、活性化されたドーピング元素がカーボンと結合し導電性DLCを生成できます。
参考)ナノテック株式会社 DLCコーティング装置・表面処理・薄膜分…
バイク部品におけるDLCコーティングの実用例として、ホンダのCBR1000RR-Rが挙げられます。このモデルでは、RC213V-Sと同様にDLCコーティングを施したカムシャフトを採用しており、フィンガーフォロワー式のロッカーアームとあわせて、DLC未処理の物と比べバルブ駆動ロスを約35%削減しています。この技術はMotoGPからのフィードバックによるもので、本田技研の文献によるとF-1エンジンのロッカーアーム、カムシャフト、トランスミッションなどにも自社で独自開発したDLCが採用されています。
参考)【エンジンを長持ちさせる】フリクション低減術|1080基の分…
チェーン部品への応用も進んでいます。
ヤマハの次期トレーサー9GT+(2025モデル)が採用するD.I.D製チェーンのローラー部にもDLCコーティングが施されており、優れた耐久性と抵抗軽減を実現しています。リリースによれば、チェーンの寿命が延び、調整の必要性が減り、バイクの取り回しも楽になるとのことです。KMCのDLCチェーンも、アウタープレート、インナープレート、ピンに中空構造を採用し、最強の表面硬度と防錆機能の向上、摩擦抵抗の低減を実現しています。
参考)バイクのソレなにがスゴイの!? Vol.71 『DLC(Di…
これらの応用例から、DLCコーティングはバイクの性能向上とメンテナンス負担軽減に大きく貢献していることが分かります。高速走行やレース用途では特に効果が顕著で、決戦用チェーンとしてKMCのDLCチェーンが選ばれる理由もここにあります。
導電性DLCには複数のバリエーションがあり、用途に応じて選択することができます。代表的な製品として、タフコンダクターBとタフコンダクターMの2種類があります。タフコンダクターBはHv硬度4000相当、体積抵抗率5×10⁻³Ω・cmという高硬度・低抵抗の特性を持ち、タフコンダクターMはHv硬度2000相当、体積抵抗率1×10⁻³Ω・cmという特性を持ちます。
これらの導電性DLCは、硬度や低体積抵抗率だけでなく、はんだに対する耐汚れ性にも優れています。特にチップコンデンサの電極部分に成膜することでメンテナンス頻度の低減につながるとされており、これまでの実績用途としては電子部品検査装置の電極やICソケット向けプローブなどがあります。
硬度と導電性が両立できます。
導電性ICF(Innovative Carbon Film)と呼ばれる高機能膜も開発されており、抵抗率の制御が可能です。静電気対策・電極保護膜には導電性ICFが有用で、耐食性・低摩擦・半田付着防止・高硬度と導電性を両立しています。絶縁性ICFはオーバーレンジ、標準DLCは7.62MΩ、導電性ICFは120.4Ωという明確な抵抗値の違いがあります。
DLCコーティングの最大の特徴は、その圧倒的な硬度と耐摩耗性です。DLCの硬度はHv3000~5000あり、ダイヤモンドに近い硬さを持ちます。これはTiN(窒化チタン)のHv2000~2500と比較しても非常に高い値です。結晶構造がアモルファス(非晶質)であるため、非常に平滑な表面状態を作れることも大きな利点です。
参考)DLC コーティング
摩擦係数が低いという特性も重要です。
DLCの摩擦係数はμ=0.1と非常に低く、衝動性が向上し高い潤滑特性が期待できます。この低摩擦特性により、相手材料を攻撃しないという優れた利点があり、金型や治工具などの用途で長寿命化に貢献しています。実際の使用例では、2年以上の寿命が予想されており、10倍以上の寿命延長が想定されています。
参考)DLCコーティングの耐摩耗効果|All About Auto…
ただし、DLCには欠点もあります。耐熱温度が450℃であり、実際には300℃からグラファイト構造に移行し始めます。炭素の膜なので酸素に弱く、この問題を克服することがDLCの課題ですが、適切な素材と用途を選定することで対応可能です。本田技研の文献にも「従来のDLCでは高圧で1箇所に力が加わると同じ現象が課題」とされており、改良を加えたDLCを開発してトランスミッションなどに採用しています。
産業総合研究所の導電性DLC膜開発に関する技術資料(基礎研究データと応用可能性)
バイク整備の現場では、DLCコーティングによってメンテナンス頻度を大幅に削減できる可能性があります。特に旧車の場合、純正部品や社外部品が出ないケースが多く、表面処理を用いてピストン、カムシャフト、クランクシャフト、コンロッド、メタルなどを再生し再利用することが行われています。DLCコーティングは、こうした部品の再生・延命に有効な技術として注目されています。
チェーンのメンテナンス負担も軽減されます。
ヤマハトレーサー9GT+に採用されたDLCコーティングチェーンでは、メンテナンスサイクルを伸ばすことが目的とされており、チェーンの寿命が延び、調整の必要性が減ると報告されています。これは長距離ツーリングが多いライダーにとって、メンテナンスの手間と時間を節約できる大きなメリットです。
導電性DLCは電子部品の分野でもメンテナンス効果を発揮しています。大型ロールや金属プレートなどの機械部品に表面処理技術を適用することで、お客様の求める機能性を付加できます。はんだに対する耐汚れ性に優れているため、電子部品検査装置などでは清掃や交換の頻度が減り、ダウンタイムの削減につながります。
導電性DLCの応用は、バイク部品だけでなく電子部品分野でも独自の進化を遂げています。電子部品検査装置の電極やICソケット向けプローブに導電性DLCを適用することで、高硬度と導電性の両立という従来にない特性が得られます。この技術により、接触抵抗を低く保ちながら摩耗にも強いという理想的な状態を実現できます。
静電気対策という新しい用途も開拓されています。
従来は絶縁性のDLCコーティングでは静電気の問題が発生する可能性がありましたが、導電性ICFの開発により静電気対策と耐摩耗性を同時に実現できるようになりました。電極保護膜としての用途では、耐食性・低摩擦・半田付着防止・高硬度という複数の機能を一つのコーティングで提供できるため、製造工程の簡略化とコスト削減につながります。
バイクの電装系部品への応用も考えられます。例えば、燃料噴射装置のコネクタ部分や点火系の接点に導電性DLCを適用すれば、接触抵抗の安定化と耐久性向上が期待できます。まだ一般的な応用例は少ないですが、電子制御が高度化する現代のバイクにとって、今後重要な技術になる可能性があります。電装品の信頼性向上は、長期間の使用において故障リスクを減らすことに直結するため、ライダーにとって見えないところでメリットを提供する技術と言えます。
神戸製鋼グループによるDLCコーティングの特徴と導電性制御の詳細解説

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