nt1100 白バイのスペックと市販車との違い

nt1100 白バイのスペックと市販車との違い

nt1100 白バイのスペックと市販モデルの違いを徹底解説

市販のNT1100はDCTなのに、白バイ仕様だとMTに戻ってあなたの追跡を振り切れなくなります。


この記事でわかること
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NT1100白バイの基本スペック

排気量1082cc・102馬力・車重270kgなど、市販車との数字の違いをわかりやすく解説。

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なぜ白バイだけMTなのか?

日本の市販NT1100はDCT仕様のみなのに、白バイ仕様がMTである驚きの理由を元白バイ隊員の視点で解説。

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CB1300Pとの比較と配備状況

長年主力だったCB1300Pからの変更点と、2025年から始まった全国配備の現状を紹介。


NT1100白バイ(NT1100P)の主要スペック一覧


2025年3月から全国の警察署で運用が始まったホンダの新型白バイ「NT1100P」は、2022年に発売された市販スポーツツアラー「NT1100」をベースに、白バイ専用の艤装を施したモデルです。


まず、この車両の基本スペックを整理しておきましょう。


| 項目 | NT1100P(白バイ仕様) |
|---|---|
| エンジン | 水冷4ストロークOHC 直列2気筒 |
| 総排気量 | 1,082cc |
| 最高出力 | 102PS / 7,500rpm |
| 最大トルク | 111N・m(11.3kgf・m)/ 5,500rpm |
| 変速機 | 6速マニュアルミッション |
| 全長 | 2,220mm |
| 全幅 | 990mm |
| 車重(艤装込み) | 270kg(車両総重量315kg) |
| 燃料タンク容量 | 20リットル |
| メーター | 大型TFTフルカラー液晶 |


102PSというのは、1000ccクラスのスポーツバイクに匹敵する数字です。これが警察車両として全国を走り回っているわけですね。


エンジンとフレームはホンダの人気アドベンチャーバイク「CRF1100Lアフリカツイン」由来のものを使用しています。アフリカツインの心臓部を受け継いでいるということは、信頼性と耐久性は折り紙付きということです。実際、長距離・長時間の連続使用が求められる警察業務に選ばれた背景には、このエンジンの実績が大きく影響していると言われています。


最大トルクは111N・m(≒約11.3kgf・m)で、発生回転数が5,500rpmと低めに設定されています。つまり低中回転域でもしっかり力が出るため、市街地の低速走行や急発進といった白バイ業務にぴったりな特性を持っています。


艤装品(サイレン・赤色灯・サイドボックスなど)を含んだ車両総重量は315kgになります。体重60kgの大人が5人分、つまり軽乗用車の車重に迫る重量感です。それをライダーひとりが扱うのですから、白バイ隊員の技量の高さが改めてわかりますね。


ホンダ公式のNT1100スペック・仕様ページ(市販モデル)はこちらで確認できます。


白バイのベースとなった市販NT1100の詳細スペックはホンダ公式サイトで確認できます。


ホンダ公式サイト:NT1100スペック・サイズ


NT1100白バイが「マニュアルミッション」である理由とDCTとの差

日本で市販されているNT1100はDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)仕様のみです。これが基本です。


クラッチ操作が不要で快適な自動変速のDCTは、多くのライダーに好まれている装備です。しかし白バイ仕様のNT1100Pは、あえてマニュアルミッション(MT)を採用しています。


なぜでしょうか?


白バイの活動には、警察業務ならではの特殊なライディング技術が求められます。その代表格が「小道路旋回(Uターン)」です。白バイ隊員のお家芸とも呼ばれるこの技術は、極めて狭い道幅の中でUターンをこなすもの。全国白バイ安全運転競技大会の競技種目にもなっており、隊員なら全員が習得しなければならない必須スキルです。


このUターンがDCTだと非常に難しくなるのです。理由は明確で、「自分の意思で駆動力を瞬時に断ち切れない」という点にあります。MTならクラッチを握るだけで一瞬にして駆動力をカットし、任意のタイミングでバイクを倒し込めます。極低速でのバランス保持にも、クラッチ操作による微細な駆動力コントロールが欠かせないのです。


急発進の場面も同様です。スピード違反車両を追跡するための停止状態からの急発進では、瞬発的かつ任意に駆動力を出せるMTの方が有利です。競技会のほとんどが1速固定での走行を前提としていることからも、MTの必要性がよくわかります。


MTが条件です。元白バイ隊員の視点から見た解説としても、この点は「DCTでは白バイ業務は難しい」と断言されています。


なお、NT1100のMT仕様は海外向けモデルとして存在しています。白バイ仕様のNT1100Pはこの海外MT仕様をベースに製造されているのです。これは多くの国内ライダーが「日本国内ではDCTしか買えない」と思っている事実とのギャップでもあります。


元白バイ隊員によるNT1100PのMT採用理由の詳細な解説はこちらで読めます。
Yahoo!カービュー:元白バイ隊員がホンダ NT1100Pをじっくりチェック!


NT1100白バイとCB1300Pのスペック比較|何がどう変わったか

長らく日本の白バイ主力車種として活躍してきたのが、ホンダCB1300Pです。車重は約300kgを超え、4気筒エンジンが生み出すパワーで長年支持されてきました。NT1100Pへの刷新はどんな変化をもたらしたのでしょうか?


以下に比較をまとめます。


| 比較項目 | CB1300P(旧型) | NT1100P(新型) |
|---|---|---|
| エンジン | 水冷並列4気筒 1,284cc | 水冷並列2気筒 1,082cc |
| 最高出力 | 約114PS | 102PS |
| 車重(艤装込み) | 約300kg超 | 270kg |
| 全幅 | 1,009mm | 990mm |
| 変速機 | マニュアル | マニュアル |
| メーター | 従来型 | 大型TFTカラー液晶 |


車重が約30kg軽くなっています。30kgというのは、米袋1.5袋分の重さです。これが毎日の業務に積み重なると、隊員の疲労度にも大きく影響します。


全幅も19mm細くなりました。わずかに思えるかもしれませんが、渋滞中のすり抜けや、狭い路地での取り回しでは実際の走行感覚としてはっきりわかる差が出ます。


パワーは102PSとCB1300Pよりわずかに下がっています。しかし、車重が30kg軽量化されたことで、パワーウエイトレシオ(出力÷重量)の面では実質的なパワーバランスは大きく変わらないとも言われています。


メーターに関しては大きな進化があります。大型TFTフルカラー液晶を採用し、カーナビモードやタコメーターモードへの切り替えが可能です。白バイ業務における情報管理の効率が大幅に向上しています。


つまり「軽くなって、賢くなった」というのがNT1100Pの進化の方向性です。CB1300Pとの並走映像がSNSでも話題になっており、2台が並ぶとサイズ感がほぼ同等に見えることが「意外」と受け取られています。装備品込みのサイズ感はほぼ互角ということですね。


NT1100白バイ専用装備とライダーが知っておくべき取締り機能

NT1100Pには、市販のNT1100には一切ない専用装備が数多く搭載されています。これを知っておくと、道路上での白バイとの遭遇時の理解が深まります。


まず目を引くのが前後のエンジンガード(バンパー)です。万一の転倒時にエンジンや車体を守るほか、緊急時の車両接触にも対応できる設計です。サイドにはサイドボックス(パニアケース)が装備されており、中には反則切符などの書類が収納されています。


速度測定に関連する装備として、NT1100Pには速度超過の計測結果を印字するプリンターが搭載されています。従来のCB1300Pではハンドル付近に設置されていたのに対し、NT1100Pでは車両後部のサイドボックス近くに移設されたとみられています。これは書類作成時の動線を短縮し、取締り業務の効率を高める改良です。


スイッチ類も専用設計です。左スイッチボックスには「REAR PAT(後部赤色灯用?)」「SIREN」のボタンがあり、右スイッチボックスには「P・M・S」という見慣れない操作系が確認されています。これらが具体的に何を制御するかは公式には非公開ですが、緊急走行や取締り業務を迅速かつ安全に行うための機能と推測されています。


電子制御サスペンションについては、市販モデル(2025年型からEERA搭載)に対してNT1100Pでは通常のサスペンションが採用されているとみられます。業務用途での整備性やコスト面を優先した結果と考えられます。


白バイに遭遇した際、後部の黒いボックスが気になったことがあるライダーは少なくないでしょう。あの箱の正体がプリンターである可能性が高いと知ると、取締りの現場がより具体的にイメージできます。


白バイはレーダーを使用した速度測定のほか、追尾測定(白バイ自身が後ろから並走して速度を計測する方式)も行います。NT1100Pの102PSという出力は、高速道路での追尾測定でも対応できる余力を確保しています。これは使えそうです。


市販NT1100のスペック・価格と「白バイと乗り比べたらどうなる?」という独自視点

市販のNT1100(2025年モデル)は税込184万8,000円で販売されています。2022年に初登場して以来、欧州市場のツーリングセグメントでトップセラーを記録するなど、世界的な評価が高いモデルです。


スペックは白バイ仕様と基本的に同一エンジンですが、変速機がDCTのみという点が大きな違いです。市販車のスペックを改めて確認しましょう。


| 項目 | 市販NT1100(2025年モデル) |
|---|---|
| 価格 | 1,848,000円(税込) |
| 排気量 | 1,082cc |
| 最高出力 | 102PS / 7,500rpm |
| 変速機 | DCT(6速自動) |
| シート高 | 820mm |
| 車両重量 | 249kg |
| 燃費(WMTCモード) | 20.4km/L |
| 燃料タンク容量 | 20L |
| 航続可能距離(概算) | 約400km前後 |


シート高820mmは、地面からの高さで測ると「一般的な玄関ドアの取っ手」くらいの位置です。足つき性は大柄な人向けの部類に入りますが、シート形状が工夫されておりまたがった時の実際の足つきは数字ほど悪くないとする評価も多くあります。


燃費はWMTCモードで20.4km/Lです。タンク容量20Lなので、概算で400km前後は無給油で走れる計算になります。東京から大阪まで(約500km)を1回の給油でほぼカバーできる航続力は、ツアラーとして非常に優秀です。


レギュラーガソリン仕様というのも注目ポイントです。排気量1,000cc超のビッグバイクにはハイオク指定が多い中、NT1100はレギュラーで走れます。長距離ツーリングでのランニングコストを考えると、地味ながら大きなメリットです。


では、もし一般ライダーが白バイ仕様と市販車を乗り比べたらどうなるでしょうか。エンジン性能やフレームは基本的に同じですが、変速操作の感覚がまったく異なります。市販DCT仕様はクラッチ不要で快適にツーリングを楽しめる一方、MT仕様はUターンや極低速での繊細な操作が得意です。白バイ隊員が「MT一択」と言う理由は、まさにこの操作感の差に集約されているのです。


ホンダGo バイクレンタルでは市販NT1100をレンタルして試乗体験することが可能で、白バイに近いフィールを一般ライダーも体感できます。


市販NT1100のオーナーレビューや評価は以下でまとめて確認できます。
Webike:NT1100のクチコミ・レビュー・評価・評判


NT1100白バイの全国配備状況と今後の展開

2025年3月下旬を境に、新型白バイNT1100Pは全国の警察署で順次配備・運用が始まっています。2025年3月28日〜30日に開催された「第52回東京モーターサイクルショー」では警視庁仕様のNT1100Pが展示され、多くの来場者の注目を集めました。


大阪府警では大阪モーターサイクルショー2025での展示と屋外デモ走行を実施。長野県警でも2025年4月1日付でNT1100Pが交通機動隊に配備されたことが確認されています。SNSやニュースでも全国各地での目撃情報が相次いでおり、CB1300Pからの世代交代が着実に進んでいます。


ただし、一気に全車両が切り替わるわけではありません。CB1300Pはまだ多くの警察本部で現役稼働を続けており、NT1100Pとの新旧混在期間が続く見込みです。道路でCB1300PとNT1100Pが並走している場面は、まさにこの過渡期ならではの光景と言えるでしょう。


生産は熊本製作所で行われており、国内向けだけでなく海外各国の警察機関への納入も予定されています。アメリカでは2025年5月からの発売がすでにアナウンスされていました。ホンダとしては従来、仕向け地によってST1300・NC750Xなど複数の車種を警察向けに供給していましたが、今後はNT1100に統合していく方針です。


注目すべき点のひとつが、「NT1100は開発当初から白バイ需要を織り込んでいた」というホンダ側の発言です。白バイ艤装のためのボスをフレームにあらかじめ追加した程度の変更しか行っていないとのことで、市販NT1100と白バイ仕様の基本設計は事実上同一です。つまり市販NT1100を購入することは、白バイと同じ心臓・同じ骨格を手にすることを意味します。


CB1300Pからの交代について詳しく報じた記事はこちら。
乗りものニュース:「軽い!細い!」だけじゃない 新型白バイ「NT1100P」詳細が判明


また、全国配備の様子と日本仕様ディテールの解説はこちら。
ヤングマシン:全国の警察で運用が始まったCB1300Pの後継白バイ!ホンダ「NT1100P」のディテールに迫る