

冷間時に空気圧を測らないとあなたのタイヤはバーストします
バイクのタイヤが走行中に発熱するのは、2つの物理現象が関係しています。一つはタイヤの変形によるヒステリシスロス、もう一つは路面との摩擦熱です。
この発熱はグリップ力を発揮するために必要不可欠ですが、同時に適切に管理しないと危険な状態を招きます。タイヤの温度が上がることで内部の空気が膨張し、空気圧が上昇するためです。走行後に空気圧を測定すると、冷間時より10〜20kPa高くなることが一般的です。
参考)ライテクをマナボウ「タイヤに空気 入っていますか?」|KUS…
タイヤの発熱で最も重要なのがヒステリシスロスという現象です。これはタイヤのゴムが路面に接地して荷重を受けて変形し、路面から離れて元に戻る際にエネルギーが熱に変わる現象を指します。
参考)https://ameblo.jp/three-year-desk-diary/entry-12721233521.html
スプリングは変形と復元が同じ状態ですが、ゴムの場合は変形と復元にズレが生じます。
このズレがヒステリシスロスです。
走行中はタイヤの回転によってこの変形と復元が繰り返されるため、継続的に発熱します。
特に車速が速い領域では、このヒステリシスロスによる発熱が顕著になります。高速走行でタイヤが熱くなるのはこのためです。ヒステリシスロスが大きいゴムほど発熱しやすく、柔らかいゴムほどこの傾向が強くなります。
参考)タイヤ温度が与える影響
一方、摩擦熱は表面温度を上昇させますが、内部温度はあまり上がりません。つまり、タイヤ全体を均一に温めるにはヒステリシスロスが重要ということですね。
タイヤがグリップ力を発揮するには、ゴムの分子運動が活発になる必要があります。ゴムは粘弾性体であり、分子間運動によってグリップ性能を発揮する特性を持ちます。
温度が低いとゴムの分子運動は鈍く、固い状態になります。寒い時にタイヤを爪で押すと固いのはこのためです。この状態では十分なグリップ力を発揮できず、転倒のリスクが高まります。
タイヤタイプ別の最適温度は以下の通りです:
高グリップなタイヤほど、グリップ力を発揮できる温度域は狭くなります。これは分子構造が高性能に特化しているためです。
最近の高性能タイヤはコンパウンドにシリカを配合することで、この温度依存性を改善しています。シリカを使うことで低温時から分子間の動きに柔軟性が出て、低温時やウェット時のグリップも向上します。
つまりシリカ配合が鍵です。
タイヤの発熱によって最も注意すべきなのが空気圧の変化です。タイヤ内部の空気は温度が上がると膨張し、空気圧が上昇します。この物理現象を理解していないと、重大なトラブルにつながります。
走行前の冷間時と走行後の温間時では、空気圧が10〜20kPa変化することが一般的です。例えば冷間時に250kPaだったタイヤが、走行後には270kPaまで上昇するということです。
これは約8%の上昇率になります。
そのため、バイクメーカーが指定する空気圧は必ず「冷間時」の数値です。冷間時とは、走行から最低でも2〜3時間以上経過してタイヤが完全に冷えた状態、または数キロ以内の短距離走行のみの状態を指します。
参考)https://www.goobike.com/magazine/maintenance/maintenance/473/
温間時に空気圧を測定して指定値に合わせてしまうと、タイヤが冷えた時に空気圧が不足します。空気圧が低すぎるとタイヤの変形が大きくなり、過大な発熱でパンクやバーストのリスクが高まります。
これは非常に危険です。
逆に冷間時に空気圧を入れすぎると、走行中にさらに圧力が上がり、安全上のリスクが生じます。バイクのタイヤには安全上の理由から40psi(約2.8bar、280kPa)を超える空気を入れないよう推奨されています。
空気圧を正確に管理するには、必ず走行前の冷間時に測定し、正確なエアゲージを使うことが基本です。
参考)https://media.yzf-r.com/2033
サーキット走行では、タイヤの温度管理がさらに重要になります。レース用や高性能タイヤは、高温下で最高のパフォーマンスを発揮するように設計されているためです。
MotoGPのバイクでは、タイヤウォーマーで80〜100℃まで温めます。一般的なサーキット用タイヤでも、ミシュランが推奨するタイヤウォーマーの温度設定は90℃です。この予熱によって、コースイン直後から安全にグリップ力を発揮できます。
参考)Reddit - The heart of the inte…
タイヤウォーマーを使用しない場合、コースイン直後の1周目2周目はタイヤが低温のため、スリップダウンのリスクが高くなります。低温時に負荷をかけるとタイヤが変摩耗(ささくれ)し、一度変摩耗するとそのタイヤは使用不可になります。
サーキット走行では、タイヤの温度上昇を見越して走行前に空気圧を下げておくのがセオリーです。例えばミシュラン パワーカップ2の場合、サーキットでは冷間時でフロント210kPa(2.1bar)、リヤ150kPa(1.5bar)を推奨しています。
これは一般道の推奨空気圧より明らかに低い設定です。サーキットでは連続高速走行によってタイヤが大きく発熱し、空気圧が大幅に上昇するためです。
タイヤを効果的に温めるには、ゆっくり走るだけでは不十分です。タイヤは変形することで内部から発熱するため、コーナーをゆっくり走りながらも、ストレートでは前後タイヤに長く荷重をかけて、タイヤを変形させる走りが効果的です。
荷重をかけるのがコツですね。
タイヤには適切な作動温度域があり、それを超えると性能が低下したり損傷したりします。高温側の限界を「リバージョンポイント」、低温側の限界を「ブレーキングポイント」と呼びます。
サーキット用タイヤの場合、特殊なコンパウンドの配合により最高150℃までタイヤの性能を維持できます。しかし、この温度を超えるとゴムが溶けてペースト状になり、グリップ力が急激に低下します。
これがリバージョンポイントです。
一方、極端な低温状態になると、タイヤのゴムは弾性を失い、損傷が発生しやすくなります。
これがブレーキングポイントです。
低温によるゴムの破壊は、気づかないうちにタイヤ内部で発生している場合があります。
取り扱い時の注意として、タイヤの損傷を防ぐため5℃以下では取り扱わないこと、マイナス10℃以下では絶対に取り扱わないことが推奨されています。冬場の保管や交換作業では特に注意が必要ということですね。
一般的な街乗り用タイヤの場合、36℃から40℃程度になればしっかりグリップします。これは人肌程度の温度なので、手のひらでタイヤを触って確認できます。コーヒーブレイクの度にタイヤを触って温度を確認する習慣をつけると、安全性が高まります。
真冬の街乗りではタイヤ温度が30℃以下になることもあり、この状態ではグリップ感に不安があります。特にハイグリップタイヤを使用している場合は、冬場のウォームアップを十分に行う必要があります。
空気圧が高すぎる場合の影響。
ゴムの分子は空気の分子より大きいですが、それでもタイヤ内部の空気は自然に抜けていきます。パンクやエアバルブの損傷がなくても、時間経過とともに徐々に空気圧が低下するため、定期的なチェックが必要です。
測定は決して目視や指で押すだけに頼らず、正確なエアゲージを使用してください。また、コンプレッサーは非常に高圧な空気を入れることができますが、空気を入れすぎるとタイヤが破裂する危険があります。
慎重に調整しましょう。
ミシュラン公式サイトでは、タイヤの温度による損傷リスクと適切な管理方法について詳しく解説されています
ホンダHRCの公式セッティング解説では、タイヤのヒステリシスロスと発熱メカニズムについて技術的な説明が掲載されています