

再メッキに出すとき、オイルシール交換も同時にしないと2〜3万円の追加出費が確定します。
インナーチューブの再メッキ料金は、フォークのタイプによってはっきり差が出ます。正立フォーク(インナーチューブが上側にある一般的なタイプ)は1本あたり約18,000円〜27,500円、倒立フォーク(インナーチューブが下側にくるスポーツ・大型車に多いタイプ)は1本あたり約32,500円〜40,000円が現在の相場です。2本セットで依頼した場合、正立は合計約36,000円〜55,000円、倒立は約65,000円〜80,000円前後になります。
倒立フォークが高くなる主な理由は、アンダーブラケット(フロントフォークをフレームに固定している部品)の脱着作業が必要になるためです。ネモトスポーツの公式価格を例にとると、正立フォークが1本27,500円、倒立フォークが1本32,500円と明確に分かれています。つまり「倒立だから5,000円余分にかかる」と覚えておけばOKです。
| フォーク種別 | 1本あたり料金目安 | 2本セット目安 |
|---|---|---|
| 正立フォーク | 18,000円〜27,500円 | 36,000円〜55,000円 |
| 倒立フォーク | 32,500円〜40,000円 | 65,000円〜80,000円 |
また、錆の進行が深い場合は「2層メッキ処理」が必要となり、1本あたり3,000円〜5,000円ほど追加費用が発生します。表面に爪が引っかかるほどの深い点サビがある状態だと、ほぼ確実に追加料金の対象になると思っておきましょう。東洋硬化(福岡県久留米市の老舗専門業者)の2025年時点の料金では、クロムめっき再生のみで1本23,000円(税別)です。
料金に差が出る要因が3つあります。第一に「錆・傷の深さ」、第二に「フォーク形状(正立 or 倒立)」、第三に「オーバーホール工賃込みか否か」です。見積もりを取る際は、この3点を必ず確認するのが基本です。
参考:再メッキの手順・費用の実例(東洋硬化 依頼レポート)
インナーチューブの再メッキ 費用は?注意点は? – Motorcycle Life Boo
再メッキの見積もりで「思ったより高かった」と感じる人の多くは、追加費用のパターンを把握していないことが原因です。基本料金に含まれる作業と、追加で請求される作業をきちんと分けて理解しておきましょう。
基本作業の流れは大きく4段階です。まず旧メッキの「剥離・下地処理」、次にサビや傷を除去する「研磨」、その後「硬質クロムメッキ再生」、最後に純正と同じ寸法に整える「精密仕上げ研磨(公差仕上げ)」です。この4工程が基本料金に含まれます。精密さが問われます。
追加費用が発生する代表的なパターンは以下の通りです。
たとえばオイル漏れが長期間続いたバイクや、屋外雨ざらし保管のバイクでは、複数の追加費用が重なるケースが多いです。1本30,000円で済むと思っていたのに、フタを開けたら50,000円超えたというケースも珍しくありません。
インナーチューブを業者に送る前に「写真を撮ってメールで状態確認を取る」ことが条件です。東洋硬化をはじめ多くの業者は事前に写真を送れば見積もりメールに対応しているので、費用の想定外を防ぐためにも必ず事前問い合わせをしてください。見積もりは必須です。
参考:フロントフォーク再メッキの料金体系・内訳(業者比較)
フロントフォークのメッキ加工の種類と費用相場徹底ガイド|有限会社半田鍍金工業所
再メッキは高い、と感じている人のなかには「そもそも新品チューブと比べてどちらが安いか」を検討せずに依頼してしまうケースがあります。これが最も大きな損になりうる点です。
① 自分でインナーチューブを取り外して「単体送り」にする
バイクショップ経由で依頼する場合、フロントフォークの取り外し・取り付け工賃が1本あたり約10,000円〜15,000円かかります。2本分の着脱工賃だけで20,000円〜30,000円の追加になります。自分でインナーチューブを取り外して業者に直接送れば、この工賃を丸ごと節約できます。東洋硬化では、インナーチューブ単体の状態で宅配便送付するだけでOKです。初期費用を5万円以内に収めたいなら、まずここを検討しましょう。
② 再メッキと新品交換のコスト比較を必ずする
| 比較項目 | 再メッキ加工(2本) | 純正新品交換(2本) |
|---|---|---|
| 費用目安 | 40,000円〜70,000円 | 60,000円〜120,000円以上 |
| 旧車・廃番車種 | ⭕ 対応可能 | ❌ 部品入手困難な場合あり |
| 納期 | 2〜4週間 | 在庫あり:2〜7日 |
| 仕上げの自由度 | チタン・DLC等のカスタムも可 | 純正仕様のみ |
現行車種で純正品がすぐ入手できる状況では、コストだけで見ると新品に軍配が上がる場合もあります。一方、旧車・絶版車・廃番になった車種では、再メッキが「唯一の現実的な選択肢」になるケースが多いです。それが現実です。
③ まとめて依頼してスケールメリットを活かす
複数の作業をまとめることで割引や工賃の節約につながる場合があります。たとえばオーバーホールと再メッキを同時依頼したり、知り合いのバイク仲間と2台分をまとめて送ったりすることで、往復送料を折半することができます。送料は往復で2,000円〜4,000円前後かかるので、複数台分を一度に送ると一人あたりの実費を下げられます。これは使えそうです。
参考:オーバーホールと再メッキの費用比較を詳しく解説
バイクのフロントフォークオーバーホールの費用・工賃の相場 | goobike
初めて再メッキを依頼するバイク乗りが最も戸惑うのは「どこに、どうやって頼めばいいか分からない」という点です。手順を知っておくだけで、費用の無駄や仕上がりの失敗を防げます。
▶ 依頼の基本フロー
業者選びで重要なのは「硬質クロムメッキ(ハードクロム)の再メッキ実績があるか」という点です。一般的な装飾メッキ業者では、インナーチューブに必要な「2〜100μmの厚みがある硬質クロムメッキ」を施工する設備がないケースが大半です。装飾メッキで仕上げても耐久性がまったく足りず、短期間でオイルシールが損傷するリスクがあります。これだけは覚えておけばOKです。
また、曲がりの修正精度や外径の公差管理ができているかも重要な確認ポイントです。インナーチューブは外径の真円度が非常に厳しく管理されており、「若干細く仕上がってしまいました」では走行中にオイル漏れが止まらなくなります。依頼前に「加工後の外径寸法管理はどのように行うか」を確認するのがおすすめです。
参考:硬質クロムメッキの特徴と再メッキができる業者について(バイクブロス)
入手困難なインナーチューブやキャリパーピストンを救う硬質クロムめっき|WEBike
「せっかく再メッキするなら、チタンコーティングまで一緒にやったほうがいいの?」という疑問を持つ人は多いです。コーティング追加は費用が大幅に上がるため、目的をはっきりさせてから選ぶ必要があります。
硬質クロムメッキの再生だけなら1本あたり23,000円〜30,000円が相場ですが、チタンコーティング(イオンプレーティング)を追加すると1本あたり18,000円〜45,000円の上乗せになります。東洋硬化ではゴールドチタンで1本41,000円(税別)、ゴールドチタン以外の色(パープルブラック・バイオレット等)で1本45,000円(税別)、1台2本分合計で税込99,000円という実例もあります。
| 表面処理の種類 | 1本あたりの追加費用目安 | 主なメリット | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| 硬質クロムメッキ再生のみ | 0円(基本料金のみ) | 純正同等仕様に戻せる | ツーリングメイン・維持費重視 |
| チタンコーティング追加 | +18,000円〜45,000円 | 低フリクション・外観カスタム | スポーツ走行・旧車のレストア |
| DLCコーティング追加 | +30,000円〜51,000円 | チタンの2〜4倍の表面硬度 | サーキット走行・競技 |
チタンコーティングの実際の効果は、フリクション(摺動抵抗)の低減と外観の美しさです。オーリンズのサスペンションに採用されているゴールドカラーと同等の処理が施されるため、旧車のレストアや見た目のカスタムを重視する人には満足度が高い選択肢です。
一方でDLCコーティングは、表面硬度がチタンコーティングの約2〜4倍と圧倒的に高く、摩擦抵抗も非常に低い反面、荷重を受けて「しなる」フロントフォークのような部材では、硬度が高すぎて割れやすくなるリスクも指摘されています。厳しいところですね。サーキット走行など特殊な使用状況でない限り、一般ツーリングではチタンコーティング止まりでも十分です。
普段のツーリングメインなら「硬質クロムメッキ再生のみ」で十分な性能が確保できます。旧車のレストアや外観カスタムをしたいなら「チタンコーティング追加」が費用対効果が高い選択です。まずこの2択から考えるのが基本です。
参考:チタンコーティングとDLCコーティングの比較実例
東洋硬化でフロントフォークインナーチューブのチタンコーティング完了|FZ750ブログ
多くのバイク乗りは「オイル漏れが始まってから」再メッキを検討します。しかしこの段階ではすでに「一番コストのかかる修理フェーズ」に入っています。実はオイル漏れの前に、明確なサインが3段階あります。
【ステージ1】点サビ・変色の出現(まだ余裕あり)
インナーチューブ表面に白や茶色の小さな点々が出てきた段階です。この時点では、目の細かいスチールウールで擦って除去できることもあります。ただしスチールウールでの研磨は表面を傷つけるリスクもあるので、専門業者に相談するほうが確実です。
【ステージ2】メッキの浮き・爪が引っかかる傷(要再メッキ)
指でチューブ表面をなぞって爪が引っかかるほどの凹凸があれば、サビが母材に達してメッキ層を持ち上げている状態です。この段階でオイルシールに当たり続けると、シールが傷みます。つまり「シール交換だけでは絶対に止まらない」オイル漏れになります。意外ですね。
【ステージ3】オイル漏れ発生(最悪の場合は車検不適合)
フォークオイルがにじみ始めると、路面状況によってはブレーキディスクにオイルが付着し、制動力が大幅に低下します。制動距離が伸びること、すなわち事故リスクが直接高まります。さらに車検でオイル漏れが発覚すると、その場で不合格となり再検査費用も発生します。オイル漏れは必須対処です。
ここで重要なのは、ステージ2の段階で動いた場合と、ステージ3まで放置した場合の費用差です。ステージ2での再メッキ費用は1本2万円前後に収まることが多いのに対し、ステージ3まで進行すると錆の肉盛り補修費用・オイルシール交換工賃・場合によっては曲がり修正費用が重なり、総額が倍以上になることがあります。早期対処だけが条件です。
早期発見・早期対処がインナーチューブ再メッキの最大のコスト節約策です。3,000円のメッキ保護剤を定期的に使うだけで、数万円の再メッキ費用の発生を数年単位で遅らせられます。これは使えそうです。メッキング(ナカライ)などの専用保護コーティング剤は、インナーチューブの延命措置として有効です。ただし、すでにステージ2以上の症状が出ている場合、保護剤では対応できませんので注意してください。
参考:インナーチューブの点サビ・劣化症状とオイル漏れのメカニズム(バイクブロス整備記事)
「フロントフォークオーバーホール」編 その4|バイクブロス