ハブセンター・ステアリングとは|仕組みメリットデメリット採用車種

ハブセンター・ステアリングとは|仕組みメリットデメリット採用車種

ハブセンター・ステアリングとは

普通のバイクショップではメンテナンスできません。


この記事の3つのポイント
🔧
操舵と衝撃吸収を完全分離

前輪をスイングアームで支え、ハブ中心に操舵機構を配置する革新的な構造

ブレーキング時の安定性向上

ノーズダイブが極めて少なく、高速域でも車体姿勢が安定し路面追従性に優れる

💰
特殊なメンテナンスが必要

組み立てに高い経験値が必要で、一般的なショップでは対応困難

ハブセンター・ステアリングの基本構造と仕組み


ハブセンター・ステアリング(Hub Center Steering, HCS)は、オートバイのフロントサスペンションとステアリングを根本から見直した機構です。一般的なバイクでは、メインフレームの前端でフロントフォークを支えるトリプルクランプを保持する形となっているステアリング軸を、前輪ホイールのハブ内部の中心に配置しています。


これが「ハブセンター・ステア」の名の由来ですね。


前輪はリアサスペンションと同様のスイングアームで支えられ、ハブは回転せずに固定されます。ホイール部分のみがハブの周囲に設けた大径のベアリングによって回転する仕組みです。操舵はリンク機構とロッドを用いて回転→直線→回転の経路を経て、ハンドルと前輪ハブのステーを繋げています。


衝撃吸収はスイングアームに設けたショックユニットが担当し、操舵機構とは完全に分離されています。車体が傾くことで前輪に舵角が付いて曲がる「セルフステア」の仕組み自体はテレスコピックと同じなので、ハンドルに力を入れるのはNGです。


参考)「フロントもスイングアーム」ってどういうこと!? ビモータ「…


ハブセンター・ステアリングのメリット

操舵系と懸架系が混在するテレスコピック型フロントフォークの場合、サスペンションのバネが巨大な減速Gを支える設定となり、制動時以外の衝撃吸収や路面追従性を阻害する要因となります。前輪が受けた外乱によって高い位置にあるヘッドパイプが揺すられてしまうのも、安定性の面では不利です。


ハブセンターステアリングは減速Gなど大きな外力をロワーアームで支える構造です。


ハードブレーキ時でも操舵に影響を及ぼさず、ディメンションも大きく変化することがありません。ノーズダイブが極めて少なく無用なピッチングを起こさないのに、ハードブレーキング時でも路面の凹凸にキチンと追従できるため路面からのインフォーメーションが得やすく、結果として前輪のグリップをしっかり引き出すことができます。


アンチノーズダイブ効果や速度域によって変化量が少ない車体姿勢といったハブセンターステアリングの利点は、驚異的な速さを持つスーパーチャージドエンジンH2と組み合わさった今、すこぶる理に適っていると言えるでしょう。左右対称の構造であるため左右の特性差は生じないのも大きなメリットです。


参考)HUB


ハブセンター・ステアリングのデメリットと課題

ハブベアリングの直径が非常に大きくなるため発熱量が増加し、ハブベアリングを定期的に交換する必要があります。通常のバイクのハブベアリングと異なり、特殊な構造のため交換コストも高額になる傾向があります。一般的なバイクのハブベアリング交換費用は1輪あたり約3万~5万円前後ですが、ハブセンターステアリングの場合はさらに高額になる可能性が高いです。


参考)【ハブベアリング交換】の費用と効果は?異音対策と走行性能アッ…


構造の複雑さと特殊性が最大の課題です。


調子が悪いTESIシリーズは、ハブセンターステアリングがメンテナンスされていないことが大半だといいます。普通のショップではメンテナンスできないのが現実です。ボルトの締め付けトルクなどは指定されているものの、単に数値的にトルクを合わせるだけではハブがステアする動きが渋くなったり、反対にガタつくこともあります。


参考)https://news.livedoor.com/article/detail/21008546/


締め付けトルクのかかり始める瞬間を緻密に管理するなど、ハブセンターステアリングならではのハンドリングを正しく発揮するには、組み立てに高い経験値を要します。従来からのエンジンやフレームからの汎用は限りなく困難で、設計段階から専用設計が必要となるため、開発コストも高額です。


かなりのアベレージでなければ不具合を感じることはないものの、特殊な構造ゆえにトラブル時の対応が難しく、専門知識を持つメカニックが限られているのが大きなデメリットといえます。


ハブセンター・ステアリング採用車種と価格

ハブセンター・ステアリング搭載車を初めて市販したビモータがビモータ TESI-3Dを製造・販売しました。倒産後、元ビモータの技師が設立したヴァイルスがVyrus 984C/985Cなどの少数の市販車両を販売していました。


2019年、休眠状態にあったビモータがカワサキの支援により復活しました。


ビモータ TESI-H2を製造販売しており、日本市場での価格は866万8,000円(消費税10%込み)です。カワサキ製スーパーチャージドエンジンを搭載し、最高出力は170kW(231ps)/11,500rpm、総排気量は998ccという驚異的なスペックを誇ります。


参考)ビモータテージ H2、866万8,000円(税込み)で日本導…


シャシーのほとんどがアルミ削り出し、ボディーワークはカーボンファイバー、アルミニウム鍛造のホイール、熟練の職人によるペイント、すべてのネジや小さなパーツまでこだわり抜かれた「芸術作品」とも言えるバイクです。2025年には新たなモデル「Tesi H2 TERA」の国内販売に向けた準備も始まっており、ハブセンターステアリングを採用したアドベンチャーモデルとして注目を集めています。


参考)ビモータ”新”「過給器付きアドベンチャー」日本導入決定! 希…


採用車種が極めて限られているのが現状です。


ハブセンター・ステアリングとテレスコピック式フォークの違い

テレスコピック式フロントフォークは操舵機構と衝撃吸収の機能を兼ねた構造で、シンプルかつ合理的です。だからこそ進化し、メジャーな存在になったのですが、デメリットもあります。厳密に言うとブレーキ時にノーズダイブするとキャスター角が起きてディメンションが変化してハンドリングが変わるし、剛性が足りなければバネのようにしなって飛び跳ねたり、フリクションが増して動作も悪化します。


動く部分が少なく、ほぼ壊れないのがテレスコピックの良さです。


ハブセンターステアリングは操舵機構と衝撃吸収機構が独立しているため、ブレーキングしてもほとんどピッチングを起こしません。とはいえ、前輪は路面追従性を確保しており、この相反する要求を両立させているのが技術的な特徴です。ステアリングリンケージは複雑で、多くの可動部分を持つため、メンテナンス面では明らかに不利といえます。


テレスコピック式は構造がシンプルで、どのバイクショップでもメンテナンスが可能です。対してハブセンターステアリングは専門知識を持つメカニックでなければ適切な調整ができず、維持コストが高くなる傾向があります。高速走行やサーキット走行では明確なメリットがありますが、日常使用では過剰なスペックとなる可能性もあります。


ハブセンター・ステアリングの将来性と課題

ビモータのハブセンターステアリングシステムは、ドゥカティエンジンを搭載した「Tesi 1D」に初めて搭載されました。その後「Tesi 2D」を経て、カワサキのエンジンを搭載した「Tesi H2」が2019年にデビューし、30年以上の歴史を持つ技術です。


参考)【新車】ビモータ「Tesi H2 TERA」の国内導入が決定…


技術的な優位性は証明されています。


しかし、採用車種が極めて限られているのが現実です。製造コストの高さ、メンテナンスの困難さ、そして既存のテレスコピック式フォークが十分に成熟していることが、普及を妨げる要因となっています。カワサキの支援により復活したビモータが「Tesi H2 TERA」などの新モデルを投入していることから、ハイエンド市場においては一定の需要が見込まれています。


将来的には電動バイクの登場により、エンジンレイアウトの自由度が高まることで、ハブセンターステアリングの設計が容易になる可能性があります。しかし、コストとメンテナンス性の課題を解決しない限り、マスマーケットへの展開は難しいでしょう。特殊な機構を理解し、適切にメンテナンスできる人材の育成も今後の課題です。


世界一詳しくTESI H2のハブセンターステアリングを徹底研究 - RIDE HI(ハブセンターステアリングの詳細な構造解説)
操舵と衝撃吸収で常識を覆すハブセンターステアリング - ライダースクラブ(リンク機構の詳しい説明)




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