

軽量ホイールに換えると直進安定性が悪化します。
バイクのホイールが回転するとき、単なる重さ以上に重要なのが「回転慣性モーメント」という物理量です。これは回転運動のしにくさを表す指標で、質量に回転軸からの距離の2乗を掛けた値として計算されます。
つまり同じ重量でも、ハブ付近に質量が集中しているホイールと、リムやタイヤなど外周部に質量が集中しているホイールでは、回転慣性モーメントが大きく異なるということですね。
バイクのホイールは前進しながら回転するため、2種類の運動エネルギーを同時に保持しています。一つは車体全体が前進するための「並進運動エネルギー」、もう一つはホイール自体が軸周りに回転する「回転運動エネルギー」です。回転運動エネルギーは慣性モーメントと角速度の2乗に比例するため、外周部の重量が走行性能に決定的な影響を与えます。
参考)ホイールの話8(慣性モーメントとエネルギー) - ゆうちゃん…
実際の実験では、同じ1000gの重量でもハブ付近に重量を配置したホイールと外周部に重量を配置したホイールでは転がり方がまったく異なることが確認されています。外周が重いホイールはゆっくりと速度が落ち、ハブが重いホイールは急激に減速します。
参考)実験で判明!同じ重量のホイールでも転がり方がまったく異なる結…
ホイールを軽量化すると、加速時には軽量化した重量の2倍の効果が得られることが物理計算から導かれています。これは回転部分の等価慣性質量を加味した結果で、巡航時や登坂時ではなく加速するときだけ発揮される特殊な効果です。
参考)ホイールの軽量化は加速時に2倍の効果がある|凡人が31歳でロ…
どういうことなのでしょうか?
ホイールの外周部(タイヤとリムのあたり)を100g軽量化すると、加速時には200g軽量化したのと同等の効果が得られるということです。これは慣性モーメントの計算式から導かれる物理法則で、回転する物体特有の現象といえます。
参考)ホイールの慣性モーメント
ヒルクライムレースでは1kgの軽量化で約40秒から1分のタイム短縮が可能とされ、実際の実験でもホイールの130gの軽量化で約8秒のタイム差が確認されています。これは重力に逆らって進む登坂では、ホイール重量の軽減が直接的に負担の軽減につながるためです。
参考)【ロードバイク】ホイール軽量化の完全ガイド!軽量効果を最大限…
踏み出しが軽くなり、立ち上がりや加速の良さを求めるならリムが軽いタイプの重量分布が有利です。ただし高速巡航を長時間維持しようとすると慣性があまり働かず減衰しやすいホイールになってしまう点には注意が必要ですね。
回転する物体は、その回転軸を維持しようとする性質を持ちます。これが「ジャイロ効果」と呼ばれる物理現象で、バイクの直進安定性に大きく貢献しています。
参考)二輪車の原理
ホイールが重く、特に外周部に質量が集中しているほど、このジャイロ効果は強くなります。高速走行時には特に顕著で、ハンドルが急激に動かないよう助けてくれるのです。
しかし軽量ホイールに換装するとジャイロ効果が薄れてしまい、純正ホイールに比べて直進安定性が悪くなります。これは重たいホイールであればジャイロ効果の働きで直進安定性が高まるためで、軽量化の避けられないデメリットといえます。
タイヤ外径が大きいほどジャイロ効果により直進安定性が増すため、大径ホイールの自転車は一度スピードに乗るとレールの上を走っているかのような強い直進安定性を発揮します。長距離ツーリングでは、この安定性がライダーのバランス制御の負担を減らしてくれるのです。
参考)【数字はウソをつかない!】スペックの ミカタ! &#8211…
高速道路などでの長距離巡航を重視するなら、ある程度重量があるホイールの方が疲労軽減につながるという選択肢も考えられますね。
バイクを真上から見たとき、車体の重心を中心として回転する時の慣性力を「ヨー慣性」といいます。これはバイクが旋回する時の回頭性(ハンドルを切った時の向きの変えやすさ)に影響してきます。
ホイールの慣性モーメントが小さいほど、コーナリング時の切り返しが軽くなります。タイヤホイールを軽量化するとジャイロ効果が軽減し、コーナリングが軽くなるのはこの原理によるものです。
ワインディングロードでの走行性能を重視するライダーにとって、軽量ホイールは大きなメリットをもたらします。バンク角を深く取る際の機敏な操作が可能になり、峠道でのライディングがより楽しくなるでしょう。
参考)なぜ純正と同じような重さのカスタムホイールは今でも有効なのか…
ただし正面から見た時にタイヤの接地点を軸にした左右に振れるときの「ロール慣性」が大きいと切り返しが重くなってしまうため、ホイール全体の重量配分が操縦性に影響します。操縦性に影響してくる部分なので、一般的にはこの値が小さくなるように設定してあるのが基本です。
軽量化により路面追従性が上がることは、実はデメリットにもなります。路面追従性が上がることで、路面状態がダイレクトに伝わるようになるからです。
道路にある小さな凸凹も拾ってしまい、乗り心地が悪くなります。ホイールを軽くするとサスペンションの反応が向上し、路面のちょっとした凸凹をも拾うようになるため、道路のコンディションがライダーに直接伝わるようになるのです。
街乗りなど道路状態が一定でない所では、軽量化のメリットは小さいといえますね。
特にタイヤ&ホイールとしての固有振動数が上がる(縦バネが硬くなる)ため、高速道路の継ぎ目やアスファルトの目地段差の鋭いショックを伴う入力が強くなり乗り心地が悪化します。ハーシュネス領域と呼ばれるこの周波数帯の振動は、ライダーの疲労に直結する要素です。
乗り心地を重視するなら、純正ホイールのバランスを見直すことも選択肢として検討する価値があります。社外ホイールは主にアルミやマグネシウム、カーボンなどの素材を使用していますが、特にマグネシウム製やカーボン製のホイールは軽量化が期待できる一方で価格が高いという問題もあります。
コーナーを曲がるときの傾斜角が同じでも、スピードが異なれば遠心力や旋回力、グリップ力などのすべての応力が変化します。スピードが40km/hと80km/hでは、同じバンク角でも求められる路面グリップ力がまったく異なるのです。
遠心力や旋回力、それにグリップ力などのすべての応力が小さいほどにタイヤは滑りにくいという原則があります。旋回中は遠心力が働くので遠心力と釣り合った状態で車体は安定して、コーナーを抜けていくことができます。
車速に対してバイクを倒し過ぎれば、遠心力と釣り合わずに内側に倒れます。逆に倒し込みが浅いとコーナーの外側に膨らんでいってしまうでしょう。
スピードに比例して慣性力と安定感がアップするという物理法則を理解しておくと、適切なバンク角の判断に役立ちます。タイヤと路面の間に摩擦力を生じて慣性力のベクトルを曲げることでカーブしているため、グリップの良いタイヤを履くことで高性能なコーナリングワークを実現できます。
参考)https://nyroadbike.blogspot.com/2010/06/blog-post_10.html
峠道やサーキット走行では、タイヤのグリップ性能とホイールの慣性モーメントのバランスが重要ということですね。
ホイール選びで見落とされがちなのが、総重量だけでなく重量配分の重要性です。例えば1200gの一見軽い完組ホイールだとしても、ハブが90gでリムがとても重く400gかもしれません。
組み合わせたパーツの重量分布次第で転がりが全く変わってしまうのです。リム重量が800gや900gある場合は重たいものは重たいのですが、高速巡航を長時間維持しようとすると慣性が働きやすい利点もあります。
近年の純正ホイールは製造技術向上で軽量化が進み、一昔前のレース用マグネシウムホイールを凌駕するような軽量さを誇っています。見た目もMotoGPで使用されているような最新マグホイールとソックリですし、高額な軽量ホイールに交換する意味は以前ほど大きくないかもしれません。
自分の走行スタイルに合わせてホイールを選ぶ際は、カタログ上の総重量だけでなく、リム重量やハブ重量の内訳を確認することをおすすめします。メーカーのウェブサイトや販売店で詳細なスペックを確認し、ワインディング重視なら軽量リム、高速巡航重視なら適度なリム重量という基準で判断すると良いでしょう。
バイク用ホイールメーカーの技術情報ページでは、各モデルの重量配分データが公開されていることがあります。
グーバイクマガジンのホイール軽量化記事
購入前にショップスタッフに相談し、実際の使用シーンを伝えて最適な重量配分のホイールを提案してもらうのも確実な方法です。