

スピードウェイのバイクにはブレーキがありません。
AMA全米スピードウェイ選手権は、全米モーターサイクル協会(AMA)が主催するダートトラックレースの最高峰です。2025年シーズンは8月2日と8月9日の2回戦がカリフォルニア州Industry Hillsで開催される予定となっています。
参考)https://americanmotorcyclist.com/ama-announces-schedule-for-2025-ama-speedway-national-championship/
オーバルコースのダートトラックを4人のライダーが反時計回りに4周走行し、順位を競います。レースは1周あたり約300~400メートルの楕円形トラックで行われ、観客は至近距離で迫力のバトルを観戦できるのが魅力です。
実はアメリカには2つの全米選手権が存在します。1つはAMA主催の選手権で、もう1つはコスタメサスピードウェイで1969年から開催されている独立した選手権です。1998年以降、コスタメサの主催者がAMAから分離したため、現在は完全に別々の大会として運営されています。
参考)United States Speedway Nationa…
つまり2つの「全米王者」が存在することになります。
スピードウェイバイクは、モーターサイクル競技の中で最もシンプルかつ過激な設計を持つマシンです。500cc単気筒エンジンで約70馬力を発生し、11,000rpmまで回転します。
最大の特徴は、ブレーキが一切装備されていないことです。ライダーはスロットルと体重移動だけで速度をコントロールし、コーナーではバイクを横に滑らせながら進みます。これにはエンジンブレーキとタイヤのスライドを使った高度な技術が必要となります。
トランスミッションも1つの固定ギアのみで構成されており、変速操作は一切ありません。クラッチもスタート時のみ使用され、走行中は使いません。このシンプルさがスピードウェイの魅力であり、ライダーのスロットルコントロール技術が勝敗を分けます。
車重は約77kgと非常に軽量で、メタノール燃料を使用するため独特の甘い排気音が特徴です。
スピードウェイのレースは4人のライダーが同時にスタートし、4周回で順位を決定します。スタート方法はグリッドスタートで、ゲートが上がると同時に一斉にダッシュする迫力のスタイルです。
1レースは通常20秒から1分程度の短時間勝負となります。コース幅が狭く、追い抜きは難しいため、スタートが非常に重要になります。
ポイント制度は順位に応じて付与され、大会全体の合計ポイントで最終的なチャンピオンが決まります。転倒や接触も頻繁に発生し、観客を魅了する要素の1つとなっています。
レースは複数のヒート(予選)を行い、上位者が準決勝、決勝へと進む仕組みです。全てのライダーが複数回走行する機会があり、安定した成績を残すことが重要になります。
コースコンディションも重要な要素です。
スピードウェイ競技は第一次世界大戦前後に起源を持ち、約100年以上の歴史があるモーターサイクルスポーツです。アメリカでは1969年にコスタメサで最初の全米選手権が開催され、以降伝統的に続いています。
1970年代から1980年代にかけて、ブルース・ペンホール、シャウン・モランといったアメリカ人ライダーが活躍し、スピードウェイの人気を確立しました。特にペンホールは1980年と1981年に連続で全米王者となり、スピードウェイのスター選手として知られています。
1990年代以降はマイク・ファリア、ビリー・ハミル、ビリー・ジャニーロといったライダーが複数回のタイトルを獲得し、アメリカンスピードウェイの黄金時代を築きました。2020年代に入ってからはマックス・ラムルが2022年と2023年に連覇を達成しています。
AMA主催の選手権は1998年以降、コスタメサの選手権とは別に運営されるようになりました。
残念ながら、AMA全米スピードウェイ選手権に参戦した日本人ライダーの記録は現時点では見つかっていません。スピードウェイ競技自体が日本ではマイナーなスポーツであることが一因です。
ただし、ロードレースのAMAスーパーバイク選手権には宗和孝宏が1993年にルーキーオブザイヤーを獲得し、2005年には民辻啓がスーパーストッククラスに参戦した実績があります。日本人ライダーがアメリカのモーターサイクル競技に挑戦する土壌は存在します。
スピードウェイは欧州、特にイギリス、ポーランド、スウェーデンで盛んなスポーツで、FIM世界選手権も開催されています。日本からこの競技に挑戦するには、まず欧州でのキャリア構築が現実的なルートとなるでしょう。
AMAの他のオフロード競技、モトクロスやスーパークロスでは日本製バイクが圧倒的なシェアを持っています。ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4メーカーが上位を独占しており、技術力の高さを証明しています。
いつか日本人ライダーがスピードウェイで活躍する日が来るかもしれません。
スピードウェイの観戦は、他のモーターサイクル競技とは異なる独特の興奮があります。コースが小さいため、観客席からレース全体を見渡せるのが最大の魅力です。
ライダーがコーナーでバイクを横向きに滑らせながら、砂を巻き上げて疾走する姿は圧巻です。ブレーキがないため、減速せずにフルスロットルでコーナーに突入し、体重移動とスライドコントロールだけで曲がります。
メタノール燃料特有の甘い香りと、高回転エンジンの咆哮が会場を包みます。1レースが短時間で終わるため、次々とレースが行われ、飽きることがありません。
2026年の選手権ファイナルはカリフォルニア州のFast Fridaysで開催される予定です。ゲートは18時30分に開き、子供(9歳以下)は無料で入場できます。シーズンパス保有者は18時から早期入場が可能です。
参考)2026 AMA National Speedway Cha…
初めて観戦する場合は、コーナー付近の席がおすすめです。
AMAは複数のモーターサイクル選手権を主催しており、それぞれ異なる特徴があります。スピードウェイ選手権は楕円ダートトラック専門ですが、AMAスーパークロスは屋内スタジアムで人工コースを使用します。
参考)2026 AMA Supercross Championsh…
スーパークロスは2026年シーズンで53回目を迎え、1月から5月まで全17戦が全米各地で開催されます。450ccクラスと250ccクラスの2つのカテゴリーがあり、それぞれチャンピオンが決まります。アナハイム、サンディエゴ、ヒューストンといった大都市で開催されるため、観客動員数も多いです。
AMAモトクロスは屋外の自然地形コースで行われ、よりオフロード性能が求められます。スピードウェイとは異なり、ジャンプやマディコンディションでの走行技術が重要です。
参考)数字で見る|勝ったのはどっち?「MXGP vs. AMA」F…
かつて存在したAMAスーパーバイク選手権は、舗装路のサーキットで市販車ベースのバイクが競い合うロードレースでした。2015年にMotoAmericaシリーズに改名され、現在も続いています。
スピードウェイは最もシンプルで原始的な魅力を持つ競技といえます。
AMA全米スピードウェイ選手権に参戦するには、まずAMAのライセンスを取得する必要があります。ライセンス取得には、地域レベルのスピードウェイイベントでの経験が求められることが一般的です。
スピードウェイバイクは専用設計のため、一般的なモーターサイクルとは全く異なります。新品のスピードウェイバイクは数百万円かかり、メンテナンスにも専門知識が必要です。エンジンは高回転で使用するため、頻繁なオーバーホールが欠かせません。
練習環境も重要な要素です。アメリカにはカリフォルニアを中心にいくつかのスピードウェイトラックがあり、練習走行が可能です。ただし、日本国内にはスピードウェイ専用トラックがほとんどないため、海外での経験が必須となります。
トレーニングとしては、ダートトラックレーシングの基礎を学ぶことが推奨されます。フラットトラックレースやモトクロスの経験があれば、スライドコントロールの感覚を養えます。
最も重要なのは恐怖心を克服する精神力です。
スピードウェイ競技は欧州では依然として人気がありますが、アメリカでは観客数の減少が課題となっています。2025年のAMA選手権がわずか2戦という限定的なスケジュールになったのも、この影響といえます。
参考)2025 USA Speedway Championship…
しかし、スピードウェイ独特の迫力と技術性は今も多くのファンを魅了しています。ブレーキもギアもないシンプルな設計ゆえに、ライダーの純粋な技術が結果に直結する公平性が評価されています。
近年、電動バイクの技術発展により、スピードウェイでも電動化の可能性が議論されています。メタノール燃料の入手困難さや環境問題を考慮すれば、将来的には電動スピードウェイバイクが登場する可能性もあります。
若手ライダーの育成プログラムも重要です。カリフォルニア州を中心に、ユース向けのスピードウェイスクールが運営されており、次世代のスター選手を育てています。
デジタル配信の普及により、世界中からレースを視聴できる環境が整いつつあります。日本からでもAMA公式サイトやストリーミングサービスでレースを楽しめる時代になりました。
スピードウェイの伝統は次の世代へと受け継がれていくでしょう。
AMA全米スピードウェイ選手権の公式スケジュール情報
この公式サイトでは、2025年シーズンの開催日程、開催地、エントリー情報などが詳しく掲載されています。
レース観戦を計画する際の参考になります。
スピードウェイバイクの技術的詳細解説(日本語)
スピードウェイバイクのブレーキなし設計、メタノール燃料の使用、固定ギアシステムなど、技術的な特徴が日本語で詳しく説明されています。初心者が競技を理解するのに役立つ情報源です。