前輪ブレーキの効果とバイクの物理現象|荷重移動と制動力配分

前輪ブレーキの効果とバイクの物理現象|荷重移動と制動力配分

前輪ブレーキの効果とバイクの物理現象

リアブレーキだけでは止まれません。


この記事のポイント
前輪ブレーキは制動力の7~8割

慣性力による荷重移動で前輪の接地荷重が増加し、制動力が大幅に向上します

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荷重移動のメカニズム

重心の高さとホイールベースの比率で荷重移動量が決まり、ブレーキ効果に直結します

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旋回時のブレーキトルクステア

バンク中の前輪ブレーキはステアリングをイン側に転舵させる力を発生させます

前輪ブレーキが制動力の7~8割を担う物理的理由


バイクの制動力配分は、前輪ブレーキが70~80%、後輪ブレーキが20~30%という比率になっています。この大きな差は、ブレーキをかけたときの荷重移動という物理現象によって生まれます。


参考)https://oshiete.goo.ne.jp/qa/5984768.html


ブレーキをかけると、慣性力が重心に対して前向きに働きます。動いているものはその速度で動き続けようとする性質があるため、バイクは止まろうとするのに対し、車体とライダーは前に行こうとするのです。この力と制動力が重心の高さだけ上下にずれているため、釣り合わせるために前輪への荷重移動が発生します。


参考)なぜフロントブレーキの方が「効く」のか?|nupuri


荷重移動量は「車両重量×ブレーキングG×重心の高さ÷ホイールベース」で計算できます。前輪の垂直抗力が大きくなるほど、タイヤのグリップ力も増加します。


つまり前輪の制動力が向上するということですね。



参考)https://gra-npo.org/publicity/report/2022/20221001_rep.html


一般道舗装路では摩擦係数μ=1.0が標準的で、理想的な重心位置はホイールベースと重心高の比が2:1とされています。この比率により、ウィリー限界とジャックナイフ限界、ホイールスピン限界が3つともバランスします。


リアブレーキの役割は、制動力というより車体を後ろから引っ張って安定させることです。フロントブレーキだけだとふらふらする場合がありますが、リアで安定させるのが基本です。


前輪ブレーキの荷重移動が生む制動効果のメカニズム

制動力が前輪の接地点に加わると、その反作用として重心(車体+ライダー)に前向きの慣性力が生じます。この慣性力は質量のある物体がその速度を維持しようとする力であり、制動力と向きが逆で重心の高さだけ上下にずれています。


その結果、フロントの接地荷重は増加し、リアの接地荷重は減少します。電車に乗っているときブレーキがかかると前につんのめるのも、この慣性のためです。自転車やバイクでブレーキをかけると、車体は止まろうとするのに人間は前に行こうとするため、フロントタイヤにより荷重がかかります。


荷重移動には「荷重移動」と「荷重変動」の2種類があります。荷重移動とは荷重の一方向の変化で、ブレーキを踏み増すか一定の踏力で進めば前荷重は増える一方向になります。一方、荷重変動とは荷重の両方向の変化を指し、ブレーキを強く踏みすぎて緩めたり、また踏み増したりすると前の荷重は増えたり減ったりを繰り返します。


参考)http://www.carphys.net/gpractice/load_fluct.html


荷重移動が原則です。


バイクの前輪ブレーキを効果的に使うには、まずリアブレーキをかけて車体全体に荷重をかけ、姿勢を安定させることが重要です。リアブレーキをかけると後輪に制動がかかるので、後ろに引っ張られる力が働いてリアのサスペンションが沈み、減速がかかるので前輪にも制動がかかってフロントのサスペンションも沈みます。つまりバイク全体が下方向に加重がかかる形になり、姿勢が安定するわけです。


参考)バイクの正しいブレーキのかけ方とは? - NAPS-ON マ…


1発目のブレーキを踏むことで、前輪のバネが縮み、ダンパーが縮み、シャシーがしなり、タイヤがつぶれ、タイヤの接地面が増え、荷重が乗り、強いブレーキ踏力を与えてもロックしにくい状態が作られます。


前輪ブレーキだけに頼る危険性とリアブレーキの役割

フロントブレーキだけでは危険です。フロントブレーキが強すぎると、前のサスペンションがガクンと沈み、バイクの安定性が損なわれます。速度が出ていると前輪タイヤがロックして前転してしまうことすらあります。


過度にフロントブレーキを使い過ぎると、リアタイヤの荷重が抜けてしまいバイクが一瞬浮いてしまい、バイクを傾けることができなくなります。リアブレーキだけを使っても、ブレーキが効かずに思うように止まることができません。


参考)【バイク】パニックブレーキについて考える【ツーリング】 - …


リアブレーキの役割は主に姿勢制御と速度調節です。フロントブレーキは減速をするため、リアブレーキは姿勢制御と速度調節のためという認識が基本になっています。低速でブレーキをかけたい時には、フロントよりもブレーキが利きにくいリアブレーキをかけることでバイクを安定させ、確実に減速できます。


参考)バイクのブレーキのかけ方解説!転倒を防止するためのコツを学ぼ…


フロントブレーキのみをかけた時にバイクがギクシャクする場合、リアブレーキをかけて安定させる方法が有効です。前輪ブレーキだけだとバイクもライダーもバランスを崩す可能性があるので、安全のためリアブレーキも同時に使うようにしましょう。


参考)バイクのブレーキのかけ方解説!転倒を防止するためのコツを学ぼ…


ブレーキは前後とも一緒にかけることが重要です。まずリアブレーキをかけて姿勢を安定させてから、フロントブレーキで制動力を高め、その後リアブレーキをかけて減速を完了させるという手順が推奨されます。


前輪ブレーキとバンク中のブレーキトルクステア現象

バイクが傾いた状態でバンク中に前輪ブレーキをかけると、ブレーキトルクステアという現象が発生します。


もちろんロックしない程度にです。



車体が傾くと、ライダーは保舵トルクをハンドルに加えて前輪の接地感を感じています。さらにバイクが傾いた状態で、重心三角形遠心力が釣り合った重力ベクトルが重なり、バイクはバランスが取れて定常円旋回をします。


前輪ブレーキをかけると、減速によって進行方向へ前輪を押す力がさらに強く作用し、接地点にはその反作用で逆向きに同じ力が発生します。その結果ステアリングには前輪をイン側、つまりバイクがバンクしている側に転舵するようなモーメントが発生します。


この現象をブレーキトルクステアと呼びます。



つまりイン側に切れるということですね。


バイクが起き上がるほどの強いブレーキトルクステアが発生しない程度の微少な前輪ブレーキをかけると、路面の微小な凹凸変化などと相まってブレーキトルクステアが増えたり減ったりしています。旋回中はフロントブレーキを使ってもフロントタイヤはグリップを失い難くなるので、さらに自信を持って使えます。


リアブレーキには車両をロール方向に姿勢変化させる操舵軸などが無いため、前輪ブレーキとは異なる特性があります。バンク角が変化せずに減速するということは、遠心力が変化しないということになります。車速vがリアブレーキでv'に減速すると、遠心力とバランスを取るために旋回半径rがr'に小さく変化するのです。


カーブや交差点など、バイクを傾けて曲がる時にブレーキ操作をすると、転倒する可能性があるため注意が必要です。


前輪ブレーキ時のアンチダイブ機構と荷重移動の関係

アンチダイブとは、ブレーキング時にフロントサスペンションが沈み込む現象(ダイブ)を抑制する機構です。タイヤに掛かる荷重の変動は、アンチダイブがあろうとなかろうと同じで、「荷重移動=車両重量×ブレーキングG×重心の高さ÷ホイールベース」という式で表されます。


減速Gによる車体慣性力が荷重移動とダイブを生み出し、サブレーキ力がサスペンションに掛かりアンチダイブ力が発生し車体を持ち上げてダイブを減らす、というのがアンチダイブのメカニズムです。


アンチダイブモーメント(力)とか言います。



ある角度でブレーキングの車体慣性力による荷重移動とアンチダイブ力が同じになり、ブレーキングで全然ダイブ(前のめり)しなくなります。


これがアンチダイブ率100%です。


正確に言うとサスペンションのダイブがなくなるけどタイヤはつぶれるので、タイヤ分のダイブは残ります。


重心が高いバイクの場合、ブレーキをかけたときフロント側に荷重が大きく移動してきます。荷重がフロントタイヤに大きくかかるため、フロントブレーキの利きが良く、そのためフロント中心のブレーキ操作になるのです。レーサーレプリカなどに多く見られる重心が高いバイクが、この特性を持っています。


参考)ハーレーのブレーキング・ブレーキの重要性とはハーレービギナー…


アンチダイブ力は車体を持ち上げます。


バイクのブレーキには、指でブレーキレバーを握った力がレバーの「テコの原理」と、油圧を利用した「パスカルの原理」で二段階に増幅される仕組みがあります。そうすることではじめて、ブレーキパッドで挟み込む力(制動力)が生み出されるわけです。


参考)指の力だけでどうして止まる? バイクのブレーキって謎すぎる!…


サスペンションのダイブは抑制できますが、タイヤの変形による沈み込みは物理的に避けられません。フロントタイヤに荷重が集中すればするほど、タイヤのグリップ力も増加するため、制動力が高まります。


前輪ブレーキの誤った使い方がもたらす転倒リスク

パニックブレーキ(急ブレーキ)でフロントタイヤをロックさせると、初心者が起こしがちな自損/単独事故の大半を占めるブレーキに起因する転倒が発生します。いきなり強くかけると前輪がロックしてすべってしまい、転倒の原因になります。


フロントブレーキのみの急制動だとロックして転倒するリスクがあります。リアタイヤがロックするとまずバイクが"たこおどり"でふらつきます。ABSが効かない状態では、フロントブレーキのみだとロックして転倒するリスクがあったので、リアブレーキを使えてよかったという事例も報告されています。


参考)リアブレーキを積極的に使うといざという時に転倒を防いでくれる…


ほとんどの場合、ブレーキをかけたときにバイクが立ち上がるのは、タイヤを変形させるような急なフロントブレーキの入力が原因です。バイクの質量はまだ前方に移動しようとしているため、急激なブレーキング操作は危険です。


参考)Reddit - The heart of the inte…


転倒の原因になりますね。


強いブレーキングで前輪に荷重が集中しすぎると、リアタイヤの接地荷重が減少して浮き上がる現象が起こります。場合によっては、リアタイヤが完全に浮いてしまうこともあります。この状態ではバイクのコントロールが困難になり、転倒リスクが高まります。


アクセルを急に戻した後に急にリアブレーキをかけると、バイクの姿勢が大きく崩れる可能性もあり危険です。急制動時にはバイクが不安定になり、転倒しやすくなりますが、不安定な急制動時にもバイクのコントロールを保つには、リアブレーキが役立ちます。


オフロード専門のライダーによると、スリッピーな路面での急制動が前提でも、思いっきりフロント80%くらいでフルブレーキングしてもバイクが真っ直ぐ立ってる状態ならフロントタイヤが若干ロックしても結構転ばないとされています。ただし、これは熟練者の技術であり、初心者が真似するのは危険です。


グーバイクマガジンの制動距離を短縮する記事では、リアブレーキの使い方についてライディングテクニックとして詳しく解説されています。


参考にしてください。




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