

真空ポンプ式ブリーダーだけ使うと、むしろエアが増えて修復に3時間以上かかることがあります。
ブリーダー(ブリーダープラグ)とは、ブレーキキャリパーに取り付けられた小型のボルトで、ブレーキライン内のエア(空気)やフルードを排出するための専用パーツです。中心に縦穴が通り、先端付近で横穴につながるという独特の構造を持っており、一般的なボルトとは役割が根本的に異なります。エア抜き作業では、このブリーダープラグをわずかに緩めてブレーキレバーを握ることで、ライン内の空気を外に押し出す仕組みになっています。
エア抜きに使うツールには、大きく分けて3種類あります。
| 種類 | 特徴 | 目安価格 |
|---|---|---|
| ワンウェイバルブ式ブリーダー | ホース先端の逆流防止弁でフルードの逆流を防ぐ。一人作業に最適 | 1,000〜2,000円 |
| 真空ポンプ(バキューム)式 | 負圧でフルードを吸い出す。コンプレッサー不要タイプもあり | 3,000〜10,000円 |
| シリンジ(注射器)式 | キャリパー側からフルードを逆送する。完全に空になったラインにも有効 | 600〜1,000円 |
セルフ作業の費用は工具込みで約2,000〜3,000円が目安で、ショップに依頼した場合は1キャリパーあたり1,500〜3,000円ほどです。費用面では大きな差はありませんが、自分でできる技術を持っておけばカスタム中のトラブル対応がスムーズになります。
ここで重要なのが、ツールへの「依存」です。コンプレッサー付きの本格的なブリーダーを持っていても、それだけで仕上げてはいけません。つまり、最終的な仕上げは必ず手作業が原則です。ツールはあくまでも補助と考えて、最後にブレーキレバーを繰り返し握る手作業を行うことで、細部に残ったエアが完全に抜けます。
参考:ブリーダープラグの構造・仕組みを写真付きで詳しく解説している信頼性の高い記事です。
「ついでのひと手間」が惨事を防ぐ。キャリパーのブリーダープラグはパーツクリーナーで洗浄! – WEBike
エア抜きを始める前に、必要な道具を揃えておくことが作業をスムーズに進める第一歩です。最低限必要なのは、8〜10mmのメガネレンチ(プラグのサイズに合わせる)、透明なシリコンチューブ(内径6mm程度)、廃液を受けるペットボトルやウエス、そしてブレーキフルード(車体指定のDOT規格のもの)です。DOT3・DOT4・DOT5といった規格があり、リザーバータンクのキャップに記載されている指定規格以外を混ぜると、ブレーキ機構を破損させる恐れがあるので注意してください。
作業の基本手順は以下の流れです。
ここで多くの人が見落とすのが「車体の傾きと方向」です。サイドスタンドでハンドルを左に切るポジションにすると、マスターシリンダーが最も高い位置になり、ライン内の気泡が自然に上へ昇っていきます。気泡は液体の中で必ず上方向へ移動する性質があるので、この高低差を意識するだけで作業効率が大きく変わります。
リザーバータンクのフルード切れにも要注意です。作業中にフルードがどんどんホース側へ流れていくため、「気づいたらタンクが空だった」という事態が頻繁に起きます。タンクが空になると新たにエアを大量に吸い込んでしまい、作業がゼロからやり直しになります。これは避けたいところですね。こまめにフルード量を確認しながら作業を進めましょう。
エア抜きは手順どおりに進めても、いくつかの落とし穴があります。経験者でも繰り返すような失敗パターンを把握しておくことで、無駄な時間とコストを削減できます。
失敗①:真空ポンプ式ブリーダーで2次エアを吸い込む
真空ポンプ(バキューム式)を使う方法は手軽に見えますが、実は大きなリスクがあります。バイクのブレーキマスターシリンダーのピストンシール(プライマリーカップ・セカンダリーカップ)は加圧方向には強い一方、負圧(引っ張り方向)への対応能力が低い設計です。そのため真空ポンプで強く吸引すると、シリンダー上面のポートやシール部分から「2次エア」を吸い込んでしまいます。泡のようなエアが次々と出続ける状態は、まさに2次エアを吸っているサインです。真空ポンプはあくまで補助で使い、仕上げは必ずレバーポンピングの手作業で行うことが大切です。
失敗②:ブリーダープラグを緩めすぎてネジ部からエアを吸う
ブリーダープラグを緩めるとき、「もっと緩めた方がフルードが出やすい」と思って回しすぎるのも危険です。緩めすぎるとプラグのネジ山部分に隙間ができ、そこから外気を逆に吸い込んでしまいます。ブリーダープラグは「エアとフルードが出てくる程度」にわずかに緩めるだけで十分です。ネジ山部分にシリコングリスを薄く塗っておくと、隙間をシールしつつ緩め量を最小限に抑えやすくなります。
失敗③:作業後のブリーダープラグが過度に締まって次回に折れる
ブリーダープラグの規定締め付けトルクはわずか5〜6Nm程度と非常に小さく、これはおよそ「ボールペンを強く押すくらいの力」に相当します。柄の長いメガネレンチを使うだけで簡単にオーバートルクになり、プラグ内部の横穴が潰れてしまうことがあります。潰れた横穴はエアが抜けなくなる直接の原因です。締め付けトルクが原則です。さらに腐食が進んだ状態で無理に緩めようとすると、プラグがポッキリ折れてキャリパーに固着するという最悪のトラブルにつながり、キャリパーごとの交換費用が発生することもあります。
参考:エア抜きが固くならないときの具体的な対処法を丁寧に解説したページです。
バイクのブレーキをエア抜きしても固くならないときの対処法 – bike-parking.jp
エア抜き作業が終わった後、多くのライダーが見逃しがちなのが「ブリーダープラグの内部清掃」です。エア抜き作業ではプラグの縦穴・横穴にブレーキフルードが残ります。ブレーキフルードは吸湿性が非常に高く、空気中の水分を引き寄せてサビを発生させます。放置すると横穴が詰まり、次回のエア抜き作業でフルードがまったく出てこないという事態になります。
作業後のケア手順はシンプルです。
ゴムキャップは数百円で購入できます。これが条件です。経年劣化でキャップがカチカチに硬化していたり、紛失していたりする場合は、DAYTONAなどのメーカーから汎用品も出ているので早めに交換しましょう。純正ブリーダープラグのネジサイズはM7×P1.0・M8×1.25・M10×1.25の3種類のどれかが多く、交換時は事前に自車のサイズを確認する一手間が重要です。
ステンレス製のブリーダープラグへの交換も有効な選択肢のひとつです。純正のスチール製に比べてサビに強く、長期的なメンテナンスコストを抑えられます。頻繁にエア抜きをするライダーや長期保管することが多い場合には、一度検討してみる価値があります。
参考:ブリーダープラグの構造とサビ対策、ナットツイスターでの救出方法まで詳しく解説されています。
キャリパーのブリーダープラグはパーツクリーナーで洗浄! – WEBike
ブレーキのエア抜きが必要になる場面は、ブレーキホース交換時やキャリパーオーバーホール時だけではありません。実は定期的なフルード交換のタイミングにも、エア抜きと同等の作業が発生します。フルードの交換推奨サイクルは一般的に2年に1回または1万km走行ごとのどちらか早い方とされています。
なぜ2年なのかというと、ブレーキフルード(グリコール系・DOT4)は吸湿性が高く、使用とともに水分を吸収して沸点が下がるからです。新品のDOT4フルードの沸点は約230〜270℃ですが、吸湿率が3.7%に達する1〜2年使用後には沸点が約165〜170℃まで下がるというデータがあります。低下した沸点は「ベーパーロック現象」を起こしやすくします。ベーパーロックとは、フルードが沸騰して気泡が発生し、ブレーキの油圧が伝わらなくなる現象です。つまり、ブレーキレバーを握っても効かない状態になります。
| 状態 | 吸湿率 | 沸点の目安(DOT4) |
|---|---|---|
| 新品時 | 0% | 230〜270℃ |
| 1〜2年使用後 | 約3.7% | 165〜170℃ |
また、ABSが装着されているバイクではエア抜きに特別な注意が必要です。ABSの制御ユニット内にエアが入り込むと、DIYレベルでは抜けなくなりチェックランプが点灯し続ける可能性があります。ABSバイクのエア抜きでは、フルードをタンクから決して空にしないことが最重要です。これだけ覚えておけばOKです。作業に少しでも不安がある場合は、ショップに依頼するのが確実な選択です。
フルードの色が茶色や濃い黄色に変色していたり、ブレーキタッチが以前よりスポンジーに感じたりする場合は、フルード交換とエア抜きのサインと考えてください。日常点検でリザーバータンクの窓からフルードの色を確認する習慣をつけると、トラブルを未然に防げます。
参考:ブレーキフルードの劣化と沸点低下の仕組みについて詳しく解説されています。
エア抜き経験者の間でも見落とされがちなのが、「キャリパーとマスターシリンダーの位置関係」を意識した作業です。気泡は液体の中で必ず上方向へ移動するという物理の法則があります。これを応用すると、エア抜き作業の効率を劇的に改善できます。
キャリパーをブラケットに装着したままの通常状態では、ブリーダープラグが必ずしも最上部にあるとは限りません。こうした場合、プラグを最も高い位置にくるようにキャリパーをブラケットから一時的に外して傾けることで、エアがブリーダーに向かって自然に集まりやすくなります。マスターシリンダー側も同様で、ハンドルの切り方やクランプ角度を調整して、ブリーダーポートが最上部にくるよう工夫することが重要です。
作業の最終仕上げとして非常に有効なのが、ブレーキレバーをゴムバンドや輪ゴムで握った状態に固定し、そのままひと晩放置する方法です。これにより、ライン内の微細な気泡が時間をかけて上方へ移動し、翌朝にもう一度軽くエア抜きをするとわずかな気泡が出てくることがよくあります。仕上がりのレバータッチがグッと向上する効果があり、レースメカニックやプロの整備士が実際に使っている手法です。盗難防止用のブレーキレバーロックを活用するのも同じ効果が得られます。
最終チェックとして、作業完了後にブレーキレバーを強く握り続けた状態で1〜2分保持してください。フルードの滲みや漏れがあれば、ブリーダープラグの締め付け不足やバンジョーボルトのガスケット不良が疑われます。この確認作業は安全面で欠かせません。エア抜きが適切にできているかどうかの最終判断は、レバーを握ったときの「カチッとした硬さと一定のタッチ感」です。スポンジーさが残る場合はエアが残っている証拠で、再度手順を繰り返してください。
参考:教科書には載っていないキャリパーの姿勢やブリーダー位置の工夫について詳しく解説されています。
【教科書には載ってない】エア抜きを容易にする方法 – モトロックマン

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